前回のコラムでは、さらに明らかになってきたMontevinaのシリコンサイドからの概要を紹介した。Montevinaの特徴は、基本的にはSanta Rosaの延長線上にあり、プラットフォームごとの熱設計消費電力は基本的にはSanta Rosaを継承することになる。 このMontevinaでは、日本のOEMメーカーが特に望むような変更が加えられる。それがMontevina世代で導入される予定の新パッケージで、LPIAプラットフォーム向けに利用されているような、より小型のパッケージが通常のノートPC向けにも導入されることになる。 ●Santa Rosaと同じ熱設計消費電力の枠を維持するMontevina世代 Intel 上級副社長兼モバイルプラットフォーム事業本部 本部長のムーリー・イーデン氏は、Montevina向けCPUの熱設計消費電力の枠は、という質問に対して「熱設計消費電力の枠は、Santa Rosaのものを維持する。通常電力向け、低電圧向け、超低電圧向けはデュアルコア版とシングルコア版が従来通り利用される」と述べ、Montevinaの熱設計消費電力の枠は、Santa Rosaと同等のレベルを維持するという見通しを明らかにした。 実際、OEMメーカー筋の情報でもそうしたことは裏付けられる。情報筋によれば、IntelはMontevinaのプラットフォーム別のCPUの熱設計消費電力は次のように位置付けられているという。
【表1】Montevinaプラットフォームの熱設計消費電力(筆者予想)
Montevinaでは5つのフォームファクタが定義されている。それがゲームPC、薄型軽量ノートPC、サブノートPC、ミニノートPC(デュアルコア)、ミニノートPC(シングルコア)で、ぞれぞれ熱設計消費電力は45W、35W、15W、9W、5.5Wとなる。 これらの定義はSanta Rosaと全く同じで、OEMメーカーはSanta RosaのデザインをそのままMontevinaに利用することができる。一般的にOEMメーカーはノートPCの基本設計を2年間程度は若干の変更で使い回す例がほとんどなので、おそらく多くのメーカーがSanta Rosaにあわせて新しいケースを採用し、Montevinaでもその基本設計を利用するということになるだろう。 ●2008年後半にPenryn QCを利用したクアッドコア搭載ノートPCが実現 OEMメーカー筋の情報によれば、Penrynには3つのダイが存在している。違いはL2キャッシュの容量とコア数で、具体的には次のような4つのダイが存在しているという。
【表2】Penrynのダイバリエーションとモバイル向けSKU(筆者予想)
Penryn DCにはL2キャッシュの違いで2つのバージョンが存在している。標準の6MB版キャッシュと3MB版がそれで、Conroe世代と同じように同じPenryn DCでも、別ダイとして生産されることになる。Penryn DC/6MBは、ゲーミングPC、薄型軽量ノートPC、サブノートPC各フォームファクタ向けが用意され、Penryn DC/3MBは薄型軽量ノートPC、ミニノートPC向けが用意される。 シングルコアのPenryn SCは薄型軽量ノートPCにも利用されるが、主に熱設計消費電力が問題となるミニノートPCで利用されることになる。なお、ミニノートのデュアルコア化に関してイーデン氏は「バリュー向けやミニノート向けとしてはシングルコアは残っていくことになる。しかし、多くはデュアルコアに移行していくことになるだろう」と述べ、今後ミニノートでも9Wの超低電圧版に移行していくことになるという見通しを明らかにしている。 Penryn QCは、Conroe世代のKentsfiledと同じように、CPUプレートの上に2つのPenrynを搭載する形のクアッドコアとなる。つまり、デスクトップPC向けクアッドコア「Yorkfiled」のモバイル版だと考えればいいだろう。デスクトップPC版のYorkfiledは、現行のKentsfiledと同じように熱設計消費電力は130W/95Wになるのに対して、Penryn QCは45Wの熱設計消費電力に収まるという。 なお、IntelはゲームPC向けの製品として、今後Core 2 ExtremeをSanta Rosaプラットフォーム向けに第3四半期に投入するが、Penryn QCはそのセグメントに投入されることになるという。Intelはまず2008年第1四半期にPenryn DCを利用したデュアルコアをExtremeプロセッサとしてSanta Rosaリフレッシュとして投入し、その後第2四半期に同じくPenryn DCをMontevinaプラットフォーム向けに投入する。そして、2008年の第3四半期にPenryn QCを投入する計画であるとOEMメーカー筋は伝えている。このスケジュールが予定通り進めば、2008年の後半にはクアッドコアのノートPCをユーザーが手に入れることができそうだ。 ●MontevinaのLV/ULVプラットフォーム向けには実装面積半分の小型パッケージを投入へ Montevinaプラットフォームでは、日本のOEMメーカーが待ち望んだ新しい技術が投入される。それが、従来よりも小型のパッケージだ。 こうしたIntelの方針を強調するかのように、イーデン氏は報道陣に対してMcCaslin(関連記事参照)、およびデジタルホーム事業本部が提供するBlue Dolphin (ブルードルフィン、開発コードネーム)と呼ばれるApple TVにも採用された家電向け低電圧IAソリューションで利用されている小型パッケージを報道陣に公開し、「弊社としては、顧客が望むのであれば、こうしたより小さなパッケージを提供していきたいと考えている」(イーデン氏)と、今後こうしたパッケージを通常のノートPCでも採用する方針があることを明らかにした。 ただし、今のところIntelがLPIAプロセッサで採用されている14×19mmといった小型のパッケージを、通常のノートPC向けのNapaプラットフォームやSanta Rosaプラットフォームで採用されるというロードマップは、OEMメーカーに対しては公開されていないという。 IntelがOEMメーカーに明らかにしているのは、小型パッケージが投入されるのはMontevina世代で、CPU向けには22×22mm、ノースブリッジ向けには27×25mm、サウスブリッジ向けには16×16mmという、従来のNapaプラットフォームに採用されていたCPUの35×35mm、ノースブリッジの37.5×37.5mm、サウスブリッジの31×31mmに比べて圧倒的に小さくなっている新型の小型パッケージだ。これにより、Napaのレギュラーパッケージの実装面積が3チップ合計で3,592.25平方mmであるのに対して、Montevina用の新パッケージは1,415平方mmと半分以下に抑えることができるという。
NapaプラットフォームではIntel 945GMSと呼ばれる、27×27mmの小型ノースブリッジを採用した、低電圧版(LV)/超低電圧版(ULV)CPU向けの小型パッケージが用意されていた。その場合には、実装面積が3チップで2,915平方mmになっていたので、Montevinaの新パッケージはちょうど半分ぐらいと言い換えることができる。ただし、Intel 945GMSではパッケージを小型化するに当たりピン数を、通常版の1,400超のピン数に対して998ピンと減らしているので、メモリバスをシングルチャネルに、外部PCI Express x16を省略するなど機能の省略が行なわれている。 これに対してMontevina用のCantiga-GMSの小型パッケージ(27×25mm)は、機能そのものは上位版のCantiga-GMと同じくデュアルチャネルのDDR3、PCI Express x16のサポートもきちんと用意されているという。この点が、従来のGMSと、Montevina世代のGMSとの大きな違いとなる。 Intelに近い情報筋によれば、こうした小型のパッケージは、まずLV、ULVが利用されるサブノートPC、ミニノートPCのプラットフォーム向けに投入されることになるという。これにより、12型クラスの液晶を搭載するサブノートPCや、10型クラス以下の液晶を搭載したミニノートPCのより軽量小型化が実現できる可能性が高くなってくる。 ただし、通常電圧版(SV版)のMontevinaのリリースが2008年の第2四半期が予定されているのに対して、こうした小型パッケージを採用したLV/ULV版のリリースは1四半期遅れて2008年第3四半期になるという。 ●小型パッケージを利用することでより薄型軽量なサブノート/ミニノートが実現へ Montevina世代でこうした新しい小型パッケージが導入されることは、こうしたソリューションを常に求めてきた日本のOEMベンダにとっては歓迎すべき事だ。実際、そもそもGMSと呼ばれるIntel 915GMSやIntel 945GMSは、日本のOEMベンダと日本のインテルが、Intel本社に対して強力に呼びかけて実現したパッケージであるという背景もある。そうした日本のOEMベンダにとっては、実装面積が半分以下になり、かつデュアルチャネルメモリやPCI Expressにも対応するという新パッケージはまさに歓迎すべき製品と言えるだろう。 しかし、LPIAプラットフォームの記事でも指摘したとおり、小型パッケージを採用することは、それだけマザーボードの基板設計が難しくなるということを意味する。OEMベンダの関係者によれば、Intelはこうした小型パッケージの採用にあたり、ブラインドビアなどと呼ばれる基板を貫通しないビア(穴)をあける技術の採用などを呼びかけているという。ビアとは基板にあける穴のことで、これを利用して各層間の信号が接続されるなどの役割を果たす。こうした技術は、日本のOEMベンダの高密度な基板ではよく採用される技術だが、台湾や中国などのODMベンダはこうした技術をあまり利用しないため、やはり技術の蓄積がないとされている。そうしたODMベンダであっても、こうした小型パッケージが使いこなせるようになるかが1つの課題となるだろう。 ユーザー視点に立てば、Intelの標準パッケージとしてこうした小型パッケージが用意することで、より薄型で軽量なサブノートPC、ミニノートPCが市場に出回る可能性が出てきたと言える。OEMベンダも、次世代サブノート、ミニノートPCのリフレッシュをこの小型パッケージがリリースされるタイミングに合わせてくる可能性は高いと言えるので、そうした製品に興味があるユーザーであれば2008年第3四半期は、おもしろいシーズンとなるのではないだろうか。 □関連記事 (2007年4月18日) [Reported by 笠原一輝]
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