ダディ・パルムッター氏基調講演
|
ダディ・パルムッター氏 |
会期:9月18日~20日(現地時間)
会場:San Francisco「Moscone Center West」
IDF2日目はモビリティ・ディと位置付けられ、MobilityとUltra Mobilityに関する基調講演が実施された。Mobilityに関する基調講演は、同社モビリティ事業本部長のダディ・パルムッター氏により、モビリティに対するバリア(障壁)を壊すことをテーマにした内容が語られた。
ここでは、来年の登場が予定されている45nmプロセスのCPU「Penryn(ペンリン)」を利用した新しいモバイルプラットフォーム「Montevina(モンテヴィーナ)」」が、どのようにモバイルPCへのニーズを満たすための障壁を乗り越えたかを中心に紹介されている。
●Montevinaが乗り越えた壁
当初2011年になるだろうと予想されていたモバイルPCシェアの50%超えは、2009年には達成できる勢いで加速を見せているが、モバイルに対する「パフォーマンス」、「小型・軽量化」、「バッテリライフ」、「ワイヤレスネットワーク」という4つのニーズは、いまだに強いとしている。そして、Montevinaでは、このニーズに対して次のような機能を盛り込んできた。
まずパフォーマンスに関しては、CPU以外の環境を統一してMeromとPenrynを用いてエンコード速度を比較。Penrynの優位性を示し、こうしたリッチコンテンツを扱うためにはパフォーマンスはあればあるほどよいとした。
また、グラフィック機能に関しても、1年前に目標とした「これで十分」と思えるところに達しているが、方針を変更し、2010年までに10倍の性能向上を目指し、かつビデオのクオリティもさらに向上させていくとしている。
来年の投入が予定されるMontevina準拠のノートPC | モバイルコンピュータが普及した現在も、4大ニーズは顕在 | CPU以外の環境を統一したPenrynとMeromのパフォーマンス比較デモ |
若干ではあるが、エンコードの進捗はPenrynのほうが速い | BaniusベースのCenrinoと比較して、PenrynベースのMontevinaのパフォーマンスは2倍になっている | チップセットに統合されるグラフィック機能も10倍を目指す |
小型・軽量化に対しては、Santa Rosaでも薄型のさまざまな製品が登場してはいるが、さらにサイズを小さくしていきたいとした。そして、そのために2つのポイントでアプローチしている。1つはパッケージサイズやボードサイズといった物理的なサイズで、ボードサイズで60%、厚みで25%の改善を図る。もう1つのポイントが熱設計で、昨日のオッテリーニ氏の講演でも触れられたとおり25WのSKUを加えることが改めて紹介された。
ボードの面積を60%、厚みを25%縮小。また、45nmのPenrynでは小型の新チップパッケージが投入されることも、昨日のオッテリーニ氏の基調講演で語られたとおり | MotevinaプラットフォームのPenrynには25W TDPのSKUが用意される |
バッテリライフの改善については、LenovoのPCにおけるMobileMarkの結果を示し、性能は向上しているがバッテリライフは40%の改善を見せていることをアピール。そして、Montevinaに実装された新しいアイドルステート「Deep Power-Down State」を紹介。Santa Rosaに実装されたL2キャッシュの内容を消去するDC4ステートよりさらに消費電力を下げるステートで、L2キャッシュへの電力供給を止める手法となる。
各世代のプラットフォーム別に見た、Lenovo製PCのMobileMark 2007の結果。パフォーマンスとバッテリライフの向上の両立が果たされている | PenrynでサポートされるDeep Power-Down State。L2キャッシュの電源をシャットダウンすることで、さらに消費電力を抑制する |
さらにパルムッター氏は、NehalemベースのモバイルCPUには新しい電力管理機能が実装されることを紹介し、次のIDFで詳細を公表する予定であることを表明している。
ワイヤレスネットワークのブラッシュアップについては、Santa Rosaで搭載されたIEEE 802.11nのWiFiが順調に立ち上がりつつあることをアピール。新しい使い方が生まれることに期待を寄せる大学関係者や、ビジネス向け製品を出荷したCisco Systemsの担当者の声を紹介した。
さらに、802.11nだけでカバーできない範囲を補うWiMAXについても言及。Montevinaでは、Echo Peakと呼ばれるWiFi+WiMAXのコンボカードが提供される。
これに加えて電波使用の認可を行なう政府関係者や、サービスの提供会社、ハードウェアメーカーなどと協力してエコシステムを目指している。こうしたエコシステムの構築はWiFiのときにも困難が伴ったが、WiMAXでも同様に困難を克服して普及させていきたいとしている。
もちろん、これは北米に限った話ではなく世界中で展開していくもので、日本で先日KDDIが中心になってWiMAXの商用サービス化に向けた新会社の設立に触れ、日本においては2009年に実用サービスが稼働し始めるだろうとした。
このほか、WiMAXに関しては、車やスクーター、ゴルフ場で利用されるセグウェイでのユーセージモデルも紹介。街中でビデオや音楽を楽しんだり、観光のために地図を確認、ゴルフ場でのスイングチェックなどのデモを行なった。
セルラー用プロトコルを含めた転送速度の比較。「人々がWiMAXやWiFiを求める理由は単純で、それはスループットが速いから」とパルムッター氏は述べている | WiMAX搭載端末を積んだセグウェイ。ゴルフのスイングチェックなどのデモが行なわれた |
同じくWiMAX搭載端末を積んだスクーター。Google Mapで地図を確認するデモを実施 | Montevinaで利用されるWiMAX+WiFiコンボカードであるEcho Peak。2種類のサイズが用意される |
●「新しい障壁も生まれるが乗り換えていく」
パルムッター氏はこのほかに、モバイルコンピューティングがさらに人気を博していくにしたがって、新しい障壁を生まれてくるはずであるとしている。すでに発生している障壁としては、ラップトップPCが盗難にあったときなどに備えたデータプロテクションに対するニーズが高まっていることを紹介した。
このほか、Santa Rosaから投入されたvProのモバイル版であるCentrino Proのような管理運用性のさらなる高まりや、インターネットへの常時接続性に関して触れた。
とくにインターネットの常時接続性については、Silverthorne(シルバーソーン)によってさらに実現性が高まるとしている。その大きな理由として挙げられたのがハイエンドからインターネットモバイル端末までがIAアーキテクチャに統一される点だ。
PCでは利用できるWebアプリ/サービスがモバイル端末で利用できないのでは意味がないが、ベンダーは統一したアプリケーションであらゆるセグメントに対してアプリケーションやサービスを提供できることがメリットになるとした。
このインターネットモバイル端末向けのIAベースCPUが、1W未満の消費電力を謳うSilverthorneであるが、このCPUは低コストPCなどでも利用され、そのPCはデジタルデバイドを抱える”次の10億人”の世界へ投入されていくとした。何度も紹介されているようにClassmate PCやASUSTeKのEee PC、OLPCなど、成長が見込まれる国の教育機関へPCを配布するプロジェクトが進行しているが、そうしたPCにもSilverthorneが利用されていくことになる。
パルムッター氏が行なった今回の講演は、Montevina投入を来年に控えた時期ということもあってか目新しい点はなく、すでに公表されていたMontevinaの機能を淡々と紹介していった印象が強い内容である。
デスクトップのジャンルではNehalemの稼働デモが行なわれているほか、モバイルの電力管理に関しては次のIDFで紹介すると述べているとおり、モバイル版Nehalemに関してもさまざまなビジョンを持っているのは間違いない。
しかし、Nehalemのモバイル版というラッパは、今回のIDFを通じてもほとんど吹かれていない。次の世代のモバイルコンピューティングの魅力は、ひとまずMotevinaで十分に感じ取ってもらえるというモビリティチームの自信が、そこにはあるのではないだろうか。
管理運用性やセキュリティ、インターネットの常時接続性、次の10億人へのノートPCの浸透といった壁が次の課題 | 新しい壁を乗り越えるためにもSilverthorneが活用されていく |
□IDF Fall 2007のホームページ(英文)
http://www.intel.com/idf/us/fall2007/
□関連記事
【9月20日】【IDF】ポール・オッテリーニCEO基調講演
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0920/idf03.htm
【8月30日】【笠原】Intel、Montevina世代のCPUに25Wの熱設計仕様を設定
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0830/ubiq194.htm
(2007年9月21日)
[Reported by 多和田新也]