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やっぱり軽さは正義、Z2 Tabletで分かった“これならいける10型モバイル”

 ソニーモバイルコミュニケーションズから10型以上の液晶を持つタブレットとして世界最薄最軽量となる「Xperia Z2 Tablet」が発売された。今回は、NTTドコモ版の「SO-05F」で、その世界観を体感してみた。

縦でも横でも使いやすい

 Xperia Z2 Tabletは10.1型画面を持つタブレットで、その重量、実に439g。最厚部の寸法は6.7mmだ。一般コンシューマの行動として、10型超タブレットはまず外には持ち出されないという話をよく聞くのだが、ここまで軽くなってくるとそうも言えないんじゃないかと実感する。具体的には「iPad Air」の478gよりも29g軽く、7.5mmより0.8mm薄い。極端な言い方かもしれないが、これは偉業だと言ってもいい。数値だけではフーンと言うかもしれないが、実際に手に取った瞬間、自分の価値観が更新される。そのくらいのインパクトがあった。

 そして、iPad Airよりも使いやすいと思うのは、物理的なボタンがない点だ。その分、描画領域が狭くなってしまうが、「戻る」「ホーム」「タスク」がソフトウェアキーとしてナビゲーションバーに表示されるため、本体を縦にしても横にしても画面の下部にこれらのボタンが表示され、本体の方向による操作感が変わることがない。液晶パネルの縦横比が16:10ということもあり、縦位置で使っても細長感があまりなく、縦にしたり横にしたりして使うのに嬉しい。

 この重量なら、電車の中でつり革をつかみ、立ったまま片手で支えながらTwitterのタイムラインを眺めるといったことも不可能ではない。29gの違いでそんな馬鹿なと思うかもしれないが、実際にやってみると、iPad Airでは不安に感じるのだが、このタブレットではそれを感じない。

大きいことはいいことだ

 @syoheiでずっと使ってきたTwitterクライアント「Janetter」を使うのをやめて、ここ数カ月、Twitter公式クライアントを使うようになった。乗り換え理由はいろいろあるのだが、大きなものとしては、画像のプレビューが比較的大きく表示されるのが気に入っている。

 大きな文字を設定し、大きく写真が表示されるようにしておくと、高速にスクロールさせながらでもタイムラインの概要を把握することができる。やはり画像のインパクトと印象の威力は絶大だ。ちょっとした時間のスキマにザッとタイムラインをチェックするといった使い方には、大きな文字、画像表示がいい。

 Xperiaは、そのブランドの方針として1画面での情報量を多くすることを目指し、画面表示の密度、つまりピクセル密度が低い傾向にある。OSから見たときの画面密度を低くするとスケーリング値が低くなり、それによって見かけの解像度が高くなる。つまり、文字が小さいのだ。ファブレットの「Xperia Z Ultra」などはその典型で、文字サイズを大きくしても老眼が気になる年齢にはつらいものがあった。ぼくはそれで Z Ultraの利用を諦めた。Xperia Z2 Tabletにもその傾向はあるのだが、画面サイズが10型超ということで、それが相殺される。

電話もOK、アクセサリ併用なら申し分なし

 10型タブレットに不似合いとされる機能として通話の機能がある。秋にはドコモのVoLTEにも対応するというのだが、その実用性はどうかというと、本体だけではやっぱり「???」ではある。相手の声はスピーカーから聞こえるので、周辺に会話の内容も筒抜けだ。

 だが、アクセサリとして発売されるリモコン兼ハンドセット「BRH 10」を併用することで、その不便は解消される。この22.5gの子機をBluetooth接続すれば、リモコンとしてボリューム調整や、ある程度OSの操作ができるほか、通話時には普通のハンドセットのように耳に当てて会話できるのだ。

 ダイヤルする場合は、タブレット側の操作が必要になるが、音声で連絡先を検索してダイヤルすることもできる。Webページでチェックした電話番号にその場で発信するといった用途では不自由しないはずだ。

 それに、着信を受ける分にはまったく問題ない。スマートフォンはほとんどをデータ通信に使い、めったに通話はしないが、それでもできないと困るといったユーザー層には受けるんじゃないだろうか。試しにこのBRH 10を、手元のAndroidスマートフォンともペアリングしてみたが、リモコン操作、ハンドセット機能ともに正常に動作しているように見える。

Windows端末がまだキャッチアップできていない領域を最大限に活用

 あって邪魔にはならないが、ほとんど使わないと思い込んでいたTV受信の機能だが、フルセグ対応ということもあり、これはこれでありだと再認識した。この原稿を書いている都内の仕事場では、特に苦労することなくフルセグの電波を安定して受信できた。電波が弱い場合には、ワンセグになってしまう。やはりワンセグの画質ではTVを楽しむ気にはなれない。

 パーソナルにTVを楽しむにはかなりいいと思う。同様に、録画したビデオを持ち出して外出先で楽しむといった用途でもいい。もちろん、YouTubeのようなサイトを楽しむにもいいんじゃないだろうか。このサイズ、この重量なら、ジムのランニングマシンに装備されたTVの上に重ねるように置いて、持ち込み映像を楽しむといったことにも抵抗なくできそうだ。

 10型液晶というのは微妙なサイズで、これを超える画面サイズでアプリを使うにはAndroid OSには荷が重いように言われることは多い。画面が大きいことで、そこへの期待も大きくなるというわけだ。だから、10型超は、Windowsの領域といった意見もよく聞こえてくる。

 だが、地図の視認性とGPS機能のアドバンテージ、そして通話ができるといった要求を満たそうと思うと、10型超のAndroidタブレットも捨てたものではない。これらはWindowsタブレットがまだキャッチアップできていない領域だ。また、バイブレーションによるフィードバックは使っていても安心できる。

 6,000mAのバッテリは、丸1日の使用でもビクともしないし、ずっとテザリングをオンにしたままで持ち運んでいても不安はない。防水防塵ということで、充電端子にMicro USB端子を接続するために端子カバーを外さなければならないのは面倒だが、これは別売りアクセサリの卓上ホルダ「DK40」があれば解決する。

 スマートデバイスの選択肢は増え、小さなスマートフォンからファブレット、タブレットは7型、8型、10型と、よりどりみどりの状態だ。Z2 Tabletは、FeliCaが非搭載で、おサイフケータイとしては機能しないのが残念といえば残念だが、全部入りに足りない部分は、そこだけとも言える。1日の外出をこれ1台でカバーすることができる貴重な存在だ。

 NTTドコモの製品なので、SIMロックは解除できるはずだが、MVNOを始めとした各社のSIMや海外現地SIMを装着した場合、テザリングができるかどうかは、今回の貸出機が自前のSIMの装着を禁じられているため、残念ながら試すことができなかった。こうしたできて当たり前のことができるかどうかを気にしなければならない時代は、そろそろ終わりにしてほしいものだ。

 夏休みの旅行計画などが話題になるシーズンだが、電話もできる10型タブレットというのは旅行にも向いている。旅行先で、観光ガイドを大きな画面でチェックし、広範囲を表示できる地図で自位置を確認し、Webで見つけた料理店の予約をその場で済ませるといったことが1台でできるのは嬉しい。長時間の移動では、退屈しのぎに動画も見られる。電子書籍もありだろう。モバイルの点と線で生じるあらゆるニーズに応えることができ、小さなスマートフォンの画面ではちょっとつらさを感じるシルバー世代にも抵抗がなく受け入れられそうだ。

(山田 祥平)