サンフランシスコで9月18日~20日(現地時間)の3日間に渡り開催されたIntel Developer Forumの2日目のハイライトは、すでにレポートされているようにモバイルプラットフォーム事業本部のダディ・パルムッター上級副社長とウルトラモビリティ事業本部のアナンド・チャンドラシーカ上級副社長による基調講演が行なわれた。 パルムッター上級副社長の講演では、来年(2008年)の前半にリリースが予定されているMontevinaプラットフォームのさらなる詳細が明らかにされるなど、ノートPCユーザーには注目の講演となったが、本レポートではIDFでOEMベンダの関係者などに取材してわかった、ノートPC向けのさまざまな情報をお伝えしていきたい。 ●1月に投入されるPenrynベースのSanta Rosaリフレッシュ Intelのポール・オッテリーニ社長兼CEOは、45nmプロセスルールで製造される開発コードネーム“Penryn”(ペンリン)を、来年の第1四半期に投入することを、初日に行なわれた基調講演で明らかにした。 しかし、実際には第1四半期でも早い時期に投入される可能性が高い。Intelに近い情報筋によれば、ノートPC向けPenryn、いわゆるSanta Rosaリフレッシュは1月に投入される予定とOEMベンダには伝えられているという。ただし、今のところ1月のいつなのかは、明確にはなっていない。しかし、別記事でもお伝えしたように、2008年1月にラスベガスで開催が予定されているInternational CESの初日(1月7日)の午後に、オッテリーニ氏の基調講演が予定されており、今までの通例でいけばここでそうした新しい製品が発表されるという可能性が高いのではないだろうか。 OEMメーカー筋の情報によれば、2008年1月にIntelが投入しているPenrynのSKUは次のようになっているという。 【表1】 1月に投入される予定のPenrynのSKU(筆者予想)
このうちX9000はCore 2 Extremeのブランド名で投入され、すでに発表済みのMeromベースのX7800(2.6GHz)/X7900(2.8GHz)を置き換える製品となる。 メインストリーム向けには、フルサイズ版(Penryn-DC、L2キャッシュ6MB)のT9500とT9300、ハーフサイズキャッシュ(Penryn-DC/3M、L2キャッシュ3MB)の2つの製品が予定されている。いずれの製品も現行のMeromコアのCore 2 Duoとピン互換でかつ熱設計消費電力の仕様も同じであり、OEMベンダは現行のSanta Rosa製品のCPUをMeromからPenrynに置き換えるだけで出荷することが可能になる。 ●5月に発表されることが明らかにされたMontevinaプラットフォーム IntelはこれまでMontevinaプラットフォームの投入を2008年の前半としか明らかにしてこなかったのだが、初日に行なわれたオッテリーニ氏の基調講演の中で、Montevinaプラットフォームの発表が来年の5月に行なわれることが明らかにされた。その後、直接の担当であるパルムッター副社長が来年の半ばとしか言ってなかったことを考えると、オッテリーニ氏が“発表は5月”と明らかにしたことは、どうも口が滑ったという類のものらしいのだが……。もっともトップが5月と明らかにした以上、正式に5月発表というスケジュールで決まったと言うことだろう。 Montevinaプラットフォームの詳細に関しては、すでに関連記事(その1、その2、その3)で触れたとおりなので、特に追加することはないのだが、IDFでOEMベンダなどに取材したところ、具体的な製品のSKU構成などがわかってきた。 OEMベンダの関係者などによれば、Intelは5月に発表されるMontevinaプラットフォームのCPUでは以下のようなSKUが用意されているという。 【表2】Montevinaプラットフォーム向けPenrynのSKU(筆者予想)
5月に発表される予定のSKUは合計で6つあり、TDP(熱設計消費電力)が35WでL2キャッシュが6MBのPenryn-DCをベースにした製品が3製品、TDPが25WでL2キャッシュが3MBのPenryn-DC/3Mが3製品となる。 さらに第3四半期にはExtremeセグメント向けにノートPC向けとしては初めてのクアッドコア製品が投入される。クアッドコアは既報の通りTDPが45Wになり、ハイエンドゲーマー向けの製品として投入されることになる。
また、同じく第3四半期にはより小型のPC向けに、CPU、ノースブリッジ、サウスブリッジのすべてをより小型のパッケージにして各チップのフットプリントを小さくしたSFF(Small Form Factor)パッケージが導入される。SFFが導入されるのは、TDPが25W(通常電圧版、SV版)、15W(低電圧版、LV版)、9W(超低電圧版デュアルコア、ULV-DC版)の各セグメントで、これら用のPenrynが導入される予定になっている。今のところクロック周波数などは未定で、どのようなSKU構成になるのかはわかっていない。 なお、TDPが5.5Wになる超低電圧版シングルコア(ULV-SC版)は、今のところPenrynの投入は検討はされているようだが、製品として投入するかどうかの決断はされていないようだ。このため、少なくとも来年の第3四半期までは現行製品となるMeromコアのU2200(1.2GHz)がULV-SCの最上位版として続いていくことになる。 ●Montevina世代のチップセットとなるCantiga-GM/PM/GS/GL Montevina世代のチップセットとなるCantiga(キャンティーガ、開発コードネーム)の詳細に関しては、以前の記事で説明しているためここでは繰り返さないが、CantigaはノートPC向けとしては初めてDDR3をサポートし、内蔵されているGPUはDirectX 10やBD/HD DVDのハードウェアデコーダなどの機能をサポートし、サウスはIntel 3シリーズチップセットで利用されているICH9世代に切り替わる。 Cantigaには全部で4つのSKUが用意される。それがCantiga-GM、Cantiga-PM、Cantiga-GS、Cantiga-GLだ。 【表3】CantigaのSKU構成(筆者予想)
それぞれの名前からわかるように、Cantiga-GMがGPU内蔵版、Cantiga-PMがGPU非内蔵の単体版、Cantiga-GSはSFF向けの小型パッケージ版、Cantiga-GLはGPU内蔵のみで外部GPU非サポートの製品となる。 ●2009年にはNehalemベースの新世代プラットフォームを投入へ もちろん、IntelはMontevina後の製品に関しても計画を用意している。それが開発コードネームでCalpella(カルペラ)の名前で呼ばれるプラットフォームだ。ただし、Calpellaに関してわかっていることは少ない。CalpellaではCPUとしてNehalem世代のCPUとなるGilo(ギロ、開発コードネーム)をサポートする。 Giloに関しては開発コードネーム以外の詳細はわかっていない。1つだけ言えることは、GiloはデスクトップPC向けの最初の世代のNehalemとなる“Bloomfiled”のモバイル版ではない可能性が高いことだ。おそらく、デュアルコア版Nehalemとなる“Havendale”(ヘイブンデール、開発コードネーム)のモバイル版になる可能性が高い。 というのも、公開されたBloomfiledのダイサイズを見る限り、確実に200平方mmを超える大きさになってしまっており、消費電力がかなり大きそうだからだ。実際、情報筋によれば、Bloomfiledの最初の製品のTDPは130Wと、現行のクアッドコアと同じレベルになっている(実際にはメモリコントローラが統合されているので、現行のクアッドコアよりは下がっていると言えるかもしれないが……)。さらに、チップセットのTylersburgに関しても24.1Wとかなり高めになっており、とてもではないがそのままではモバイルに入れることは難しいと考えられる。 実際、それを裏付けるように、Intel 副社長兼モバイルプラットフォーム事業部本部長のムーリー・イーデン氏は「Nehalemにはそのターゲットの違いで、いくつかの派生品がある。それをそれぞれのセグメントに向けて投入することになる。当然モバイルではバッテリライフに焦点を合わせたものとなるだろう」と述べ、ワークステーションやハイエンドデスクトップ市場に投入されるNehalem(つまりは、Bloomfiledなど)とは異なることを示唆している。 「ノートPC用のNehalemは、現状の製品と似たような熱設計消費電力の枠が設定されている。我々は来年の半ばにクアッドコアのCPUを投入するが、これはモバイルゲーマーやモバイルワークステーション向けのセグメントとなる。Nehalemでも同じような扱いになるだろう」と述べ、クアッドコア製品の投入はあり得るもののいわゆるExtreme向けと呼ばれるモバイルゲーマーやハイエンドワークステーション向けに限るという見通しを明らかにしている。となれば、メインストリーム向けは引き続きデュアルコア製品となる可能性が高いことは明らかだろう。 問題は、そのデュアルコアの製品がどのような製品になるのか。焦点はGPUが内蔵されているのか、否かだ。というのも、モバイルではスペースの都合から、GPUが統合されているチップセットが必要になる。しかし、仮にGPUがCPUに内蔵されていないのだとすれば、チップセット側にGPUを内蔵する必要がある。しかし、その場合には、統合されたGPUはCPUにあるメモリコントローラに接続されているメインメモリの一部をDRAMとして利用しなければならないため、レイテンシが長くなりすぎ性能が出ないおそれと、ビデオメモリのリフレッシュのたびにCPUへのアクセスが発生し、CPUがアイドルにならず省電力の点で不利になる(AMDのK8世代も同じ問題を抱えている)。 この点に関してはイーデン氏は興味深い発言をしている。「モバイル向けNehalemの最初の製品はGPUを統合していないが、ロードマップ上に統合版が用意されていることは事実だ」と。もし、それが事実だとすれば、可能性は2つある。 (1)Gilo世代では統合型チップセットは提供されず、単体型GPUとの組み合わせでだけ提供される 前者だとすれば、ハイエンドノートPCはよいものの、コスト重視のローエンドでは利用できないことになる。後者だとすれば、せっかくのメモリコントローラ統合というNehalemのメリットは生きてこないことになる。 このあたりは依然として謎であり、今後さらに取材を進めていかないといけないようだ。
□IDF Fall 2007のホームページ(英文) (2007年9月25日) [Reported by 笠原一輝]
【PC Watchホームページ】
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