2007年夏モデルのY7に続き、2007年冬モデルとして登場したR7/T7/W7の3モデルもついにSanta Rosaプラットフォームを採用。加えて今回登場した新Let'snoteシリーズは、プラットフォームの変更だけでなく、本体デザインの変更や空冷ファンの搭載など、フルモデルチェンジと言っていいほどの仕様変更が行なわれている。 今回はその新Let'snoteシリーズの中からT7の店頭販売モデル(CF-T7BW5AJR)を取り上げる。 ●Santa Rosaを採用し本体デザインを変更 Let'snote 2007年冬モデルの特徴は、なんと言っても全モデルでSanta Rosaプラットフォームを採用したという点だろう。従来モデルでは、Y7が一足早くSanta Rosaを採用していたが、今回取り上げるT7だけでなく、R7、W7もSanta Rosaとなった。チップセットはIntel GM965 Expressを、CPUには超低電圧版Core 2 Duo U7500(1.06GHz)をそれぞれ採用。CPUは従来モデルであるCF-T5AW1PJRと同じだが、チップセットがGM965に変更されたことで3D描画能力が向上し、Windows Vistaのパフォーマンスも向上しているはず、メインメモリは従来同様533MHz動作のPC2-4200 DDR2 SDRAMを採用しているため、CPUが変更されていない点と併せ、実際のパフォーマンスには大きな違いがないと考えていいかもしれない。 また、プラットフォームの変更に合わせるように、本体デザインも変更されている。 まず、見た目の変化としては、キーボード手前パームレスト部分とポインティングデバイスのデザインや、液晶パネル天板のボンネット構造の形状が変更されている点、液晶パネルの手前左右に突起が用意され、本体側の凹みと合わせて強度を高めるデザインを採用している点などだ。このうち、ボンネット構造の変更と液晶パネル手前の突起については、本体強度を高めるための変更で、夏モデルの「Let'snote R6」で採用されていたものと同じだ。また、これら以外にも、液晶パネル外周部の環状パイプ構造や主要基板のフローティング構造なども取り入れられており、980N(100kgf)の加圧や振動にも耐えられるとしている。実際に、72cmの高さからの落下試験(底面方向、動作時)が実施され、耐衝撃性が検証されている。 さらに、こちらも従来モデルのR/Yシリーズの特徴であった、キーボードの全面防滴仕様も新たに採用。キーボード全面を防滴仕様とすることに加え、水の排出経路を本体底面に確保することによっていち早く本体外部に水を排出し、本体内部への水の侵入を防ぐようになっている。こういった仕様変更によって、従来モデル以上の堅牢性が実現されている。
これら以外では、液晶パネル部がラッチレス構造となっている点や、バッテリ形状が変更されている点などが従来モデルとの違いだ。ラッチレス構造は、今回取り上げたT7に加え、W7でも採用されている。また先ほども紹介したが、キーボード手前パームレスト部分の波形構造が廃止されてフラットとなり、ポインティングデバイスもデザインが変更されている。これによって、パネルを開けたときの印象も大きく変わり、従来よりもすっきりとした印象を受けるようになった。
本体サイズは272×214.3×24.9~45.3mm(幅×奥行き×高さ)と、従来モデルよりも若干大きく、また厚くなっている。ただ、実際に旧モデルと並べて比較してみると、数字以上に厚さが増しているという印象を受ける。筆者は「Let'snote T4(CF-T4GWKAXP)」を利用しているが、背面側を合わせて並べてみると、2~3mmほど厚くなっているという印象だ。また、従来は本体底面バッテリ部分から手前がやや凹んだ形状となっていたのが、T7では逆に膨れた形状となっている。これによって、Tシリーズのみでの比較では、従来モデルよりも数字以上に分厚くなったという印象を受ける。ちなみにこの底面の形状はWシリーズとほぼ同じものだ。つまり、TシリーズとWシリーズの本体デザインがほとんど同じものになったと考えていいだろう。 本体重量は、カタログ値では標準バッテリ搭載時で約1,179g。従来モデルが約1,270gだったため、90gほど軽くなっている計算だ。ちなみに、試用機の重量を測定してみたところ、1,161gであった。
●ついにファンレス仕様を捨てる 新Let'snoteシリーズでは、全モデルでSanta Rosaプラットフォームが採用されたが、それにより、従来モデルにはなかったものが搭載されるようになった。それは、空冷ファンだ。Yシリーズでは、2006年夏モデルから空冷ファンを搭載するようになっていたが、2007年冬モデルからはYだけでなくR/T/Wの全モデルで空冷ファンを搭載することとなった。これは、CPUだけでなくチップセットの発熱が増えたことで、ファンレスでの放熱が厳しくなったためだ。これまでのLet'snoteシリーズでは、頑なにファンレス仕様が守られてきたのだが、プラットフォームの変更によって、ついにファンレス仕様を捨てざるを得なくなったのである。ファンレス仕様による静寂さはLet'snoteシリーズの大きな魅力の1つだったのだが、これが失われてしまったことになる。 空冷ファンの排気口は、本体左側面に用意されている。ファン自体は回転数制御機能が用意されているため、常にフルスピードで回転しているわけではない。また、負荷が高くないときにはファンの回転も止まる。しかし、Webブラウザの使用程度の負荷でもファンは回転するため、マシンを利用しているときはほぼ常時ファンが回転していると考えていい。 気になるファンの騒音だが、無視できるものでもない。従来のファンレス仕様のモデルと比較すると、低回転時でも明らかに騒音があると意識できるのはもちろん、ファンの回転音で高音成分が強いこともあるのか、キーンというやや耳に付くような音がする。とはいえ、高負荷時にファンがフル回転している状態でも、轟音と呼べるほどのうるささではなく、他のノートPCに搭載されているファンと比較しても、同等かやや静かな部類に入る。 もちろん、ファンを搭載したことによる利点もある。従来モデルでは、ファンレス仕様による静寂さのかわりに、本体底面やキーボード、パームレスト部などがかなり熱を持ち、特に負荷が高い時には放熱が追いつかずにCPUの動作クロックが下げられてしまうということがあった。しかしT7では高負荷時でもキーボードやパームレスト部に熱を意識することは全くと言っていいほどなく、また本体底面も比較的低温に保たれている。実際にベンチマークソフトを1時間ほど連続動作させてみても、本体が熱を持つこともなく、またCPUのクロックが落とされパフォーマンスが低下するということもなかった。 少々騒音がするようになったものの、利用時に手に熱が伝わりにくくなったり、発熱の多い高負荷でも安定したパフォーマンスが発揮できるようになったことなどを考えると、やや残念ではあるが納得できないこともないだろう。長年Let'snote Tシリーズを使ってきた筆者は、ファンを搭載するぐらいなら従来モデルのままのスペックでいいという意見だったが、実際のファンの騒音を聞き、さらに高負荷時でも安定したパフォーマンスが発揮できるという点を考え、ぎりぎり我慢できる範囲内という印象を持った。
●「マイレッツ倶楽部」モデルではCPUもカスタマイズ可能 では、T7の基本スペックを確認していこう。 CPUおよびチップセットは、冒頭で紹介したとおり、Core 2 Duo U7500およびIntel GM965 Expressだ。そして、メインメモリは標準でPC2-4200 DDR2 SDRAMを1GB搭載する。この標準搭載メモリはオンボード搭載となっており、最大2GBまで増設可能だ。オンボードメモリが標準で1GBに拡張された点は大きな改善点といえる。加えて、メインメモリを1GB増設し2GB搭載した場合には、メインメモリがデュアルチャネル動作となる。標準搭載OSがWindows Vista Businessとなっていることからも、予算に余裕があれば購入時点で2GBに増設することをお勧めしたい。 ちなみに、メインメモリ増設用のスロットが、従来の172ピンMicroDIMMから、200ピンSO-DIMMに変更された。従来モデルからのメモリの流用はできなくなったが、SO-DIMMはMicroDIMMよりも安価に販売されているため、増設時の負担は軽くなったことになる。これも、ユーザーにとっては嬉しい変更点といえる。 HDDは、標準で80GBのシリアルATAドライブを搭載する。容量的には少々物足りないが、従来までと異なり、HDDを容易に取り出せるようになったため、換装も簡単に行なえるようになっている。もちろん、HDDの換装は保証外となるが、本体を完全に分解せずにHDDを換装できるようになった点は魅力が大きい。 液晶ディスプレイは、従来通り1,024×768ドット(XGA)表示対応の12.1型TFT液晶だ。視認性や輝度は従来モデルと比較して大きな違いはなく、十分満足できる。グレアパネルを採用する発色性重視の液晶パネルと比較すると発色についてはやや見劣りするが、それも従来同様で、特に大きな不満はない。 ところで、パナソニックの直販サイト「マイレッツ倶楽部」では、これら基本スペックを細かくカスタマイズできる。カスタマイズできるのは、メインメモリ容量やHDD容量など、メインメモリ容量は512MBまたは1GBを増設でき、HDDは160GBを選択できる。加えて、160GB HDD搭載モデルでは、CPUが超低電圧版Core 2 Duo U7600(1.20GHz)にパワーアップされる。大容量HDDと1ランク上位のCPUの搭載はマイレッツ倶楽部モデルのみとなるので、HDD容量やCPUパワーを重視したい場合にはマイレッツ倶楽部モデルの選択を検討すべきだろう。
●ポート類の強化に加えポートリプリケータを新たにサポート ポート類は、本体左側面にミニD-Sub15ピンおよびミニポートリプリケータコネクタ、Type2 PCカードスロット×1、SDカードスロットが、本体左側面にはUSB 2.0ポート×3、モデム、LANの各端子がそれぞれ用意されている。このうち、SDカードスロットがWindows XPでもSDHC対応になった点、USB 2.0ポートが3ポートに増えた点、そしてLANがGigabit Ethernet対応になった点が従来モデルからの強化点。そして、左側面の拡張端子は、新たに用意されたポートとなる。 ミニポートリプリケータコネクタは、オプションとして用意されているミニポートリプリケータを接続する端子だ。ミニポートリプリケータには、USB 2.0ポート×4、ミニD-Sub15ピン、Gigabit EthernetおよびACアダプタの接続端子が用意されており、それらを一度に着脱可能となっている。オフィスでT7を利用する場合などは、ACアダプタやLANケーブルなどはミニポートリプリケータに接続しておき、外出時にはミニポートリプリケータを外して本体のみをサッと持ち出す、といったことが可能になったわけだ。これによって、ビジネス性能がより高まったと言っていいだろう。 ネットワーク機能は有線LANだけでなく、IEEE 802.11a/b/g対応無線LAN機能も標準搭載となっている。本体手前に無線LANのON/OFFスイッチがあり、物理的に機能を切り離せる点も従来同様だ。内蔵されている無線LANモジュールは、IEEE 802.11nドラフト対応のIntel「Wireless WiFi Link 4965AGN」だが、残念ながらIEEE 802.11nはサポートしていない。
●キーボードは若干の仕様変更が キーボードは、横ピッチが19mm、縦ピッチが16mmの長方形型キーとなっている。縦のピッチがやや狭くなっているため、通常の正方形キーのキーボードを利用している人は慣れるまでやや戸惑うかもしれない。また、[Esc]キーの右に[半角/全角]キーが配置されているのも従来通りで、この点もキーの押し間違えなどをする可能性がある。また、Enterキー付近は横ピッチがやや狭くなっているキーがある。とはいえ、これらは全て従来のキーボードと全く同じであり、配列自体には特に無理があることもなく、実際の使い勝手にはそれほど不満を抱くことはないだろう。 ちなみに、キーボード右下のカーソルキーが、従来よりも若干左に寄っており、右[Ctrl]キーなどの横ピッチが若干狭くなっている。この部分が従来モデルからの変更点だが、特に大きな問題はないだろう。 ポインティングデバイスも、従来通り円形のホイールパッドを採用。外周部をなぞることで、ジョグダイヤル風にスクロールが行なえる点も従来通り。デザインが若干変更されているが、基本的な仕様に変更はない。 内蔵バッテリは、容量5.8Ahのリチウムイオンバッテリを採用。本体デザインおよび内部構造が変更されたことで、バッテリ形状も変更となっている。従来モデルでは、容量が7.65Ahのリチウムイオンバッテリだったが、容量が減ったことでバッテリ駆動時間も約10時間に減ってしまった。約13時間という長時間駆動が可能だったという点が従来までのTシリーズの大きな特徴の1つだったわけだが、残念ながらその特徴は失われてしまった。それでも、約10時間のバッテリ駆動は十分長時間であり、大きな不満を感じることはないだろう。 また、標準バッテリの容量が減ったことで、標準バッテリ搭載時の本体重量は従来モデルより約90gほど軽量となっており、携帯性は若干向上している。そういった意味では、バッテリ駆動時間と携帯性のバランスは他のモバイルノートと比較しても、まだ十分優位にあると言える。ちなみに、容量の少ない軽量バッテリも用意されており、そちらを利用した場合にはバッテリ駆動時間は約5時間、本体重量は約1,060gとなる。
●ファンの騒音やバッテリ駆動時間の低下に納得できるなら買い では、いつものようにベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。なお、今回利用した試用機は試作機のため、実際の販売モデルと若干異なることを書き添えておく。 結果を見ると、スペック相応の結果が得られていると言っていいだろう。今回は、メインメモリが標準の1GBだったためシングルチャネル動作となっており、メモリのスコアやグラフィックのスコアがやや低くなっている。もちろん、メモリを2GBに増設しデュアルチャネル動作とした場合には、メモリやグラフィックのスコアが大きく向上すると思われるため、もしスペックを重視したいのであれば、やはりメモリ増設は欠かせないだろう。もちろん、メモリ増設によってWindows Vistaの動作も快適になり一石二鳥である。 Let'snote Tシリーズは、12.1型液晶を搭載しながら1kg前後の軽量ボディを実現した1スピンドルマシンとして登場し、外からの強い圧力に耐えられる優れた堅牢性や、重量はやや増えたものの12~13時間という他を圧倒するバッテリ駆動時間を実現したことなどで、特にビジネスユーザーから高い評価を得ている。また、歴代Let'snoteシリーズで長く守られてきたファンレス仕様も、評価の高かったポイントの1つだ。しかしT7では、Santa Rosaプラットフォームを搭載したことによって、パフォーマンス向上と引き替えに、ファンレスと長時間のバッテリ駆動という2つの大きな魅力が失われてしまった。特に、ファンレス仕様は、同じような仕様の他社のモバイルノートにはない大きな魅力だったため、非常に残念に思っている人が多いだろう。 空冷ファンの搭載によって安定して高パフォーマンスが発揮されるというメリットもあるため、空冷ファンの搭載自体が即欠点というわけではない。とはいえ、やはり騒音の面などで魅力減であることに変わりはないため、従来モデルのファンには、空冷ファン搭載とバッテリ駆動時間の減に納得できない限りお勧めしづらい。しかし、これらの点にさえ納得できれば、パフォーマンスだけでなく堅牢性も大幅に向上していることも合わせ、十分な魅力を持つマシンに見えてくる。特に、ビジネスシーンで常に持ち歩いて使うノートとしては、他を圧倒する魅力がある。また、2スピンドルマシンよりも安価であるという点も魅力の1つだ。ビジネス用途で利用する軽量な1スピンドルノートを探している人に広くお勧めしたい。
【表】ベンチマーク結果
□パナソニックのホームページ (2007年10月31日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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