特集
999ドルの超ハイエンドシングルGPU「GeForce GTX TITAN」を試す
(2013/2/21 23:00)
NVIDIAは2月19日、GK110コアを採用するウルトラハイエンドGPU「GeForce GTX TITAN」を発表した。今回、同GPUを搭載するシステムを借用することができたので、GeForce GTX TITANのグラフィックス性能をベンチマークで探ってみた。
2,688基のCUDAコアを備える最上位GPUコア「GK110」
GeForce GTX TITANは、28プロセスで製造されたKeplerアーキテクチャの「GK110」を採用した製品だ。同じく28nmプロセスとKeplerアーキテクチャを採用したGPUコア「GK104」ベースのハイエンドGPU「GeForce GTX 680」の上位モデルにあたり、シングルGPUとしてはNVIDIAのコンシューマ向け最上位に位置する製品となる。販売価格は999ドル。
GeForce GTX TITAN | GeForce GTX 690 | GeForce GTX 680 | |
---|---|---|---|
アーキテクチャ | Kepler | Kepler | Kepler |
プロセスルール | 28nm | 28nm | 28nm |
GPUクロック | 836MHz | 915MHz | 1,006MHz |
Boostクロック | 876MHz | 1,019MHz | 1,058MHz |
CUDAコア | 2,688基 | 1,536基×2 | 1,536基 |
テクスチャユニット | 224基 | 128基×2 | 128基 |
メモリ容量 | 6GB GDDR5 | 2GB GDDR5 | 2GB GDDR5 |
メモリクロック(データレート) | 1,502MHz(6,008MHz相当) | 1,502MHz(6,008MHz相当) | 1,502MHz(6,008MHz相当) |
メモリインターフェイス | 384bit | 256bit×2 | 256bit |
ROPユニット | 48基 | 32基×2 | 32基 |
TDP | 250W | 300W | 195W |
GeForce GTX TITANが採用するGK110は、192基のCUDAコアと16基のテクスチャユニットに加え、64基のDPユニット(倍精度ユニット)などで構成されるStreaming Multiprocessor eXtreme(SMX)を14基備えており、合計2,688基のCUDAコアと224基のテクスチャユニットを備える。ビデオメモリには6,008MHz動作のGDDR5メモリを搭載しており、384bit幅のメモリインターフェイスでGPUと接続している。
GPUコアの動作クロックは836MHzだが、GeForce GTX TITANでは、GeForce GTX 680で採用された自動オーバークロック機能「GPU Boost」の拡張版「GPU Boost 2.0」をサポートしており、負荷やGPU温度に応じてBoostクロックの876MHzや、それ以上の動作クロックで動作する。
そのほか、ディスプレイのリフレッシュレートを引き上げる新機能「Display Overclocking」をサポートし、バスインターフェイスにはPCI Express 3.0を採用する。
「GPU Boost 2.0」では、一定の電力を超えないことを条件にGPUクロックを引き上げていた「GPU Boost」から、GPU温度が閾値を超えない範囲であれば可能な限りGPUクロックを引き上げるという制御に変更された。GeForce GTX TITANでは、自動オーバークロックの基準となる温度の閾値を80℃に設定しており、温度が閾値を下回る範囲では、最大1GHz程度までクロックが上昇していることが、以下に掲載しているGPU-Zのモニタリングデータから確認できる。
また、「GPU Boost 2.0」では、ユーザー自身が温度の閾値やターゲットクロックを変更できるようになっており、ボードメーカーが提供するアプリケーションを利用することで、GPU Boostの動作をカスタマイズできる。NVIDIAからレビュワー向けに提供されたEVGAの「PrecisionX」を利用して、ファンの回転数を高めて温度上昇を防いだ場合の動作と、GPUクロックを+100MHzオフセット場合の動作をモニタリングしたのが下記のグラフだ。
ファンの回転数を高めるとGPU温度が80℃を越えなくなり、GPU Boost 2.0のオーバークロック動作が持続していることが確認できるほか、GPUクロックを+100MHzオフセットした設定では、GPUクロックが最大で1.1GHzに達していることも確認できる。
なお、この「GPU Boost 2.0」の動作カスタマイズに機能については、実装するか否かの判断がボードメーカーに委ねられているているため、リファレンスデザインを採用しているGeForce GTX TITAN搭載ビデオカードであっても、メーカー毎に若干仕様が異なる可能性がある。あらかじめ機能の有無を確認しておく必要がありそうだ。
搭載GPUクーラーはGeForce GTX 690と同系統のデザインを採用
GeForce GTX TITANのリファレンスボードは、GK104コアを2基搭載するデュアルGPUカードとして、GeForce GTX TITANと肩を並べるウルトラハイエンドGPU「GeForce GTX 690」と同系統のデザインを採用したGPUクーラーを搭載している。
基板上部に2基のSLI端子を備えており、3Way SLIに対応する。補助電源供給用の8ピンコネクタと6ピンコネクタを各1系統備える。ブラケット部のディスプレイ出力端子には、2系統のDVIのほか、HDMIとDisplayPortを各1系統ずつ備えている。
テスト機材
それではベンチマークテストの結果紹介に移りたい。今回、GeForce GTX TITANのテストを行なうにあたり、同GPU搭載システムとしてドスパラのショップブランドPC「GALLERIA Titan XG-M」を借用したので、今回はこのPCを使って検証を行なった。
なお、比較用に用意したNVIDIAの「GeForce GTX 680」とAMD「Radeon HD 7970」のリファレンスボードも、「GALLERIA Titan XG-M」に組み込んでテストを行なっている。
GPU | GeForce GTX TITAN | GeForce GTX 680 | Radeon HD 7970 |
---|---|---|---|
CPU | Intel Core i7-3770K | ||
マザーボード | ASUS P8Z77-M | ||
メモリ | DDR3-1600 4GB×4 | ||
ストレージ | 2.0TB HDD | ||
電源 | Seasonic SS-750KM3 750W 80PLUS GOLD | ||
グラフィックスドライバ | GeForce 314.09 Driver | GeForce 314.07 Driver | Catalyst 13.1 |
OS | Windows 7 Enterprise 64bit SP1 |
DirectX 11対応ベンチマークテスト
それではまず、DirectX 11対応ベンチマークテストの結果から紹介する。実施したテストは「3DMark - Fire Strike」(グラフ1、2)、「3DMark 11」(グラフ3、4)、「Unigine Heaven Benchmark 3.0」(グラフ5、6)、「Stone Giant DX11 Benchmark」(グラフ7)、「Lost Planet 2 Benchmark DX11」(グラフ8)、「Alien vs. Predator DX11 Benchmark」(グラフ9、10)だ。
テストの結果、3DMarkのPhysics ScoreのようなCPU性能が主に反映されるテストを除くすべての項目で、GeForce GTX TITANが比較製品中もっとも高いスコアを記録した。GTX 680とのスコア差は概ね2割強~4割程度で、アンチエイリアシングを適用するなど、負荷の大きくなる設定で性能差が拡大する傾向にある。
GPUコア自体のスペック向上に加え、ハイエンドGPUとしては物足りない192.2GB/secというスペックであったGeForce GTX 680のメモリバスの帯域が、384bit幅のメモリインターフェイスを採用したGeForce GTX TITANでは1.5倍の288.4GB/secまで強化されたことが、アンチエイリアシング処理などを行なった際の大幅なフレームレート低下を抑制しているようだ。
DirectX 10/DirectX 9対応ベンチマークテスト
続いて、DirectX 10、DirectX9世代のベンチマークテストの結果を紹介する。実施したテストは「3DMark Vantage」(グラフ11、12)、「3DMark - Cloud Gate」(グラフ13)、「Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX10)」(グラフ14)、「3DMark06」(グラフ15、16)、「3DMark - Ice Storm」(グラフ17)、「PSO2ベンチマーク」(グラフ18)、「MHFベンチマーク 【大討伐】」(グラフ19)、「Lost Planet 2 Benchmark DX9」(グラフ20)、「Unigine Heaven Benchmark 3.0(DX9)」(グラフ21)だ。
DirectX 10対応ベンチマークおよび、DirectX 9対応ベンチマークでも、GeForce GTX TITANは3DMark系のPhysics Scoreを除く項目の全てで、比較製品中最高のスコアを記録した。
GeForce GTX 680とのスコア差については、CPU性能が完全にボトルネックになってスコア差が出ない「3DMark - Ice Storm」ではスコア差が1割未満だが、「Unigine Heaven Benchmark 3.0 (DX9)」では、もっとも負荷の大きなアンチエイリアシング + 2,560×1,440ドット時に86%ものスコア差がついている。高解像度とアンチエイリアシングの組み合わせを苦手としていたGeForce GTX 680との違いが、顕著に現れた結果と言えよう。
システム全体の消費電力
最後に、サンワサプライの「ワットチェッカー(TAP-TST5)」を用いて、各アプリケーション実行した際のシステム全体の最大消費電力を測定した結果を紹介する。
アイドル時の消費電力は、意外にも45Wを記録したGeForce GTX TITANが比較製品中もっとも低いという結果になっている。アイドル時消費電力の差は4W程度なので、製品の個体差によって覆る程度の抜きんでた結果というわけではないが、3D描画を行なわない場合の省電力化はGeForce GTX 680やRadeon HD 7970と遜色ないレベルで実現していることが分かる。
各アプリケーション実行中の消費電力については、GeForce GTX TITANの消費電力が高い数値を記録しており、「3DMark - Fire Strike」や「3DMark11」では、GeForce GTX 680より92~101Wも高い数値となっている。
ただ、この測定結果で注意が必要なのは、この消費電力がテスト実行中の最大値であるという点だ。GeForce GTX TITANは「GPU Boost 2.0」により、温度に余裕がある場合はかなり高い動作クロックまでオーバークロックされる。従って、アプリケーション実行中の最大消費電力はこの「GPU Boost 2.0」によりオーバークロックされている時の消費電力なのである。
以下に参考データとして、ストレステスト「OCCT 4.3.2」のGPUテストにて、FPS Limiterを設定してストレステストを実行した際の最大消費電力を纏めたグラフを掲載する。このデータによれば、実質的に同程度のfpsで動作するよう、垂直同期を掛けるような設定をすれば、GeForce GTX TITANの消費電力はGeForce GTX 680と同程度となることが分かる。
デュアルGPUより扱いやすいウルトラハイエンドGPU
999ドルという価格で投入されるウルトラハイエンドGPUだけあって、GeForce GTX TITANの性能は、既存のハイエンドGPUであるGeForce GTX 680やRadeon HD 7970を大きく上回っている。AMDには今回検証したRadeon HD 7970より動作クロックの高い「Radeon HD 7970 GHz Edition」が存在しているが、GeForce GTX TITANが現在最速のシングルGPUであることは間違いない。
今回は機材調達の関係上、ウルトラハイエンドGPUとして肩を並べる存在であるGeForce GTX 690との比較が行なえなかったが、過去のデータと参考程度に比較してみると、デュアルGPUカードとしての本領を発揮できる環境下では、GeForce GTX 690に分がありそうだ。
カード単体で999ドルという価格が設定されるGeForce GTX TITANは、当然デュアルGPUカードのGeForce GTX 690や、GeForce GTX 680をはじめとするハイエンドGPUのマルチグラフィックスと合わせて検討する製品となる。
最高性能では有利だが、アプリケーションとドライバの最適化具合によって描画性能が良くも悪くもなるマルチGPU環境か、最高性能では劣っても、多くの環境で高い性能を発揮できる、シングルGPUならではの安定した性能を持つGeForce GTX TITANか。どちらに魅力を感じるのかは、ユーザーによって判断が分かれるところだろう。
コストを度外視して性能を追求するのであれば、GeForce GTX TITANが3Way SLIに対応している点も覚えておきたい。