トピック

AI任せで約15時間。ミニPCで作る“サブスク月3,400円”のカメラ加工アプリ

~「ACEMAGIC F2A」で試すClaude×ローカルAIの分担開発

 AIを業務や趣味に生かしたいと思っても、クラウドサービスを使うとサブスク料金がかさんでしまう。代わりにローカルAIを試そうにも、GPUだけでなくメモリ・ストレージ価格の上昇もあってハードルが高い。

 なんとか最小限の出費でAIをフル活用できないだろうか……と悩んでいるあなたにおすすめしたいのが、ミニPC「ACEMAGIC F2A」。AMD Ryzen AI 9 HX 470を搭載し、強力なGPU/NPUを内蔵しながら、手のひらサイズのスタイリッシュなボディを持つ1台だ。

  サブスク料金を抑えながらローカルAIも活用できるし、話題の3Dゲームを快適に動かせる実力もある。 仕事に、遊びに、コストパフォーマンス高く活躍するこのPCのおいしい使い方をお伝えしよう。

手のひらサイズにRyzen AI 9 HX 470、55TOPSのNPUを搭載

128mm角のコンパクトなボディ
ACEMAGIC F2Aのサイズは幅と奥行き128mm、高さは37mmしかない

 ACEMAGIC F2Aは、幅と奥行きが128mm、高さが37mmの、手に収まるサイズのミニPC。重量は実測約578gで、電源はACアダプタではあるもののこちらもコンパクトだ。設置の自由度が高いうえに、いざというときには持ち運びもしやすい。

 プロセッサ違いで大きく2モデルに分かれ、今回紹介するのはAMD Ryzen AI 9 HX 470(12コア24スレッド、最大5.2GHz、TDP 28W)を搭載するバージョン。Ryzen AIシリーズの中ではハイエンドに近いパフォーマンスを誇るチップで、GPUとして16CUのAMD Radeon 890Mを内蔵し、さらに55TOPSのNPUも備えている。このNPU性能の高さは1つの大きなポイントでもあるので、どのようにして生かせるのか、後ほど詳しく解説したい。

 メモリは32GB(LPDDR5X)、ストレージは1TBのM.2 SSD(NVMe PCIe 4.0 x4)。メモリ容量については、ローカルAIを使うならもう一声ほしい、と言いたくなるかもしれない。だが、ここは工夫次第でカバー可能だ。そのあたりも後ほど紹介する。

片手でつかめてしまう小ささ
手に収まるサイズ
出力120WのACアダプタも小さい
12コア24スレッドのRyzen AI 9 HX 470
AMD Ryzen AI 9 HX 470を搭載

NPUの出番が少ないなら、出番を作ればいい

開発作業もACEMAGIC F2A上で実施
ACEMAGIC F2Aでアプリ制作

 ACEMAGIC F2Aが持つ、55TOPSという高性能なNPUがどんなところで生きてくるだろうか。これがもしノートPCなら、Copilot+ PCの基準を満たすスペックなので、Webカメラの映像を加工するWindows スタジオ エフェクトなどで活躍してくれたりもする。が、ミニPCは対象外だ。

普段は出番の少ないNPU
遊んでいることの多いNPU、せっかくの高性能なので有効活用したい

 それもあって今のところミニPCでNPUが使われるシーンは多くなく、宝の持ち腐れになってしまいがち。でも安心してほしい。AIが進化した今の時代、NPUを生かす方法はいくらでもある。 要するにAIコーディングでNPUの活躍場所を作ってあげればいいのだ。

 ここでサンプルとして、先ほど例に挙げた本来は使えないWindows スタジオ エフェクト的なものを実現する「カメラフィルタアプリ」を、AIの力を借りて開発してみよう。外付けの一般的なUSBカメラの映像をリアルタイム加工し、仮想カメラ化して、Web会議ツールなどで使えるようにする、というものだ。

USBカメラ映像をリアルタイムに加工
フツーの外付けUSBカメラでWindows スタジオ エフェクトっぽいものを作ってみる

 もちろん開発作業自体もACEMAGIC F2A上で行なう。ただ、 AIコーディングするにしても可能な限りコストを抑えたい。そこで提案したいのが、クラウドAIとローカルAIのハイブリッド利用だ。

 たとえばクラウドAIにはClaude Codeを使うが、プランは月額約3,400円の「Pro」とする。Proプランは週間の利用枠には比較的余裕があるものの、本格的なアプリ開発だと5時間の利用枠を超えやすい。取り組むタスクのレベルに合わせて低コストなモデルを選んで使用量を抑えたいところ。

クラウドAIはClaude Code
「Claude Code」

 そこでローカルAIを組み合わせることで、5時間制限に多少なりとも余裕を作ることが可能だ。 複雑なタスクはClaudeに、そうではないタスクはローカルAIに任せるという分担で、高額な上位のMaxプランを使わなくても凝った開発ができるようになるわけだ。

UI担当のローカルAI環境
ローカルAI用のツール「LM Studio Bionic」

 今回のカメラフィルタアプリの開発では、そういった分担がしやすい構造にできる。 NPUやGPUの深いところまで扱うことになる映像処理の「コア」部分はClaude が担当し、 仮想カメラのオン/オフや加工の仕方などを選択する「UI」(設定画面)部分はローカルAI が担当する、というようなかたちだ。

ローカルAIで利用枠を節約しながらアプリ開発

 そんなわけで、Claudeでは「 Sonnet 5.5(エフォートレベル 中) 」を選択し、利用枠の消費を抑えつつ十分な「賢さ」でコーディングできるようにした。ローカルAIは「LM Studio Bionic」を使い、モデルには少し重いもののコーディングで実用になる「 Qwen3 Coder 30B A3B Instruct 」を選んだ。

開始時は週間2%、5時間枠0%……ここから開始
スタート時は週間利用枠が別件で2%消費済み、5時間枠は0%。完成までにどれくらい消費するか

 注意点としては、32GBのメモリ容量に対してQwen3 Coderのモデルサイズが17GB超と大きく、実際に占有するメモリ量も多いので、あらかじめメモリ割当の設定を調整しておくこと。AMD公式のユーティリティ「AMD Software: Adrenalin Edition」で「可変グラフィックス メモリ」を「High」にし、LM Studio Bionicが最大限にAIモデルを扱えるようにしておこう。

可変グラフィックスメモリをHighに設定
「AMD Software: Adrenalin Edition」で「可変グラフィックス メモリ」を「High」に

 実際の開発に必要なツールと、大まかな開発の流れとしては以下の通り。

開発の流れ

  1. Claudeとチャットで相談しながら仕様と分担(コアとUI)を決め、設計書を作る
  2. 作業方法の約束事となる「AGENTS.md」をコア担当用とUI担当用に作る
  3. 設計書に従ってコア担当とUI担当が並行してコーディング作業
  4. UI担当がつまずいたときはClaudeに相談して解決策を練る
  5. 最後にコアとUIを結合して完成

  このように分担させたことで、Claudeは常時稼働しているような状況になりつつも、5時間制限にギリギリ到達せず使い続けることができた。 ローカルAIのQwen3 Coderは高度な処理になると失敗しやすいが、WindowsアプリのUIを作る程度であれば間違いなく戦力になる。

コアとUIを並行して開発
午前中のうちにコア部分の仮想カメラが動くところまできた
クラウドAIとローカルAIが分担して並行作業

 結果、トータル15時間ほどで実用できるカメラフィルタアプリが完成した。Claudeの週間利用枠は30%弱の消費。ただ、毎日このレベルの開発をすることはそうないだろう。ローカルAIのおかげで少なからずClaude側を節約できるため、週間利用枠を使い切って困ることはほとんどないはずだ。

完成時の週間利用枠の消費は30%
リセット1時間前に80%近くまで消費するなど、厳しい場面も
実用レベルまで完成したところで、週間利用枠は30%消費

 ところで、完成したカメラフィルタアプリについて簡単に説明すると、下記画像にあるような仕組みでUSBカメラの映像をNPUで処理し、仮想カメラとして出力するものとなっている。

USBカメラから仮想カメラまでの処理の流れ
カメラフィルタアプリの仕組み

 できることは背景交換、背景ぼかし、人物・背景の特殊加工(絵画風、コミック調)、人物の輪郭の特殊加工(ネオン、縁取り)など。NPUが担っているのは人物と背景の認識処理で、55TOPSという性能のおかげかNPU使用率は16%程度となった。CPUとGPUの負荷も抑えられている。

 このカメラフィルタを適用した状態で長時間Web会議し続けても、ACEMAGIC F2A本体の冷却ファンはほとんど動作しなかった。 負荷の上がりやすい作業でも静かに使い続けられる というのは、NPU活用のメリットの1つといえるだろう。

NPU使用率16%前後で多彩な加工
ローカルAI側で作ったUIで各種設定を行なう。背景ぼかしで人物はコミック調、ネオンをまとわせたところ
コミック調にするとこんな見え方に
NPU使用率は16%前後。CPUやGPUの使用率も低い

USB4にデュアル2.5GbE、ミニでも拡張性は十分

 ここで本体のインターフェイス周りも見ておこう。背面側にはUSB Type-C(20Gbps、DisplayPort Alt Mode対応)が1基、USB 3.2 Gen 1(5Gbps、Type-A)が2基、HDMIとDisplayPort、さらに2.5GbEポートがデュアルで用意されている。

映像出力2系統とデュアル2.5GbE
背面側。USB Type-C、Type-A 2基、映像出力にデュアルの2.5GbEポートも

 前面にはUSB4が1基、USB Type-Aが2基、ヘッドセット端子が設けられている。USBポートの数は十分にあり、eGPUでパワーアップするのもOKだし、2つのLANポートでサーバー用途にも便利に使えるなど、ミニPCでありながら応用幅の広い製品だ。

eGPU接続にも使えるUSB4は前面
前面にはUSB4、Type-A 2基、ヘッドセット端子

 拡張性の高さはストレージも同様だ。M.2スロットは2基備えており、最大4TB×2枚、計8TBまで増設できる。ローカルAIのモデルや録画データなど、かさばるファイルが増えても安心だ。

左右の側面に吸排気孔
本体側面は吸排気孔になっている
ACEMAGIC F2Aのスペック(使用機)
OSWindows 11 Pro
CPUAMD Ryzen AI 9 HX 470
(12コア24スレッド、最大5.2GHz、TDP 28W)
GPUAMD Radeon 890M (CPU内蔵)
メモリ32GB (LPDDR5X、7,500MT/s)
ストレージ1TB (PCIe 4.0 NVMe M.2 SSD)
インターフェイスUSB4 1基
USB 3.2 Gen 2x2 (Type-C) 1基
USB 3.2 Gen 2 2基
USB 3.2 Gen 1 2基
DisplayPort、HDMI
ヘッドセット端子
通信機能Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4
有線LAN (2.5GbE) 2基
同梱品ACアダプタ (最大120W)
サイズ約128×128×37mm
重量約578g(実測)

「めっちゃカメレオン」を快適にプレイ、省電力性能も高い

内蔵GPUで3Dゲームもプレイ
ゲームも遊べる

 ACEMAGIC F2AはNPUも強力だが、内蔵GPUも優秀だ。ゲーミングPCとまではいかなくても、3Dゲームをちゃんと楽しめるグラフィックス性能を備えている。

 たとえば人気のかくれんぼゲーム「めっちゃカメレオン」も快適にプレイできる。画質設定を変えながら動かしてみたところ、 フルHD解像度では下記グラフにある通り「最高」でも50fpsを超えるフレームレートを達成した。 もちろん画質に問題はないし、キー操作のレスポンスもストレスがない。

フルHD・最高画質でも50fps超
「めっちゃカメレオン」のフレームレート計測結果(フルHD解像度)

 ここで、先ほどのローカルAIでのコーディング時、カメラフィルタ使用時、ゲームプレイ時、そしてアイドル時の各消費電力(ACEMAGIC F2A本体のみ)を見てみよう。下記がワットチェッカーで計測したおおよその数字だ。

アイドル10W、ゲーム時70W前後
シーン別の消費電力

 アイドル時は10W、カメラフィルタを使ったWeb会議中で30W、ローカルAI実行時が60W前後、ゲームで70W前後となった(瞬間的なピーク電力は80W台後半だった)。ノートPC+αという感じの省電力っぷりで、こうした点もミニPCのメリットだ。

クラウドとローカルを組み合わせ、賢くリーズナブルに使い倒したい

 モデルサイズにもよるが、ディスクリートGPUを持たないPCで実用性の高いローカルAIを使おうとすると、まだ高速な処理は期待できない。

 ACEMAGIC F2AのようなミニPCも、ローカルAIを実用するには少し工夫が必要ではある。だが、今回のようにクラウドAIの補助として使ったり、人が夜眠っている間、時間をかけてAIエージェントに調べものや資料作成などの作業をしてもらったり、といった使い方は可能だ。

 しかも、ACEMAGIC F2Aは3DゲームにもミニPCらしからぬポテンシャルを発揮してくれる。 32GBメモリに1TB SSDで、実売価格21万6,980円とコストパフォーマンスはかなり高い。 割引クーポンでさらに安価になっているタイミングもあるので、要チェックだ。