ロジクール「Performance Mouse M950」を試す
~MX Revolutionを正統進化させた上級マウス

Performance Mouse M950

11月6日 発売
価格:オープンプライス



 株式会社ロジクールの新たなフラグシップモデルとなる「Performance Mouse M950」が11月6日に発売となった。編集部にも評価機が送られてきたので、そのインプレッションをお届けしたい。

 Performance Mouse M950(以下、M950)は、発売当初の直販価格が12,800円、同社独自のクリック有無を切り替えられるホイールの装備、また本体デザインなどから、2006年に発売された「MX Revolution」の後継に位置づけられることは間違いない。

 筆者は、MX Revolutionのレビューも行なったが、以来ずっとこのマウスを使い続けてきているので、比較を中心にレビューしてみたい。

●特殊ボタンは大幅に見直し
M950(左)とMX Revolution(右)の比較。似ているが細部でデザインも変更されている

 先にも述べた通り、親指部分が深くえぐられ、裾広がりとなっているデザインは、MX Revolutionとかなり似ている。だが両者を並べて見比べ、そしてさわり比べると細部で変更が施されていることが分かる。

 見た目の部分では、本体左側の親指近辺の縁取りが、光沢のある黒いプラスチック系のものから、銀色の金属的質感のあるものに変更された。個人的好みもあるとは思うが、M950の方がより洗練されたハイエンドなイメージがあり、両者を並べると、MX Revolutionが古くさく見えるほどだ。

 形状については、手の腹にあたる部分が、M950では若干上に移動したように感じられる。そのため、MX Revolutionでは握ったときに手首が机に接地するが、M950では若干浮く。今回、時間の都合でどちらの方が手首への負荷が低いかまでは検証できていないが、MX Revolutionを3年に渡って使ってきた筆者でも、M950を手に持ったとき極度の違和感を感じるようなことはない。

 ただし、サイドボタンの位置は、もう少し手前に持ってきて欲しかった。おそらく一般男性なら問題ないと思うが、筆者の手の大きさは一般女性と同じくらいで、この場合、先に進むボタンには、若干無理をして指を伸ばさないと届かないからだ。

 ちなみに、これは以前からも同社製マウスユーティリティで実現していたと思うが、Outlookでは、このボタンが次/前のメッセージへの移動として機能する。多量のメールを読む必要があるユーザーにとっては、いちいち各メッセージをクリックしなくても、ボタンを押していくだけで、読み進めたり、戻ったりできるのは便利だ。

本体上面本体背面本体左側面
本体正面本体右側面本体底面

 ボタンについては、特殊ボタンも見直しが図られている。MX RevolutionではWindows Vistaのフリップ3D向けに「ドキュメントクイックフリップ」ボタンがあったが、これは廃止された。代わりに、親指の下にアプリケーションの切替を行なう「アプリケーションスイッチャー」ボタンが搭載された。ボタンと言っても、サイドボタンのような明確なボタンの形状をしておらず、親指を下方向に沈ませるとクリックされるようになっている。

 このアプリケーションスイッチャーは、独自の機能で押すと、現在実行しているアプリケーションの各ウインドウが、1画面上に重ねないで表示できるサイズにまで縮小された上で、整列表示される。つまり、同時実行しているアプリケーションが少なければ大きいサイズで、数が多いと小さいサイズで並べて表示される。この時、各ウインドウにはアプリケーションのウィンドウタイトルも表示される。後は、アクティブにしたいウィンドウをクリックすればいい。

 筆者の場合、常に10個近いアプリケーション(ウィンドウ)を開いているので、その中から目的のウインドウを探すのに時間がかかって、結局タスクバーから選んだ方が速いという場合も少なくないのだが、少なくともフリップ3Dよりは使い勝手が良い。

 なお、Outlookや、iTunesなど一部のアプリケーションは、最小化したときにアイコンをタスクバーに表示させないで、システムトレイにのみ表示させる設定を持っている。こういったアプリケーションのウインドウが最小化されている場合、アプリケーションスイッチャーを使っても、そのウィンドウは表示されないようだ。

白いアイコンが見えるところがクリックできるアプリケーションスイッチャー押すとこのように全ウィンドウがまんべんなく並べられる各種設定はおなじみのSetPointで行なう

 サイドボタンのすぐ真下には「zoom」ボタンが搭載された。このボタンを押すと、虫眼鏡のアイコンが表示され、ホイールを回すと画面を拡大/縮小できる。これはWindows標準の拡大鏡のように、画面の一部を切り出すのではなく、アクティブなアプリケーションが表示している内容を拡大/縮小するもので、Ctrl+ホイール操作とほぼ同じと思って良い。そのためか、Ctrl+ホイール操作を受け付けないアプリケーション上ではうまく動作しない。

 ホイール手前にあるボタンは、MX Revolutionでは標準で検索機能が割り当てられていたが、M950ではホイールのクリックの有無の切り替えに変更された。MX Revolutionは、アプリケーションによって自動的にクリックの有無を切り替えられる機能があった。しかし、この機能はかなりコストもかかるため、以降の製品では削られ、M950もボタンによる手動切り替えになっている。

 これは若干の退化とも見られがちだが、実際に使ってみると、いちいちアプリケーションごとに設定を事前に割り振るのは面倒で、手動であっても、ワンタッチで切り替えられるのなら何ら不便ではないことが分かる。

 筆者は、ホイールは何が何でも「クリックあり派」なのだが、フリースピンによる高速回転/スクロールも便利で、この点だけでも同様の機構を持ったロジクール製品は他に変えがたい存在となっている。

 さわり心地については、両者で完全に同じ素材が使われているのかは分からないが、ほとんど同じだ。やや重めではあるが、側面はラバー素材で、両脇のへこみも相まって、すっと持ち上げられる。本体重量は実測で、MX Revolutionが147gに対し、M950は162gと若干重くなっているが、違いを感じることはできない。

 左右ボタンは、MX Revolutionより心持ち軽くなった気がする。

●大きく変更されたレーザーセンサーと充電方法

 大きく改善された点の1つが、独自の「Darkfield」技術を採用した新型レーザーセンサー。これは、暗視野顕微鏡に使われる技術を応用したもので、接地面の微細な粒子や傷なども読み取ることで、ガラス面(厚さ4mm以上)でも使えるようになった。手元でも試してみたが、確かにガラス面でも難なく利用できた。

 実際にガラス面で使うユーザーはあまり多くないと思われるが、光学マウスが苦手とする光沢面でも使えるので、机を選ばないという意味で、多くのユーザーにメリットがあるだろう。ちなみに、解像度も最大1,000dpiから最大1,500dpiに向上している。

 もう1つ変わったのが充電の仕組み。MX Revolutionでは、スタンドが付属し、これにマウスを立てかけることで充電していた。一方、M950では、マウスの先端にマイクロUSBポートを装備し、マウスに直接ケーブルをつないで充電するようになった。充電は、そのままUSBポートにつないでもいいし、急速充電が必要な場合は、付属のUSB→ACアダプタを使うこともできる。

 これにより、不意にバッテリ残量が低下したときでも、ケーブルをつなぐことで、マウスを使い続けることができるようになった。ただ、MX Revolutionを使っていた身としては、ただスタンドに置くだけで良かったのから、両手を使ってケーブルを接続しなければならないのは、面倒になったと感じる。また、USBケーブルのコネクタが割と長さがあるので、マウスの前方に5cm程度のクリアランスが必要となる。

 同じようにケーブルで充電できるマイクロソフトのSideWinder X8 Mouseでは、ケーブルの着脱が簡単であり、ここまでクリアランスを必要としないので、今後の改善を望みたい。

充電はこのようにUSBケーブルを直接つなぐUSB→ACアダプタも付属

 無線レシーバも「Nano型」と言われるような非常に小型のものに変更された。これにより、ノートPCにつけっぱなしで、鞄やケースに出し入れすることもできる。また、このレシーバは同社独自の「Unifying」に対応しており、1つで最大6台までのUnifying対応機器を接続できる。

 ちなみに、本製品にUSB延長ケーブルが付属しているが、このケーブルは充電には使えず、無線レシーバ用とマニュアルに書かれている。小型である本製品のレシーバをUSB延長ケーブルに繋いで使うのは想像しにくい。むしろ、このケーブルを添付させないで、その分値段を下げて欲しいと思う。同じことは、ACアダプタとUSBケーブル専用のポーチにも言える。

ワイヤレスレシーバは超小型化された充電に使えないUSB延長ケーブルとポーチは有用性を見いだせない

●既存ユーザーにも歓迎の正統な進化

 以上の通り、ざっとではあるがMX Revolutionと比較してみると、M950は正統に進化させた製品だといえる。見違えるほどの変貌は遂げていないが、細かなブラッシュアップにより、磨きがかかった。

 1万3千円近い価格は、マウスとしては非常に高額と言わざるを得ないが、それでもMX Revolutionなどは売り上げランキング上位に位置するほどのヒットとなったので、本製品を求めるようなユーザーにとってはあまり大きな障壁ではないのかも知れない。

 MX Revolutionは3年間使い続けても、塗装が剥げたりすることもなく、また、精密な作りとなっているホイール周りにも何のトラブルも起きていない。この設計を受け継いでいるなら、M950も末永く使えるだろう。

 そういった点から、MX Revolutionからの乗り換えも含め、上級な多機能マウスを探しているユーザーにはお勧めできる製品だ。

(2009年 11月 6日)

[Reported by 若杉 紀彦]