■ インデックス
■ '99年2月に待望の200万画素モデルが登場
■ 変貌する130万画素クラス
■ '99年のデジタルカメラのポイントは総合力だ!
■ デザイン・質感・操作感がポイントに
これまでは、主にCCDの画素数を中心に今年の展望を見てきたが、これはデジタルカメラにとって重要ではあるが一つの要素にすぎない。
むしろ、今年以降は、カメラのデザインや質感、操作感や軽快さといった、カメラとしての総合力がよりクローズアップされてくる。これは昨年や今年のように、CCDなどキーデバイスでの差別化が難しい状況下では、大きなアドバンテージとなるからだ。
まず、デザイン面では、二極化の方向に向かう。ひとつは、「オリンパス C-900ZOOM」や「キヤノン Power-shot A5 ZOOM」に代表される「コンパクトカメラ風」デザイン、もうひとつは「富士フイルム FinePix700」や「ソニー Cyber-shot DSC-F3」「カシオ QV-10」などデジタルならではのデザインだ。
おそらく、今年はこの両方のデザイン志向のモデルが、さらに完成度を高めて登場してくる。そして、どちらもより洗練された形で生き残ることだろう。
コンパクトカメラ風デザインのC-900 ZOOMとPowerShot A5 Zoom。 | デジタルならではのデザインを採用したFinePix700、Cyber-shot DSC-F3 |
また、今年はカメラの小型軽量化が加速するとともに、カメラをきちんとホールドするにはある程度のサイズが必要なため、極端な小型化よりも薄型化のほうに注目が移ってゆく可能性が高い。
カメラの質感も今後重要視されるポイントだ。昨年はアルミ外装の「FinePix700」や「三洋電機 DSC-X100」、ジュラルミン外装の「Power-shot A5」、マグネシウム外装の「三洋電機 DSC-SX1Z」などが登場し、それぞれ好評を博した。これら金属外装はカメラの質感を向上させるひとつの手段であり、今後もメタルボディー採用機が続々登場することが予想される。
しかし、プラスチック外装で高品位な質感を表現しているモデルは少ない。今後、量産と低価格化が進むうえで、プラスチック外装は必須となる。また、プラスチックでしか表現できない微妙な曲面デザインもある。そのため、今年はプラスチック外装で高品位なモデルが登場してくる可能性もあるわけだ。
操作性は、残念ながら現行機で満足できる仕上がりのモデルは皆無。実はこの点が、現在のデジタルカメラで最も遅れている点ともいえる。昨年は各モデルともに、機能の充実に主眼がおかれ、それをきちんと使いこなせるだけのインターフェイスを用意することができていなかった。
簡単にパッと撮影できる点や、わかりやすい操作性という点では、一昨年あたりのモデルよりも後退している部分すらある。このあたりは今年のモデルに期待したいところだが、まだ、各社とも試行錯誤が続くような気がしてならない。
■ 起動時間、記録時間とも2秒台へ
今年最も期待されるのが、軽快感の向上だ。わかりやすいところでは、メインスイッチONから撮影準備が完了するまでの起動時間、さらに1枚撮影してから次のコマが撮影できるようになるまでの記録時間(待ち時間)などが挙げられる。
昨年は、記録時間の面では大きな進展が見られた。「カシオ QV-770」や「三洋電機 DSC-V100」「同DSC-X100」といった、ほとんど“記録待ち時間なし”の高速モデル、さらに高価格モデルでは大容量バッファーメモリの搭載で、高画素モデルながらも実質的な待ち時間を感じずに連続撮影ができるモデルも登場した。また、起動時間も高速化が図られ、3秒前後で撮影できるモデルも登場した。
そして今年は、画素数を問わず、起動時間2秒、待ち時間は大容量バッファー未搭載で2秒、搭載機ならば200万画素モデルでも5枚連写までOK(その後の記録待ちも5秒以内)というレベルは達成されると思われる。
このほか、液晶ファインダーのレスポンスは、明るいシーンではリアルタイムが常識になるのはいうまでもない。また、暗いシーンでも液晶表示についても新しい提案がなされるべきだろう。
また、これまで軽視されていた、シャッターのタイムラグ(シャッターボタンを押してから、実際に写るまでの時間差)の短縮化、液晶ファインダーの視野率向上、実効感度の向上による手ブレの軽減、日中や夕景・夜景バックでのストロボ調光レベル向上なども、大いに期待したい。
画質面でも、単なる高解像度だけではなく、自然で見栄えのする色調、幅広く破綻のない階調再現、どんな条件下でもきちんと写る正確な露出制御、的確なオートホワイトバランスといった部分への要求が高まることは必至だ。
■ 光学5倍ズームの時代へ
レンズは昨年、3倍ズーム機が続々登場し常識化した感がある。だが、これらの大半は35mmカメラ換算で35~105mm前後相当であり、狭い屋内やスナップ撮影ではワイド側が物足りない感じもある。また、望遠側ももう少し欲しいというのが本音だ。
その点では、昨年登場したモデルでは、「ソニー Cyber-shot PRO」の5倍ズーム(28~140mmレンズ相当)搭載は、ひとつの解答といえる。また、同じく「ソニー デジタルマビカ MVC-FD91」の光学手ブレ補正機能搭載の光学式14倍ズームも魅力的なアプローチだ。
そして、おそらく今年も3倍ズームが主流になるが、後半には他社からも5倍程度の高倍率ズーム搭載機が登場してくる可能性がある。近い将来は、現状のズーム付きコンパクトカメラの高倍率競争に似た状況が訪れるかもしれない。
■ 注目の動画サポート
最後に、今年注目したい機能として、動画のサポートが挙げられる。昨年はデジタルカメラの世界にとって、まさに“動画元年”だった。
実際には'97年の「ソニー Cyber-shot DSC-F3」あたりから始まっており、違ったアプローチとして「日立 MP-EG1」のようなモデルも登場していた。それが'98年入ってからは「カシオ QV-770」「同QV-5000SX」が登場。三洋電機も「DSC-V100」での5秒間の音声付き動画にはじまり、「DSC-X100」ではそれが最長60秒までのびた。そしてソニーは、デジタルマビカシリーズでFDに60秒の音声付き動画(MPEG)を記録するという快挙を成し遂げた。
今年は、これらのメーカーがより本格的に動画へのアプローチを繰り広げるに違いない。とくに、家電系のソニーと三洋のデットヒートは大いに期待できそうだ。これはカメラ系メーカーとの差別化にもなるうえ、来るべきデジタル家電の時代への大きな布石になる。
とくに、昨年秋のCOMDEXでみせた、ソニーのメモリースティックを中心としたデジタル家電機器のトータルソリューションや、水面下で盛んに展開していた「セットトップボックス」や「ホームサーバー」関連の提携などを見ていると、近い将来、デジタルカメラで撮影し、その画像を各家庭にあるホームサーバーに記録し、テレビで楽しんだり、デジタル回線経由で気軽に通信するといった世界が現実のものに思えてくる。そのときのデジタルカメラは、静止画だけでなく、動画や音声記録もサポートしたものになるだろう。(その第一弾として、今回のCESでは、画像がらみでのセットトップボックスやホームサーバー系の発表やデモが行なわれると、私はにらんでいる)
ここ数年のソニーや三洋など家電系メーカーの動画へのアプローチは、その来るべきデジタル家電の時代がターゲットになっているのはいうまでもない。
また、日立も、今年発売されるCF Type2規格の340MBのHDD「IBM マイクロドライブ」を採用した、小型で静止画も撮れるMPEGカメラを発表することだろう。もちろん、将来的には松下やビクター、シャープなども、非テープメディアでの動画対応モデルを登場させるだろう。
カメラメーカーでも、キヤノンやオリンパスなどは、この分野に興味を持っていると思われるため、これらのメーカーから動画対応のデジタルカメラが登場する可能性も十分にある。カシオもやや違ったアプローチで動画対応をより明確に打ち出すと思われる。
このように、'99年は、デジタルスチルカメラ側からの動画対応が明確になり、新しい分野を確立する可能性も十分にある。
■ やがてデジタルカメラは普通の“カメラ”になる!
デジタルカメラは近い将来、パソコンにも入力できる“家庭用カメラ”になる。つまり、これ一台で、普通のスナップも、簡単な動画も撮れ、それをテレビで見たり、プリントして楽しんだり、インターネットを通じてやりとりしたり、パソコン上で活用することもできる、ごく普通の“カメラ”になるわけだ。しかも、ただ便利なだけでなく、誰もが気軽に“楽しめる”、素敵な日常ツールへと成長する。
「2001年、デジタルカメラの市場は世界規模で年間1,000万台レベルになる」と予測しているメーカーがある。遅く予測しているメーカーでも2003年から2005年にはそのレベルになるという。
昨年全世界でおよそ350万台レベルといわれているだけに、あと2年ではやや早過ぎる感じもある。だが、現時点ではまだデジタルカメラはPCユーザー中心であり、欧米ではパーソナルな市場が開花していない現在でも、これだけの販売台数を実現していると考えることもできる。先進国でパーソナル市場が開花し、デジタル家電との連携がうまく取れ、プリント環境がきちんとそろえば、デジタルカメラは一気にブレイクする可能性は大いにある。
QV-10。デジタルカメラはここから初まったといえる。 |
('99年1月5日)
[Reported by 山田 久美夫]