多和田新也のニューアイテム診断室

100ドル未満の「Radeon X1650 Pro」と「Radeon X1300 XT」を試す




 ATIは、8月23日(現地時間)にRadeon X1950 XTXを発表したのと同時に、メインストリーム向けの新製品となる「Radeon X1650 Pro」と「Radeon X1300 XT」を発表している。いずれも100ドル未満となるGPUだ。今回は直接の対抗となるNVIDIA製品2種と比較してみたい。

●製品ラインは違うが両製品ともRadeon X1600ベース

 8月23日に発表されたメインストリーム向けの2製品は、Radeon X1650 Proが99ドル、Radeon X1300 XTが89ドルと、日本では1万円中盤~後半が予想される価格帯の製品だ。そのスペックは表1、2にまとめたとおりである。

【表1】Radeon X1600シリーズ仕様比較
 Radeon X1650 ProRadeon X1600 XTRadeon X1600 Pro
コアクロック600MHz590MHz500MHz
メモリクロック/データレート700MHz/1.4GHz690MHz/1.38GHz390MHz/780MHz
メモリインターフェイス128ビット
バーテックスシェーダユニット数5個
ピクセルシェーダユニット数12個

【表2】Radeon X1300シリーズ仕様比較
 Radeon X1300 XTRadeon X1300 ProRadeon X1300Radeon X1300 HyperMemory
コアクロック500MHz600MHz450MHz450MHz
メモリクロック/データレート400MHz/800MHz400MHz/800MHz250MHz/500MHz500MHz/1GHz
メモリインターフェイス128ビット
バーテックスシェーダユニット数5個2個
ピクセルシェーダユニット数12個4個

 Radeon X1650 Proは、「XT」とは冠せられていないものの、Radeon X1650シリーズという新しい製品ラインになることを意味しているのか、Radeon X1600 XTよりも上位のスペックになっている。トランジスタ数はRadeon X1600 XT/Proと同様に1億5,700万個とされており、コア自体は同一であると想像される。つまり、クロック以外のスペックはRadeon X1600シリーズと同等であり、従来製品のクロックアップ版という製品といえる。

 一方、Radeon X1300 XTは、同じX1300シリーズという同じ製品ラインながら、アグレッシブな変更が加えられている。表2にも示したとおり、バーテックス/ピクセルシェーダのユニット数を、Radeon X1650/X1300シリーズと揃えてきたのだ。しかも、クロックはRadeon X1600 Proを上回っており、上位モデルの製品が下位のセグメントへ降りてきたことを意味している。

 ちなみに、トランジスタ数は1億5,700万個。Radeon X1300 Proなどは1億500万個とされていたので、コア自体が異なることになる。このトランジスタ数の数字とシェーダユニット数などから考えると、Radeon X1300 XTのコアはRadeon X1600そのものであると想像するに難くない。

 さて、今回試用するのは、Sapphire製の同GPU搭載カードである(写真1、2)。この両製品、PCBは共通のものが利用されており、メモリはいずれもGDDR3を256MB搭載する点で共通している。ただし、、ブラケット部のインターフェイスや搭載されているクーラーなど、製品セグメントやGPUによる仕様の違いが明確に見て取れる(写真3~6)。ただ、このクラスの製品でファンレスでない、というのは大きなマイナスイメージになりそうだ。

【写真1】Sapphire製のRadeon X1650 Pro搭載ビデオカード 【写真2】Sapphire製のRadeon X1350 XT搭載ビデオカード 【写真3】Radeon X1650 Pro搭載カードのブラケット部。DVI×2とビデオ出力の構成
【写真4】Radeon X1300 XT搭載カードのブラケット部。D-Sub15ピン、DVI、Sビデオ出力の構成 【写真5】Radeon X1650 Pro搭載カードのクーラー。銅製ヒートシンクとブロアタイプのファンを組み合わせたもの 【写真6】Radeon X1300 XT搭載カードのクーラー。こちらはアルミ製ヒートシンクと軸流タイプのファンを組み合わせている

 Radeon X1650 Proの動作クロックはCATALYST Control CenterのATI OverDriveから確認すると、2D時にコア594MHz、メモリ約1.39GHz(693MHz DDR)、3D時にコア587MHz、メモリ約1.39GHz(693MHz DDR)となっており、3D時にコアクロックが下がるという不思議な仕様になっている(画面1)。とはいっても、若干低い数値にはなっているものの、ほぼ定格動作といって差し支えないクロックとなる。

 一方のRadeon X1300 XTは、ATI Over Driveが利用できないため、2D表示中のクロックしか確認できなかったが、そのクロックがコア574MHz、メモリ1.39GHz(693MHz DDR)となっている。本製品はオーバークロック仕様であるため、Radeon X1650 Proに非常に近いクロックで動作していることになる。また、ATI OverDriveが利用できないために、クロックダウンしての検証は行なえなかった。

【画面1】Radeon X1650 Pro搭載カードの動作クロック。3D時にコア587MHz、メモリ約1.39GHz(693MHz DDR)となる 【画面2】Radeon X1300 XTはATI OverDriveが利用できないため2D表示中のクロックの確認に留まるが、コア574MHz、メモリ1.39GHz(693MHz DDR)となっている

●同セグメントのNVIDIA製品とパフォーマンスを比較

 それでは、パフォーマンスの検証を行なってみたい。用意した環境は表3のとおり。比較対象のNVIDIA製品は、同価格帯製品となるGeForce 7600 GSとGeForce 7300 GTとした。製品はいずれもELSA製品を借用している。


【表3】テスト環境
 RADEON X1650 Pro(256MB)
RADEON X1300 XT(256MB)
GeForce 7600 GS(256MB)
GeForce 7300 GT(256MB)
VGA DriverCATALYST 6.7ForceWare 91.47
マザーボードASUSTeK M2N32-SLI Deluxe(nForce 590 SLI)
CPUAthlon 64 FX-62
メモリPC6400 DDR2 SDRAM 512MB×2(CL=5)
HDDHGST Deskstar T7K250(HDT722525DLA380)
OSWindows XP Professional(ServicePack 2,DirectX 9.0c)

【写真7】比較用に利用した、ELSAのGeForce 7600 GS搭載カード「GLADIAC 776 GS」(左)と、GeForce 7300 GT搭載カード「GLADIAC 573 GT」(右)

 では、まずは消費電力の計測結果から紹介したい(グラフ1)。アイドル時こそ横並びの数値となったが、ピーク時はATI製品、NVIDIA製品ではっきりと数字が分かれた。この消費電力の差が、両製品のファンの有無にもつながっているのではないだろうか。

 もちろん、ATI両製品にはファンが付いているという面で、GPU以外の消費電力が加算されてしまっているわけだが、ファンの消費電力は5W未満と見ていいと思われる。そもそもビデオカード全体の消費電力として見た場合は、ファンの有無も重要な要素といえるので、この点においてはNVIDIA両製品に分があるといっていいだろう。


【グラフ1】各ビデオカード使用時の消費電力

 続いては3DMarkシリーズの「3DMark06」(グラフ2~4)、「3DMark05」(グラフ5)、「3DMark03」(グラフ6)のスコアを紹介したい。

 まずRadeon X1650 Proについてだが、一部のテストではGeForce 7600 GSに劣るスコアはあるものの、ほぼ完勝といって良い雰囲気だ。両製品の善し悪しの傾向ははっきりせず、3DMark06のShaderModel 2.0のテストのように高負荷でGeForce 7600 GSが有利なものもあれば、3DMark03では逆に高負荷でRadeon X1650 Proが安定している。このあたりは製品の得手不得手を感じさせる結果だ。

 一方のRadeon X1300 XTだが、オーバークロック仕様の製品ということもあって、GeForce 7600 GSすら上回る結果が多い。動作クロックがRadeon X1650 Proに近いことは先述したが、スコアもそれに近いものとなっており、残念ながらGeForce 7300 GTとの直接の比較は難しい結果に終わってしまった。

【グラフ2】3DMark06 Build 1.0.2
【グラフ3】3DMark06 Build 1.0.2(SM2.0)
【グラフ4】3DMark06 Build 1.0.2(HDR/SM3.0)
【グラフ5】3DMark05 Build 1.2.0
【グラフ6】3DMark03 Build 3.6.0

 さて、続いては実際のゲームを利用した性能測定を行いたい。テストは、「Splinter Cell Chaos Theory」(グラフ7)、「F.E.A.R.」(グラフ8)、「DOOM3」(グラフ9)である。普段は「Call of Duty 2」も実施しているが、前回の記事同様、ATI両製品で正しく動作しなかった。今回は主題となる製品の測定ができないことになるので、ここでは割愛している。

 さて、Radeon X1650 ProとGeForce 7600 GSの比較は、3DMarkシリーズよりも傾向がはっきりしてきている。低負荷の条件ではGeForce 7600 GSのスコアが良いこともあるが、負荷が高まるにつれてRadeon X1650 Proが優勢に立つ。このクラスのビデオカードではSXGA以上で快適に楽しむのは難しいかも知れないが、それでも1段クオリティを上げる余力があるというのは重要な差となりそうだ。

【グラフ7】Splinter Cell Chaos Theory(HDR有効)
【グラフ8】F.E.A.R.
【グラフ9】DOOM3

●1万円台後半のセグメントで差をつけたATI

 以上のとおり結果を見てきたが、とりあえずRadeon X1650 Proについては、同価格帯のGeForce 7600 GSを上回る傾向にあることは間違いないだろう。負荷が低い状態では、アプリケーションによってGeForce 7600 GSが上回ることもあるが、安定感ではRadeon X1650 Proに分がある印象だ。

 一方、今回のテスト機材では正当な評価が難しいRadeon X1300 XTであるが、今回のSapphire製品だけでなく、GeCubeもオーバークロック仕様の製品を予定している。製品として初出となる段階で早くもオーバークロック仕様がラインナップされているということは、これに追従するメーカーも現れてくるだろう。そうなれば、決して珍しい製品という存在にはならない可能性もある。

 このときに、価格面にどの程度の上乗せがあるかは未知数だが、少なくともRadeon X1650 Proよりは安価に設定されるだろう。同じ価格になってしまうと、GPUのネームバリューでRadeon X1650 Proという上位モデルのほうが人気を集めるからだ。

 もちろん、消費電力の面ではNVIDIA製品に分があるので、2D使用がメインのユーザーにはお勧めしづらいが、上記のような予想が当たれば、オーバークロック仕様のRadeon X1300 XTという選択肢は、ライトなゲームユーザーにとって面白い選択肢となるのではないだろうか。パフォーマンス面では1万円台中盤~後半のセグメントはATIが足を固めた印象だ。

□関連記事
【8月23日】ATI、2GHz GDDR4搭載のRadeon X1950 XTX
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0823/ati.htm
【4月11日】【多和田】1スロットタイプでファンレス動作も可能な「GeForce 7600 GS」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0411/tawada73.htm

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(2006年9月11日)

[Text by 多和田新也]


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