■山田祥平のRe:config.sys■
ハードウェアには故障がつきものだ。故障を前提につきあっていかなければならないし、故障が起こっても困らないように普段から対策をしておくことが望ましい。だが、それがなかなか徹底できないのが人間というものだ。
●まさかのSDメモリー故障ここのところ、どうにもついていないようで、手元のハードウェアのトラブルが続けて起こっている。まず、暮れには32GBのSDメモリーカードが読み書きできなくなった。数台のPC、そして、デジタルカメラなどで試したが結果は同じだ。PCとPCの間でファイルを行ったり来たりさせるワーク用に使っていたもので、中身が消えてしまっても特に困ることはないのだが、その製品のベンダーのウェブサイトを見ると、永久保証と書いてあるのを見つけた。買ったときはけっこう高価だったので、ダメモトでサポートに相談してみることにした。なにしろ、秋葉原のパーツショップで買ったもので、保証書はおろか領収書も残っていない。それでもサポート窓口では、修理、あるいは交換できるかわからないが、とりあえず、送ってほしいという。そこで、指示にしたがって、普通の茶封筒に入れて80円切手を貼って送付したところ、1週間ほどして電話がかかってきた。
サポートの話によれば、先方ではとりあえず読み書きできているという。ただ、外観に損傷があるので、そのせいで認識されないのかもしれないとのことだった。SDメモリーカードには端子の金メッキ部分を区切るために樹脂の絶縁体が造作されているが、それが欠損してしまっているという。メモリそのものの故障であれば永久保証するが、今回は外観の損傷だから保証できないというので、とりあえず、現品を返送してもらうことにした。そして、届いたメモリーカードは先方の指摘通り、樹脂部分が欠落している。たぶん、無造作にポケットに入れて持ち運んでいたりするうちに欠けてしまったのだろう。でも、そのメモリーカードを、ダメだったはずのカードリーダーやPCのスロットに入れてみると、見事正常に認識され、元のように使えるようになったのだ。まあ、不幸中の幸いといったところだが、送付前に複数の環境で試してダメだったのはなぜなのだろうと、その点だけが疑問に残る。今回は、中身がなくなっても特に困らないものだったのでよかったが、そういうケースばかりではない。SDメモリーカードなど、洗濯でもしない限り、物理的に壊れるものでもないと油断していたが、そういうこともあるのだと、用心することにしよう。
●心に余裕をもって対処するために次のトラブルもストレージ関連だ。こちらは、昨年末にフォーマットしてWindows 7をクリーンインストールした1.5TBのHDDだ。メイン環境に使っているPCに内蔵しているものだ。
こちらは、年が明けてから、なんとなく読み書きにひっかかる感じがしていた。OSの起動等では特に問題はないのだが、時には電卓が起動するのに20秒くらいかかることもあり、日常の作業に支障が出てくるようになってしまった。
ユーティリティを使ってS.M.A.R.T情報を確認してみると、シークエラーの回数が異様に高いことがわかった。そんなに長く使っているHDDではないから、故障だとするとちょっと理不尽だ。まだ、読み書きにエラーが出ることはなかったので、今のうちにと思って新しいHDDに入れ替えることにした。容量も増やし、新しいHDDは2TBのものを奢った。でも、HDDを買ってきたはいいものの、使えているだけに、なかなか時間をとって、入れ替え作業に取りかかるきっかけがつかめなかったのだが、このまま放置しておいてもロクなことはないと、重い腰を上げることにした。
入れ替えは、チャンスの1つと思い、ユーティリティなどでクローンを作ったりするのではなく、もういちどWindows 7をクリーンインストールし、すべての環境をゼロから作り直した。あらかじめ古いHDDから別のHDDに、残しておきたいファイルなどをコピーしておいてからディスクを交換した。そもそも重要なファイルは、そのほとんどがサーバーとして使っている別のPCに置いてあり、メイン環境からは、それをオフラインファイルとして同期させている。だから、再同期をすればファイルは復元される。サーバーが壊れても手元にはオフラインファイルがキャッシュされている。
夕方から取りかかり、インストールや設定などの作業に、ほぼ3時間を要した。その後処理はソフトウェアが勝手にやってくれるが、インデックス作成などを含めて一昼夜くらいはかかるだろう。今、この原稿は、これらの作業をバックグラウンドでこなしながら書いている。
取り外した古いHDDは、まだ読み書きができなくなっているわけではないので、新しい環境にUSBで接続して、コピーし忘れたファイルなどを取り戻せたのもよかった。故障は起こってほしくないときに起こりがちだが、起こっても大丈夫なときに対処をしておけば、心に余裕をもって作業することができると、改めて思った。でも、ディスクから異音がするわけでもなければ、まるっきり読み書きができなくなるわけでもないから、交換のタイミングを見極めるのは難しい。やっかいなのは、交換しても、まだ内容を読み書きできるため、もったいないと思って、別の用途に使ってみたくなる点だ。それで、結果として、何かを失うことになるかもしれない。さて、どうしようといったところがぼく自身の貧乏性でなさけない。
●壊れて困るのは仕事用PCだけじゃない先日、部屋で仕事をしていると、セールスの電話がかかってきた。なにやら、PCのリモートサポートのサービスに加入しないかという。
最初に聞かれたのは、PCの調子が悪いときに、どうやってそれを解決するのかということだった。インターネットで調べて解決していると答えると、意外そうな声で、それで解決できますかと念を押されたが、大丈夫ですといって電話を切った。
ソフトウェアにしてもハードウェアにしても、何かおかしいなと思ったら、まずは、Googleなどで同じ症状で困っているケースがないかどうかを調べてみる。もちろん、ベンダーのサイトもチェックする。それで見つからない場合は、異なる複数台のPCで同じ現象が起こるかどうかを試してみる。もしそうなら、バグなどの可能性があるので、ベンダーのサポートに連絡する。ただ、連絡して事情を話しても、たいてい先方でも現象が再現し、しかも、解決策がないというパターンが多い。
ぼく自身は、機械工作に強いほうではないので、自作PCのHDD交換程度ならともかく、これがノートPCだとお手上げだ。一般のユーザーなら、デスクトップPCだって、筐体を開けて中身を確認し、パーツを交換するということ自体、思いつきもしないかもしれない。
だから、PCのライフサイクルは、物理的な故障ではなく、論理的な不都合で終えることも少なくないだろう。メーカー製のPCをリカバリーして工場出荷状態に戻すという発想もないユーザーもいる。そして、ハードウェアには支障がなくても、なんとなく遅いとか、エラーが頻発するということで寿命だと判断してしまうわけだ。
機械である限り、いつかは壊れる。しかもそれは運次第だ。5年たってもエラー1つ吐かずに立派に働き続けるHDDもあれば、買って1年もたっていないのにおかしくなるHDDもある。それでも壊れることを前提に対策をしておく必要がある。そういえば、2004年春のIDFでは、当時、Intelのデスクトッププラットフォーム事業本部長だったルイス・バーンズ氏が、デジタルホームにこそRAIDが必要だと説いていたことを思い出す。あれから6年たった今、クラウド環境の充実によって状況は変わり、バーンズ氏の憂鬱を回避するソリューションは選択肢が増えている。家庭において冷蔵庫や洗濯機が故障で使えなくなったら困るように、PCが使えなくなっても同様に困るにちがいない。まして、その中が、かけがえのないデータが満杯であるとしたら……。