デルの「XPS」シリーズは、クアッドコアCPUやデュアルGPUシステムなどを利用できる、ハイエンドゲーマー向けのフラッグシップモデルとしておなじみだ。そのXPSシリーズの新モデルとして登場した「XPS 420」は、フラッグシップモデルのXPS 720シリーズよりもパフォーマンスは若干抑え気味だが、その分価格も下げてコストパフォーマンス性を高めたモデルとなっている。 ●ハイパフォーマンスモデルとして必要十分なスペックを搭載 XPSシリーズの特徴といえば、その時点でのハイエンドCPUやデュアルGPUシステムなどを採用することで、どのような最新3Dゲームも高解像度で快適にプレイできる、非常に優れたパフォーマンスにある。ただ、コストパフォーマンスに優れる製品の多いデル製PCの中で、XPSシリーズは比較的価格が高いこともあり、なかなか手が出ないのも事実だ。それに対し新たに登場したXPS 420では、搭載パーツのスペックを若干落とすことで、手を出しやすい価格になっている。もちろんそれでも、最新3Dゲームをプレイするための十分なパフォーマンスは確保されており、XPSの名に相応しいマシンに仕上がっている。 CPUは、デュアルコアCPUのCore 2 Duo E6850/E6750、またはクアッドコアCPUのCore 2 Quad Q6600の3種類から選択可能。コアあたりのパフォーマンス重視であれば動作クロックの高いCore 2 Duoを、マルチタスク性能重視であればCore 2 Quadを選択すればいいだろう。試用機では、Core 2 Quad Q6600が搭載されていた。 マザーボードは、チップセットにIntel X38 Expressを搭載する、BTX仕様のオリジナルモデルを採用。拡張スロットはPCI Express x16×1、PCI Express x8×1、PCI Express x1×1、PCI×3の計6本。メモリスロットは、DDR2 SDRAM DIMMスロットが4本となる。チップセットレベルではDDR3 SDRAMに対応するが、DDR3 SDRAM DIMMスロットは用意されていない。そのほかの内部コネクタは、シリアルATA×5、FDD×1などで、IDEポートは用意されていない。オンボードデバイスは、Gigabit Ethernet、HD Audio、IEEE 1394など。また、バックパネルにはeSATAポートも1ポート用意されている。 メインメモリは、ホームページのスペック情報では、PC2-5300 DDR2 SDRAMを2GBまたは4GBとなっているが、試用機ではPC2-6400 DDR2 SDRAMが2GB搭載されていた。デルのマシンは、搭載するパーツが刻々と変化するため、PC2-6400 DDR2 SDRAMの搭載が標準になっている可能性もある。 ビデオカードは、GeForce 8800 GTX、GeForce 8600 GTS、Radeon HD 2600 XT、Radeon HD 2400 Proの4種類から選択できる。予算に応じて多くの選択肢が用意されている点は嬉しいが、マザーボードにはPCI Express x16スロットが1本しか用意されておらず、デュアルGPUシステムの構築によるパワーアップは不可能。そのため、描画能力を重視するのであれば、ハイエンドモデルであるGeForce 8800 GTX搭載カードを選択しておきたい。ただし、GeForce 8800 GTX搭載カードを選択する場合には、「パフォーマンスシャーシ」と呼ばれる425W電源搭載ケースを選択する必要がある。 さらに、BTOメニューには、サウンドカードや物理演算カード、Blu-ray Discドライブなどの選択肢も用意されている。このうちサウンドカードは、「Sound Blaster X-Fi Xtreme Music」が、また物理演算カードにはAGEIA PhysX搭載カードをそれぞれ選択できる。こういった選択肢が用意されているのは、ハイエンドゲーマーを対象としているXPSシリーズならではの特徴である。ちなみに、試用機にはアナログTVチューナカードが搭載されていたが、BTOメニューに選択肢は用意されていないため、試用機独自の仕様と思われる。
●デザイン性に優れる新型ケースを採用 XPSシリーズのフラッグシップモデルであるXPS 720では、本体前後をやや斜めに切り取り、前面がメッシュになった独特なデザインのケースを採用していた。それに対しXPS 420では、一般的なミドルタワーケースに近いデザインを採用。とはいえ、本体カラーは側面がシルバー、前面と上部が光沢のあるピアノブラックとなっており、XPSシリーズの重厚なイメージが損なわれていないばかりか、逆にデザイン性は向上している印象を受ける。 ケースの仕様は、従来同様BTX仕様を採用。本体前面に吸気用の12cmファンと8cmファンが配置されており、本体前面から背面に向けて直線的な空気の流れを作り、効率よく放熱できるようになっている。また、本体前面の12cmファン設置部分は、トンネルのように本体左右に貫通した穴が開けられており、本体内部へ効率よく外気を吸入できるように工夫されている。そして、12cmファンの吸気直後にCPUのヒートシンクが配置されており、CPUの熱は常に外気によって冷却される。ベンチマークテスト中などの高負荷時でも騒音はあまり気にならず、パフォーマンスの割に動作音は非常に静かという印象だ。 ケース内の拡張ベイは、5インチベイが2個と3.5インチベイが2個、3.5インチシャドウベイが2個と、本体サイズの割に拡張ベイの数は少ない。マザーボードにIDEポートが用意されておらず、SATAポートも5ポートのため、拡張ベイが足りなくなる可能性は低いものの、5インチベイが2個しかない点はやや物足りなく感じるかもしれない。 ケース前面には、USB 2.0×2、IEEE 1394×1、マイク、ヘッドフォンの各端子を用意。また、3.5インチベイには、SDカードやメモリースティック、CFなどさまざまなメディアに対応するカードリーダ(USB接続)を搭載可能だ。ちなみに、BTOメニューには、Bluetoothモジュール内蔵のカードリーダがリストアップされているが、試用機のカードリーダは、Bluetoothモジュールを内蔵していなかった。 さらに、ケース上部には、「チャージ・ステーション」と呼ばれるスペースが確保されている。これは、携帯プレーヤーや携帯電話などを置き、充電やデータの送受信などに活用するために用意されている。本体上部を凹ませてラバーを貼っただけのものであり、特に特別な充電ケーブルなどが付属しているわけではない。とはいえ、本体後部に充電やデータの送受信に利用するUSBケーブルを巻き取れる構造が用意されていることも合わせ、携帯プレーヤーを常に活用している人であれば、便利に活用できるスペースになるはずだ。
●ケース上部にSideShow用ディスプレイを搭載 XPS 420の最大の特徴の1つとなるのが、ケース前面上部に「XPS MiniView」と呼ばれる小型の液晶ディスプレイが用意されている点だ。 XPS MiniViewは、SideShowガジェットまたは、デルが独自に用意する「Dell Media Managerガジェット」に対応する小型ディスプレイで、いわゆるSideShowデバイスである。220×176ドットの解像度を持ち、液晶右には操作用のカーソルキーおよび決定/メニューボタンが用意されている。そして、これらカーソルキーとボタンを利用して、液晶画面に表示される情報を操作できる。 もともとSideShowデバイスは、ノートPCの天板部分などに取り付け、ノートPCを起動せずとも、メールや住所録などPCに保存されている情報にアクセスして表示するといった用途に利用するものという位置づけだ。とはいえ、ノートPCでの利用に特化しているわけではないため、デスクトップPCでの利用も当然想定されている。 XPS MiniViewは、マシンの電源が入っている状態はもちろん、スリープ時にも利用可能だ。スリープ時にXPS MiniViewのボタンを操作すると、スリープ状態が解除されることはないが、本体の空冷ファンが回り、HDDも動作を開始する。XPS MiniView利用後しばらく操作しないでおくと、約2分ほどでファンの回転やHDDの動作が自動的に停止する。ただし、シャットダウンや休止状態など、本体の電源が完全に落ちている状態では利用できない。 XPS MiniViewに対応するアプリケーションであるSideShowガジェットとしては、Windowsメールの受信フォルダを確認するガジェット、Windows Media Playerで再生中の情報を表示するガジェット、ゲームのソリティアが標準でインストールされていた。XPS MiniViewを利用して新着メールの参照や、再生中の音楽の情報などをチェックできる。もちろん、メールの参照は本体がスリープ状態でも可能だ。 また、SideShowガジェットは、サイドバーガジェット同様インターネット経由で追加のガジェットをダウンロードしてインストールすることも可能だ。ただし、現時点ではSideShowガジェットは全くと言っていいほど配布されていない。しかも、SideShowガジェットの配布サイトで配布されているRSSリーダーをインストールしたところ、エラーが表示され正常に動作させることができなかった。そういった意味では、XPS MiniViewの利用は現時点ではごく限られた用途に限定され、まだまだ活用できる環境が整っているとは言い難い。しかし、今後SideShowデバイスを搭載するマシンが増えれば、SideShowガジェットも多数配布されるようになるはずで、今後徐々に活用の幅が広がっていくことになるだろう。
●ハイエンドゲーマーだけでなく幅広い層におすすめ では、いつものようにベンチマークテストの結果を見ていこう。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05 (Build 1.2.0)」と「3DMark05(Bulid 1.3.0)」、「3DMark06(Build 1.1.0)」の3種類。Windows Vistaに用意されているパフォーマンス評価の結果も加えてある。 結果を見ると、スペックどおりの好結果となっている。特に、今回の試用機ではビデオカードがGeForce 8800 GTX搭載カードだったこともあり、3D描画能力の高さはかなりのものとなっている。もちろん、CPUにCore 2 Extremeを搭載したり、GeForce 8800 GTX搭載カード2枚を利用しSLI環境を実現した「XPS 720 H2C」と比較するとパフォーマンスは劣るはずだが、この試用機の環境なら十分最新3Dゲームを快適にプレイできるパフォーマンスが発揮されていると言っていいはずだ。 そしてなにより、価格面での魅力はかなり大きい。最小構成環境でスタンダードシャーシの場合96,350円からと、フラッグシップモデルであるXPS 720シリーズよりも価格がかなり安価に抑えられている。今回試用した環境では、ビデオカードにGeForce 8800 GTX搭載カード、また光学ドライブにBlu-ray Discドライブが採用されていたこともあり、販売価格が300,400円(11月14日現在)とかなり高くなってしまうが、それでもフラッグシップモデルであるXPS 720 H2Cよりも安価であり、スペック重視のハイエンドゲーマーでも魅力を感じるはずだ。 また、本体デザインが優れていることや、ビデオカードなどに比較的低スペックのパーツを選択できることなどもあり、ゲームをプレイしないユーザー層にも十分おすすめできる。最新3Dゲームをプレイしたいけど予算が限られる、またデザイン性に優れたデスクトップが欲しいと考えている人などにおすすめしたい製品だ。
【表】ベンチマーク結果
□デルのホームページ (2007年11月15日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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