レビュー

定格4GHzに達した「Devil's Canyon」ことCore i7-4790K

〜オーバークロックも検証

 Intelが6月4日に発表したLGA1150向けCPU「Devil's Canyon」。その上位モデルであるCore i7-4790Kをテストする機会を得られた。今回は、注目のオーバークロック性能を含めたCore i7-4790Kのベンチマークレポートをお届けする。

定格で4GHzを超えた4コア8スレッドCPU

Core i7-4790K

 Devil's CanyonにはCore i7-4790K、Core i5-4690Kの2製品がラインナップされる。Core i7-4790Kは、Hyper-Threadingテクノロジに対応した4つのCPUコアと、GPUコアIntel HD Graphics 4600を備えたデスクトップCPU。CPUクロックは定格で4GHz、Turbo Boost時の最大で4.4GHz。型番末尾のサフィックス「K」は、CPU倍率や、ベースクロック倍率の情報変更が可能なアンロックモデルであることを示している。

 Devil's Canyonは、22nmプロセスで製造されたHaswellアーキテクチャベースのCPUだが、ヒートスプレッダとCPUダイを熱的に接続するTIM(Thermal Interface Material)を「Next-Generation Polymer Thermal Interface Material」(NGPTIM)に変更して熱輸送効率を改善したことと、CPUパッケージ裏面にキャパシタを追加することで、CPUダイへの電力供給を円滑化したことの2点において、すでに発売されているHaswell/Haswell Refreshの製品とは異なる。これらの改善はオーバークロック動作の改善を目的としたもので、そこからも本製品が従来のKシリーズよりも、オーバークロックに注力したものであることが分かる。

 また、現在までに発表されている2製品では、TDPが88Wに引き上げられた(Haswell/Haswell Refreshの最大は84W)。このTDP引上げを含む仕様変更の影響もあってか、従来と同じLGA1150ソケットを採用するDevil's Canyonだが、IntelとしてはIntel 8シリーズを除く9 シリーズチップセットのみの対応としている。

Core i7-4790K[Engineering Sample](左)とCore i7-4770Kの比較。基板上の電極の配置が異なる
その裏面。キャパシタの配置と数の違いが見て取れる
Core i7-4790KのCPU-Z実行画面。Core Voltageが1.760Vになっているが、コア電圧以外の電圧(恐らくCPU Input Voltage)を拾ってしまっているようだ。CPUコアに1.7V超の電圧が掛かっているわけではない
【表1】CPUの主なスペック

Core i7-4790K Core i7-4790 Core i7-4770K
製造プロセス 22nm 22nm 22nm
開発コードネーム Devil's Canyon Haswell Refresh Haswell
コア数 4 4 4
スレッド数 8 8 8
CPU定格クロック 4.0GHz 3.6GHz 3.5GHz
CPU Turbo Boostクロック 4.4GHz 4.0GHz 3.9GHz
L3キャッシュ 8MB 8MB 8MB
Intel HD Graphics 4600 4600 4600
GPUコアクロック(最大) 1,250MHz 1,200MHz 1,250MHz
TDP 88W 84W 84W
倍率アンロック ×
対応ソケット LGA1150 LGA1150 LGA1150

Core i5-4690K Core i5-4690 Core i5-4670K
製造プロセス 22nm 22nm 22nm
開発コードネーム Devil's Canyon Haswell Refresh Haswell
コア数 4 4 4
スレッド数 4 4 4
CPU定格クロック 3.5GHz 3.5GHz 3.4GHz
CPU Turbo Boostクロック 3.9GHz 3.9GHz 3.8GHz
L3キャッシュ 6MB 6MB 6MB
Intel HD Graphics 4600 4600 4600
GPUコアクロック(最大) 1,200MHz 1,200MHz 1,200MHz
TDP 88W 84W 84W
倍率アンロック ×
対応ソケット LGA1150 LGA1150 LGA1150

テスト環境 〜 全コア4.7GHzオーバークロック時のスコアも測定

 今回Core i7-4790Kをテストするにあたり、壊さないことを条件にオーバークロックを行なう許可が得られたので、定格動作時のスコアに加え、全てのコアを4.7GHzで動作するようオーバークロックした際のベンチマークスコアも取得した。

 オーバークロック動作として設定した4.7GHz動作は、実行した全てのベンチマークテストの中でもっとも負荷の高い「x264 FHD Benchmark」が完走することを基準に、CPUコア電圧[1.375V]、CPU入力電圧[1.80V]、CPU Load-Line Calibration[Level 6]、Internal PLL Overvoltage [Enabled]に調整して実現している。

 なお、ベンチマークスコアについては、Core i7-4790Kの比較対象として、Haswell世代の倍率アンロックCPU「Core i7-4770K」のスコアも測定した。

【表2】テスト機材
CPU Core i7-4790K Core i7-4770K
マザーボード ASUS MAXIMUS VII GENE
メモリ DDR3-1600 8GB×2(9-9-9-24、1.50V)
ストレージ Intel SSD 510 シリーズ 120GB
ビデオカード Radeon R9 290X
グラフィックスドライバ Catalyst 14.4
電源 Antec HCP-1200(1,200W 80PLUS GOLD)
CPUクーラー CRYORIG R1 Universal
OS Windows 8.1 Pro Update 64bit
4.7GHz動作時のCore i7-4790K。負荷時は全CPUコアが4.7GHzで動作するよう設定している
テストに用いたIntel Z97 Expressチップセット搭載マザーボード「ASUS MAXIMUS VII GENE」

CPU処理中心のベンチマークテスト

 まず、CPU処理とメモリ周りの性能を測定するベンチマークテストの結果から確認していく。実施したベンチマークテストは、「SiSoftware Sandra 2014」(グラフ1、2、3、7、8、9、10)、「CINEBENCH R15」(グラフ4)、「x264 FHD Benchmark 1.01」(グラフ5)、「Super PI」(グラフ6)、「PCMark 8」(グラフ11)、「PCMark7」(グラフ12)。

 Sandra 2014のProcessor系テストやx264 FHD Benchmarkなど、CPUの全コア全スレッドを利用するベンチマークテストでは、Core i7-4790KがCore i7-4770Kに約13〜15%程度の差をつけた。Core i7-4770Kの4コア利用時のTurbo Boost倍率が37倍(3.7GHz)なのに対し、Core i7-4790Kは42倍(4.2GHz)と、約13.5%高いクロックで動作する。Turbo Boostは常時最大クロックで動作するわけではないのだが、両CPU間のスコア差は、クロック差に準じたものであると言って差し支えなさそうだ。

 シングルコアの性能を測定するCINEBENCH R15のSingle CoreとSuper PIでも、Core i7-4790KはCore i7-4770Kを10〜12%上回った。こちらも両CPUのTurbo Boost時最大動作クロックの差とスコア差がほぼ一致しており、HaswellとDevil's Canyonはクロックあたりの処理能力が同等であることが確認できる。

【グラフ1】Sandra 2014 20.35(Processor Arithmetic)
【グラフ2】Sandra 2014 20.35(Processor Multi-Media)
【グラフ3】Sandra 2014 20.35(Cryptography)
【グラフ4】CINEBENCH R15
【グラフ5】x264 FHD Benchmark 1.01
【グラフ6】Super PI

 同一のメモリを組み合わせた場合のメモリ帯域(Memory Bandwidth)は、200MHzほどCore i7-4790Kが上回っているが、その差は1%程度と誤差レベルに過ぎない。両CPUが備えるメモリコントローラの実効帯域は同程度であると言って良いだろう。

 キャッシュ速度に関しては、L1、L2キャッシュの領域で10%強の差がついているが、これはCPUクロック差とほぼ一致している。キャッシュについても、HaswellとDevil's Canyonの間に動作クロック差以外の有意な差は見られない。

【グラフ7】Sandra 2014 20.35(Memory Bandwidth)
【グラフ8】Sandra 2014 20.35(Cache Bandwidth)
【グラフ9】Sandra 2014 20.35(Cache/Memory Latency - Clock)
【グラフ10】Sandra 2014 20.35(Cache/Memory Latency - nsec)

 PCMarkは、CPU性能だけでなくPCの総合的な性能を測定するベンチマークソフトであるため、ここまでに結果を並べてきたベンチマークテストのように、CPUクロック差とスコア差がほぼ一致するほど素直な結果にはなっていない。とはいえ、PCMark 7のストレージ性能テスト以外は、CPUクロックのスペックに準じた順位となっている。テスト項目によって得手不得手が見られるようなこともなく、同じアーキテクチャをベースにしたCPU同士の比較であることがはっきりと分かる結果だ。

【グラフ11】PCMark 8
【グラフ12】PCMark 7

GPU処理中心のベンチマークテスト

 続いて、3Dベンチマークテストの結果を確認する。実施したベンチマークテストは、「3DMark」(グラフ13、14、15、16)、「3DMark11」(グラフ17)、「3DMark Vantage」(グラフ18)、「3DMark06」(グラフ19)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ20)「ファイナルファンタジーXIV」(グラフ21)、「PSO2ベンチマーク ver 2.0」(グラフ22)。

 今回のテスト環境では、AMDのシングルGPU最上位モデルであるRadeon R9 290Xを搭載している。これほどのハイエンドGPUともなると、負荷の軽いベンチマークテストではCPUがボトルネックとなってしまう。

 今回実施したベンチマークテストでも、3DMark06やPSO2ベンチマークの簡易描画設定3のように、GPU負荷の軽いテストではCPUクロックに応じてスコアに差が表れている。一方、描画負荷の重い3DMark Fire Strikeのようなテストでは、Radeon R9 290Xのポテンシャルが十分に発揮されるため、CPUの違いがスコア差に表れていない。

 120Hzや144Hzといった高速なリフレッシュレートに対応するディスプレイを用意して、高いフレームレートでゲームを楽しむ場合、GPU性能はもちろん重要だが、その性能を十分引き出せる性能がCPUに求められる。そういう観点で見れば、Core i7-4790KはCore i7-4770K以上にゲーミング向けのCPUであると言えるだろう。

【グラフ13】3DMark - Fire Strike[Default]
【グラフ14】3DMark - Sky Diver[Default]
【グラフ15】3DMark - Cloud Gate[Default]
【グラフ16】3DMark - Ice Storm[Default]
【グラフ17】3DMark11[Default]
【グラフ18】3DMark Vantage[Default]
【グラフ19】3DMark 06[Default]
【グラフ20】MHFベンチマーク【大討伐】[フルスクリーン]
【グラフ21】ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編[フルスクリーン]
【グラフ22】PSO2ベンチマーク ver 2.0[1,920×1,080ドット、フルスクリーン]

CPU温度と消費電力

 最後に、CPU温度と各CPU搭載時の消費電力について紹介する。

 まず、CPU温度について、オーバークロック動作の基準とした「x264 FHD Benchmark」実行中の最高温度を「HWMonitor PRO」で測定した。ソフトウェア測定であるため、測定値はCPU内蔵センサーに依存している。このため、Core i7-4770KとCore i7-4790Kの温度は、基準となるべき測定器が異なる条件での測定となる。参考程度のデータとしてもらいたい。

【グラフ23】CPU温度 [室温25℃、CRYORIG R1 Universal利用 ]

 測定の結果、各CPUの温度は、Core i7-4790Kが定格時66℃、オーバークロック時83℃。Core i7-4770Kが60℃となった。全てのCPUコアをフルに活用するx264 FHD Benchmark実行中は、Core i7-4790KがCore i7-4770Kより最大500MHz高いクロックで動作しているので、6℃という温度差はかなり小さく感じられる。

 オーバークロック動作時は80℃台まで温度が上昇しているが、CPUコアに1.375Vの電圧を加えていることを考えれば、新採用のNGPTIMがその効果を発揮しているように見える。

 消費電力については、各ベンチマークテスト実行中の消費電力をサンワサプライのワットチェッカー「TAP-TST5」で測定した。

【グラフ24】システム全体の消費電力

 Core i7-4790Kの消費電力を見てみると、アイドル時の消費電力はCore i7-4770Kより8Wほど高い。CPUの動作をモニタリングした限り、省電力機能は機能しているように見えるのだが、誤差というにはいささか大きな差がついていることは少々気がかりだ。

 一方、ベンチマークテスト実行中の消費電力については、最大で15WほどCore i7-4770Kより高い数値を記録している。CPU系ベンチマークテスト時の消費電力差とスコア差を比べると、スコア差の割に消費電力は低いと言える結果であり、ワット性能ではややCore i7-4790Kが有利と見ることができる。この結果が、CPUパッケージ裏面のキャパシタ追加による恩恵なのか、個体の良し悪しなのかは判断の難しいところだ。

 オーバークロック時については、大幅にCPUクロックとCPUコア電圧を上げていることもあり、CPU系ベンチマークテスト実行時の消費電力が高い。特に、CHINEBENCH R15 - All Coreやx264 FHD Benchmark実行時には、約40%も消費電力が増加している。これは、性能の増加幅を大きく上回っており、明らかにワット性能は低下している。

OCの有無にかかわらず、Intel最速の4コア8スレッドCPU

 以上のベンチマーク結果から、Devil's CanyonがHaswellのオーバークロック特性を改善したモデルであり、CPUコア自体が既存のHaswellアーキテクチャ採用製品と大きく異なる特性を持っているわけでは無いことがわかる。Devil's Canyonは、オーバークロックを行なう際の枷を取り払ったHaswellであると言ってよいだろう。

 Core i7-4790Kの場合、改善されたオーバークロック特性はもちろんセールスポイントとなるのだが、定格時のCPUクロックが、Haswell RefreshのCore i7-4790(定格3.6GHz、最大4GHz)より1割ほど高くなっているため、オーバークロックをしないユーザーにとってもメリットがある。

 4万円弱という価格で販売されるCore i7-4790Kは、オーバークロックするにしろ、しないにしろ、CPU性能を求めるユーザーにとって、この価格帯で最高の選択肢となることは間違いない。

(三門 修太)