すでに店頭でも搭載ビデオカードの販売が始まっているが、NVIDIAは3月22日、メインストリーム向けGPUの下位モデルとなる「GeForce 7600 GS」を発表した。このクラスでは価格、性能などのバランスが求められることもあって、先だって発表した「GeForce 7600 GT」に続くラインナップを歓迎する人は多いだろう。ここでは本製品のパフォーマンス面を中心に検証を行なってみたい。 ●GeForce 7600 GTのクロックダウン版 発表時のニュース記事にある通り、GeForce 7600 GSはコアクロック400MHz、メモリクロック800MHzでの動作となる。GeForce 7600 GTとの差は表1にまとめた通りで、シェーダユニット数などは変更されておらず、違いは動作クロックを落としたのみということになる。 当然ながら、GeForce 7600 GTとは同じプロセスで製造されていると想像され、消費電力や発熱が抑えられているのは間違いない。今回のテストでは、Leadtekの「WinFast PX7600GS TDH」をテストに使用していた。
本製品は、極めてシンプルなヒートシンクのみのクーラーとなっている(写真1、2)。実際に、ビデオカードのみを変更して、PC全体の消費電力をワットチェッカーで計測してみると、3DMark06実行時のピーク消費電力はGeForce 7600 GS使用時が155W、GeForce 7600 GT使用時が172Wとなった。形状が近いクーラーを搭載したGeForce 7600 GT製品が存在しないため発熱の比較は行なっていないが、消費電力とともに下がっているのは間違いないだろう。 GeForce 6600 GTにもファンレス製品は存在したが、2スロットを占有するような大型のヒートシンクを搭載しているものがほとんどであった。つまり、GeForce 6600以下のグレードに限られてきた1スロットで収まるシンプルなファンレス製品に、GeForce 7シリーズのラインナップが追加されたわけだ。 WinFast PX7600GS TDHの入出力端子はDVI×2とビデオ出力端子の構成になっている(写真3)。DVI+D-Sub15ピンのレイアウトを採った製品も登場しており、購入時には注意を払いたい点となっている。 コアクロック、メモリクロックは定格どおり動作しており、2D/3D時でクロックが切り替えられることなく、一定のクロックで動作していた。 ●メインストリーム向けビデオカードをベンチマークで比較 ここからは、ベンチマークなどを利用してGeForce 7600 GSのパフォーマンスを見てみたい。比較対象として用意したのは、同じメインストリーム向けGeForce 7600 GT、GeForce 6600 GT、ATIのRadeon X1600 XTを搭載した各製品だ(写真4~6)。テスト環境は表2の通りである。
まずは、3DMark06の結果である(グラフ1~3)。GeForce 7600 GSは、GeForce 7600 GTに対してかなりの差をつけられているが、コア、メモリともにクロックが落とされていることから、自然な結果といえる。また、Radeon X1600 XTにも劣る。もっとも、価格帯ではGeForce 7600 GTとGSの間に位置しており、その点では妥当ともいえる結果だ。 一方、GeForce 6600 GTに対しては大きく優位性を持つ結果を見せている。特にシェーダユニットがGeForce 6600 GTより多い点が結果に結びついたのだろう。GeForce 6600 GTはメインストリームの上位に位置付けられていた製品だが、世代交代により1つ上の性能が、下のクラスの製品から得られるようになってきたことが確認できる。
続く、3DMark05(グラフ4)、3DMark03(グラフ5)の結果も、スコア差の大小はあるものの、優劣の位置付けについては同じ結果といえる。だが、3DMark03のフィルタ適用なしの条件では、Radeon X1600 XTと同等に近いスコアを出しており、描画内容や条件によっては良い勝負ができることが伺える。
ここからは実際のゲームエンジンを利用したベンチマークを実施したい。今回より、新たなテストとして「Splinter Cell Chaos Theory」(グラフ6)、「Call of Duty 2」(グラフ7)、「F.E.A.R.」(グラフ8)の3つを追加している。従来より実施している「DOOM3」(グラフ9)、「AquaMark3」(グラフ10)の結果も掲載している。 なお、Splinter Cell Chaos Theoryに関しては、HDR描画のオプションを有効にして計測しており、この場合GeForceシリーズではアンチエイリアスが利用できないのでテストから省いている。 まず、GeForce 7600 GTとGSの差という観点から結果を見てみると、GeForce 7600 GSの結果は、GeForce 7600 GTに対して差が小さいところで80%程度出ているが、多くは60~70%程度に留まっており、その性能差は埋めがたいものであることがよく分かる。 GeForce 6600 GTとの比較では、もっとも大きな差がついたのはCall of Duty 2で、ここでは50%程度の性能向上を見せている。そのほかのところでも、おおよそ10%程度はスコアが向上しており、それほど大きいとはいえないが安定して上位の性能が手に入ると思っていいだろう。 最後にRadeon X1600 XTとの比較であるが、ここは3DMarkシリーズの結果で見えてきたイメージ以上の良い結果を見せているといっていいだろう。大きなスコア差をつけられたのは、F.E.A.R.で描画負荷を高めた場合ぐらいで、そのほかは極端な差をつけられていないばかりか、上回る結果も多い。 実勢価格ではGeForce 7600 GSのほうが5,000円ほど安価で、このパフォーマンスを出せるのは嬉しい誤算といえるのではないだろうか。後発製品という強みを、しっかり発揮してきた製品ということがいえる。
●価格で選ぶか、パフォーマンスで選ぶか 以上のとおり、GeForce 7600 GSを見てみた。パフォーマンス面では、GeForce 7600 GTとははっきりした優劣がついているが、Radeon X1600 XTとは甲乙つけがたく、GeForce 6600 GTからはわずかながらも安定した向上、といったところだ。相対的なコストパフォーマンスでは、Radeon X1600 XTやGeForce 6600 GT以上のものを持っているといっていい。 ただ、本製品をアップグレードパスとしてみた場合、難しい製品という印象も残る。例えば、パフォーマンスの観点で製品を選ぶなら、プラス約1万円でGeForce 7600 GTを購入したほうが満足の度合いは大きいだろうし、パフォーマンスは問わずPureVideoなどの機能面の魅力で選ぶのならば、より安価なGeForce 7300シリーズという選択肢があるからだ。 現実的に考えると、GeForce 6600 GTからのアップグレードパスとしては少々頼りない感じがあるので、事実上、GeForce 6600無印クラスからのアップグレードという例が多くなるのだろう。 そういう意味では、新規にPCを組む人やOEMメーカーにとっての選択肢の広がりという意義が、最も重要なのではないかと感じられる。GeForce 7600 GTとはパフォーマンスでは劣るものの、1スロットでファンレスができる発熱や消費電力、約1万円安価という魅力を持っており、製品の性格がはっきり分かれている。 このことから、GeForce 7600 GTの下というよりは、むしろ安価な別の製品と表現したほうが妥当である。これは筆者の勝手な想像であるが、だからこそ、はっきり上下関係が見えてしまうGeForce 7600無印ではなく、GSという名前が付けられているのではないだろうか。 製品ごとの性格の違いをしっかり把握し、より自分のニーズに合うビデオカードを選択することで、高い満足度が得られるわけで、そうしたユーザーのニーズを満たすために新たに追加された製品として、GeForce 7600 GSはいいところを突いてきた製品という印象だ。 □関連記事 (2006年4月11日) [Text by 多和田新也]
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