アイ・オーのUSB 3.0ディスプレイアダプタ「USB-RGB3/D」を試す

USB-RGB3/D

発売中
価格:11,300円



 株式会社アイ・オー・データ機器から、USB 3.0対応のディスプレイアダプタ「USB-RGB3/D」が発売された。価格は11,300円だ。

 本製品は、DisplayLinkのUSB 3.0対応新チップを採用したモデルで、USB 2.0モデルと比較してフルHD映像をコマ落ちなく再生できるというのがウリ。また、USB 2.0接続時でも従来モデルより滑らかに表示できるという。今回、USB 2.0対応の従来モデル「USB-RGB/D2」も同時にお借りできたので、それとの比較を加えながらレポートしたい。

●従来モデルと大差のない外観

 今回借用したモデルは試作機なので、実際の外観とは異なる場合があるが、仕様表にもある通り、本体サイズは約60×87×18mm(幅×奥行き×高さ)と、従来モデルのUSB-RGB/D2から幅が大きくなったものの、高さは抑えられた(USB-RGB/D2は約50×84.5×23mm(同))。奥行きに関しては、どうやら仕様上ではUSB-RGB/D2はコネクタを含まないサイズのため、実際の奥行きはあまり変わらない。

 また、転送信号のクオリティを維持するためか、ケーブルが相当太くなっている。ケーブル長は50cmで、アダプタ側のコネクタはMicro USBタイプだ。消費電流は500mAと、USB 2.0の規定内で、USB 3.0の900mAではない。これはUSB 2.0との互換性を維持するためと見られる。

 ディスプレイ側の出力はDVI-Iで、ミニD-Sub15ピン変換コネクタが付属。最大解像度は2,048×1,152ドットで、1,920×1,200(WUXGA)や1,920×1,080ドット(フルHD)を問題なくカバーするようだ。

USB-RGB3/D本体Micro USB 3.0コネクタを採用DVI-I端子を装備
付属するUSB 3.0ケーブルとミニD-Sub15ピン変換アダプタ今回はUSB-RGB/D2(写真奥)も比較で用意したUSB-RGB/D2(写真右)との比較

 試作機のため、CD-ROMや説明書などは付属されていなかったが、今回はサポートページよりドライバをダウンロードして利用した。なお、このパッケージにはUSB-RGB/D2のドライバも含まれており、追加インストールする必要はなかった。インストールはワンクリック形式で、再起動の必要もなく、スムーズにインストールできる。対応OSはWindows XP/Vista/7だ。

Autorun.exeを起動するとこのような画面になるユーザーに問うことなく、ワンクリックでインストールが自動的に行なわれる

 なお、製品情報にもある通り、COPPやHDCPなどの著作権保護技術には非対応のため、地デジやBlu-ray Discなど、コピーガードが施された映像の視聴はできない。Direct3DやDirectDraw、OpenGLなどのAPIも利用不可としている。

 今回の試用において、筆者の自作マシン(Phenom II X6 1090T/メモリ8GB/890FXチップセット/Radeon HD 5870×3/Samsung 470 SSD 128GB/Windows 7 Ultimate 64bit)環境において、AMDのCatalyst 11.11で試したところ、CatalystのCrossFireXプロファイル(CAP2)をインストールしたり、ディスプレイ関連のプロパティを開く段階で、ブルースクリーンになるという状態に見舞われた。おそらくDisplayLinkドライバとの相性が悪いと思われるが、今回は問題のなかったCatalyst 11.8で試用を続けた。

 また、今回のUSB 3.0ホストコントローラはCrosshair IV Extremeオンボードのルネサス エレクトロニクス製(NEC)「μPD720200」である。USB 3.0のドライババージョンは1.0.19.0だ。

●2Dベンチ結果は良好、グラフィック処理機能は持たない?

 表示性能を測定するために、CrystalMark 2004R3(0.9.126.452)の表示関連のテストを行なった。このテストはプライマリに設定したディスプレイから画面が出力されるため、USBディスプレイアダプタ側をプライマリに設定した上で実行している。

 Radeon HD 5870のネイティブでは、GDIは12227という結果。対してUSB-RGB3/DはGDIが11500、USB-RGB/D2は同11704だった。D2Dは上記の通りサポート外のためか、画面が真っ白になり実行できなかった。

Radeon HD 5870の結果RGB-USB3/Dの結果RGB-USB/D2の結果

 一方OGLは、何もしないと画面全体がフラッシュしている状態だが、実行しているウィンドウからマウスポインタをセカンドディスプレイ側に移してフォーカスをアウトすれば、タスクバーが現れる状態ではあるものの実行可能であった。このためあくまでも参考としてスコアを載せておくと、5870ネイティブで42925のところ、USB-RGB3/Dは39124、USB-RGB/D2は39981だ。

 一見してUSB-RGB/D2のほうが良い結果が出ているが、実は表示の一部に破綻が出ている。特に円や罫線の描画では、線が圧縮されて太くなっていたりした。一方、USB-RGB3/Dはこれと一線を画す表示で、画面の破綻はなく、なおかつスムーズに表示される。

GPU-ZでOpenGLテスト時のGPU負荷を監視したところ。USB-RGB3/Dに描画させてもRadeon HD 5870側に負荷がかかっているのがわかる

 またUSB-RGB3/DとUSB-RGB/D2に共通して言えることだが、この結果を考察すると、GDIやOpenGLなどの処理をディスプレイアダプタ本体が行なっているわけではなく、Radeon HD 5870側で描画し、その結果をビデオメモリのコピーなどの手法でUSBアダプタ側に転送していると思われる。

 特にOpenGLのテスト測定中に、GPU-ZなどでGPUの動作状況を監視したところ、5870側に負荷がかかっていた。GeForce GT 220でベンチマークしたところ、この仕組みを裏付けるかのようにそれに比例して性能が低下した。つまりベンチマーク系では(実行さえできれば)プライマリのGPU性能に依存し、表示性能はGPUで直接出力した時のおよそ9割弱、といったところだ。


●旧製品と比べて画質と滑らかさが向上

 上記のようにベンチマークでは、PCに搭載されているGPUのスコアを反映しているのだが、表示品質やスムーズさなど、実際の表示では大きく異なっていることがわかった。

 もう少し具体的に、YouTubeにある1080pの動画で再生テストしてみたところ、USB-RGB/D2では先述のベンチマークと同様、明らかに画質の低下やコマ落ちなどが見られたものの、USB-RGB3/Dではまったく問題がなく、スムーズに描画されていた。

USB-RGB/D2では激しい動画の再生ではコマ落ちする上、テキストなどの表示が破綻するUSB-RGB3/Dでは問題なく表示され、動きも滑らかであった

 特に、動画だけでは画質の低下がわからないようなシーンでも、動画を右クリックしてコンテキストメニューを出すとすぐに違いが分かる。USB-RGB/D2では画像データ圧縮のためか、文字の表示が破綻しているシーンも見られたが、USB-RGB3/Dでは全く問題なくくっきりと表示できた。

 さらに、USB-RGB3/Dでは、USB 2.0接続時においても滑らかで破綻のない再生を実現できたことも評価できる。謳い文句通り、新チップによる効果と言えるだろう。

 なお、YouTubeのフルHD動画再生時のCPU負荷であるが、Radeon HD 5870ネイティブ表示で10%のところ、USB-RGB3/DのUSB 3.0接続時は25%前後、USB-RGB3/DのUSB 2.0接続時およびUSB-RGB/D2のUSB 2.0接続時で18%前後だった。USB 3.0で転送量が増えた分、CPU負荷へのオーバーヘッドがあると思われる。とはいえ、CPUパワーが有り余っている近年のシステムでは、全く気にする必要のないレベルだ。

Radeon HD 5870で1080pのYouTube動画を再生した時のCPU負荷USB-RGB3/DのUSB 3.0接続時のCPU負荷
USB-RGB3/USB 2.0接続時のCPU負荷USB-RGB/D2/USB 2.0接続時のCPU負荷

●分解してみる

 どうも中身が気になるので、アイ・オーの許可を得て分解してみた。

 まずコントローラは、DisplayLinkの「DL-3100」が使われていた。USB-RGB/D2では「DL-195」だったので、新チップに間違いはない。

 ビデオメモリと思われるメモリチップには、Nanyaの「NT5TU32M16DG-BE」が使われていた。Nanyaのホームページによると、最大1,066MHzで駆動する、容量512MbitのDDR2 SDRAMのようだ。

 一方、USB-RGB/D2ではSamsungの256Mbit「K4H561638J-LCCC」が使われており、こちらは最大400MHz駆動で駆動する、容量256MbitのDDRなので、USB-RGB3/Dでは性能/容量ともに向上しているのがわかる。

 ハードウェアでこれだけ進化していれば、表示性能が大幅に向上しているのもうなずけるものだ。

USB-RGB3/Dの基板。コントローラはDL-3100、ビデオメモリはNT5TU32M16DG-BEだったUSB-RGB/D2の基板。コントローラはDL-195、ビデオメモリはK4H561638J-LCCCだったUSB-RGB3/Dの基板(左)とUSB-RGB/D2の基板(右)比較

●ディスプレイを増やしたい全ユーザーにオススメ

 以上、USB-RGB3/Dを見てきたが、USBディスプレイアダプタとして、ハードウェアの進化によって、USB 3.0接続時はもちろんのこと、USB 2.0接続時でも表示品質や滑らかさが改善されたことは大い評価できる。また、価格も新製品としては旧製品と大差がなく、導入しやすい。USBの環境にかかわらず、接続するディスプレイを増やしたいユーザーすべてにオススメできる製品と言えるだろう。

(2011年 12月 13日)

[Reported by 劉 尭]