【特別コラム】新MacBook Proに搭載されるSandyBridgeとThunderbolt

MacBook Pro



発表された新MacBook Pro。13型2モデル、15型2モデル、17型1モデルが基本。いずれも各種のCTOが可能。外観は前モデルとほとんど変わらない

 既報のとおり、アップルは2月24日にMacBook Proのラインナップを一新した。13型、15型、17型のすべてのモデルでIntelの第2世代CoreプロセッサとなるSandy Bridge(コードネーム)を搭載する。同社は25日に製品に関する説明会を実施。氏名および顔写真等を明らかにしないという条件のもと、米本社より来日している製品担当者に同社内にて製品についての説明をうかがった。

 およそ50分にわたってKeynoteのスライドと実機によるデモンストレーションを中心に行なわれたプレゼンテーションの8割ほどは、同社のニュースリリースおよび公式サイト、オンラインのApple Storeなどから入手できる各種スペックや価格情報であり、かつスライドの写真や動作状態の撮影等は許可されていなかったため本稿ではその紹介は割愛する。前モデルとのスペック比較や、大幅に向上したとされ目前でデモンストレーションされたパフォーマンスなどは、いずれ実機を手にした状態であらためて伝える機会を設けたい。本稿は10分弱のQ&Aで発言された内容をもとに、今回筆者の知りえた内容のコラムとなっている。

●全製品をチップセット対策済みのB3 Steppingで出荷という破格の扱い

 Q&Aのなかでもっとも驚かされたのは、本日25日より直営店のApple Storeなどですでに購入可能な状態となっている、新MacBook Proに搭載されるIntel 6シリーズが全て、不具合を解消したバージョンになっているという点だ。アップルでは具体的に採用している名称を公表してはいないが、おそらくIntel HM65 Express(CougarPoint、コードネーム)と思われるチップセットについて、製品担当者は「アップルは(お客様に不安を与えるような)良くないチップを使用することは絶対にない」としたうえで、全数が対策済み製品となるB3 Steppingであることを明言した。

 本誌のIntel 6シリーズチップセット問題のリンク集を見ていただければわかるとおり、不具合への対策を施したB3 SteppingのCougarPointは、2月中旬に量産出荷を開始したばかり。対応を早めて今週末から出荷を再開する富士通を初めとして、2月中に出荷を行なうとするOEM各社の多くは、問題が発生するSATAの2〜5番ポート(3Gbps対応)を塞ぐ形で出荷を開始、あるいは再開している。

 一方で、対策品の量産を待つと発表したメーカーの出荷予定日や無償交換の開始時期などは、早いところでも3月10日以降である。これを考えれば、2月25日の時点で対策品であるB3 Stepping搭載の製品が店頭で購入可能で、オンラインのApple Storeでもカスタマイズを行なわないのであれば1〜2営業日の出荷予定となっているアップルがいかに破格の扱いであるかがわかろうというものだ。Sandy Bridge搭載製品としては最後発に近い製品発表であったにも関わらず、出荷はDellとほぼ並んで先頭を切った格好だ。この点には筆者としても驚きを隠せない。

●「Thunderbolt」対応の周辺機器が今春にも登場することを期待

 Sandy Bridge搭載と並んで、今回のモデルチェンジの目玉の1つである「Thunderbolt」(サンダーボルト)テクノロジーの搭載も、現在のAppleとIntelとの関係を強く表わしている。

 IntelがPC用の高速データ転送技術「Light Peak(コードネーム)」として開発していた技術の最初の搭載製品が、この新MacBook Proになる。IntelはMacBook Proの発表と同日の2月24日(米国時間)に「Thunderbolt」の正式発表を行なった。Intelのリリースの本文中にも、「Intelが開発したこの新技術は、Appleとの技術協力によってAppleの新型MacBook Proに採用された」との一文が入っている。

 Thunderboltテクノロジーについては別記事が詳しい。基本的にはデータ転送速度10Gbpsによる高速なデータ転送とディスプレイ接続を1本のケーブル、およびデイジーチェーンで行なえるようにしたもの。

 技術的なデモンストレーションはIDFのレポートを中心に何度か本誌でも紹介されているが、今回の発表のポイントはインターフェイスの形状や配線をMini DisplayPortと同一にした点と言えるだろう。

 ちなみに、コードネームであるLight Peakが示すとおり将来的には光配線が想定されてはいるものの、今回使用されたのは銅配線によるものだ。この点について製品担当者は「Mini DisplayPortの小さな形状や電気的な信号線配置との相性の良さなどから銅配線が選択された」と述べている。将来的に光配線化されるかどうかには言及せず、このインターフェイス形状での普及と対応周辺機器の増加を目指すとしている。

 Thunderboltへの対応には、専用のコントローラチップがMac本体側と各周辺機器それぞれに搭載されている必要がある。ただし、ディスプレイに限ってはデイジーチェーンの末端に置く限り(※その先に記憶装置等を付けない状態)コントローラチップの搭載は不要となる。

MacBook Pro側のThunderboltインターフェイス。形状の見た目は従来モデルのMini Display Portと同様。アイコンが異なっている
Thunderbolt対応ケーブルを新MacBook Proに差した様子 Thunderbolt対応ケーブル。Apple Storeなどですでに販売されている両端がMini Display PortのBELKIN製ケーブルに比べて、コネクタのグリップ部分がやや長いのと、アイコンが異なる

 Thunderboltテクノロジーによって接続できる周辺機器の総数は最大で6基(Mac本体を除く)。この数はデモンストレーションに使用されたHDDやRAIDアレイなどの記憶装置とディスプレイを合わせた総数。ディスプレイにはGPU側のディスプレイ出力機能によって接続最大数の制限があるが、記憶装置には制限がない。技術上はMacBook Proに6基の記憶装置をThunderboltのインターフェイスだけでデイジーチェーンすることも可能となる。

 Thunderboltを経由して利用できる外付けディスプレイの数は、13型が1基、15型および17型が2基とのこと。これは13型がGPU統合のIntel HD Graphicsであるのに対して、15型と17型ではディスクリートGPUとしてRadeon HD 6000シリーズも搭載していることが理由だ。それぞれに外付けディスプレイを接続した状態でもMacBook Pro本体のディスプレイは使用可能なため、利用可能なディスプレイ総数としては13型が2基、15型が3基ということになる。

 ただし現時点では1基はともかく、2基の外付けディスプレイを接続することも簡単ではない。VESAによるDisplayPortの元々の規格としても、ディスプレイのデイジーチェーンやハブの利用は利用可能となっているが、肝心のディスプレイ側に2つのDisplayPort入出力を持つ製品がなかったり、ハブ自体の流通もほとんど行なわれていないからだ。International CESにおけるVESAのブース等では展示されているものを見たことはあるが、実際に利用されていたり販売されているのはほとんど見たことがないというのが現状だ。そうした点では高速なデータ転送だけでなく、DisplayPortを使ったマルチディプレイ化の推進にも「Thunderbolt」が一役を買うという可能性はあるだろう。

 インターフェイス形状としての土台ともなったMini DisplayPortも、VESAによる規格上はUSBやEthernetなどのデータ送受信が想定されている。もともとMini DisplayPortはAppleによるDisplayPortの小型化案として先にMac製品に搭載され、その後Appleが標準化を提唱、DisplayPort v1.2によってDisplayPortへ規格化された経緯がある。今のところVESAからの発表は特にないまま、ThunderboltとDisplayPort v1.2が共存している状態だ。

 この点に関して担当者に「同一の形状で規格が異なるインターフェイスがあることはエンドユーザーに対する混乱を招かないか?」と尋ねてみたところ、「エンドユーザーであればこそシンプルであることが重要。ディスプレイをつなげば映像が映り、記憶装置をつなぐことで記憶装置が稼働するほうがわかりやすい。むしろMini DisplayPortに対して、Thunderboltの技術を適用したと考えると良い」という答えが返ってきた。

 もちろん形状が同じであっても、同社公式サイトや本稿写真にもあるようにポートを示すアイコンは異なる。もちろんPC向けのビデオカードなどに搭載されているMini DisplayPortにディスプレイ以外のThunderbolt対応周辺機器をつないでも稼働しない。逆にThunderboltのポートに、現行のMini DisplayPortに対応する各種ディスプレイの変換アダプタを接続した場合は、VGA、DVI、HDMIなどの変換アダプタが稼働する。

 なお、説明が行なわれた一室には、デモンストレーションにも使われたPromiseのRAIDアレイと、LaCieの外付け記憶装置が用意されていたが、いずれもプロトタイプであるとして、周辺機器の本体およびインターフェイス部分の撮影は許可されなかった。稼働していたのはPromiseのRAIDアレイで、Thunderbolt対応のケーブルを使って新MacBook Pro本体と、このPromiseのRAIDアレイを接続。PromiseのRAIDアレイに付いていたThunderboltのインターフェイスは2つで、もう一方が27型のApple Cinema Displayに接続され、新MacBook Proの外付けディスプレイとして機能していた。LaCieの製品が実際に稼働しているのは残念ながら目にする機会がなかった。

 転送速度に関しては、Apple本社のエンジニアが特別に製作したというスピードメーター風のアプリケーションを使ってデモンストレーションが行なわれた。5GBあるファイルのコピーを始めると、スピードメーターの針がぐっと動いておおよそ700MB/secから800MB/secを推移しつつ10秒かからずに転送を終えた。イメージとしては転送速度よりも、ファイルのドラッグ&ドロップ操作やスピードメーターの針が上昇していく時間のほうが全体の動作時間を決めているといったスピード感だ。同じ操作をFireWire 800で行なった場合、約10倍の時間がかかると言う。

 もう1つのデモンストレーションはFinal Cut Proを使ったもので、約150MB/secの転送速度が必要なビデオストリーミングをリアルタイムに流す。画面を分割して2本、3本、4本とストリーミングの本数を増やし行って、転送速度がスピードメーターで600〜700MB/secになっても、駒落ちしないという内容だった。

 どちらも動画を中心とした大型ファイルの転送だったので「リニア編集やハイアマチュアに向けたソリューションか?」と質問したところ、「エンドユーザーにとってもファイルのコピーが速いという部分は非常にわかりやすく、メリットも大きい。PromiseのRAIDアレイは大きな製品だが、LaCieの記憶装置は見たとおり持ち運びも容易。出先でMacBook Proとこの記憶装置を使ったリニア編集も行なえる。今はエンドユーザーも大きなファイルを扱う機会が増えている」ということだった。

 Thunderbolt自体はオープンな規格なので、春頃には多くの周辺機器メーカーから対応製品が出ることを期待していると製品担当者は述べている。

(2011年 2月 25日)

[Reported by 矢作 晃]