山田祥平のRe:config.sys

AirPlayが来る前にAirTunesでAirBeat




 iTunes Storeでビートルズの楽曲が扱われるようになったり、日本でもApple TVのサービスが開始になるなど、周辺がにわかに賑やかになってきたアップルのコンテンツ事業だが、そうしたことも刺激になって、手元のオーディオ環境に少し手を入れてみることにした。といっても、最新の環境を作ったわけでもなんでもないのだが、できあがりにはかなり満足している。

●沈黙が続いていたスピーカー

 リビングルームには、古くはあるがそれなりのアンプとスピーカーがあって、CDプレーヤーが1台つながっている。音楽の楽しみの多くをiPodに移行してから、このプレーヤーにCDをセットして音楽を聴くことはほとんどなくなってしまったため、必然的に、リビングルームのスピーカーは沈黙を守っていた。たとえ、リビングで音楽をかける際も、ドックつきのスピーカーにiPodを装着して鳴らす始末で、すべての機材が10年超のロートルとはいえ、ちょっともったいないなとも思っていた。

 あいかわらず、1カ月に10枚程度のオーディオCDを、リアルなミュージックショップで購入しているが、購入したその日にPCでリッピングしたら、そのままパッケージに戻して棚に片付けるというパターンがほとんどだ。ここ数年購入したCDのほとんどは、一回しか盤面をトレースされていないはずだ。

 音楽を楽しむ手段としては、イヤフォンがほとんどになってしまった。PCのオーディオ出力も、ちょっとしたオーディオセットにつないであるのだが、PCに向かっているときは、音楽を楽しむ余裕があまりない。

 今回のもくろみは、iTunesのライブラリにある音楽を、リビングのオーディオセットで楽しめるようにすることだ。もちろん、ミニプラグとピンがペアになったケーブルを用意して、iPodをアンプに直接つないでしまえば、簡単に音は出る。今回は、それよりも、もうちょっとインテリジェントでよりリッチな環境を作ってみようと欲張った。つまるところ、久しぶりにスピーカーを鳴らして間接的に耳に届く音を楽しみたくなったということだ。

●AirMac ExpressでiTunesのサウンドをデジタル音声出力

 まず、iTunes用に専用のノートPCを1台用意した。液晶を起こせばすぐに楽しめるように、パスワードのない新たなアカウントを作成して運用することにする。

 このPCを、TVのそばに置き、HDMIケーブルでTVにつないだ。したがって、デフォルトのオーディオ出力はTVに出るようになっている。大きな画面で見てみたい動画などがある場合は、TVの大画面で音と映像を楽しめるようにするためだ。なお、ネットワークは無線LANだ。繋がっているケーブルを少なくするためだが、結局、内蔵HDDには全ライブラリが入りきらず、USB接続のポータブルHDDを接続し、そこにライブラリを置いたので、ちょっとみっともない。

 そのPCでiTunesを使うときには、その音声はTVに出力される。でも、音楽だけを楽しみたいときには、TVをOFFにしていることが多いので、なんらかの方法でiTunesのサウンドだけを別に出力したかった。

 そこで、以前に購入して、今は使わなくなっていたアップルの無線LANルーター、「AirMac Express」に復帰してもらうことにした。出張先で使うために購入したものだが、設定などをするために専用のユーティリティが必要など、不便が多かったことと、今や、Connectifyなどのユーティリティで、ルーター専用機がなくても、インターネットに接続されたPCが無線LANルーターになるので、あまり必要がなくなっていたのだ。

 AirMac Expressには、同一LAN内のPCで稼働するiTunesのリモートスピーカーになる機能が装備されている。これがAirTunesだ。本体にジャックがあって、ここにケーブルを装着することで、光デジタルオーディオ、アナログオーディオの双方を出力できるのだ。ケーブルは、アップル純正のものが「AirMac Express Stereo Connection Kit with Monster Cables」として用意されている。光用、アナログ用、そして、AirMac Expressの電源ケーブルの3本がセットになったものだ。今回はこれを購入して光ケーブルだけを使うことにした。また、AirMac Expressそのものは有線で既存LANに接続した。

 問題は、リビングルームで使っているアンプには、光入力端子が装備されていないことだ。何しろ、このアンプを購入したころには、デジタルオーディオを入力することなど考えてもいなかったし、それができる製品も探すのが難しかったと思う。

 そこで、ちょっとインターネットで調べたところ、仕事場でPCの光デジタルオーディオを入力して使っているDAコンバータのメーカーであるCECから、そこそこの価格で比較的新しい製品として、DA53Nが出ていることがわかった。まあ、手元の製品は10年近く元気で使えているし、品質的にも大きな不満はないので、同じメーカーなら問題ないだろうと判断して試聴もせずに入手した。検索してみる限り、悪い評判はないようだった。

 このDAコンバータは、AES/EBU、同軸、TOSLINKのデジタル入力端子のほか、USB端子も備え、PCに接続すればUSBオーディオアダプタとしても機能する。また、出力も、XLRとRCAピンのほかに、ヘッドフォン出力も用意されている。いろいろな使い方ができるのでつぶしもきく。

 AirMac Expressの光出力を、このコンバータに入れ、コンバータのアナログ出力をアンプにつないだ。コンバータの設定では、オーバーサンプリングやデジタルフィルタの設定ができるのだが、愛用の古いアンプでは、すべてオフにしてしまった方が素直な音になるようだ。まだ、コンバータとアンプをつなぐ、まともなケーブルを入手していないので、この先どうするかはわからないが、とりあえずは、これでいくことにする。

●iPadやiPod touchがウルトラインテリジェントなリモコンに

 当初の目的通り、HDMIでTVからPCのサウンド全体と映像を出力し、iTunesの音だけをリモートスピーカーに出力できるようになった。これで当初の目的は達成できた。

 ところが、PCがHDMIケーブルでTVにつながっているために、選曲などの際に、いちいちPCを手にしなければならないのを不便に感じた。そのときだけ移動させるにしても外付けHDDが邪魔をする。

 そこでリビングルームにころがしてあるiPadを使うことにした。もちろん、リビングルームには別のPCもあるが、PCはパスワードを入れないと使えないのでちょっと不便だ。iPadは家族はもちろん、ゲストなど、誰に覗かれても大丈夫なように、プライベートなコンテンツは一切入れていないので、使い始めるのも簡単だ。今後は、こうしたパーソナルデバイスと、TVのようなパーソナルではないデバイスとの間におけるコミュニケーションで、個人認証などが課題になっていくだろう。TV番組を見ながらつぶやいているのは、いったい誰なのかは重要な問題だ。

 話が脱線してしまった。さて、そのiPadにアップルが無償提供しているアプリケーション「Remote」をインストールし、PCのiTunesをリモートコントロールできるようにした。これなら、ソファに座ってPCから離れたところにいても、楽曲を自由に選択することができる。Remoteは、iPad以外にも、iPod touchやiPhoneなどにインストールし、複数のデバイスから任意のPCのiTunesをコントロールすることができる。だから、iPad以外にも、ポケットの中のiPod touchを取り出せば、割り込んで同じことができるのだ。

 使い方としては、iTunes DJでここ1年以内に追加した楽曲のスマートプレイリストを対象にシャッフル再生をさせておく。これは延々と続く。比較的新しい楽曲のヘビーローテーションだ。この状態で、古い曲をライブラリから選択すると、Remoteは、その曲をリクエストするのか、次に再生するのか、iTunes DJを中断してすぐに再生するのかをたずねてくる。そのどれかを選べばいいわけだ。曲名やアートワーク表示のレスポンスも悪くない。早くはないが我慢できる速度だ。まさに、インテリジェントなリモコンである。

 リクエストの場合は、リクエストキューの最後に楽曲が登録され、そのうち再生されるし、「次に再生」とすれば、今かかっている曲の次に再生される。リクエストした曲はリクエスト順に再生されるが、iTunes DJのキューに曲がたまっていると、かなり待たされることになるので、これから再生される曲の選曲は1曲だけに設定しておいた。

 iPodデバイスのみならず、他のPCからリモートスピーカーに接続することもできるし、そのPCのコントロールもできる。そのために必要な設定は、PCとiPad、iPod touchを4桁のパスコードで最初にペアリングしておくことだけだ。

 これで家の中にあるすべてのPC、そして、iPad、iPod touchが相互につながり、任意のiTunesを任意のiPad、iPod touchから操作できるようになった。

 今月予定されているというiOSのバージョンアップでは、AirPlayがサポートされるようになり、もしかしたら、手元のiPadの楽曲を直接ストリーミング再生できるようになるという。今のところApple TVのサポートだけが予告されているので、こればかりはどうなるかわからないが、基本的に自宅のライブラリは一元化されていて、各PCに置かれたライブラリはそのバックアップコピーにすぎないので、個別のデバイスからストリーミングができても、そんなにうれしくはないかもしれない。

 今、手元のライブラリには約3万曲が登録されているが、昔リッピングした96Kbpsビットレートのものから、最近の256Kbpsビットレートのものまで、クオリティはさまざまだ。今回の作業で、その違いがさらに明確になってしまったのは、ちょっとした誤算だ。3TBのHDDも発売されたことだし、時間を見つけて全部の曲をロスレスでリッピングしなおしたいところだが、いったいいつになることやら。