特集

AMDの「Kabini」こと新アーキテクチャ
低価格クアッドコアAPU「A4-5000」を試す

 AMDは5月23日、ローエンド向けAPU「Brazos」の後継となる「Temash」と「Kabini」を発表した。今回、「Kabini」コアを採用したAPUである「A4-5000」を搭載したノートPCを借用できたので、ベンチマークテストを通して新APUのパフォーマンスを探ってみた。

新CPUコア「Jaguar」とGCNアーキテクチャのGPUコアを採用

 今回借用したノートPCに搭載されている「A4-5000」は、5月23日に発表されたKabiniベースのAPU 5製品のうち、上から2番目に位置する上位モデルで、4つのCPUコアと、DirectX 11.1対応GPU「Radeon HD 8330」を備える。

 「A4-5000」が備える4つのCPUコアは、新アーキテクチャ「Jaguar」を採用している。「Jaguar」では、「Brazos」のCPUコアである「Bobcat」から、最大CPUコア数が2倍に増えたほか、各コア毎に用意されていたL2キャッシュが、全CPUコアで共有する形に変更された。「A4-5000」では4つのCPUコアで共有する2MBのL2キャッシュを備えている。

 GPUコアの「Radeon HD 8330」は、デスクトップ向けGPUでは「Radeon HD 7970」で採用されたGraphics Core Next(GCN)アーキテクチャを採用したGPUで、128基のStream Processor(SP)を備える。「Brazos」のGPUコアはVLIW 5アーキテクチャであったので、「Kabini」ではCPU、GPUともに新アーキテクチャへと移行したことになる。

 「A4-5000」のメモリコントローラはDDR3L-1600をサポートし、1.5Vのほか1.35V、1.25Vという低電圧動作のDDR3メモリをサポートする。なお、デスクトップ向けPCではポピュラーなデュアルチャンネル動作には非対応で、メモリスロットが2スロット用意されている場合でも、メモリはシングルチャンネルでの動作となる。

【表1】主な仕様
CPU A4-5000 A6-5200
CPUコア数 4 4
CPU動作クロック 1.5GHz 2.0GHz
L2キャッシュ 2MB 2MB
内蔵GPUコア Radeon HD 8330 Radeon HD 8400
Streaming Processor(GPU) 128基 128基
GPUコアクロック 500MHz 600MHz
メモリクロック DDR3L-1600 DDR3L-1600
メモリチャンネル数 1ch (64bit) 1ch (64bit)
TDP 15W 25W
CPU E2-3000 E1-2500 E1-2100
CPUコア数 2 2 2
CPU動作クロック 1.65GHz 1.4GHz 1.0GHz
L2キャッシュ 1MB 1MB 1MB
内蔵GPUコア Radeon HD 8280 Radeon HD 8240 Radeon HD 8210
Streaming Processor(GPU) 128基 128基 128基
GPUコアクロック 450MHz 400MHz 300MHz
メモリクロック DDR3L-1600 DDR3L-1333 DDR3L-1333
メモリチャンネル数 1ch (64bit) 1ch (64bit) 1ch (64bit)
TDP 15W 15W 9W
Kabiniの概要
Kabiniのラインナップ

テスト機材

 それでは、ベンチマークテストの結果紹介へと移りたい。

 今回のテストでは、AMDより借用したKabini搭載ノートPCの比較対象として、Ivy BridgeベースのCPU「Celeron 1000M」(1.8GHz/ 2コア/ TDP 35W)を搭載したマウスコンピューター製ノートPC「LB-F314E」を用意した。

A4-5000搭載のKabini評価機。薄型の筐体にフルHD解像度の液晶ディスプレイを備える
マウスコンピューター「LB-F314E」。Celeron 1000Mを搭載する
【表2】テスト環境
APU/CPU A4-5000 Celeron 1000M
内蔵GPU Radeon HD 8330 Intel HD Graphics
メモリ DDR3-1600 4GB×1 DDR3-1600 4GB×1
ストレージ TOSHIBA MQ01ABD100H TOSHIBA MK5059GSXP
グラフィックスドライバ 13.101-130507a-156998E 9.18.10.3071
ディスプレイ解像度 1,920×1,080ドット 1,366×768ドット
バッテリ 15V / 3,000mAh 11.1V / 4,400mAh
OS Windows 8 Enterprose 64bit (英語版) Windows 8 64bit (日本語版)

 ノートPC同士の比較であるため、ストレージやOSなどの環境が統一できていないが、ディスプレイについては消費電力のテストを除き、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)の外部ディスプレイに出力した状態でテストを行なっている。また、「Celeron 1000M」はDDR3メモリのデュアルチャンネル動作に対応しているが、今回の機材はメモリを1枚しか搭載していないため、シングルチャンネル動作となっている。

CPU処理中心のベンチマークテスト

 まずはCPUやメモリ周りのベンチマークテスト結果から紹介する。実施したテストは「Sandra 2013.SP3a 19.44」(グラフ1/2/10/11/12/13)、「CINEBENCH R10」(グラフ3)、「CINEBENCH R11.5」(グラフ4)、「x264 FHD Benchmark 1.01」(グラフ5)、「Super PI」(グラフ6)、「PiFast 4.3」(グラフ7)、「PCMark Vantage」(グラフ8)、「PCMark 7」(グラフ9)だ。

 テスト結果を確認すると、最新の拡張命令に対応する「Sandra 2013.SP3a」のProcessor Multi-MediaやCryptographyでは、AVXやAES-NIが省略された「Celeron 1000M」を大きく上回るスコアを記録しており、サポートする拡張命令と4つのCPUコアが活かせる処理では、Ivy BridgeベースのデュアルコアCPUを凌ぐパフォーマンスを見せている。

 一方、「CINEBENCH」のSingle CPUテストや「Super PI」など、1コアあたりの処理能力が問われる条件では、「Celeron 1000M」に2倍程度の差をつけられている。現行のCPUでは特にシングルスレッド性能の高いIvy Bridgeとの比較とはいえ、この差は大きい。アプリケーションによっては、シングルスレッド性能の低さが気になる場合もありそうだ。

 メモリについては、メモリ帯域を測定する「Memory Bandwith」で「Celeron 1000M」に約80%もの大差をつけられている。メモリのチャンネル数が違うのでは無いかと思う程の大差だが、今回、「Celeron 1000M」は4GBモジュール1枚のシングルチャンネル動作でテストを行なっている。「Cache/Memory Latency」の結果でも、4MB以降急激にレイテンシが増大しており、メモリコントローラのパフォーマンスは「Celeron 1000M」に大きく劣っている。

【グラフ1】 Sandra 2013.SP3a 19.44(Processor Arithmetic/Processor Multi-Media)
【グラフ2】 Sandra 2013.SP3a 19.44(Cryptography)
【グラフ3】 CINEBENCH R10
【グラフ4】 CINEBENCH R11.5
【グラフ5】 x264 FHD Benchmark 1.01
【グラフ6】 Super PI
【グラフ7】 PiFast 4.3
【グラフ8】 PCMark Vantage (Version 1.2.0)
【グラフ9】 PCMark 7 (Version 1.4.0)
【グラフ10】 Sandra 2013.SP3a 19.44(Memory Bandwidth)
【グラフ11】 Sandra 2013.SP3a 19.44(Cache Bandwidth)
【グラフ12】 Sandra 2013.SP3a 19.44(Cache/Memory Latency - Clock)
【グラフ13】 Sandra 2013.SP3a 19.44(Cache/Memory Latency - nsec)

3Dベンチマークの結果

 続いて、内蔵GPUを使った3Dベンチマークの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark - Fire Strike」(グラフ14)、「3DMark11」(グラフ15,16)、「3DMark - Cloud Gate」(グラフ17)、「3DMark Vantage」(グラフ18,19)、「3DMark - Ice Storm」(グラフ20)、「3DMark06」(グラフ21,22)、「MHFベンチマーク【大討伐】」(グラフ23)、「PSO2ベンチマーク ver.2.0」(グラフ24)、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク」(グラフ25)、だ。

 内蔵GPU性能が問われる3Dベンチマークテストでは「A4-5000」が明らかに優勢で、ほとんどのテスト条件で「A4-5000」が「Celeron 1000M」を上回った。また、多くのテストで、解像度や描画設定を上げると「A4-5000」と「Celeron 1000M」のスコア差が大きくなる傾向が見られており、グラフィックスへの負荷が増す条件で「A4-5000」が有利になっている。

 もっとも負荷の軽い条件で「Celeron 1000M」が「A4-5000」を上回り、他の条件では逆に「A4-5000」を下回っている「ファイナルファンタジーXIV」の結果などから、低負荷時には、「A4-5000」のCPUコアあたりの性能の低さがボトルネックになっているものと思われる。

【グラフ14】 3DMark - Fire Strike [Default / 1,920×1,080ドット]
【グラフ15】 3DMark11 v1.0.5 [Performance / 1,280×720ドット]
【グラフ16】 3DMark11 v1.0.5 [Extreme / 1,920×1,080ドット]
【グラフ17】 3DMark - Cloud Gate [Default / 1,280×720ドット]
【グラフ18】 3DMark Vantage v1.1.2 [Performance / 1,280×1024]
【グラフ19】 3DMark Vantage v1.1.2 [Extreme / 1,920×1,080ドット]
【グラフ20】 3DMark - Ice Storm [Default / 1,280×720ドット]
【グラフ21】 3DMark06 v1.2.1 [Default]
【グラフ22】 3DMark06 v1.2.1 [1,920×1,080ドット / 8x AA / 16x AF]
【グラフ23】 MHFベンチマーク【大討伐】 [DX9]
【グラフ24】 PSO2ベンチマーク ver.2.0 [DX9]
【グラフ25】 ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク ワールド編 (フルスクリーン)

消費電力とバッテリ駆動時間の比較

 次に、消費電力の比較結果を紹介する。消費電力の測定は、両製品のACアダプタにサンワサプライのワットチェッカー(TAP-TST5)を接続して行なった。

 なお、消費電力の比較を行なう際は、ノートPCからバッテリを取り外してACアダプタを接続。ディスプレイはノートPC本体のものを利用している。

 ノートPC同士の比較なので、消費電力を横並びで比較するにはスペックが違い過ぎる両機種だが、今回測定された数字の上では「A4-5000」の方がどの条件でも低い消費電力を記録している。両製品の消費電力差は、アイドル時は3Wで、各テスト実行時が5〜8Wとなっており、負荷時に消費電力差が拡大するという結果なので、動作中の消費電力は「Celeron 1000M」より「A4-5000」の方が低いようだ。

【グラフ26】システム全体の消費電力

 最後に、バッテリの駆動時間をBBenchで検証した。BBenchはWeb巡回とキー入力を有効に設定し、ノートPCはディスプレイ輝度を40%に設定した。この条件で、バッテリ残量が10%になるまでの時間を計測した。

【表3】バッテリ駆動時間
A4-5000 4時間13分
Celeron 1000M 3時間44分

 結果は上記の通りで、「A4-5000」の評価用ノートPCは4時間13分と、「Celeron 1000M」を搭載した「LB-F314E」より30分ほど長く動作した。あくまで評価機での検証結果ではあるが、長時間持ち歩くような用途でなければ十分な結果だ。

ローエンドIvy Bridgeの対抗馬となる新APU

 以上の「A4-5000」と「Celeron 1000M」の比較結果を見てみると、「Kabini」がローエンドIvy Bridgeの対抗馬となり得るだけのパフォーマンスを持っているように感じた。CPUのシングルスレッド性能の低さが少々気になるところではあるが、条件次第でIvy BridgeベースのデュアルコアCPUと互角以上のパフォーマンスが得られるようになったのは大きな進歩だ。

 GCNアーキテクチャ採用のGPUについては、ある程度描画設定を落とせば、比較的新しいオンラインゲームをプレイできる程度のパフォーマンスは持っている。「Kabini」を搭載したノートPCが登場すれば、低価格ノートPCでプレイできるゲームタイトルの幅が広がるだろう。

 性能よりも価格を優先するユーザーにとって、「Kabini」を採用したノートPCは魅力的な選択肢となりそうだ。

(三門 修太)