NVIDIAが3月18日(米時間)に発表したチップセット「nForce 790iシリーズ」は、Intel向け製品として、昨年11月に発表された「nForce 780i SLI」から、半年を経ずに投入されたが、DDR3 SDRAM対応という大きな進化を遂げている。この製品のパフォーマンスをチェックしてみたい。 ●1,600MHz FSB&DDR3-2000に対応するnForce 790i Ultra SLI 今回発表されたnForce 790iシリーズは、2製品がラインナップされる。従来製品との比較は表1にまとめているが、もっとも大きな変更点はDDR3 SDRAM対応となった点だ。なお、このメモリの違いもあるためか、nForce 780i SLIは生産終了にはならない。nForce 780i SLIの上位モデルとして、nForce 790iシリーズがラインナップされる格好となる(図1)。
【表1】nForce 700iシリーズの仕様
また、nForce 790iシリーズは、1,600MHz FSBのCPUも正式にサポートする。すでに投入が予告されている、1,600MHz FSBのCPUとしてはCore 2 Extreme QX9770があり、最上位のCPUをサポートすることが、プレミア機能の1つとなっている。 nForce 790i/780iのブロックダイヤグラムを図2、3に示したが、nForce 780i SLIでは別チップで供給されていたPCI Express 2.0対応のスイッチチップ「nForce 200」を、SPPに内蔵した。nForce 200はマルチビデオカード環境に合わせたスイッチチップとして、GPU間通信に関するいくつかの機能を持っている。これを内蔵したことで、名実ともに“PCI Express 2.0ネイティブ対応チップセット”としての立場を確立したことになる。
そもそも、nForce 780i SLIのSPPは、従来のnForce 680i SLIのSPPと同一の設計となっていた。DDR2 SDRAMサポートに留まる同チップセットであれば、最新CPUに適応できる電力設計を示すことと、3-way SLIを含むマルチビデオカード環境の最適化という点だけに注力したもので十分だったのだろう。 今回のnForce 790iシリーズは、DDR3 SDRAMに対応するメモリコントローラをSPP内に設けることになるため、チップ自体を新規に設計しなければならない。このタイミングでPCI Express 2.0インターフェイスをワンチップに統合するというのは納得できる。 nForce 790iシリーズ内の違いは、最上位モデルとなる「nForce 790i Ultra SLI」は、DDR3-2000相当のメモリ動作を可能としている点が特徴で、それ以外の機能はまったく違いがない。 このDDR3-2000動作は、オーバークロック動作という扱いにはなるが、「SLI Ready Memory」としてメモリメーカーから投入されることになっている。例えば、Crucialの「Ballistix」、CORSAIR Memoryの「DOMINATOR(TW3X2G2000C8DFNV)」、OCZ Technology「OCZ PC3-16000 NVIDA SLI-Ready Edition」といった製品が発表されている。 SLI-Ready Memoryは、DDR2 SDRAMにも存在していたが、これはメモリパラメータなどを記録しているSPDの領域に、EPP(Enhanced Performance Profiles)と呼ばれる追加プロファイルを記録したものである。NVIDIAでは、DDR3 SDRAMに対応したEPP2.0という規格を新たに提唱(図4)しており、DDR3-2000対応モジュールは、このEPP2.0に対応したメモリということになる。 似たような規格としてIntelがDDR3 SDRAMに対応した拡張メモリプロファイル「XMP(EXtreme Memory Profile)」を提唱しており、Intel X38/X48 Express搭載マザーボードで利用することで、メモリのオーバークロック動作が可能になる。NVIDIAのEPP2.0はDDR3向けとしては後発となるが、対応チップセットが最高2GHzというインパクトある値を達成しているのが大きな特徴といえるだろう。この具体的な挙動については、後ほど紹介する。
●nForce 790i Ultra SLI搭載マザーボードとOC機能を見る 今回テストに使用するのは、すでにGeForce 9800 GX2の記事でも紹介したXFXのnForce 790i Ultra SLI搭載製品である(写真1)。NVIDIAのリファレンスデザインに準拠したものとなる。オーバークロック機能を売りとするだけあって、オンボード上にPOSTコード表示LEDや、電源/リセットスイッチなどを備えたものとなっている(写真2)。このレイアウトはまったく新しいものとなっており、XFXのnForce 780i SLI搭載製品と比較しても、インターフェイスの配置などが大きく異なることが分かる。
また、チップセットとVRMを冷却するクーラーも、CPUソケットを取り囲む形状のものへ変更されたほか、SPPのヒートシンクも大型化された。ヒートシンクのみのパッシブクーリングも可能だし、付属のファンを取り付けることでアクティブクーリングを行なうことができるあたりは、nForceのリファレンスマザーボードらしい特徴といえる(写真3、4)。
インターフェイスに目を向けてみると、まずI/Oリアパネル部にeSATAを備えたのが特徴といえる(写真5)。これはチップセット内蔵SATA機能とは別に、JMicron製チップによって供給されている。写真2に示したPCI Express x1スロットの上部にあるSATA端子と併せて、2系統のSATAをこのチップで追加している。リファレンスマザーボードでeSATAを備えたのは、NVIDIA製品としては初めてとなる。 オンボードインターフェイスはSATA×2ポートとFDDポートを、ボードのエッジ部に装備するあたりが特徴となるだろう(写真6)。大型ケースを利用することが多いであろうハイエンド製品なら、この配置でもケースと干渉することはないし、むしろ配線を行ないやすくメリットがありそうだ。
今回のテストで使用するメモリも紹介しておきたい。今回のテストでは、DDR3-2000動作が可能なCrucial製のSLI Ready Memory「Ballistix」を使用する(写真7)。先述した通り、このメモリモジュールはSLI Ready Memoryに準拠したもので、DDR3-2000(9-9-9-28)での動作が可能だ。この時の動作電圧は1.9Vとされている(写真8、画面1~2)。DDR2 SDRAMのSLI Ready Memoryは、DDR2-1200が2.1~2.2V程度で、定格動作時の電圧が1.5VとなったDDR3 SDRAMによって、より低い電圧で高いクロックを生み出せるようになっているメリットを感じる。 SLI Ready Memoryを有効にする手順は、従来のDDR2版SLI Ready Memoryと同じく、BIOS上で切り替えればOKだ(画面3)。写真ではEPP 2.0 Memoryの項を[Auto]に設定したが、従来同様[Expert]モードも備えており、その場合はさらにFSBとメモリクロックを独立して指定することができる。 ちなみに、写真3でも分かる通り、DDR3-2000は1,333MHz FSBのCPUを使用している場合でも自動設定される。Intel X48 Expressにおいては、XMPによるDDR3-1600のサポートが1,600MHz FSBのCPU使用時に限定されており、nForce 790i Ultra SLIはCPUを問わずEPP2.0の恩恵が受けられる。 もちろん、nForceチップセットの特徴ともいえる、FSBとメモリクロックを非同期で設定できる「Unlink」モードも備えている(画面4)。そのほかのオーバークロック周りの機能もnForce 680i/780iのころから大きく変わっていない。画面をいくつか紹介しておくので参考にされたい(画面5~8) ●仮想Intel X48環境とのパフォーマンス比較
それでは、ベンチマーク結果を紹介していきたい。テスト環境は表2に示した通りで、ここではIntel X38 Express搭載の「P5E3 Deluxe」(写真9)を比較対象として用意した。Intel X38搭載製品ではあるものの、ここでは仮想Intel X48という使い方をしている。 1,600MHz FSBのCPUであるCore 2 Extreme QX9770と、1,333MHz FSBのCore 2 Extreme QX9650を用意。メモリは、いずれの環境でも先に紹介したCrucialのBallistixを使用。両CPUとDDR3-1333の組み合わせに加え、Core 2 Extreme QX9770使用時には、nForce 790i Ultra SLIが対応するDDR3-2000動作、Intel X48が対応するDDR3-1600の状態でもテストを行なっている。
【表2】テスト環境
まずは、CPUの演算性能のチェックである。テストはSandra XIIの「Processor Arithmetic/Processor Multi-Media Benchmark」(グラフ1)、「.NET Arithmetic/Multi-Media Benchmark」、「JAVA Arithmetic/Multi-Media Benchmark」(グラフ2)、PCMark05のCPU Test(グラフ3、4)だ。 チップセットに関係なくCPUによる違いが明確に出るテストであるが、メモリクロックの差によって、多少スコアが上昇しているところもあるものの、それほど極端な違いではない。両マザーボードとも、CPU自体の動作はうまく行なわれていることが分かる。 ただ、Javaプラットフォーム上で動作している演算テストでは、チップセットの差による影響が出ている。算術テストではIntel X38、マルチメディアテストではnForce 790iが良好な結果を示す傾向が見られ、この当たりの違いはアプリケーションの実際のパフォーマンスにも影響が出そうである。 続いてはメモリアクセスに関するテストで、Sandra XIIの「Cache & Memory Benchmark」(グラフ5)、PCMark05の「Memory Test」(グラフ6)、Sandra XIIの「RAM Bandwidth Benchmark」(グラフ7)、PCMark05の「Memory Latency Test」(グラフ8)の結果である。 まず、いずれの結果からもCPUのキャッシュに関しては、チップセット(マザーボード)の違いなく、同等程度に引き出されていることが分かる。問題はメインメモリへのアクセス速度である。 SandraのCache&Memory Benchmarkでは、Intel X38環境の方が全体に良好な傾向が見て取れるが、このベンチマークはnForce系チップセットで低いスコアが傾向はある。同一チップセット内の比較であれば、各環境ともDDR3-2000/DDR3-1600のときが最も高速な結果となっている点を注視すべきだろう。 一方、PCMark05のメモリテストにおいては、nForce 790i、Intel X38ともメインメモリへのアクセスに対して、極端な性能差はない。ただし、nForce 790iのDDR3-2000使用時にアクセス速度が低下する現象が出ている。 これは、CPU-メモリ間の帯域幅をチェックできる、SandraのRAM Bandwidth Benchmarkでも同じような結果となっている。DDR3-1333使用時に関しては、nForce 790iの帯域幅は優秀な傾向となっており好印象なのだが、DDR3-2000を使用した途端、1,333MHz FSB & DDR3-1333の組み合わせと同等か、むしろ遅い結果になってしまったのである。 何度か環境を作り直して再テストも行なったのだが、傾向は変わらず、DDR3-2000動作に関して、理想通りのパフォーマンスが確実に得られるとは言えない状況であることは間違いない。今後のチューニングで改善されることを期待したい。 一方、メモリレイテンシに関しては、メモリパラメータが大きくは変わらないこともあって、クロックが高い方が優秀な結果となっている。ここではDDR3-2000も好結果を残せており、好印象を受ける。
次に、HDDアクセスでの若干の差が出たので、結果を紹介しておきたい。テストはSandra XIIの「File Systems Benchmark」(グラフ9)、PC Vantageの「HDD Test」(グラフ10)である。結果は、Sandraのランダムリード/ライトでnForce 790iが目立って良い結果を見せた。ほかはPCMark Vantageでは大局的に見るとIntel X38環境の方が若干良好な結果となっているが、極端に大きな差はついていない。 一長一短という傾向の結果ではあるが、Sandraのテストはランダムリード/ライトでも、ある程度のシーケンシャルアクセス性能を持っていないと結果が奮わないことも多いし、ドライバ側が作るバッファの影響も大きく出る傾向にある。このランダムアクセステストの結果は、nForce 790iのドライバの挙動が、Sandraのベンチマークテストにうまくマッチしたのではないだろうか。 PCMark VantageでIntel X38がやや優秀な傾向を見せる通り、特にバッファの挙動に関してはアプリケーションのみならず、使い方によっても左右される。どちらか一方のチップセットが際だって優れているとは言えない結果ではある。だが、うまくハマったときのnForce 790iのSATAインターフェイスが、かなり良いパフォーマンスを出せている点は興味深い。
さて、ここからは実際のアプリケーションをベースとしたベンチマークの結果を紹介したい。まずは一般アプリケーションのテストとして、「PCMark Vantage」(グラフ11)、「CineBench R10」(グラフ12)、「動画エンコードテスト」(グラフ13)の結果である。 一連の結果を見ると、Intel X38の方が優秀な結果を出す傾向を見せた。このあたりは、先のJAVA上で動作する算術演算テストでnForce 790iのスコアが伸び悩んだのと似たような傾向といえるかも知れない。 ただし、FSBクロックやメモリクロックの上昇に伴って、スコアを伸ばすのは両チップセットともに同様で、より高いパフォーマンスを期待するなら、ある程度の期待を持って導入できるだろう。 ただ、メモリベンチマークで見せたDDR3-2000の不安定さがここでも一部露呈している。例えば、PCMark VantageのMemoriesやTV&Moviesあたりが分かりやすい。Intel X38ではメモリクロックが高まることでスコアを急激に伸ばすのに対し、nForce 790iのDDR3-2000はほとんどスコアが伸びていない。この傾向は次の3Dベンチマークでも垣間見せている。
3Dベンチマークとして実施したのは、「3DMark06」(グラフ14、15)、「Crysis」(グラフ16)、「Unreal Tournament 3」(グラフ17)、「LOST PLANET EXTREME CONDITION」(グラフ18)である。 結果を眺めるだけでも、nForce 790iのDDR3-1333環境に対してDDR3-2000環境でスコアが下がるシーンが珍しくないことが分かる。特にCPUの影響が大きい低解像度条件で目立っており、このインパクトは非常に大きい。 また、CrysisではCore 2 Extreme QX9770環境でスコアが落ちるという現象も出ている。これは、Intel X38でも似たような不安定な傾向を見せており、チップセットの問題というよりは、アプリケーション側の問題であろう。 チップセットの比較という面では、ビデオカードにかかる負荷が大きい条件ではnForce 790i、ビデオカードの負荷が小さい条件ではIntel X38が優れたパフォーマンスを見せる。nForce 790iのメインターゲットがゲーマーである以上、ビデオカードに負荷がかかる場面、つまりPCI Express周りのパフォーマンスが優れているのは大きなメリットといえるだろう。その意味では、この2製品は使用場面に応じてはっきりと得手不得手が分かれているともいえる。
最後に消費電力の測定結果である(グラフ19)。マザーボードが異なるので参考程度の結果となるが、全般にnForce 790i環境の消費電力が高めに出ている。とはいえ、それほど大きな差ではなく、マザーボード次第で逆転してもおかしくない程度である。チップセットの消費電力差としてはどちらが高いかは明言を避けたい。 また、nForce 790i環境において、DDR3-2000相当の動作時にその消費電力は大きく跳ね上がるが、これは動作クロックだけでなく、メモリ電圧も上昇している影響が大きい。Intel X38環境のDDR3-1600は、メモリ電圧が定格の1.5Vのままである。クロックアップによる消費電力増も見られないのは気になる点であるが、DDR3-2000とDDR3-1600の違いによる消費電力という視点では妥当な比較はできないので注意されたい。
●ようやく対応製品が登場したESA さて、nForce 790iシリーズでは、SLI Ready Memoryのほかにも、NVIDIAが独自に提唱している規格に対応している。それがESA(Enthusiast System Architecture)である。ESAはnForce 780i SLI登場時に発表されたもので、電源やケース、水冷ユニットなどの監視・制御機能を提供するための規格だ。 このESAであるが、発表はされたものの、実際に対応した製品が登場することもなく、規格が立ち上がった状態とはいえなかった。しかし、僚誌AKIBA PC Hotline!の3月22日号でも紹介しているように、ESA対応電源が発売されたほか、対応ケースの展示も始まっている。ようやく、ESAを利用する機会が生まれたわけだ。 また、3月から4月にかけて、クーラーマスターやThermaltakeからも対応製品が投入されるとのこと。今回、nForce 790i Ultra SLIの評価システムの一環として、クーラーマスターのESA対応電源、ThermaltakeのESA対応ケースおよび水冷ユニットも借用しているので、ここで紹介しておきたい。 まず、電源はクーラーマスターの「Real Power ESA 1000W(RS-A00-EFAM-A3)」である(写真10)。合計で936Wの出力が可能な12Vラインを4系統備えており、GeForce 9800 GX2のQuad SLIに対応する電源としてもアナウンスされているもの。見た目は普通の電源であるが、ヘッダピンに接続できるUSB端子が用意されているのがESA対応製品らしいところである(写真12)。
ケースはThermaltakeの「Armor+」のESA対応版である(写真13)。ケース上部にフロントパネルインターフェイス類を備えるが、その奥の扉の中にあるプラスチックパネルを外すと、ESAのコントローラボードが姿を現す(写真14、15)。 ここには、温度センサーやファン端子を備えている。このボードへはペリフェラル用の電源コネクタを用いて電源供給されており、ケースファンの電源端子はすべてこのボードに装着される格好となる(つまりマザーボードのファン端子へは接続されない)。また、LCS LED/Power LEDと書かれた端子を備えており、対応する電源や水冷ユニットであれば、ケース前面からこれらのステータスを確認することもできる仕組みになっている。
水冷キットは、同じくThermaltakeの「BigWater 780e」である(写真16)。5インチベイ×3段を用いて収納するメインユニット(ラジエータ、ポンプ、タンクを集約したもの)の背面に、ESAのコントローラボードが装着されている(写真17)。ここには、やはりポンプやフローセンサー、ラジエータのファンなどが接続されている。 ちなみに、Thermaltakeの2製品のコントローラボードに搭載されているチップは、Silicon Labsの「C8051F320」で、USBアプリケーション向けのマイクロコントローラだ(写真18)。温度センサなどを含むアナログ機能も集積されており、ESA対応機器に求められる機能は、このチップ1つで提供されている。 ということで、これらのパーツを使って組み上げたPCが写真19である。ESA対応製品という点に着目して気になった点は2つ。1つはArmor+のESA用USBケーブルが短かった点だ。写真19でビデオカードに引っかかるように伸びる白いケーブルがそれである。Armor+のESAコントローラボードは最上部にあるが、マザーボードのUSBヘッダピンは下部にある製品が圧倒的に多い。 現状でもケーブルをきれいに束ねようと思うと不足する長さであるし、今後、オリジナルデザインのnForce 780i/790i製品がマザーボードベンダーから登場したときに、すべてのマザーボードで到達できる長さかというと不安が残る。 もう1つはUSBヘッダピンの数が不足する点だ。nForce 790i SLI Ultraのリファレンスデザインは、チップセットが持つ10基のUSBポートのうち、6基をI/Oリアパネル、4基をヘッダピンで提供している。ESAは1機器につきUSBヘッダピンを1基消費する。今回のようにケース、水冷ユニット、電源と3点揃うと、ヘッダピンの残りが1基になってしまうのだ(写真20)。写真14でも示した通り、Armor+はフロントパネルインターフェイスとして4基のUSBポートを備えているが、ESAを積極的に導入すると、そのほとんどが利用しにくくなるというのは、あまりに悲しい状況だ。
自作パーツショップなどで売られている、ヘッダピン→USB A端子変換ケーブルなどを用意すればI/Oリアパネルでカバーもできるが、これはユーザーに無駄な負担を強いることになる。NVIDIAではヘッダピンで利用するUSB Hubのような機器を提供するとしているが、これは早急に用意すべきだろう。 また、こうしたHubのような機能をコントローラボードに持たせる設計を提案すると良いかも知れない。例えば、ケースのESAコントローラはいかにも実装面積に余裕があるが、ここに電源と水冷キットのESA用USBヘッダピンを接続できるようにし、マザーボードのUSBヘッダピンは1基分だけ消費するような仕組みにすると、配線もスマートにできるように思う。 そもそも、nForce 790i Ultra SLIのリファレンスデザインが、ESAの普及を考慮したとは思えないUSBヘッダピン数である点はいかがなものかとも思うが、現状のままではESAを導入することが、別の点で使い勝手の低下を生んでしまっており、改善の必要性を感じる部分だ。 さて、組み上げたうえでの動作だが、NVIDIAのSystem Toolをインストールする必要があるだけだ。ドライバ等の組み込みは必要なく、自動的にESAデバイスとして、NVIDIAのSystem Tool上で認識した(画面9)。 また、今回の組み合わせでは、ThermaltakeのBigWater 780eから、同社のArmor+が備えるステータス表示機能に対応したLED信号を出力できる。そのため、Armor+側の機能として水冷キットのステータスも確認できるようになっている(写真21)。BigWater自体がフロント部にステータスインジケータを持っているので、あまり意味はなしていないのだが、例えばThermaltake製品でも「BigWater 735」のような5インチベイを使用しないタイプの水冷キットが、この機能に対応すると便利だ。 System Toolの表示も正常に行なわれており、OpenGLを使った3Dグラフィック(画面10~12)、NVIDIA Control Panelでの情報(画面13~15)ともに確認することができる。また、取得した情報に連動して、ファンの回転数やCPUの周波数を自動制御する機能も盛り込まれている。もちろん、手動での設定も可能で、画面17~18のように水冷キットのポンプによって発生する水流の速度を制御したりできる。 この、ESAを利用したNVIDIA Control Panelに関する詳しい情報は、過去に石川氏がレポートしているので、興味のある方は参照されたい。 ●グラフィック周りの性能は秀逸も、DDR3-2000の動作に改善の余地あり 以上の通り、nForce 790i Ultra SLIについてチェックしてきた。パフォーマンスに関していえば、一般アプリケーションにおけるパフォーマンスは伸び悩む傾向を見せる。こうした用途では、明らかにIntel X38の方が良好な結果だ。 一方、ビデオカードの負荷が高まったときに見せるnForce 790iのパフォーマンスは優れている。ハイエンドゲーマー向けチップセットとしては、この傾向は好ましいものといえる。ゲーム用途であれば、選択を検討するに値する性能だ。 ただ、nForce 790i Ultra SLIのプレミアム機能として提供されているDDR3-2000対応メモリに関しては、現時点で導入を積極的に推す気持ちになれない。動作に不安定さを感じるものだったからだ。 本稿中でも述べた通り、メモリパフォーマンスが伸び悩み、一部アプリケーションではベンチマーク結果でも影響が表れている。IntelがXMPという規格を提唱する中、こうしたアイデアで先発のNVIDIAは、DDR3 SDRAM導入に際してDDR3-2000というインパクトのある数字を打ち出した。だが、現状では、これが素直にパフォーマンスに反映されておらず、製品の成功のためにも改善は急務だと思う。 他方、ESAに関しては、ようやく対応デバイスも出始め、ユーザーが導入できる状態になってきている。マザーボード、ビデオカード、各種サプライ品をすべてNVIDIA Control Panelという統一されたインターフェイスで制御できるのは便利ではあるのだが、USBポート数の問題など、細かいところで配慮不足を感じる部分がある。 使い勝手の低下や過度の負担をユーザー強いることが好ましくないのは、エンスージアスト向け機能であっても初心者向け機能でも同じである。今後、ユーザーの声を取り入れつつ、機能面だけでなく使い勝手も改善していくことに期待したい。 □関連記事 (2008年3月31日) [Text by 多和田新也]
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