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Xeon Platinumをスマホから使える!? Claudeのクラウドセッション

 必要なデータだけGitHubに転送して、あとはPCの電源を切ったまま、Androidアプリを1本仕立ててしまった。しかも指示の大半はショッピングモールで買い物しながら、スマホでポチポチっと伝えるだけだった……。

 使ったのはAnthropicの「クラウドセッション」、もとい「Claude Code on the web」だ。2025年10月にリサーチプレビューとして提供が始まり、今年(2026年)の9月に正式版に変わった。そのタイミングで、250ドル(約3万9,750円!)ものクレジットが付与されたのだが、使わないのはもったいないなと思った。

 その思いつきで、PCで普段使っているテキストエディタをスマホに移植する際に使ったのだが、試したら想像以上に実用的だし、面白かった。

付与されたクレジット、使わなきゃソンソン

そもそもクラウドセッションとは

 クラウドセッションは、Anthropicが用意したクラウド上の仮想環境の中でClaude Codeを動かすもの。GitHubのリポジトリを指定してセッションを立ち上げると、その環境にリポジトリがクローンされる。あとはClaude Codeがコードを読み書きし、テストを回し、ブランチにpushするところまでやってくれる……というものだ。

 必要なものは「Claudeにアクセスできる」環境とGitHubアカウントだけ。Webブラウザからでもいいし、モバイルアプリでも、デスクトップアプリでもいい。どこからでも行けるのがキモだ。

 ちなみに、HTMLやexeといった成果物が欲しいだけならチャットでもできるが、今回のような「既存のソースコードや指示書を見ながら実装する」作業はチャットでは事実上無理で、クラウドセッションが役に立つ。そしてClaude Codeのリモートと違い、PCの電源を落としていても大丈夫だ。

クラウドセッションの稼働イメージ(Geminiで生成)

 ただ、さすがにクラウドセッションからPCやスマホに対してSSHを飛ばすのは非現実的なので、手元で動かしてバグを洗い出すのは人間の仕事になってしまう(今回も実際にバグを踏んだ)。

 今回は実際に、冒頭に書いた通り、筆者が記事執筆専用に誂えたテキストエディタをAndroid向けにポーティングというか再実装させた。あらかじめGitHubにソースコードを置き、PCの電源を落として、スマホだけ持ってショッピングモールに出かけた。そして全部スマホからの指示で完成させた。

ん?仮想マシン?クラウドセッションのスペックを調べちゃお

 正直なところ、「Claude Code+GitHub」の組み合わせでAndroid用テキストエディタを作りました~!といっても、「いやワシはそのエディタ使わんし、手順示したマニュアル的なものだろ?」と、まったく映えない記事になってしまってつまらないと思う。

 だがもう1回思い出してほしい。そう、「クラウドセッションは、Anthropicが用意したクラウド上の仮想環境の中でClaude Codeを動かすもの」だ。……もう少しイメージしやすくすると、人間に相当するのがClaude Codeで、そいつが仮想マシン(VM)を操作してコーディングしているので、Claude Codeに仮想マシンの操作をさせることができるというわけだ。

 仮想マシンは使い捨てで、セッションごとにAnthropicのクラウド上で用意される。Claude Code自身の報告によれば、仮想化はKVM上のFirecracker(軽量VM)で、その中のコンテナでClaude Codeが動いているという。使い捨てなので、完成した成果はGitHubへのpushで残す仕組みとなっている。……ということは、当然その仮想マシンにも仕様がある。

 「そもそも君を走らせている環境のスペックを教えてくれ、記事にしなければならない」と頼んだところ、Claude Codeは「推測ではなく実際に調べる」と言ってコンテナの中を実測して報告してきた。以下はその結果だ。

最初の報告
続いての報告……Emerald Rapids!

 ……ワオッ! Emerald RapidsのXeon Platinum 8558! 軽く100万円するCPUッ! 4コアしか割り当てられてないけどそれでも8万円相当ッ! いいのか? いやそりゃ契約でお金は払ってるけど、俺がそんなハイエンドォなCPUを使っていいのか! と興奮してしまった。

 なお、CPUは仮想化されている関係で「Intel Xeon Processor」としか表示されない。クラウド事業者は市販されない特注型番を使うこともあるため、「8558相当」と書くほうが正確だ。別のスレッドで聞いてみたところ、「Xeon Platinum 8581C」というOEM専用モデルではないかとの回答だった。

 そのほかのスペックだが、メモリは15GiB、OSはUbuntu 24.04.5 LTSでカーネルはLinux 6.18.44(Firecracker用)といったあたりが判明した。公式ドキュメントでは、おおよそ4コアのCPU、16GBメモリ、30GBディスクが割り当てられるとしている。

 こんな高スペックな環境で、テキストエディタなんてしょぼいもの作らせようとして、ホントにゴメンね。

んじゃ、ベンチマーク走らせるか

 高性能なXeon Platinum 8558相当だと分かってしまったからにはベンチマークしたくなってしまうのが人情である。そこで「君自身のCPU性能(これはちょっと違ったが正しく理解された)、特にAVX-512や大容量キャッシュを活かせる、短時間で測れるベンチマークを作って。非AVX-512のCore Ultra 9 285HXでも同じものを動かしたい。15秒ぐらいでいい」と注文した。あわせて、4コアに限定したベンチマークも追加で注文した。

 筆者の手元にはAVX-512非対応のCore Ultra 9 285HX搭載のミニPC「MS-02 Ultra」がある。サーバー向けXeonの4コアと、コンシューマ向けのモバイルCPUの4コアを同じ土俵で比べようという魂胆だ。

 そうして数秒でできあがったのが「cpubench 1.1」。1本のCソースからLinux版とWindows版をビルドする作りで、Windows版はクラウド上にMinGWを入れてクロスコンパイルし、Wineで動作確認までClaudeが自分でやった。

 計算の中身は共通で、命令の幅だけをAVX-512(512bit)、AVX2(256bit)、スカラーの3通りに書き分け、起動時にCPUを調べて、使える最速のものを自動選択する。測定は時間で区切る方式で、FP32の積和演算(FMA)で見るGFLOPS、作業領域のサイズを変えながら測る読み込み帯域、ランダムなポインタ追跡で測るメモリ遅延の3本立て。最後にFMAの結果からクロックを逆算し、1コア1サイクルあたりの値も推定する。合計で12秒前後だ。

 ちなみにClaude仮想マシン側は、ほかのユーザーと共有されている関係で値が実行のたびに数%揺れるため、3回走らせた中央値を使っている。一方、285HX側はアイドル時から立ち上げた1回分の値だ。4スレッド同士の結果は次の通り。

 FMA演算性能はほぼ互角だ。ここがまず面白い。結果から逆算した実動クロックはXeonが2.46GHz、285HXが4.99GHz。つまり約半分のクロックで同じ演算性能が出ている。AVX-512で1命令あたり倍の数を計算するぶんが、そのままクロック差を埋めた格好なのだ。

 メモリ読み込み帯域は、サイズで形勢が逆転する。L1キャッシュやL2キャッシュ、そして合計24MBまでの小さいデータでは高クロックの285HXが最大1.8倍速い。24MBまでは285HXのL3(36MB)にも収まり、クロックが高いからだ。

 ところが合計96MBになるとXeonの110GB/sに対し285HXは54.9GB/sしかなく、192MBではXeonの109GB/sに対し285HXは48.8GB/sと、285HXが半分になる。Xeonでは192MBまでのデータが260MBのL3に収まるので、100GB/s以上を保っているわけだ。また、実質メモリ帯域(768MB)を測るテストでは、Xeonの70GB/sに対し285HXは44.3GB/sと、Emerald Rapidsのメモリチャネルが多いメリットがはっきり現れた(しかも共有されている環境でここまで出る)。

 メモリ遅延は、小容量では285HXが有利だが、大容量では差が縮まる。一方、285HXはXeonの約2倍のクロックで動いているため、同じ待ち時間でも、データの到着をCPUが待つしかないサイクル数は285HXのほうが多くなるだろう。

 余談だが、そもそもベンチマークなんてこのような15秒で済むぐらいが望ましいと思うのだがどうだろうか。10分以上かかるCinebench 2026、20分以上かかるPCMark 10、30分ぐらいかかる3DMark、10分ぐらいかかるファイナルファンタジーXIV ベンチマークを、電力モード別に3本、機材3つ同時に回す筆者の姿を思い浮かべてほしい……。

仮想マシンから出られない?ネットワーク設定を変えれば出られた

 だいぶ記事の本題から逸れてしまったような気がするが、戻ろう。筆者は以前、Claude Codeを使って記事執筆用のテキストエディタをMacとWindows向けに作った。これと同じ機能をAndroidでも……と前々から思っていたが、最近は違うソフトばかり作っていて忘れていた。

 今回クラウドセッションの正式版開始を機に、250ドルの特典をそのまま放置するのはもったいないなと思ったので、「Windows版のソースを見て、同じ機能をAndroidでできる限り実現してほしい」と丸投げしてみることにした。

 当然、PCの電源は落とすので、最初はWindows版のソースをGoogle Driveの共有フォルダに置き、そのURLを渡した。ところが返ってきたのは「この環境のネットワークポリシーでdrive.google.comへの通信がブロックされている(403)」、「Google Driveコネクタはインストール済みだが、このセッションには接続されていない」という報告だった。

 「仮想マシンから出られないなんて可哀想なやつだ」と思っていたが、実際は単に設定の問題だった。クラウド環境にはネットワークアクセスのレベルがあり、既定の「信頼済み」は、パッケージレジストリなど許可リスト上のドメインにしか出られないだけだった。要するに、設定を「Full」に変えるだけでよく(それか今回の場合はGoogle Driveだけか)、初めて触った筆者が知らなかっただけだ。

リポジトリの外からツール類などをダウンロードする必要がある場合は、許可するドメインを指定しておこう。機密性が高い場合、ドメインごとに限定することもできる

ソースをGitHubに置いたら移植が一気に進んだ

 結局、Google Driveを使わず、Windows版をGitHubのリポジトリにまとめてアップロードすることにした。それを仮想マシンにクローンさせ、「Shared/README.mdとShared/PORTING.mdを読み、Windows/のソースを機能の正としてAndroid版を作る。Shared/testsが全部通ることを確認する」と指示した。

 ここからはPCの電源を落として、放置してショッピングモールに向かったが、作業は速かった。移植資料を読み、Gradleプロジェクトと共通部品、テストランナーの土台を作り、.NET互換の正規表現ヘルパーといった共通ロジックを順に移植していく。

 進捗は1~2行ずつ日本語で逐次報告されるので、スマホで眺めているだけで何をしているか分かるし楽しい……が、作業はかなり速いペースだし、その間筆者は運転していたので読んではいない。ショッピングモールに到着してぶらぶらして「あっ、そういや移植作業どうだったかな?」と気づいたときには完成していた。

あとはログ眺めるだけの簡単なお仕事

 そうしてビルドされたAPKは、チャットの中で出てくるので、その場でダウンロードしてインストールしてテストした。実機でのテストはさすがにクラウドセッションではできない。最初いきなり起動しないとか、画面の下半分が隠れるといったバグがあったが、それも2~3回伝えるだけで終わった。

 また、このエディタソフトを動かそうとしていたスマートフォン、Unihertzの「Titan 2」では、物理キーボードはあるもののカーソルキーがなく、Gboardでは文節切り替えや長さ調節ができない。そこで、エディタを使っている最中は、強制的にTitan 2の音量調節ボタンやプログラマブルキーと物理キーのコンビネーションをジャックして、Gboardにカーソルキーとして無理やり送信する仕組みを思いついた。

キーコンビネーションでカーソルキーとして動作させる

 ただ、エディタソフト内でこのコンビネーションでカーソル移動ができても、自作のエディタからGboardにキーコードを強制送信させるのはOSのセキュリティ上できない。そこでClaude Codeが提案したのは、「Shizuku」というソフトを使い、「承認されたアプリからワイヤレスデバッグ経由のADB権限でキーコードを送る」という、なんとも裏技的な手段だった。さすが博識である。対応するよう再度作ってもらったところ、問題なくGboardで文節の切り替えができた。す、すげぇ……。

ワイヤレスデバッグ経由でADBコマンドとしてキーを送信。スゴイ

 なお、APKの場合、何も設定なしにいきなり出てくるのはデバッグ版である。このまま使ってもよいが、開発用のADBコマンドからなんとでもいじれてしまうので脆弱な状態だ。正式版として出すには、リリース用の鍵でAPKに署名する必要がある。そしてそのAPKの署名に使うキーストアは、GitHub ActionsのSecretsに登録する必要があった。

 これをスマホのブラウザから設定しようとしたが、あっさり迷子になってしまった。諦めてスクリーンショットと一緒に「どれでしょ」と投げた。すると「今開いているのはアカウント全体の設定画面。Secretsはリポジトリ側の設定にある」とガイドしてくれた。すげぇなClaude Code、なんでも知ってるな。

AIがある今こそ手元のデバイスをフル活用できる時代

 移植作業は1日だけ、指示はすべてスマホのClaudeアプリからで、リポジトリを上げてからはPCを一度も起動していない。筆者は1行もコードを書かず、実機でのテストおよび不具合のざっくりとした報告しかしなかった。それから迷ったときに尋ね、お遊びのベンチマークを回した程度だ。

 これまでTitan 2というキーボード付きスマートフォンは、せっかくキーボードが付いているにもかかわらず、記事執筆に十分活用できなかった。Claude Codeを使うことで、活躍する機会がますます増えるだろう。

編集に必要な機能を全部実装

 冒頭で述べた通り、クラウドセッション正式サービス開始時に付与が始まったクレジットは、最大250ドル。ちなみにちょっとややこしいが、これは「通常の週間上限/5時間上限とは別に付与された、クラウドセッション専用のクレジット」で、つまり250ドルまでクラウドセッションで作りたいものがあったら、通常のプランの使用量とは別に使えるということだ。利用期限は11月5日までなので、早めに消費してしまったほうがいい。

クラウドセッション専用のクレジットは11月5日まで、さっさと使い切ってしまいたい

 逆に、このクレジットが切れてしまった場合は、通常のプランの使用量から消費される――しかし、仮想マシンの利用は「タダ」だ。リモートで4コアのAVX-512対応マシンを活用できる作業があるなら、これを機に利用してみてほしい。