Athlon 1.1GHzの実力を探る
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既に先月末からAthlon 1.1GHzが秋葉原市場に出回っている。先月はAMDから提供を受けたAthlon 1.1GHzのリファレンスマシンのレビューを行なったが、今回は出荷されたAthlon 1.1GHzを利用して、従来のAthlonとの比較を行なってみよう。
●特に大きな変更はないがL1は切断済み
今回編集部で入手したのは実際に市販されているAthlon 1.1GHzで、基本的には以前このコーナーでもレビューしたAthlon 1GHzの高クロック版だ。見た目にも大きな変更はないものの、このAthlon 1.1GHzは以前に入手したAthlon 1GHzとは異なっている部分があった。
それが「L1」と呼ばれる部分で、従来のAthlon 1GHzがこの部分が接続されていたのに対して、今回入手したAthlon 1.1GHzでは切れていたのだ。ただ、これはAthlon 1.1GHzに限った話ではなく、最近出荷されているAthlonはほぼ切れている。実はこの部分は「クロック倍率可変」に関係するスイッチであることが知られており、このL1が切れている場合にはクロック倍率は可変できないのだ。既にAthlonユーザーのサイトなどでは、このL1部分を鉛筆で書いて接続し、強引にクロック倍率可変にする事が流行しているようだ。試しにクロック倍率を変更できるABIT COMPUTERのKT7-RAIDで試したみたところ、確かにこのL1が切断されたAthlon 1.1GHzではクロック倍率は変更できなかったが、Athlon 1GHzではクロック倍率を変更することができた。
Athlon 1.1GHzのL1部分。横に黒い線が入っており、切れているのがわかる | Athlon 1GHzのL1部分。L1は切れていない |
●マザーボードにはABIT COMPUTERのKT7-RAIDを利用
KT7-RAID |
また、SoftMenu IIIと呼ばれるABITお得意のBIOSセットアップでCPUのシステムバスクロック、倍率、コア電圧などを変更する機能が搭載されており、L1が接続されている場合にはクロック倍率の変更もできる。L1が接続されている場合にクロック倍率を変更できるマザーボードとしては、ASUSTeK COMPUTERのA7Vが最もメジャーだが、最近ではこうしたBIOSで設定できる製品も増えつつある。
●パフォーマンスはクロックなりの結果
今回はCPUベンチマークとして、BAPCOのSYSmark2000、Ziff-Davis,Inc.のWinBench99 Version 1.1に含まれるCPUmark99/FPU WinMark、MadOnion.comの3DMark2000、Ziff-Davis,Incの3D WinMark2000に含まれるProcessor Testを実行してみた。テスト環境は以下の通りだ。
【テスト環境】
マザーボード:ABIT KT7-RAID
メモリ:PC133 SDRAM(128MB)
ハードディスク:IBM DTLA-307030
ビデオカード:ABIT Siluro GF256 GTS 64MB DDR(GeForce2 GTS、64MB DDR SDRAM)
解像度:1,024×768ドット(32bitカラー、75Hz)
OS:Windows 98 Second Edition+DirectX 7a
○SYSmark2000
BACPOのSYSmark2000はWordやExcel、PowerPoint、Photoshopといった実在のビジネスアプリケーションやハイエンドアプリケーションのコードを利用してパフォーマンスを計測するアプリケーションベンチマークで、現在もっとも標準的に利用されているベンチマークテストだ。基本的にはAthlon 1GHzと比べるとクロック分だけ上がっており、順当な結果といえる。
Overall | Internet Content Creation | Office Productivity | |
---|---|---|---|
Athlon 1.1GHz | 194 | 193 | 195 |
Athlon 1GHz | 183 | 182 | 184 |
Athlon 950MHz | 177 | 176 | 178 |
Athlon 900MHz | 171 | 170 | 172 |
Athlon 850MHz | 165 | 163 | 166 |
Athlon 800MHz | 160 | 158 | 161 |
1 Bryce 4 | 2 CorelDraw 9 | 3 Elastic Reality 3.1 | |
---|---|---|---|
Athlon 1.1GHz | 255 | 260 | 249 |
Athlon 1GHz | 242 | 238 | 224 |
Athlon 950MHz | 231 | 229 | 221 |
Athlon 900MHz | 226 | 220 | 206 |
Athlon 850MHz | 211 | 210 | 197 |
Athlon 800MHz | 207 | 198 | 191 |
4 Excel 2000 | 5 Naturally Speaking Pref 4.0 | 6 Netscape Communicator |
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---|---|---|---|
Athlon 1.1GHz | 208 | 151 | 186 |
Athlon 1GHz | 196 | 144 | 178 |
Athlon 950MHz | 193 | 140 | 166 |
Athlon 900MHz | 183 | 137 | 161 |
Athlon 850MHz | 175 | 131 | 157 |
Athlon 800MHz | 169 | 131 | 152 |
7 Paradox 9.0 | 8 Photoshop 5.5 | 9 PowerPoint 2000 | |
---|---|---|---|
Athlon 1.1GHz | 191 | 123 | 213 |
Athlon 1GHz | 184 | 118 | 200 |
Athlon 950MHz | 177 | 115 | 195 |
Athlon 900MHz | 172 | 111 | 185 |
Athlon 850MHz | 168 | 109 | 179 |
Athlon 800MHz | 161 | 104 | 172 |
10 Premiere 5.1 | 11 Word 2000 | 12 Windows Media Encoder 4.0 |
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---|---|---|---|
Athlon 1.1GHz | 194 | 171 | 178 |
Athlon 1GHz | 185 | 164 | 169 |
Athlon 950MHz | 180 | 160 | 160 |
Athlon 900MHz | 175 | 157 | 157 |
Athlon 850MHz | 167 | 153 | 152 |
Athlon 800MHz | 161 | 151 | 148 |
○CPUmark99/FPU WinMark
CPUmark99はCPUの整数演算能力を計測し、FPU WinMarkは浮動小数点演算能力を計測するベンチマークテストで、やはりCPUの性能を計測する際に標準的なベンチマークとして利用されている。こちらでもクロックなりの結果となっており、順当な結果といえる。
CPUmark99 | FPU WinMark | |
---|---|---|
Athlon 1.1GHz | 93.5 | 6,000 |
Athlon 1GHz | 86.4 | 5,450 |
Athlon 950MHz | 83.0 | 5,180 |
Athlon 900MHz | 79.5 | 4,910 |
Athlon 850MHz | 76.0 | 4,640 |
Athlon 800MHz | 72.5 | 4,360 |
○3DMark2000/3D WinBench Processor Test
3DMark2000は、3Dの描画性能を計測するベンチマークで、グラフィックス周りも含めた総合的な3D描画性能を計測する。3D WinBench2000に含まれるProcessor Testは、3D描画時のCPU処理能力を計測するテストで、3D描画に利用されるCPUの処理能力を計測できる。こちらもクロックなりの上がり方で、特に大きな変化はない。
3DMark2000 | 3D WinBench/ Processor Test |
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---|---|---|
Athlon 1.1GHz | 3,041 | 1.83 |
Athlon 1GHz | 3,024 | 1.68 |
Athlon 950MHz | 3,018 | 1.64 |
Athlon 900MHz | 3,009 | 1.57 |
Athlon 850MHz | 3,001 | 1.51 |
Athlon 800MHz | 2,992 | 1.44 |
●値段も下がったAthlon 1.1GHzは魅力的な選択肢である
以上のような結果と、Athlon 1GHzとPentium III 1GHzの間にほとんど性能差がなかったことを考えると、Athlon 1.1GHzが現時点での最高性能を持つCPUであることは間違いないと言っていいだろう。しかも、Athlon 1.1GHzの価格は、先週末の時点で7万円台半ばと、以前に比べると価格が下がってきている。
ただ、Athlon 1GHzとは2万円強の価格差があり、コストパフォーマンスを考えると、Athlon 1GHz、950MHz、900MHzなどがお奨めだが、それでも最高性能をこの値段でと考えれば、決して高いものではない。メールやオフィスアプリケーションを使う標準的なユーザーではさほどメリットはないだろうが、フォトレタッチや動画編集ソフトなどをバリバリ使いこなすパワーユーザーであれば、Athlon 1.1GHzは大変魅力的な製品と言っていいだろう。
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【8月19日】価格改定でAthlon 1GHzが5万円台へ、1.1GHzも同時デビュー
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000828/hotrev77.htm
【7月10日】L2キャッシュオンダイのAthlon 1GHzがついに登場!
~再びPentium III 1GHzと決戦!
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000710/hotrev70.htm
(2000年9月29日)
[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]