Intelは6月22日、LGA775プラットフォームのチップセットとCPUを正式発表した。すでに秋葉原でも販売が開始されているのでご存知の方も多いだろうが、CPUのパッケージの変更、DDR2メモリへの対応、PCI Expressの導入など注目すべき点が多い。 2001年8月にお目見えしたSocket 478からのCPUソケットの変更に留まらない、アーキテクチャの大幅な変化をもたらすプラットフォームとなる。その機能や性能をチェックしていくことにしたい。
●新たなアーキテクチャが満載のIntel 925/915シリーズ 6月22日付けで発表されたLGA775プラットフォームに関わる製品は、チップセットが3製品、CPUが6製品である。まずチップセットについて紹介していくと、「Intel 925X」、「Intel 915P」、「Intel 915G」の3製品である。詳しい仕様は(表1)にまとめたとおりで、ブロック図は図1~3となる。
Intel 925Xはハイエンド、Intel 915P/Gはメインストリーム向けという位置付けは、これまでのIntel 875P/865シリーズと同様である。Intel 925Xは800MHz FSB、DDR2 SDRAMのみをサポートし、さらにメモリアクセスの最適化機能が盛り込まれている。 ちなみに、Intel 875Pには「Performance Acceleration Technology(PAT)」というメモリアクセスのレイテンシを削減する技術が盛り込まれているが、これは800MHz FSBとDDR400の組み合わせにおいて、不必要なクロック調節を省くことでレイテンシを削減する技術である。一方Intel 925Xでは、ちょっと違ったアプローチで最適化が行なわれている。 そのアプローチを示したものが図4だが、1つはメモリアクセスの同期を取るために「メンテナンス・コマンド」というものを挟みこむ。もう1つは、メモリから呼び出されるデータの順序を入れ替えることで効率の良いアクセスが可能になるというものである。つまり、Intel 925Xはメモリアクセスの流れを最適化するアプローチを取っており、Intel 875Pのようにレイテンシを削減する技術とは考え方を異としているわけだ。加えて、Intel 925Xのメモリアクセス最適化技術は、メモリに関わらず利用できるようになっている。 Intel 925Xの特徴は、このほかにECCメモリがサポートされる点で、これはIntel 875P/865シリーズの関係と同様である。 一方のIntel 915P/Gはメインストリーム向けということもあって、広範囲なCPU&メモリサポートが特徴となっている。800/533MHz FSBに対応するほか、DDR2 SDRAMとDDR SDRAMの両方に対応する。 加えて、Intel 915Gはグラフィック機能を内蔵する。内蔵グラフィック機能は「Intel Graphics Media Accelerator 900(GMA900)」と呼ばれるもので、Intel製の統合チップセットとしては初めてDirectX 9に対応するピクセルシェーダユニットを内蔵している(バーテックスシェーダはCPUでエミュレート)。このほか、コアクロックは333MHz(Intel 865Gは266MHz)、フィルレートは最大1.3Gテクセル/sec(同266MT/sec)、最大メモリ容量224MB(同64MB)となっている。また、1080i/720pのHDTV出力や、デュアルディスプレイもサポートする。デュアルディスプレイのセカンダリ出力には、PCI Express x16スロットへ装着するADDカードを利用することができる(写真1、2)。 共通の仕様で押さえておきたいのは、外部AGPが廃止されPCI Express x16が採用されている点だ。AGP 8Xでは上り/下り両方向で共有された2.1GB/secの帯域を持っていたが、PCI Expressでは上り/下りでそれぞれ4GB/secの帯域を持つこととなる。さらに、供給できる電圧もAGP 8Xの25Wから60Wへと大幅と向上する。 ここまではチップセットのノースブリッジ周りの話であるが、これに組み合わされるサウスブリッジには「ICH6シリーズ」が用意される。ICH6は(表2)のとおり4種類がラインナップされ、それぞれRAID機能や無線LAN機能の有無に違いがある。
共通の仕様で押さえておきたいポイントは、つぎのとおりだ
・シリアルATAが4ポートへ増加 ちなみに今回利用する環境では、Intel 925X搭載マザーに「ICH6R」(写真3)、Intel 915G搭載マザーに「ICH6W」(写真4)が組み合わされていた。ただし、ICH6Wには無線コントローラのMAC層のみが実装されているので、別途PHY層のチップを搭載した追加カードを装着する必要がある。 それでは、まずシリアルATAとRAID機能について紹介することにするが、ICH6シリーズではストレージに関する機能に「Intel Matrix Storage Technology」という名称が付けられている(図5)。ここのポイントは2つ。1つはNative Command Queuing(NCQ)への対応である。NCQとはHDDの命令をキューに蓄えていき、HDDの回転やヘッド動作を最小限に抑えるよう命令を並べかえて実行することで、アクセス速度を向上する技術である。ただし、NCQはHDD側の対応も必須である(画面1)。例えばSeagateなどが対応HDDを発表しており、現時点では「将来的に対応可能」という認識でいいだろう。 もう1つのポイントがMatrix RAIDと呼ばれる機能である。これは1組のHDDアレイの中に2つ以上のRAIDボリュームを混在させることができる機能だ。画面2は実際に利用した例だが、ここでは約35GBのHDDを2台用意し、その2台に40GBのRAID 0ボリュームと約15GBのRAID 1ボリュームを構築している。もちろんRAID 1部分のリビルドは可能である。 続いてはHigh Definition Audio(HD Audio)について紹介していこう。HD AudioはAC'97に変わるサウンド機能で、24bit/192kHzの7.1チャネル出力をサポートしているのが大きな特徴である。また、各オーディオ端子の役割を変更できるJack Re-Tasking機能もサポートされる(画面3、4)。ただ、今回試用したIntel 925X搭載マザーでは、コネクタにスピーカーやヘッドホンが装着されたことは認識するものの、役割の変更などは行なえなかった(画面5、6)。ちなみにIntel 915G搭載マザーには「Realtek ALC860」、Intel 925X搭載マザーには「Realtek ALC880」がコーデックチップとして載っており、このあたりに依存しているのかも知れない。 チップセットに関する話の最後に、Gigabit Ethernetの対応について挙げておきたい。Intel 875P/865シリーズには、ノースブリッジにGigabit Ethernet専用ポートの「CSA」が用意されていたが、これはIntel 925X/915シリーズでは排除されている。これはPCIよりも帯域の広いPCI Expressがサポートされたことで不要になったためである。なお、今回の試用機材ではIntel 925X搭載マザーにPCI Express接続のGigabit Ethernetコントローラ「Marvell 88E8050」(写真5)が載っている。
●デスクトップ向けでは初めてプロセッサナンバーを採用 次に、今回発表されたCPUについて紹介していきたい。冒頭で述べたとおり、発表されたCPUは6製品で、Pentium 4 Extreme Editionが1製品含まれる。その一覧と仕様は(表3)のとおりだ。コアが従来と同じGallatin、Prescottであるため、パッケージが変更された以外に大きな違いはない。 今回の発表内容で注目しておきたいのは2つ。1つはプロセッサ・ナンバの導入だ。すでにDothanコアのPentium Mで導入されているプロセッサ・ナンバだが、ついにデスクトップ向けでも導入が始まったわけだ。 メインストリーム向けのPentium 4は「5xxシリーズ」となり、今回発表の製品には560~520が割り当てられている。Pentium 4 Extreme Editionは「7xxシリーズ」となるのだが、今回発表の製品は従来どおり実クロックが、そのまま製品名となっている。PrescottコアをベースとしたExtreme Editionが登場したときに、初めて導入されるのではないかと思われる。 次いで注目しておきたいのが、最高クロックが3.60GHzへと上昇した点だ。Intelでは2004年内にPrescottコアで4GHzを目指すとしており、その第一歩を踏み出したといえるだろう。 ただし、気になるのは発熱で、TDPはついに110Wを超え「115W」とされている。ちなみに、3.40GHz動作のPentium 4 550も同様に「115W」。Socket 478版のPentium 4 3.40E GHzは「103W」である。同様にLGA775版のPentium 4 Extreme Edition 3.40GHzのTDPが「109.6W」で、Socket 478版は「102.9W」であり、いずれもLGA775パッケージとなることでTDPが増えているわけである。
□関連記事 (2004年6月22日) [Text by 多和田新也]
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