■山田祥平のRe:config.sys■
メインの携帯電話を、ようやくスマートフォンに移行した。個人的には初めてのシャープ製端末、「AQUOS PHONE SH-12C」だ。今回は、1週間使ってみてのインプレッションをお伝えすることにしたい。
●消去法で残ったAQUOS PHONEスマートフォンが、おサイフケータイなどの日本独自の機能に対応し、また、テザリング機能が提供され、さらにSIMロックの解除ができるようになったらメインのガラケーを、スマートフォンに機種変更しようと思っていた。常用キャリアはドコモなので、この夏の新機種を狙っていた。
最終的にSH-12Cにしたのは、消去法で、この端末が残ったからだ。もし、おサイフケータイにこだわらなければ、サムスン電子の「GALAXY S II SC-02C」にしていたかもしれない。やはり、デュアルコアの処理性能と無限ともいえる圧倒的なROM容量は魅力だったからだ。
おサイフケータイ機能を搭載していること、テザリングができることを条件にすると、機種は絞られた。そして、できるだけ大きな液晶で、一般的なイヤフォンジャックを持つこと、また、できるだけ大きなROM容量を持つことなどから、最終的にSH-12Cが残った。
懸念していたのは、バッテリの容量で、念のために予備のバッテリもあわせて購入したが、1週間使っていて、特に必要になったことはない。思った以上にバッテリが持つことがわかって一安心だ。
発売日の5月20日に、新宿の量販店で購入して受け取り、その足でコーヒーショップに立ち寄って、あらかじめ購入してあった32GBのmicroSDHCカードを装着した。この製品には、試供用に2GBのmicroSDカードが装着済みだが、それと交換する形だ。やはり、ブランド的に安心できるということで、サンディスクの製品を選んだ。
前夜、常用しているおサイフケータイ機能の移行手続きは済ませてあった。モバイルSuicaは退会、EdyとiDはお預け、ヨドバシカメラのゴールドポイントカードとANAのAMCはカード情報削除とした。手持ちのビューカードをJR駅のATM、VIEW ALTTEに持って行ってオートチャージの設定をしておいた。しばらくはカード型Suicaで改札を通過するしかないが、それも7月23日までの辛抱だ。
新しい端末に、おサイフケータイのアプリをインストールし、メールやTwitterのアカウントを設定、常用アプリをいくつかインストールして、正常に稼働することを確認した上で、近くのドコモショップに行って、SIMロック解除をお願いした。
解除は、手数料として3,150円が必要になるが、基本的にすべての操作は自分で行なう必要があり、何のための手数料なんだかと感じた。具体的には指定された特別な電話番号に対してダイヤルすると、解除コード入力のダイアログボックスが表示されるので、伝えられた24桁の英数字をコードとして入力すると、解除が完了する仕組みだ。
●ROM容量が多いのが安心使い勝手は悪くない。ストラップホールがついているのも国産ケータイらしい。ネックストラップをつけて首から提げている。ただ、一般的なネックストラップの長さだと、コンビニのレジでEdyを使うときに、ちょっと短い感じで、屈みかげんにならないと届かないことがある。夏以降は、Suicaで改札を通るときにも不便かもしれないので、ちょっと長めのストラップを探そうかと思っている。
ちょっとやり過ぎ感があるのは、MicroUSB端子で、これにふたがついている。毎日充電するたびに、このふたを開けるのだが、これが意外に面倒くさい。強度的にいつまでもつんだろうという心配もある。のぞき見防止のベールビューモードなどというのも気が利いている。スクリーンに模様のパターンを表示し正面以外からの視認性を抑制する機能だ。
トラブルとしては、自宅の無線LANアクセスポイントに接続できなかったことだ。これについては、手動で設定を作成したら、あっさりと接続することができた。
期待していなかったのに、あってうれしかったのは、着信転送が本体のメニューからできることや、不在着信時の伝言メモ機能がサポートされていたことだ。個人的に、留守番電話サービスを使っていないので、この機能があるとないでは大違いだ。
メールやカレンダーはAndroid OS標準のものだ。標準アプリは文字サイズを変更する機能がないので、ぼくの目にはちょっと文字が小さい。カレンダーを月曜始まりにできないのも減点で、このあたりは、手元のGalaxy Tabのサムスン製メール、カレンダーアプリの方が使い勝手がいい。
電源ボタンは左上側面にある。スクリーンが消えているときに、このボタンを押すとロック画面が表示される。電源ボタンの代わりに、ホームボタンを押しても同じだ。ただ、ホームボタンはポケットの中などで、押されてしまう可能性があるので、ここは、賛否両論あるだろう。
タッチのフィーリングに関しては、若干敏感すぎるようにも思う。スクリーン上のアイコンをタップしたときに、微妙に指が動くと、タップではなく、フリックと勘違いされる傾向がある。これは慣れるしかなさそうだ。
この端末は、ユーザーが自由にアプリをインストールできる空き容量が多い。出荷時状態で1GBを超える容量が確保されている。16GBもあるサムスンは別格として、他の端末では1GBのROM容量が、この機種では2GBなのだ。いつも端末の容量がいっぱいになって、アプリのインストールと削除を繰り返していたので、これはうれしい。Androidは、ROMにシステムやプリインストールされたアプリが入っていて、その残りがユーザーにアプリインストール用として開放される。カタログなどのスペックを見ているだけでは、その残り容量がよくわからない。これは、初期のWindows PCが、プリインストールアプリで圧迫されたHDDの残り容量がよくわからなかったのに似ている。このことは、もっときちんと伝えて対処するべきではないだろうか。
●謎が多いテザリング仕様すこぶる気に入っている端末ではあるが、ちょっとしたことでケチがついた。テザリングだ。SIMロック解除の状態だが、FOMAカードを装着した状態で、メニューからテザリングをオンにすると、APNが自動的に切り替わるのだ。通常はspmode.ne.jpに設定してあるが、テザリングをオンにすると、隠しAPNであるdcmtrg.ne.jpに切り替わり、テザリングをオフにすると元のspmode.ne.jpに戻る。
APN Managerのようなアプリを使うと、この振る舞いがわかる。テザリング時にはアクセスポイント名のメニューがグレーアウトして操作できない。アプリを使って確認すると切り替わっていることがわかるのだが、APNを元に戻しても機能しない。この隠しAPNを削除したり、編集したりしてもだめだった。必ず復元されてしまう。このAPNに接続されたことで、テザリングされていることを検知し、外部機器接続の料金が適用される仕組みなのだろう。これは仕方がないことだが、ちょっとがっかりもした。
これで何が困るかというと、まず、FOMAカードを使うドコモのMVNOを利用しようとしても、テザリングができなくなってしまうことだ。たとえば、日本通信のb-mobileでは、dm.jplat.netというAPNに接続して通信するが、その状態でテザリングをオンにすると、dcmtrg.ne.jpに切り替わり、当然、このAPNは、b-mobile経由では使えないため、結果としてテザリングは不可能だ。それどころか、スマートフォンとしての接続もできない。日本通信のAPNではないのだから当たり前だ。
もし、海外の現地SIMを装着したときにも、同じことが起こるのだとすれば、海外ではテザリングができないことになってしまう。これについては、ドコモのサポートに電話してたずねてみたが、いったん預かりとなり、2日後に返事がきて、海外現地SIM装着時のテザリングについて、ドコモからお答えできる情報は何もないということで、明確な回答は得られなかった。取り扱い説明書には「他社のSIMカードをご使用になる場合、ご利用になれるサービス、機能などが制限されます。当社では、一切の動作保証はいたしませんので、あらかじめご了承ください」とあるから文句はいえない。「海外ではポータブルアクセスポイントを利用できません」ともあるが、これがFOMAカード装着時のみの制限なのかどうかもわからない。つまり、自分で海外にでかけて試すしかないということだ。あるいは、ソフトバンクのSIMを入れれば、ある程度のことは判明するかもしれない。いずれにしても謎は深まるばかりだ。これについては、続報をお待ちいただきたい。