Hothotレビュー

64GBのRTX Sparkで何ができる?LLMから動画生成まで徹底ベンチ!

今回試したのは、RTX Spark N1Xと64GBメモリを搭載するASUSの「ProArt P16(H7607)」。ローカルAIから普段の作業、ゲームまでを1台で試した

 NVIDIAの「RTX Spark」は、大容量のユニファイドメモリをCPUとGPUで共有し、ローカルAIをノートPCで使うための選択肢を広げるプラットフォームだ。PC Watchでも、製品の狙いや128GB搭載機の使い勝手、Arm版ゲームの効果をお伝えしてきた。

 では、メモリが64GBのモデルでは、どこまでできるのだろうか。最大容量の128GBでなければ、RTX Sparkを選ぶ意味は薄れてしまうのか。今回はASUS「ProArt P16(H7607)」の64GB構成で、LLMの推論、画像・動画生成、クリエイティブアプリ、ゲームを試した。処理できるかどうかに加えて、どれくらい待つのか、普段のPCとして使えるのかまで見ていきたい。

 先に方向性を示しておくと、64GBでも27B級LLMや生成AIのワークフローを持ち歩く用途には十分な見どころがある。ただし、ハイエンドGPUに匹敵する処理速度は期待できない。大きめのAIを手元で動かせる容量と、ノートとして運べる形に価値を感じるかが判断の軸になる。

64GBを丸ごとVRAMにできるわけではない

 検証機のASUS ProArt P16は、SoCとして20コアのArm CPUと6,144コアのBlackwell RTX GPUを内蔵したRTX Spark N1Xを搭載する。CPU用のメインメモリとGPU用のVRAMを別々に積む一般的なゲーミングPCと異なり、LPDDR5Xのユニファイドメモリを利用する構成だ。

 この方式の強みは、GPU側で使える容量を大きく取りやすいこと。モデル本体だけでなく、長いコンテキストを扱うための作業領域なども必要になるローカルLLMでは、GPUメモリのサイズが使い勝手を左右する。一般的なノート向けGPUでは容量が厳しい大型モデルも、RTX Sparkなら選択肢に入ってくる。

 ただし、64GBすべてをGPUに渡せるわけではない。Windowsやアプリを動かすためのメインメモリの割当も必要だ。今回はNVIDIA Appで、GPUへのメモリ割り当てを既定の30.5GBから40GBへ変更した。GPUが64GBの専用VRAMを持つ構成の評価ではない点には注意してほしい。

 容量と同時に重要なのがメモリ帯域だ。RTX Spark N1Xのメモリ帯域は最大約300GB/s。大容量ユニファイドメモリが強みだが、ハイエンドの単体GPUと比べると帯域は狭い。たとえばRTX 5090は32GBのVRAMと1,792GB/sの帯域を備える。容量を大きく確保しやすいRTX Sparkと、VRAM内のデータを高速に処理するハイエンドGPUでは、得意な場面が異なるということだ。

 LLMが文章を生成する際など、メモリから重みを繰り返し読み出す処理では、この帯域が制約になり得る。大きなモデルが載ることと、それを高速に動かせることは別だ。実際の速度には演算性能、量子化、推論ソフト、電力設定なども関係するため、メモリ帯域だけで性能が決まるわけではないが、重要な要素であることは間違いない。

GPUへの割り当ては40GBに設定。OSやアプリ用のメモリも必要なため、搭載容量64GBをそのままVRAM容量と考えることはできない
【表1】テスト環境
項目条件
検証機ASUS ProArt P16/RTX Spark N1X、CPU20コア・GPU6,144コア
メモリ64GB、GPU割り当て40GB
OSArm版 Windows 11 Pro 26H1
GPUドライバーGame Ready 617.42
電源設定Windows「最適なパフォーマンス」、ProArt Creator Hub「Performance mode」
比較機1Ryzen 7 9800X3D+GeForce RTX 5090+DDR5-6000 32GBの自作PC
比較機2ASUS Zenbook 14 UX3480QA/Snapdragon X X1-26-100

 製品クラスも構成も異なるが比較機を用意した。GeForce RTX 5090機はハイエンドなdGPUとの、Zenbookは一般的なArmノートとの違いを見るための比較対象だ。

27BのLLMが約32tokens/s。長い入力では「考え始めるまで」も見る

 まずはローカルLLMだ。使ったのはパラメータ数27B(270億)の「unsloth/Qwen3.8-27B-GGUF」。量子化はQ4_K_Mで、モデル本体のサイズは約16.45GBとなる。実行環境はWindows Arm64版のllama.cppで、DFlash2のドラフトモデルを併用する投機デコードも有効にした。

 投機デコードとは、補助モデルによる候補生成を利用して推論を速める仕組み。今回の数値はQwen単体での速度ではなく、この構成全体の結果となる。

 llama-speedbenchでは、コーディング、数学、多言語、要約など11カテゴリから各5件、計55件を処理した。出力長上限1,024トークン、同時実行1の条件で、平均生成速度は31.99tokens/sだった。

 約32tokens/sなら、出力を眺めながら文章やコードの候補を確認する使い方は十分現実的だ。ただしトークンは文字数とは一致せず、回答に必要な長さや推論内容でも待ち時間は変わる。また、このテストは応答速度を見るもので、文章の正確さやコーディングの成功率を採点したものではない。

11カテゴリ55件を処理したllama-speedbench。Qwen3.8-27BのQ4_K_MにDFlash2を併用し、2回目の平均生成速度は31.99tokens/sだった

 連続したやり取りを想定するAgentPerf Localも実施した。コンテキスト65,536トークンの条件で168ターンを処理し、失敗ターンは0。生成速度指標は38.11tokens/s、入力処理などを含むend-to-endの出力速度指標は31.33tokens/sとなった。

 過去の会話を引き継ぎながら処理を繰り返すような負荷でも、64GB構成で一連の推論を実行できたわけだ。ただし、記録済みのエージェント処理を再生するテストであり、実際の業務を自律的に完遂した結果ではない。別のベンチと速度指標の定義も異なるため、38.11という数字だけを先ほどの31.99と直接比べるべきではない。

 大容量メモリの価値を考えるうえでは、長文を入力した場合の待ち時間も重要になる。AIPerfで入力長を変え、出力長1,024トークン、同時実行1として試した結果が次の通りだ。

【表2】AIPerfで入力長を変え、出力長1,024トークン、同時実行1として試した結果
入力長最初のトークンまでの時間E2E時間生成速度
16,384 tokens22.56秒61.63秒26.23tokens/s
32,768 tokens46.77秒85.71秒26.42tokens/s
65,536 tokens101.60秒145.83秒23.26tokens/s

 このテストはキャッシュを無効にする指定で、入力を新たに処理する条件を測っている。入力が長くなるほど、最初の出力までの時間が延びた。65,536トークンでは約102秒を要しており、「長文を渡せる」と「すぐに返事が来る」は同じではない。

 長い資料やコードをまとめて扱う用途の候補にはなるが、その場合は読み込み待ちを含めた作業設計が必要だ。資料の要点抽出やコードの検討といった使い方を想定するなら、モデルの容量だけでなく、こうした初動の待ち時間も見ておきたい。今回の測定は速度テストなので、長文の読解精度まで確認したわけではない。

小型モデルの速度ではGeForce RTX 5090が優勢。64GBの価値は処理の幅にある

 UL Procyon AI Text Generation Benchmarkでは、比較機も含めて生成速度を確認した。

UL Procyon AI Text Generation Benchmarkの結果。Snapdragon X X1-26-100はPhi 3.5以外動作せず

 RTX SparkはPhi 3.5でSnapdragon X機の約5.2倍となり、一般的なArmノートからの大きな伸びが見られる。一方、GeForce RTX 5090機はRTX Sparkの約5.0~5.4倍。今回のように単体GPUのメモリ内で処理できるモデルなら、据え置きの強力なGPUがはっきり速い。

 「AI用のPCだから、どんなAIでもデスクトップより速い」というものではない。すでに高性能なGeForce搭載PCがあり、同じ場所で同じ小型モデルを回すことが目的なら、RTX Sparkに移る速度上の理由は乏しい。手元に持ち出し、より大きな作業領域を使って処理できることに意味がある。

 画像認識などの処理を見るAI Computer Vision 2.0 Benchmarkでは、RTX Sparkが3,966、GeForce RTX 5090機が16,255、Snapdragon X機が1,312だった。画像の分類や物体検出、セグメンテーションなどを含むAI処理を、ノート上で実行する基盤としての性能を示す結果だ。

AI Computer Vision 2.0の結果。RTX Sparkは3,966。Snapdragon機とは実行基盤と精度が異なるため、同条件でのGPU比較ではない

 ただし、RTX SparkとGeForce RTX 5090はTensorRT/FP16、Snapdragon XはNPU/INT8で測定している。精度と実行基盤が異なるため、GPUとNPUの純粋な性能比としては扱えず、参考程度にとどめてほしい。今回の画像認識テストでも、処理速度を最優先するならGeForce RTX 5090機が有利だった。

画像は十数秒から、5秒の動画は約69秒。素材の試作をその場で行なえる

 次は画像・動画生成だ。ComfyUIのワークフローを使い、ウォームアップ1回後に5回測定した。実行環境はComfy Desktop 1.1.7。低精度のNVFP4を利用するモデルを中心に試している。

【表3】ComfyUIのワークフローを使い、ウォームアップ1回後に5回測定
ワークフロー主な条件平均所要時間
FLUX.2 Klein base 4B NVFP41,024×1,024、20steps、CFG513.92秒
FLUX.2 Dev NVFP41,024×1,024、20steps、guidance440.18秒
LTX2.5 NVFP45秒、24fps、121フレーム、2段階処理68.88秒

 FLUX.2ではKleinなら約14秒、Devでも約40秒なので、プロンプトを調整しながらビジュアルの案を試す用途は考えやすい。客先や撮影先でイメージを具体化したり、記事やプレゼン用のラフを作ったりする処理を、ノートの中で行なえるわけだ。実際の公開素材として使う際の品質確認やモデルの利用条件の確認は必要になるが、試作の道具として扱える待ち時間と言える。

 LTX2.5では1,280×736を指定する生成段と2倍アップスケールを含む構成で、5秒分の動画・音声を生成した。平均約69秒は動画生成の試行を繰り返せる範囲と言える。ただし、動画の長さより処理時間は長く、リアルタイム生成を達成したという意味ではない。

 いずれもモデルや手順の異なるワークフロー全体の時間で、KleinとDevの画質をそろえた速度比較ではない。また、モデルを初めて読み込む時間はこの5回平均に含まれない。モデルの準備後に、同じ環境で生成を繰り返すときの目安として見てほしい。

FLUX.2 Klein base 4BのNVFP4ワークフロー。1,024×1,024ドット、20stepsで、ウォームアップ後の平均時間は約13.9秒だった
FLUX.2 DevのNVFP4ワークフローは平均約40.2秒。別のモデルによる画像案もノートPCだけで試せる
LTX2.5では5秒・24fpsの動画生成とアップスケールを含む処理が平均約68.9秒。短い映像案の試作も持ち運べるPCで行なえる

 標準化された画像生成テストも実施している。ProcyonのSDXLはFP16、1,024×1,024、100stepsで1画像平均24.09秒。MLPerf Client 2.0.1のFLUX.2 Klein 4B NVFP4は4stepsの条件で平均1.58秒、毎分37.98枚となった。こちらはexperimentalなDiffusers CUDA実装でのローカル測定であり、公式提出結果ではない。

 なお、同じ「画像生成」でも、モデル、steps、精度、実装次第で時間は大きく変わる。1.58秒と13.92秒の違いを、そのままソフトの優劣や画質の差と読むことはできない。自分が使いたいワークフローに近い条件で判断することが重要だ。

MLPerf Clientでの画像生成も実行。FLUX.2 Klein 4B NVFP4の4steps条件では平均1.58秒だった。ComfyUIとは生成条件が異なる

PhotoshopやPremiereのAI機能をローカル処理で使える

 生成AI用ソフトを単独で動かすだけでなく、普段の制作アプリに含まれるAI処理も試した。Photoshop Betaでは、削除ツールを生成AI ON、デバイス処理の設定で実行。ブラシで対象を指定する時間を除いて手動計時した。

 室内写真の手の像、黒い球、左右の植物の計4対象を一括削除したところ、11.89秒だった。電線が写る別の写真で電線を削除した場合は13.61秒となった。

 十数秒で結果を確認できるので、不要物の処理を写真編集の流れに組み込みやすい。しかもローカルでのAI処理となるため、ネットワークのない環境でも高度な削除ツールを使えるのは明確な強みだ。

Photoshopの削除ツールをデバイス処理で使用。手の像、黒い球、左右の植物を1回で削除する処理は11.89秒だった。対象を指定する操作時間は含まない

 Premiere Betaでは、音声を聞き取りやすくするEnhance Audioのデバイス処理が動作することを確認した。車が写る約29秒の素材を使ったオブジェクトマスクの処理は、初期化を含めて30.79秒。初期化がない再実行では14.69秒だった。高度なマスクの作成をクラウドAIに頼らず使えるのは頼もしい。

Premiere BetaのAI処理も動作。車を対象にした約29秒の素材のマスク処理は初期化込み30.79秒

Blenderでは描画だけでなく、編集時の待ち時間にも違い

 3D制作では、BlenderのOptiXによるGPUレンダリングを実行した。monsterが1,939.23、junkshopが1,493.87、classroomが1,381.57samples/minとなった。値が高いほど単位時間あたりに多くのサンプルを処理できる指標だ。

 Blenderの結果は、ノートPCの内蔵GPUとしては力強い。バージョンが異なるため参考比較になるが、公開ベンチマークに照らしても、単体GPUのミドルレンジに比肩する性能だ。最終レンダリングの速度を追求するなら上位GeForceが有利だが、出先でシーンを修正し、GPUレンダリングで結果を確認する用途なら十分検討に値する。

 V-Ray GPUも試し、RTXモードが2,941vpaths、CUDAモードが2,461vpathsとなった。同じベンチの中ではRTXモードが約19.5%高い。制作ソフトが利用する描画方式によっても性能が変わることが分かる。

Blender 5.3.0 BetaのOptiXで3シーンを測定(画面は5.2.0になっているが実行は5.3.0 Beta)。Windows Arm64環境でもGPUレンダリングを実行できた。公開スコアと比較する際はバージョンの違いに注意が必要だ
V-RayはRTXモードが2,941vpaths、CUDAモードが2,461vpaths

 さらに、BlenderのビューポートでDLSSとOptiXのデノイズを切り替えた。デノイズは、少ないサンプルで生じるノイズを抑えて、編集途中の見た目を確認しやすくする処理だ。

 Barbershopのシーンでは、タイムマーカーを移動したとき、OptiXでは正しく表示されるまで数秒待つのに対し、DLSSではすぐに表示を確認できた。HairStyleでも、レンダリング表示にした状態ではOptiXの反映に数秒を要する場面があった。今回はアップスケールを使わず、Upscale ModeをNoneとして比較している。

 これは応答時間を機器で測った結果ではなく、操作中の体感評価だ。それでも、シーンを調整しては見た目を確認する作業では、最終レンダリングの速さとは別に、こうした待ち時間の短さが効く。DLSSの効果をゲーム以外でも感じられた例と言える。

BlenderでOptiXとDLSSのデノイズを比較。Barbershopではタイムマーカー移動後の見た目の確認がDLSSの方が速いと感じた。定量計測ではなく操作時の所感で、アップスケールは無効としている

普段のCPU性能は高く、バッテリでもOfficeの落ち込みは小さい

 AI以外の性能も見ておこう。Cinebench 2026はCPUのレンダリング性能を測るベンチマークだ。

Cinebench 2026の結果

 このテストではN1XのマルチがRyzen 9800X3Dを約36%上回り、シングルも近い水準を確保した。20コア対8コアという違いはあるが、ノートでCPUレンダリングを行なう性能として力強い結果だ。あらゆるCPU処理やゲームでRyzen 9800X3Dより速いことを示すものではないものの、AI用として特殊な構成だから通常のCPU処理を我慢しなければならない、という結果ではない。

UL Procyon Office Productivityの結果

 Word、Excel、PowerPoint、Outlookを使うUL Procyon Office Productivityでは、総合6,840。Ryzen 9800X3D機の8,289には届かないが、Zenbookの4,721を約45%上回った。ExcelではN1Xが8,745、9800X3D機が8,066と順序が逆転しており、作業による得手不得手もある。

UL Procyon Office ProductivityのACとバッテリ駆動時のスコア

 バッテリ駆動に切り替えても、Office総合は6,528とAC時から約4.6%の低下にとどまった。Cinebenchもマルチ7,086、シングル538で、AC時とほぼ同水準だ。WindowsとProArt Creator Hubは、AC時、バッテリ時とも性能を優先する同じモードにしている。

 電源を抜くと普段の作業が急に重くなる、という心配が小さいのは持ち運ぶPCとして魅力だ。

ゲームは中画質ならWQHDで楽しめる

 RTX Sparkのゲーム性能については、2,560×1,440ドットでDLSS バランスと3倍フレーム生成を使い、実用的な画質設定での動作を見た。

【表4】ゲームベンチの結果
ゲーム主な画質条件平均fps
Cyberpunk 2077画質“レイトレーシング: 低”、DLSSバランス、フレーム生成3x138.1
Marvel Rivals画質“高”、DLSSバランス、フレーム生成3x149
DOOM: The Dark Ages画質“中”、DLSSバランス、フレーム生成3x、PT無効135.92

 フレーム生成を含む表示フレームレートとはいえ、3タイトルとも平均130fpsを超えた。AI作業だけでなく、空いた時間に中画質設定&WQHDでゲームを楽しめる描画性能も備えている。

Cyberpunk 2077はWQHD、DLSSバランス、3倍フレーム生成で平均138.10fps
Marvel Rivalsは画質高、DLSSバランス、3倍フレーム生成で平均149fps、1% Low106fps
DOOM: The Dark Agesの内蔵ベンチはWQHD/画質中、DLSSバランス、3倍フレーム生成で平均135.92fpsだった

 3DMarkも実行し、Port Royalが9,312、Solar Bayが55,815、Solar Bay Extremeが11,320、Speed Wayが3,025、Steel NomadのDX12が3,211となった。一部の3DMarkでは、デスクトップ版GeForce RTX 5060に近いスコアを示した。

Port Royalの結果
Solar Bayの結果
Solar Bay Extremeの結果
Speed Wayの結果
Steel Nomad(DX12)の結果

64GBを選ぶ価値はある。必要なモデルと持ち出す仕事を決めてから選びたい

 今回の64GB構成では、27BのLLMを約32tokens/sで動かし、65,536トークンの入力を処理するテストも実行できた。ComfyUIなら1,024×1,024の画像を約14秒から40秒、5秒の動画を作るワークフローも約69秒で処理した。写真の不要物除去や動画編集のAI機能、BlenderのGPU描画に加え、OfficeとWQHDのゲームまで1台でこなせる。

 こうした環境を持ち出せることが、RTX Sparkノートの具体的な価値だ。モデルや必要ファイルを準備しておけば、クラウドへ入力を送らずに処理する構成を組める。外部通信を伴うツールやサービスまで自動的にオフラインになるわけではないが、データの送り先を自分で管理しながら使える点は、仕事の内容次第で大きな意味を持つ。

 反対に、64GB版を「128GB版と同じことができる安い構成」と考えるのは避けたい。モデル本体だけで容量を使い切るような構成や、大きなコンテキスト、複数モデルと制作アプリを同時に使う運用では、余裕が必要になる。今回の27Bモデルも重みだけなら約16.45GBだが、実行時にはそれ以外のメモリを使う。ファイルサイズだけで必要な搭載容量を決めるべきではない。

 ただ、1つの量子化LLMや生成ワークフローを切り替えて使い、その範囲が必要なメモリに収まるなら、64GBは検討する価値がある。一方、使いたいモデルや同時実行数が増えると分かっているなら、128GBがいいだろう。

 速度を最優先し、据え置きで運用できるなら、今回の小型モデルの結果が示す通り、強力な単体GPUを選ぶ理由は十分ある。ゲームとOfficeが中心なら、大容量ユニファイドメモリを生かす機会は少ないだろう。RTX Sparkの64GB版が合うのは、ローカルLLM、画像や短い動画の生成、制作アプリを、出先でも同じPCで使いたい人だ。

 最大のモデルを動かすための容量ではなく、自分が必要とするAI処理を持ち運ぶための容量として64GBを見ると、この製品の立ち位置は分かりやすい。購入価格に見合うかは、その処理をどれだけ外に持ち出したいか、そして待ち時間を含めて仕事に組み込めるかで判断してほしい。