多和田新也のニューアイテム診断室

「GeForce 7900 GS」と「Radeon X1900 XT 256MB」
~続々登場のローコスト&ハイエンドGPUを検証




 先日、ATIはハイエンドGPUの新モデルとなる「Radeon X1950 XTX」を発表したが、それと同時に、従来モデル「Radeon X1900 XT」のビデオメモリ256MB版もラインナップに追加した。また、NVIDIAは9月6日、GeForce 7900シリーズの最廉価モデル「GeForce 7900 GS」を発表。200ドル前後のハイエンドGPUのラインナップが充実してきている。ここでは、上記2モデルを中心に性能を比較してみたい。

●メモリ容量を減らしたX1900 XTとシェーダを制限する7900 GS

 まずは、Radeon X1900 XT 256MBから簡単に紹介していきたい(写真1、2)。この製品は、今年1月に発表されたRadeon X1900 XTのメモリ容量を512MBから256MBへ減らしただけの製品である。クーラーも従来のRadeon X1900 XTと同じタイプが採用されている。

 コアクロックは625MHz、メモリクロックは1.45GHz(725MHz DDR)、ピクセルシェーダユニット48個、バーテックスシェーダユニット8個、テクスチャユニット16個といった仕様も、Radeon X1900 XT(512MB)と同じ(画面1)。

 価格は279ドルとなっており、日本では3万円台中盤から後半が予想される製品だ。今回、比較検証する製品の中では、やや割高感もあるが、安くても4万円後半となっていた512MB版に比べて求めやすい価格帯になっている。

【写真1】Radeon X1900 XT 256MBのリファレンスボード。外観は512MB版と同じ 【写真2】ブラケット部はDVI×2とビデオ出力の構成 【画面1】3D描画時にコア621MHz、メモリ1.44GHz(720MHz DDR)になる設定で、定格に近い値になっている

 もう一方のGeForce 7900 GSの主な仕様は表1にまとめてみた。こちらは、GeForce 7900 GTをベースに、ピクセルシェーダユニットとバーテックスシェーダユニットを削減したのみで、コアクロックやメモリ帯域幅は共通となっている。

 今回のテストにあたっては、XFXの「GF7900GS 480M 256MB DDR3 DUO DVI TV XT」を借用した(写真3、4)。カードのデザインはXFX社がアレンジしているようだが、クーラーは従来のGeForce 7900 GTのリファレンスボードに取り付けられていたのと同じものが採用されている(写真5)。

 ただ、この製品名から分かるとおり、本製品は定格動作ではなく、オーバークロック仕様で販売される製品だ。具体的にはコアクロック480MHz、メモリクロック1.4GHz(700MHz DDR)で動作する(画面2)。そのため、後に行なうテストでは、NVIDIA Control Panelを利用してコアクロック450MHz、メモリクロック1.32GHz(660MHz DDR)の定格動作を指定した場合でもベンチマークを実施している(画面3)。

 ちなみに、NVIDIAが発表しているGeForce 7900 GSの価格は199ドル。日本においては、おそらく2万円半ばから後半ぐらいになるかと想像される価格だ。従来、この価格帯は、1セグメント下のGeForce 7600 GTが担ってきた価格帯であり、1セグメント上の製品としてはインパクトが大きく、アグレッシブな価格という印象を受ける。

【表1】GeForce 7900シリーズ仕様比較
  GeForce 7900 GTX GeForce 7900 GT GeForce 7900 GS
コアクロック 650MHz 450MHz
メモリクロック/データレート 800MHz/1.6GHz 660MHz/1.32GHz
メモリインターフェイス 256bit
メモリ容量 512MB 256MB
バーテックスシェーダユニット数 8基 7基
バーテックスシェーダクロック 700MHz 470MHz
ピクセルシェーダユニット数 24基 20基
ROPユニット数 16基
公称消費電力 120W 82W

【写真3】GeForce 7900 GSを搭載する、XFXの「GF7900GS 480M 256MB DDR3 DUO DVI TV XT」 【写真4】ブラケット部はDVI×2とビデオ出力。DVI端子は2基ともにDualLink対応
【画面2】XFXの「GF7900GS 480M 256MB DDR3 DUO DVI TV XT」はオーバークロック仕様の製品のため、コア480MHz、メモリ1.4GHz(700MHz DDR)で動作する 【画面3】後述のテストでは、NVIDIA Control Panelを使って、定格動作のコア450MHz、メモリ1.32GHz(660MHz DDR)での検証も加えている

●X1900 XT 256MBと7900 GSのパフォーマンスを検証

 それでは、さっそくベンチマークの結果をお届けしたい。用意した環境と比較対象は表2の通りである。GeForce 7900 GTはGeForce 7900 GSとの比較だけでなく、259ドルというRadeon X1900 XT 256MBよりも、やや安いが似たような価格帯の製品という意味でも用意している。また、GeForce 7900 GSとの比較に、2万5千円から2万円後半程度の価格帯でのRadeon X1800 GTOを用いている。

 なお、GeForce 7900 GSに関しては先述のとおり、XFXの製品に適用されているオーバークロック状態での検証に加えて、定格動作での検証も行なっているほか、SLI構成時のパフォーマンスも紹介する。

 ドライバはGeForce 7900両製品について、GeForce 7900 GS対応のForceWare 91.47を使用。その他の環境については、前回紹介したRadeon X1950 XTXに合わせている。なお、グラフ中、(OC)とあるのは先述のとおり、XFXのオーバークロック仕様のまま計測した値である。

【表2】テスト環境
  GeForce 7900 GS(256MB)
GeForce 7900 GT(256MB)
Radeon X1900 XT 256MB
Radeon X1800 GTO(256MB)
VGA Driver ForceWare 91.47 CATALYST 6.7
マザーボード ASUSTeK M2N32-SLI Deluxe(nForce 590 SLI)
CPU Athlon 64 FX-62
メモリ PC2-6400 DDR SDRAM 512MB×2(CL=5)
HDD HGST Deskstar T7K250(HDT722525DLA380)
OS Windows XP Professional(ServicePack 2/DirectX 9.0c)

 では、まず各ビデオカード使用時の消費電力からチェックしておきたい(グラフ1)。GeForce 7900 GSのSLI構成は、今回のテスト対象の中では特殊な例といえる存在だが、それでもピーク時の消費電力はRadeon X1900 XT 256MBと同等程度に収まっている。このあたり、ビデオカード2枚を利用しても消費電力を抑制できると見ることもできるし、Radeon X1900 XT 256MBの消費電力が大きいと見ることもできる。

 GeForce 7900 GSの単体は、ピーク時でもGeForce 7900 GTと同等という結果になった。オーバークロックするとGeForce 7900 GTよりも多少大きめにはなるあたりから見ても、GeForce 7900 GTとGSの消費電力はクロックが同じなので同等程度となる、という結論でいいだろう。

【グラフ1】各ビデオカード使用時の消費電力

 ここからはベンチマークの結果を紹介していくが、まずは3DMarkシリーズの「3DMark06」(グラフ2~4)、「3DMark05」(グラフ5)、「3DMark03」(グラフ6)である。

 結果を見ると、さすがにGeForce 7900 GSをSLIで利用したときのパフォーマンスは飛び抜けている。価格は199ドル×2枚ということになるので、コスト面では不利が大きいが、パフォーマンス対消費電力の面では魅力的なアイテムという印象だ。

 Radeon X1900 XT 256MBは、3DMark03では苦戦も見られるものの、今回テストしているビデオカード単体のなかではもっとも良い性能といっていいだろう。今回のテスト対象中、価格面ではもっとも高価な製品とはなるが、そのぶんパフォーマンス面ではきっちり結果を出しているといえる。

 GeForce 7900 GSは、やはりGeForce 7900 GTよりやや遅い結果に収まっている。シェーダユニット数の削減がパフォーマンスにも影響をしているわけだ。と言っても、その差は1割未満。259ドルのGeForce 7900 GTと199ドルのGeForce 7900 GSという価格差からすれば、コストパフォーマンスは良好なのではないだろうか。また、同価格帯での販売が予想されるRadeon X1800 GTOとの比較では、GeForce 7900 GSが明確な優位性を示している。

 このほかに、興味深いのはGeForce 7900 GTとオーバークロック版GeForce 7900 GSを比較した結果だ。低負荷の条件では同等で、高負荷ではオーバークロックしたGeForce 7900 GSが良好な結果を示す傾向にあるのだ。つまり、シェーダユニット数の削減はクロックを多少アップするだけでカバーできるシチュエーションがあることを表している。

【グラフ2】3DMark06 Build 1.0.2
【グラフ3】3DMark06 Build 1.0.2(SM2.0)
【グラフ4】3DMark06 Build 1.0.2(HDR/SM3.0)
【グラフ5】3DMark05 Build 1.2.0
【グラフ6】3DMark03 Build 3.6.0

 さて、このほかは実際のゲームを利用したベンチマークである。テストしたのは、「Splinter Cell Chaos Theory」(グラフ7)、「Call of Duty 2」(グラフ8)、「F.E.A.R.」(グラフ9)、「DOOM3」(グラフ10)の4種類。

 なお、今回のテスト中、なぜかRadeonの2製品のみ、何度リトライしてもCall of Duty 2のタイムデモが完走しなかった。別バージョンのドライバを入れ直すなどしても同じ結果であったので、むしろ前回のRadeon X1950 XTXで動作したことのほうが不思議な状態に陥っているのだが、このような現象が発生したためグラフからは割愛している。

 こちらの結果もGeForce 7900 GSのSLI構成は優秀な結果だが、単体での結果はやや苦戦し、GeForce 7900 GTとの差が明確に付いているシーンが増えている。とはいえ、Radeon X1800 GTOの差は明確で、この価格帯においては、現時点ではもっとも良い性能を期待できる製品という評価はできる。

 Radeon X1900 XTは、やはり価格どおり、一枚上手の製品という印象を受ける。とくに高解像度でGeForce 7900 GTとの差を広げるあたりに、負荷の高い描画処理をさせたときの安心感がある製品だ。

【グラフ7】Splinter Cell Chaos Theory(HDR有効)
【グラフ8】Call of Duty 2
【グラフ9】F.E.A.R.
【グラフ10】DOOM3

●2万円台、3万円台それぞれの最有力製品

 ATIとNVIDIAのように同じジャンルに強力なライバル関係が存在すると、同価格帯で後から出した製品が良い性能を出すという流れが定番になっているが、今回の結果も、この流れに沿った結果が出たといえるだろう。

 Radeon X1900 XT 256MBは、GeForce 7900 GTと比較して、不得手なアプリケーションであっても高負荷の条件では1割以上の性能向上を見せているし、テストによっては5割以上の性能向上となる状況もある。消費電力の大きさに難点はあるものの、3万円台が見込まれる製品としては優秀な性能といっていいだろう。

 GeForce 7900 GSは、さらに高い魅力を持った製品といえる。2万円台の製品としては抜群の性能といって差し支えないし、消費電力も抑えられている。価格、性能、消費電力がユーザーに良好なバランスを持っており、ハイエンドGPUにはちょっと手が出ないが良い性能のビデオカードを求めている人のニーズを満たせるアイテムだ。これはヒット製品となるのではないだろうか。

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【8月30日】【多和田】GDDR4の採用で進化を遂げた「Radeon X1950 XTX」
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【8月23日】ATI、2GHz GDDR4搭載のRadeon X1950 XTX
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【3月10日】90nm化でクロックアップしたGeForce 7900
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(2006年9月7日)

[Text by 多和田新也]


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