IntelはマルチコアCPUを今年第2四半期に投入すると公表していたが、ついに実際の製品が姿を表した。今年3月に米サンフランシスコで行なわれたIDF Spring 2005などで製品名が発表されていた「Pentium Extreme Edition 840」の評価キットを入手できたので、そのファーストレポートをお届けする。なおベンチマークの結果については、近日中に改めてお届けする。 ●デュアルコア+HyperThreadingで計4個の論理プロセッサが稼動 今回入手した「Pentium Extreme Edition 840」(以下Pentium XE 840)は、Intelのクライアントデスクトップ向けとして初めてとなるデュアルコアCPUである。その特徴やスペックは画面1、表1に示したとおり。 【表1】Pentium XE、Pentium 4のスペック比較
動作クロックは3.20GHzで、従来のPentium 4 Extreme Edition 3.73GHz(以下Pentium 4 XE 3.73GHz)と比較して、かなりダウンした。Pentium 4 Extreme Edition 3.73GHzが発表時の報道向け説明会では「Extreme Editionを使うユーザー層には、まだまだ実クロックの価値観が大きい」として製品名の実クロック表示を続けられていたが、Pentium XEではついにプロセッサナンバが付記される格好となった。具体的な理由は明らかにされていないが、このクロックをダウンさせたという点が影響していると思われる。 FSBは800MHzと、これも従来のPentium 4 XE 3.73GHzの1,066MHzから低下させられた。Pentium XE 840は(現時点では正式には公表されてはいないが)「Smithfield」のコードネームを持つコアをベースとしているとされる。このSmithfiledと従来のPrescottコアPentium 4のブロックダイヤグラムは画面2、画面3に示した通りで、Smithfieldでは、各コアがシステムバスを持ち、それを連結するような格好でチップセットへ接続される。ここがボトルネックになり、FSBが引き下げられわけだ。また、各システムバスに流れるデータを調整するユニットなども備えられていない点も気になるところで、このあたりはベンチマークで後々検証できればと思っている。
キャッシュは、各コアともL1に16KB、L2に1MBを備える。L2キャッシュはコア1つあたりで見ると、Pentium 4 XE 3.73GHzから半減したが、合計では同じ容量ということになる。 ちなみにPentium XE 840のダイサイズは約206平方mmで、トランジスタ数は2億3,000万個。Pentium 4 XE 3.73GHzはダイサイズが135平方mm、トランジスタ数が1億6,900万個となる。Smithfieldは2個のPrescottコアを収めたが、コアあたりのL2キャッシュ容量が減ったため、ダイサイズやトランジスタ数は倍にはなっていない。 パッケージは従来と同様、LGA775が採用される。CPU自体の外観もほとんど変わりがないが、裏面のチップコンデンサの配置は多少変更されている(写真1、2)
さて、Intelのデスクトップ向けデュアルコアCPUには、今回紹介している「Pentium Extreme Editionシリーズ」のほかに「Pentium Dシリーズ」が用意されることは、すでにIDF等のイベントで紹介されている。この両者の違いはHyper-Thredingの有無だ。 Pentium XE 840では、コアを2つ搭載するのに加え、HyperThreadingを備え、合計4個の論理CPUを備えることになる。実際、Windows XPのデバイスマネージャやCPU-Zでも、4個の論理CPUを認識していることが分かる。 ちなみに、CPU-ZのFamily-Model-Stepping欄を見ると、「F-4-4」という値になっている。このうちModel欄は、Northwoodが「2」、DステッピングまでのPrescottが「3」、Eステッピング以降のPrescottが「4」と推移してきた。今回は別の数字になるかと思われたが「4」という数字になっている。この点からも、Prescottをベースにデュアルコア化していることが伺える。
●アイドル時のCPU温度は64度 少し話が逸れたが、4つの論理CPUが4スレッドを同時処理できるという点に戻り、実際にマルチスレッドに対応したCineBench 2003、TMPGEnc 3.0 XPressといったアプリケーションを実行してみた(画面6、7)。
ここでは、4つの論理CPUすべてが並行して、4スレッドを同時処理している様子がわかる。試しに、TMPGEnc 3.0 XPressのマルチスレッド処理を設定でOFFにしてみると(画面8)、2スレッドが動いているように見えるが、グラフの凹凸をよく見ると、これは処理する論理CPUが変化しているだけで、実際に同時に動いているスレッドは1つだけであることが分かる(画面9)。ここではTMPGEnc 3.0 XPressを例に取ったが、マルチスレッド化されていないアプリケーションにおいては、このような動きをするという参考になる。
デュアルコア化で気になる消費電力や発熱についてだが、最大消費電流(ICC max)が125A、熱設計電力(TDP)は125Wとなり、従来のPrescottシングルコア製品を上回る。ただし、今回借用した評価キットで使われているクーラーは、従来のPrescottと同様のものである(写真3)。 CPU温度については、マザーボードのBIOSが制限しているためか、Windows上のハードウェアモニタが一切使えない状態になっている。ただ、BIOS設定画面からは一時的に温度を見ることができた。この状態はアイドルに近い状態と見ていいが、この状態で64度を示している(画面10)。負荷が高まったときの温度は(先述の理由もあり)チェックできていないが、かなりの発熱が予想できそうだ。この点についてもベンチマーク編で検証したいと思う。
●DDR2-667、RAID 5などを新たにサポートするIntel 955X
デュアルコアCPUのPentium XE/Dとともにリリースされるチップセットの1つが「Intel 955X」である。ハイエンド向けチップセットのIntel 925XEの後継にあたるチップセットで、画面11のような特徴を持つ。 Intel 925XEからの変更点をピックアップすると、 ・DDR2-667をサポート である。FSBは800MHzのほか1,066MHzもサポートしているので、従来のPentium 4 XE 3.46/3.73GHzも使用可能だ。ICHにはICH7/ICH7R(Intel 82801GB/GR)が組み合わせられるが、こちらはICH6と比べて、 ・PCI Express x1を4基から6基に拡張 といった変更点が挙げられる。 こうした点を踏まえて実際の製品を紹介したい。今回の評価キットに使用されているマザーボードは、Intelの「D955XBK」である(写真4)。MCH側には従来よりも一回り大きいヒートシンクが搭載され、ICH側にもヒートシンクが搭載されている。このICHはICH7Rである。 PCI Express x16スロットについて見てみると、本製品では1スロットのみを装備している(写真5)。ただし、もう1スロットを搭載できる余地があり、空きパターンとなっていることから、本製品にはPCI Express x16を2スロットを備えたバリエーションモデルが用意されると思われる。ただ、これでSLIが可能かどうかは、これまで公言されておらず、実際の製品を待つ必要がある。 PCI Express x1スロットは、1スロットのみを搭載。このほか、オンボード上のPCI Express接続デバイスとして、Gigabit Ethernetコントローラ「Intel 82573V」を搭載している(写真6)。
ストレージ周りについてだが、RAID機能の強化が大きなポイントだ。従来のICH6Rでは、RAID 0/1のみをサポートし、1つのHDDアレイ内にRAID 0ボリュームとRAID 1ボリュームを混在させる「Matrix RAID」という機能をサポートしていた。ICH7Rでは従来機能に加えて、RAID 5とRAID 10をサポートしたのが特徴となる(画面12)。 このマザーボードと従来製品の違いで、1つ重要なポイントがある。それは電源コネクタだ。メインはすでにIntel 925X/915シリーズ以降で使われている24ピンの電源コネクタで同じである。しかしATX12V電源のコネクタが、これまでの4ピンタイプから8ピンタイプへと変更されている(写真7)。
このコネクタは4ピンタイプのATX12Vも装着することができ、こちらでも動作させられるかのような記述がマニュアルにもあるのだが、Pentium XE 840、Pentium 4 XE 3.73GHzともに8ピンコネクタを接続しなければ起動しなかった。導入にあたっては注意したい点だ。 最後にメモリについて触れておきたい。Intel 955XではDDR2-667サポートと最大メモリ容量が8GBへ拡張されたのが大きなポイントである。借用した評価キットには、Micron製のDDR2-667モジュールが搭載されていた。モジュールの製品名は、「MT8HTF6464AY-667A3」で、片面のみで512MBを搭載するものだ(写真8)。 メモリパラメータは画面13のとおり「5-5-5-15」となっており、前回お伝えしたnForce4 SLI Intel Editionのテストで利用したCorsair製メモリよりも若干遅いセッティングになっている。 なお、本モジュールに搭載されているメモリチップは、同じMicron製の「MT47H64M8BT-3」で、これはIntelのバリデーションを通過済みのチップとなっている(画面14)。 □関連記事 (2005年4月14日) [Text by 多和田新也]
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