山田祥平のRe:config.sys

Let'snoteはどこにいくのか




 パナソニックがLet'snoteのラインアップを刷新、新たに“8”シリーズを発表した。従来の、R、T、W、Yに加えて、FシリーズとしてF8を追加、新たなスタイルのモバイルコンピューティングを提案するという。

●PCを裸で持ち歩くというスタイル

 大画面モバイルというのは確かにモバイルカテゴリの空白エリアだと思う。手元にあるノートPCのうち、もっとも大きなモニタディスプレイを持つのはMacBook Proの17型モデルで重量は3.06Kgある。でも、これだけ大きなディスプレイがあれば、出張先のホテルなどで使うとすごく快適だし、ミーティングなどでのプレゼンテーションでも便利だ。それに対して、新たに追加されたLet'snoteのF8は14.1型ワイドで1.63Kg。個人的には17型ワイドで2Kgを切るというところまでがんばって欲しかったが、2Kgという重量では、モバイルを目指すPCとしては重すぎるという判断らしい。

 いずれにしても、F8の最たる特徴は、持ち運び用のハンドルがついたところだ。本体シャーシと一体化されているため、もげるといったことは考えられず、同社の堅牢ノートであるタフブックと同等の強度を持っているという。そして、このハンドルをつけたというのは、PCは裸で持ち歩いてもいいのだというパナソニックからの提案であるととらえたい。

 そもそもPCはあまりにも過保護にされている。量販店に行けば、プロテクタ素材のインナーケースが迷うほどたくさん売られているし、多くのユーザーは、ノートPCをそれに入れ、さらにカバンに収納して持ち運んでいる。もしかしたら、カバンとインナーケースの重量の方がPCよりも重いかもしれない。それに、いざノートPCを使おうと思うと、中身を取り出すのに時間がかかる。さらに、多くのユーザーは、スリープ機能を使わずに、OSをブートストラップする。そのめんどうくささを考えると、結局、移動中にはPCを使わないということになってしまうわけだ。

 F8はサイズ的に移動中の使用ということは考えられてはいないと思うが、裸で持ち歩き、使いたいときに使うというスタイルを提案した姿勢は評価したい。PCを持ち運びを提案するために軽量、タフ、長時間を提供することがLet'snoteのDNAだったわけだが、その持ち運び方はユーザーにゆだねられていた。ソリューションというにはちょっと大げさかもしれないが、こういうスタイルを提示したというのは、ちょっとした前進だし、タフさの自信の表れでもある。

●NetbookのトレンドはLet'snoteを変えない

 F8の斬新さに対して、他のR8、W8、T8はCentrino2への移行、Y8はプラットフォームさえ以前のままだ。ぼくは、以前、RサイズのPCにカメラのストラップをつける吊り金具をつけて欲しいとリクエストしていたが、今回も、それはかなわず、ボディ等に変更点は見あたらない。Montevinaの貢献によって、中身は別物といってもいいくらいなのだが、ちょっと寂しい気もする。

 そして、ここのところのNetbookブームである。本来なら、この領域は、Let'snoteのRシリーズが仕切ってきた領域だ。地道に製品をブラッシュアップしながら、本当のモバイルを追いかけ、そのカテゴリでの実績を積んで、お膳立てが整いそうになったところで、鳶に油揚げをさらわれそうになっているようにも見える。

 でも、個人的には、このトレンドは、PCを持ち運び、移動中にも使うようなユーザーを結果として増やし、それらのユーザーのうち、何割かがLet'snoteのようなPCを再選択するきっかけになると楽観的に考えている。そのためにも、Let'snoteはさらに軽くならなければならないし、さらに高性能にならなければならない。そして、さらに長時間バッテリ運用できるようにならなければならない。そうでなければ、Netbookでモバイルを知ったユーザーが、Let'snoteを再選択する理由がなくなってしまう。Netbookが3~4台くらい買えてしまいそうな価格を維持するためには、それ相応の付加価値が必要で、それは独りよがりなものではなく、誰もが認める提案として提示されなければならない。

●Montevinaの著しい貢献

 今日の発表会後、Let'snoteの企画開発関係者に話を聞く機会があって、今後のLet'snoteの進化の方向性についてたずねてみた。

 まず、Centrino2採用はIntelのロードマップに基づく正常進化であるとする。Montevinaの貢献は著しく、体感的には1.4倍程度のパフォーマンス向上を果たしたという。ちなみにRシリーズはバッテリ駆動時間が30分伸び、さらに放熱構造を見直すことができたため、わずか10gとはいえ軽量化し、また、メモリもSO-DIMMを使えるようになった。開発メンバーも、久しぶりに、とてもいいプラットフォームだと実感したという。省電力に関しては、いかにこまめに供給する電力を切るかが重要で、ソフトウェアのみならずBIOSなどが一体化して実現、まさに知恵の結集だったという。Windows XPは長年使われてきたこともあり、省電力に関しては枯れ尽くした面もあったが、現時点でそこに匹敵するくらいにVista SP1での省電力がキャッチアップできたということだった。

 パナソニックとしては、Netbookの市場を無視しているわけではない。きちんとウォッチはしながらも、Let'snoteの基本はビジネスであり、ビジネスのツールとしてとして使い物になるかどうか、さらには、アフターサービス、保守、カスタマイズなどの点でかゆいところに手が届くかどうかを考えたときに、低価格な機器ではそれがなかなか難しいとする。

 つまり、プロの使うギアとしてビジネスマンが使って満足できるPCを目指すところに、Let'snoteの価値があり、Netbookとバッティングすることがないはずだと判断しているそうだ。実際、Let'snoteの半分以上が法人ユーザーなので、Netbookトレンドによる経営的なインパクトは見つからないということだ。

 最近のHPやデルがコンシューマー市場に驚くほど熱心であることは周知の事実であり、彼らもまたNetbook、あるいは、それに近いカテゴリに参入している。だが、そこを主戦場にしてしまったらLet'snoteは負けだということなのだろう。

□関連記事
【9月25日】パナソニック、Let'snote初の14.1型ワイド「Let'snote F」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0925/pana3.htm
【9月25日】パナソニック、Let'snote新製品発表会
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0925/pana1.htm
【7月16日】インテル、新モバイルプラットフォーム「Centrino2」を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0716/intel.htm

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(2008年9月26日)

[Reported by 山田祥平]


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