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鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第102回:12月6日~12月10日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


12月6日

■■プレクスター、SCSI接続の12倍速CD-R/RWドライブ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991206/plextor.htm

SCAM(SCSI Configuration AutoMatically)

スキャム、エスシーエーエム

 SCSI IDの自動設定を行なうためのプロトコル。
 SCSIは、複数のデバイスが1つのバスを使って、1対1のコミュニケーションを行なえるように設計されたインターフェイスである。コミュニケーションの際に、特定のデバイスを識別するために使われる番号(※1)をSCSI IDといい、各デバイス(※2)には、予め重複しないように一意のIDを設定しておかなければならない。オーソドックスなSCSIデバイスでは、ディップスイッチやジャンパなどを使い、ユーザーがこれを設定。通常はシステムの起動時にIDが1つ1つチェックされ、デバイスの有無が確認される(※3)

 SCAMは、この起動時のプロセスでIDを動的に割り当るプロトコルで、予め設定されているID(未設定のSCAMデバイスや再設定できないSCAM未対応デバイスも含む)をチェックし、SCAM対応デバイスに対して、重複しないように未使用のIDを割り当てていく。規格には、SCAMの全機能をサポートしたLevel 2と、一部の機能を省略した簡易版のLevel 1が規定されており、ANSI規格となっているSCSI-3 Parallel Interface(SPI)、およびSPI-2に付属書(annex)として盛り込まれている。

(※1)USBやIEEE-1394、Ethernetなどのシリアルインターフェイスでは、ID(あるいはアドレス)は、配送するパケットに付けられソフトウェア的に解釈されるものだが、SCSIやATA(IDE)、フロッピーディスクインターフェイスでは、信号線を使ってハードウェア的に操作する。ATAとFDDでは、そのためのセレクト信号が2本用意されており、1つのホストが2つのデバイスをサポート。SCSIでは、データバスの信号線をそのまま使用しており、8bitバスで8台、16bitバスで16台のデバイスをサポートする。

(※2)SCSIには、ホストという特別な存在はなく、任意のデバイス間でコミュニケーションが行なえるようになっている。PCのSCSIインターフェイスを一般にホストと呼んでいるが、実際にはHDDなどと同じSCSIデバイスの1つであり、他のデバイスと同様、SCSI IDを設定しなければならない(一般に7がセットされている)。

(※3)Windowsのデバイスマネージャで「更新」を行なうと、このチェックプロセスも実行され、SCSIデバイスが再構成される。

□SCSI関連のドキュメント(ドラフト規格等)
ftp://ftp.t10.org/t10/
□ANSI(American National Standards Institute~米国規格協会)
http://www.ansi.org/


12月7日

■■松下、デジタルアンプ内蔵のマルチメディアスピーカー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991207/pana.htm

A級/AB級アンプ(Class-A/Class-AB amplifier)
エーきゅう/エービーきゅうアンプ

 増幅回路の動作方式。
 電圧や電流、電力などのわずかな変化を、大きな変化として取り出す回路を増幅回路という。A級アンプは、トランジスタなどの入力対出力特性の中央に無信号時の動作点を置き、波形全体をリニアな部分だけを使って増幅する。無信号時の状態で一定の電力を供給し、そこを中心に動作させているので、忠実度は高いが電源効率は非常に悪い(※1)

 トランジスタの出力が0になる位置(カットオフあるいは遮断点)に動作点を置き、効率よく機能するようにしたタイプをB級アンプという。この場合、トランジスタは交流波形の半波分だけしか扱わないので、オーディオアンプとして機能させるためには、もう半波分を特性のそろった別のトランジスタで増幅して出力を合成する、プッシュプル(push-pull)回路というスタイルをとる。こうすることによって、高効率化(※2)が実現できるのだが、特性がノンリニアなカットオフ付近まで使用してしまうため、半波のつなぎ目付近に歪(クロスオーバー歪という)が生じてしまう。一般的なオーディオアンプでは、この歪を低減するために、わずかなアイドル電流を流してノンリニアな部分が相殺するように動作させている。すなわち、動作点をB級から少しだけA級側に移動し、特性のノンリニアな部分をA級動作させるようにしたタイプで、これをAB級と呼んでいる。

(※1)無音時も最大出力時もほぼ一定の電力を消費するので、出力が小さくなればなるほど損失が増大し、損失分が熱として放出されることになる。

(※2)トランジスタは2つになるが、一方が動作しているときにはもう一方は無信号状態であり、無信号時には基本的に電力を消費しないので、大出力が効率よく取り出せる。


D級アンプ(Class-D amplifier)
ディーきゅうアンプ

 スイッチング動作を使った増幅回路の動作方式。

 オーディオアンプなどに使われている一般的な増幅回路が、トランジスタなどのリニアな増幅動作を利用したタイプであるのに対し、D級アンプは、スイッチング動作というデジタル的な手法を使って増幅を行なう。

 スイッチングは、単純に電源をON/OFFするためのスイッチ回路と考えてよい。スイッチは、閉じると最大の電力が供給され開くと0になる。このON/OFFを、同じインターバルで繰り返すと、半分の平均出力が得られ、ONの時間が長ければ大きな、短ければ小さな出力となる。D級アンプは、このON/OFFの比率によって、得られる平均出力の変化を利用したアンプである。

 信号の大小に応じて、スイッチの開閉比率を制御するために、入力信号は通常(※1)、レベルに応じてパルスの幅を変えるPWM(Pulse Width Modulation)で変調(※2)。増幅後に、LPF(Low Pass Filter~低域フィルタ)を通してアナログ信号を復調する仕組みになっている(※3)

 D級アンプは、B級アンプよりもさらに効率的な増幅が行なえるものの、これまでは、周波数特性やクロスオーバー歪、輻射ノイズなどの点でオーディオアンプには不利とされてきた。しかし最近になって、優れたデバイスが開発されるようになり、特に消費電力や発熱量が低いことから、カーオーディオを中心に採用するメーカーも多い。

(※1)Tripath Technologyが開発したD級アンプでは、スペクトル拡散に似た独自の変調方式を用いており、同社ではこれをClass-Tと呼んでいる。

(※2)入力信号がデジタルであれば、そのまま変換して増幅後の最終段階で復調する、完全なデジタルアンプを構成することも可能だし、SACD(Super Audio CD)に使われているデルタシグマ変調方式のビットストリームは、そのままスイッチング制御を行なうための信号として利用できる。

(※3)D級出力で直接駆動するスピーカーも開発されている。

□Tripath Technology, Inc.
http://www.tripath.com/


12月8日

■■富士写真フイルム、小型軽量の防水防塵デジタルカメラ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991208/fuji.htm

JIS保護等級
ジスほごとうきゅう

 JIS C-0920に規定される防水防塵仕様の等級。

 防水防塵設計のデジタルカメラなどでは、その程度を表すために、JIS(Japan Industrial Standard~日本工業規格)規格の「電気機械器具の防水試験及び固形物の浸入に対する保護等級」で規定される名称や等級を用いることが多い(※1)。例えば、防水仕様に関しては、JISでは以下のように規定している。

【防水の種類と意味】
保護等級種類説明
0無保護のもの
1防滴I形鉛直から落ちてくる水滴によって有害な影響がないもの
2防滴II形鉛直から15度の範囲で落ちてくる水滴によって有害な影響がないもの
3防雨形鉛直から60度の範囲の降雨によって有害な影響がないもの
4防まつ形いかなる方向からの水の飛まつを受けても有害な影響がないもの
5防噴流形いかなる方向からの水の直接噴流を受けても有害な影響がないもの
6耐水形いかなる方向からの水の直接噴流を受けても内部に水が入らないもの
7防浸形定められた条件で水中に没しても内部に水が入らないもの
8水中形指定圧力の水中に常時没して使用できるもの
-防湿形相対湿度90%以上の湿気の中で使用できるもの

(※1)IEC(International Electrotechnical Commission~国際電気標準会議)の国際規格にも(IEC-529)、同様のものが規定されている。

□JIS(Japan Industrial Standard)
http://www.jsa.or.jp/
□IEC(International Electrotechnical Commission)
http://www.iec.ch/


■■後藤弘茂のWeekly海外ニュース
  IntelがAMDに対抗してPentium IIIを933MHzまでアップ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991208/kaigai01.htm

FC-PGA(Flip Chip PGA[Pin Grid Array])
フリップチップピージーエー、エフシーピージーエー

 ソケット式(Socket 370)のCeleronやPentium IIIに採用されている、CPUパッケージ(チップの筐体)。

 CPUのような入出力ピンの多いチップでは、パッケージの裏面にピンを並べた、剣山のような形のパッケージが用いられることが多い。このようなタイプをPGA(Pin Grid Array)といい、IntelのCPUでは、386からこのスタイルを採用。Pentium IIからは、スロット式のカートリッジが用いられるようになったが、現在は再びPGAに戻りつつある。

 Intelが使用した歴代のPGAパッケージには、仕様の若干異なるタイプがいくつかあり、その都度新しい名称がつけられている。

【参考】
□Socket 370
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990210/key64.htm#Socket_370
□色々なパッケージ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980113/key13.htm#SPGA

[Text by 鈴木直美]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp