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スマホの画面をPC上に表示し、マウス/キーボードで操作できるUSBケーブルを試す

発売中

価格:3,999円

 「スマートフォン-PCミラーリングケーブル DN-84254」(以下、DN-84254)は、PCとスマートフォンをUSBで接続することで、Androidスマートフォンの画面をWindows上に表示し、PCのマウスやキーボードでの操作を可能にするツールだ。上海問屋で扱っており、直販価格は3,999円。

 上海問屋がこの製品の発売を発表した時(1月25日)、好奇心と同時に、具体的にどのような用途で使ったらいいのかという疑問も湧いた。だが、とりもなおさず重要なのは、製品の機能よりも使い勝手で、これ次第で使い道が変わってくるという結論に至り、まず購入して試してみることにした。

 注文したのは1月25日で、翌26日には出荷完了の案内がメールで届いていた。ただし、送り先を会社にしていたので、実際に受け取ったのは週が明けた28日だった。

簡素な製品構成とインストール作業

 製品が入っていたのは、紙製の白箱で、中にはプチプチでくるまれたケーブル本体と、A4ペラの説明書のみ。安価な上級者向け製品なので、こんなものだろう。

 今回、検証に使ったのは、スマートフォンがAndroid 4.0搭載のNTTドコモ「Xperia GX」、PCがCore i5-540M、メモリ4GB、GeForce GT 330M、Windows 7搭載の「VAIO Z VPCZ1」だ。

 PCにケーブルをつなぐと、DN-84254内のストレージエリアが、仮想CD-ROMドライブとして認識される。中には「Android Mirror」というソフトのインストーラーが入っているので、これを実行する。

 本製品の利用に当たっては、スマートフォンのUSBデバッグを有効にしておく必要があり、インストーラーにもその旨を伝えるダイアログが表示されるので、有効にした上で、ケーブルのもう一端にスマートフォンを接続する。

 Nextボタンを押すと、JavaおよびスマートフォンのUSBドライバのインストールが順次始まるが、これらがPCにすでにインストールされている場合は、即座にAndroid Mirrorが起動する。なお、USBドライバは、HTCと京セラ以外の端末の場合は、ユーザーが事前にインストールしておく必要があると書かれている。日常的にPCを使っているユーザーなら、ここまですんなり進められるだろう。

製品パッケージ
中身は本体とマニュアル
本体
一端は通常のUSB Type A
もう一端も通常のMicro USB B
PCにつなぐと、仮想CD-ROMドライブとして認識
ドライブの中身はインストーラーのみ
Android Mirror起動時は、スマートフォンがデバッグモードになっているか確認される
インストール+起動画面

画面描画は遅く、操作には遅延

 Android Mirrorが起動すると、タスクバーにアイコンが常駐するとともに、スマートフォンの画面がウインドウ表示される。

 ちなみに、アイコンを右クリックすると、端末の切断、画面のオフ、プログラムの終了といった機能のほか、ファームウェアの更新チェックを実行できる。試しに更新をかけると、出荷時のバージョン「12.01.0924」に対して、すでに「13.10.0125」という新バージョンが用意されていたので、更新を行なった。おそらく、12.0924は2012年9月24日、13.0125は2013年1月25日を指すものと思われる。つまり最新ファームウェアは、できたばかりのものだ。ただ、更新履歴の情報がないので、何が変わったのかは全く分からない。一応、旧ファームウェアでも軽く触ってみたが、少なくとも体感できるほどの性能の改善はなされていないようだ。

黄色いのがAndroid Mirrorのアイコン
スマートフォンをつなぐと緑色になる。これは待機時の右クリックメニュー
これはアクティブ時の右クリックメニュー
初期ロットだが、すでに新しいファームウェアが用意されていた
Android Mirrorのメイン画面

 メイン画面の上部にはメニューがアイコン表示されており、左から、画面オン/オフ、ホーム、メニュー、戻る、フルスクリーン、入力モードオン/オフ、画面キャプチャ、ボリューム小、ボリューム大、ウインドウ左回転、ウインドウ右回転、テキスト入力ウインドウ表示、設定となっている。Android 4.xならソフトキーが画面に表示されるが、ホームなどのキーが別途あるのは、Android 2.x用だ。

 表示された画面を見て、まず気付いたのが、画面の描画速度が遅いことと、表示色数が少ないことだ。

 描画速度は目測で、10fps以下といったところだろうか。Ivy Bridge+Intel HD Graphics 4000であるCore i5-3317Uを搭載したUltrabook「LIFEBOOK UH75/H」でも試したが、こちらではさらにコマ落ちがひどくなった。また、画面の転送処理などで負荷がかかるためか、スマートフォン自体の描画速度も20fps程度に落ちているように見える。

 表示色数についても仕様が不明なので、見た目での判断となるが、6bitの26万色表示に制限されているようだ(Xperia GXおよび利用しているPCディスプレイは8bit 1,677万色表示対応)。ただ、画面の転送速度を稼ぐための減色だと思われるが、微妙なグラデーションの表現に差が出る程度で、写真などの表示では減色にほとんど気付かない。減色以外に、何か圧縮もかけているとは思うが、画面を見る限り、ブロックノイズなどは皆無で、文字などもくっきり表示されている。

 続いて、触ってみて気付くのが、入力遅延だ。あらゆる操作に対して、反応がコンマ何秒か遅れる。描画速度が10fps程度というのはまだ何とかなったとしても、この反応遅延があるため、ある程度の反応速度が必要とされるゲーム類はプレイ不可能となる。実際に、リズムゲームを試してみたのだが、ほぼゼロ点という悲しい結果に終わってしまった。大きな画面でゲームをしたい場合は、HDMIやMHLなどスマートフォンの画面出力機能(ないものもあるが)を利用した方がいいだろう。

これはXperia GXのホーム画面を端末側でスクリーンショット撮影したもの
こちらはAndroid Mirrorの表示画面のキャプチャ。グラデーションの表現に明らかな差がある。ただし、圧縮ノイズは見られない
こちらはXperia GXで写真を表示し、スクリーンショット撮影したもの
こちらはそのAndroid Mirrorの画面。このような写真では差は分かりにくい
【動画】右がXperia GX本体、左がAndroid Mirrorの画面。動画では分かりづらいが、左ではコマ落ちしている
【動画】入力(タッチ)だけでなく、表示遅延もあるのだが、スマートフォンへの操作に対して、Android Mirrorへのフィードバックが遅れているのが分かる

キーボードによる文字入力は快適の一言

 ここで、Android Mirrorでの操作方法を説明すると、マウスの左クリックはタップ、右クリックは戻る、ホイールはスクロールとして機能し、キーボードによる文字入力もできる。ただし、試した範囲では、ピンチイン/アウトに相当する操作方法は見つけられなかった。

 話を遅延に戻すと、ゲーム以外の通常の画面操作や、ソーシャルアプリのタイムラインを見るといった操作であれば、なんとか実用に耐え得る。だが、文字入力をしようとすると、またもやこの遅延に邪魔され、まともな入力ができない。

 ただし、文字入力については、解決策がある。Android Mirrorの上部に表示されるメニューアイコンの「入力モードに切り替える」を押すと、メニュー欄に文字入力エリアが表示されるのだが、ここには普通のPCソフトと同じ反応速度、操作性で文字を入力できる。また、Androidアプリの入力エリアにキーボードで直接文字入力する場合は、英語でしか入力できないのだが、この入力モードを使うと、PCのIMEを利用できるので、日本語でも中国語でも、自由に入力できる。入力が終わったら、エンターキーを押せば、Androidアプリの画面にその文字列が即座に転送される。

 これは非常に快適だ。ハードウェアキーボードと、ソフトウェアキーボード(フリック含む)では、(ユーザーにもよるが)入力速度と精度に雲泥の差がある。そのため、スマートフォンで長文の入力はなるべくしたくないのだが、キャリアメールなどスマートフォンでしか利用できないアプリで、長文の入力や、文字列のコピー&ペーストをしなければならない時もある。そういう場合、筆者はこれまで、PCで全文章を入力し、それを自分のキャリアメール宛てに送信してから、実際の相手に転送するというもどかしい方法を採っていたのだが、Android Mirrorを使えば、そういった苦労なく文字入力することができる。

 さらに、本ソフトには「外部入力テキストウインドウの表示」という機能もある。入力モードをオンにした時に表示される入力エリアは1行だが、このテキストウインドウは大きな画面に複数行入力できるので、Webやメールなどの長文テキストをコピー&ペーストや、整形といったことも楽にこなすことができる。個人的には、これらのテキスト入力機能がこの製品の真骨頂だと思う。

 ちなみに、Android Mirrorを立ち上げると、スマートフォン側の入力方法が「MctSoftKey」に自動的に切り替わる。この状態では、文字入力はPCのキーボードのみを受け付けるようになる。既存の入力方法にも切り替えはできるので、ソフトキーボードに対して、マウスでフリック入力することもでき、この場合は、直接日本語も入力できる。

「入力モードに切り替える」を押すと、文字入力エリアが表示。ここにはストレスなくキーボードで入力できる
エンターキーを押すと、Androidアプリに即転送される
「外部入力テキストウインドウの表示」機能を使うと、このような文章も扱うことができる
Android Mirror利用時は、MctSoftKeyという入力方法に切り替わる

 このほかの、この製品の挙動について紹介しよう。

 ウインドウのサイズは、基本的に接続端末の解像度で表示しようとするが、液晶の解像度が足りない場合は、自動的に縮小表示する。例えば、Xperia GXは720×1,280ドットあるので、横向きの場合は、フルHDやWUXGAの液晶でドットバイドットの表示ができるが、縦向きでは解像度が足りないので、縮小される。ウインドウの縦横比は変更できないが、液晶の解像度が許す限りの拡大と縮小もできるし、フルスクリーン表示もできる。端末が画面回転をサポートしている場合、Android Mirrorの表示もそれに併せて自動回転するが、強制回転機能もある。

 気になったのは、PCおよびスマートフォン双方におけるシステム負荷の高さ。今回使ったVAIO Zは、CPUが2世代前ではあるが、デュアルコア+Hyper-Threading Technology対応で、まだ現役で使うだけの性能はある。しかし、Android Mirrorを起動すると、CPU負荷が25%程度になる。

 また、スマートフォンは、使用中もPCのUSBポートから500mAの出力で充電されているのだが、画面輝度を最低にして、3Gではなく無線LAN接続にした状態でも、じわりじわりとバッテリ残量が減っていくのだ。

 この製品の使い方として、ソーシャルアプリのタイムラインをPC上に常に表示させておくといったことを考えていた。スマートフォンによっては、500mAの出力で、使いながら充電させることもできるかもしれないが、最近の製品では難しいだろう。というわけで、この使い方を常用するのは無理とは言わないが、敢えてPC上に表示させるメリットは少ないと言える。

 このほか、電話の着信、SMSの受信があった際、通知領域にバルーンで通知する機能がある

 なお、Android Mirrorは、通常のUSBケーブルでは動作しないことも添えておく。

通常のソフトのように、ウインドウの端をドラッグすると、ウインドウサイズを変更できるが、その際に、実際のスマートフォンの解像度に対して何%の大きさなのかがリアルタイム表示される
Android MirrorはJavaで動作しているが、そこそこ負荷が高い
グラフのオレンジ色の部分が、本製品利用時のバッテリ残量の推移。充電しながらも、徐々に減って行っているのが分かる

まとめ

 まとめると、本製品は、スマートフォン上のアプリで、長文テキストを入力したい場合に威力を発揮する。PCのブラウザで調べた情報を、コピー&ペーストしてまとめた文書をスマートフォンでやりとりしたい場合にも威力を発揮するだろう。

 ただ、個人的には、それ以外のうまい用途が見つけられなかった。HDMIやMHL出力のない端末のユーザーなら、大型TVに映して、迫力を増すことに魅力を感じるかもしれないが、コマ落ちや遅延のため、動画やゲームにはちょっと向かないというのが率直な感想だ。

 とはいえ、これはあくまでも個人的な感想。ユーザーによっては、ほかの用途があるかもしれないし、価格も安いので、上級ユーザーなら物は試しにと言うことで、とりあえず買って遊んでみるのもありだろう。

 ただ、残念なことに1月28日の段階で製品は売り切れとなり、この原稿を書いている29日でも再入荷されていないので、欲しいユーザーは、今しばらく待つ必要があるようだ。

(若杉 紀彦)