【短期集中連載】Amazon「Kindle」徹底試用レポート(後編)
〜コンテンツのアーカイブ方法やPDF表示機能などをチェック


●Kindleを用いたWebブラウジングは課金される可能性がある

 本連載の前編において、Webページへのアクセスも含めてネットワーク接続の通信費用がまったくかからないと述べたが、誤りではないか、とのご指摘を読者の方からいただいた。筆者の見落としであるので、ご迷惑をお掛けした読者および関係者の方々に、この場をお借りしてお詫び申し上げたい。また、御教示いただいた読者の方にはお礼申し上げたい。

 ちなみに本稿執筆時点では、具体的な課金体系については上記規約の中ではいっさい言及がない。またクレジットカードに対する課金明細のページにおいても、Webブラウジングに伴う課金については記載がない。

 つまり、現状では課金をしていないが、将来的にその可能性があることを含んだ規約になっているわけだ。推測の域を出ないが、今回のような国際サービス自体が初めての試みということもあり、いまはまだニーズ把握の段階で、固まり次第料金を定めて適用する、という考えではないだろうか。なにはともあれ、今後の展開には注意しておいたほうがよさそうである。繰り返しになるが、不正確な情報となってしまったことをお詫びしたい。

 Amazon.comの電子ブックリーダ「Kindle」の試用レポートの最終回である今回は、コンテンツのアーカイブ方法のほか、PDFなど他フォーマットの表示、さらにMP3再生など、前編および中編で取り上げられなかった項目についてチェックしていきたい。

●購入したコンテンツを消去→再ダウンロードしてみる

 Kindleでは、購入したコンテンツは即ローカルにダウンロードされ、HOME画面のリストに追加される。読むたびにサーバからダウンロードしてくるといった仕組みではない。

 どのコンテンツを購入したかはサーバー側にすべて記録されているので、ローカルの容量がいっぱいになれば、ローカルからいったん削除してしまい、後日あらためてダウンロードすることが可能だ。そのため、読み終わったコンテンツはローカルから気兼ねなく削除していける。電子書籍ならではの使い方だと言える。

 削除したコンテンツは、HOME画面内にある「Archived Items」の中に表示されているので、必要があればクリックして再ダウンロードできる。なお、sampleのファイルや、後述するドキュメント類は、アーカイブされるのではなく実際に削除されてしまうので注意したい。いずれの場合も「Delete」という単語の入ったメニューから行うので間違えやすいが、完全に削除されてしまう場合は警告メッセージが表示され、アーカイブに移動する場合は何も表示されないようだ。

Kindle Storeから購入したコンテンツを削除すると「Archived Items」に格納される(例外あり)。タイトルをクリックすれば再度ダウンロードされ、閲覧できるようになる 再ダウンロードが完了すると「add to home」と表示されるので、HOME画面に戻る 再ダウンロードされたコンテンツが閲覧できるようになっている
HOME画面でコンテンツにカーソルを合わせた状態でポインティングデバイスを右向きに押すと、コンテクストメニューに相当する画面が表示される。ここからコンテンツの削除などが可能 アーカイブされる場合はそのまま処理が実行されるが、アーカイブでなく完全に削除される場合は警告メッセージが表示される

 ちなみに、実際に使った限りでは、メモリ容量がオーバーして削除するよりも、HOME画面に大量のコンテンツが並ぶのを嫌って、優先度の低いコンテンツや読み終わったコンテンツを消す、といった使い方が多くなるのではないかと感じた。このあたりはGmailのアーカイブに近い感覚だ。

●さまざまなファイルフォーマットの表示を試してみる

 前編の冒頭で書いたように、Kindleでは日本語表示は行なえない。理由はUTF-8に対応しないためだ。ネット上では早くも日本語表示のハック技が出回っているようだが、現状では公式のサポートはない。

 ただし日本語表示については、公認の裏ワザもある。それは画像化した日本語ファイルを読み込むことだ。実際、Kindle Storeでも「in Japanese」、つまり日本語コンテンツとして、芥川龍之介、与謝野晶子らの著作が用意されている(11月14日現在)。画像表示なので文字サイズ変更などは行なえないが、立派に表示できている。

2009年11月からは一部で日本語コンテンツの販売も始まっている。これは芥川龍之介「蜜柑」「私の好きなロマンス中の女性」 「蜜柑」の冒頭。なお、テキストではなく1枚ものの画像で表示されているため、文字サイズの変更などには対応しない
青空文庫のテキスト(SJIS)を表示しようとしたところ。文字コードが対応しないため、表示することができない

 ではこれらの方法を用いず、プレーンな日本語テキストを読み込んでみるとどうなるか。実際に青空文庫ベースのテキストを表示させてみたのが右の写真だ。典型的な文字コード非対応による表示になっている。SJIS以外の文字コードに変更しても同様の結果だった。

PDFを***@kindle.comにメール添付で送付すれば、独自形式に変換されてKindleのHOME画面に自動アップロードされる。ただしこの例のように紙資料をスキャンして作成した画像ベースのPDFであれば問題ないが、テキストデータが含まれるPDFは文字化けしてしまう。また、画像が90度反転するといった不具合もある

 一方、PDFやHTMLなどの文書フォーマット、さらにJPEG、GIFなど一部の画像ファイルについては、購入時に割り当てられた***@kindle.comというアドレスにメール添付でファイルを送ることにより、独自フォーマット(AZW形式)に変換されて自動的にKindleにダウンロードされ、HOME画面に表示される。日本未発売の上位モデル「Kindle DX」は標準でPDF表示をサポートしているだけに、なんとももどかしい。

 もっとも、上記の方法でも日本語テキストは文字化けするので、PDFであればドキュメントスキャナなどで取り込んだ画像ベースのPDFを用いるか、フリーソフトなどを使っていったんJPEG化し、それをメール添付で送付するといったワザが必要になる。実際に試した限りでは、表示こそできるようになるものの90度反転してしまうなど、なにかとクセがあり、あまり実用的ではない。

 なお、上記の独自形式への変換および自動アップロードには、1MBあたり$0.99、つまり約100円ほどかかってしまう。コスト的にはかなり高くつくので、この場合、***@free.kindle.comという別のアドレスにメール添付で送付する。こちらであれば、自動アップロードこそ行なわれず、登録アドレス宛にメールで送り返されてきたファイルを手動で転送する必要があるが、コストはかからない。

 もう1つのワザとして、Kindleが対応しているmobipocket形式に変換して読み込む方法が考えられる。Amazon傘下のmobipocketが配布しているmobipocket readerをサイトからダウンロードし、これを用いて変換を行なうのだ。ソフトのウィザードに従って転送すると、新たに「eBooks」というフォルダが作られ、そこに入れられてしまうので、「documents」フォルダに手動で入れ直してやる手間はかかるのだが、メール添付で変換するのに比べるとずっと速い。

USBケーブルでPCと接続し、マスストレージとして表示したところ。4つのフォルダが並ぶ。ちなみに電子書籍などのコンテンツが納められているのは「documents」フォルダ documentsフォルダの中身。ひとつのコンテンツにつき、azw形式のファイルと、mbp形式のファイルの2つがセットになっている。前者がコンテンツ本体、後者はメモや既読位置などの付帯情報を保存していると思われる。「***@kindle.com」にファイルを送ると、ここに自動アップロードされる
PCによるプロパティ表示。容量は2GBとされているが、利用できる空き容量は1.5GBほど USBケーブルでPCと接続している際に表示される画面。PCからはUSBマスストレージとして認識される

●実験機能やその他の機能を使ってみる

 Kindleには「Experimental」、つまり実験的な機能として3つの機能が搭載されている。「Basic Web」「Play MP3」「Text to Speech」の3つだ。順に見ていこう。

「Experimental」をクリックすると、実験的な機能とされる3つの機能のトップページに移行する 3つの実験機能「Basic Web」「Play MP3」「Text to Speech」の概要が表示されている

 まずは「Basic Web」。Webサイトの閲覧機能だ。KindleにはアクセスのWebブラウザ「NF Browser」が搭載されており、先のKindle Store以外のWebサイトも閲覧することができる。モノクロであるため制限はあるが、Amazon.comのほか、Wikipediaなどへのリンクが用意されている。ただし日本語のサイトはアクセスこそ行えるものの文字コードの関係か表示はできないようだ。ちなみに表示にはBasic ModeとAdvanced Modeがあり、JavascriptのON/OFFの有無が異なる。

「Basic Web」では、Amazon.comやWikipedia、Googleなどいくつかのサイトへのリンクが設けられており、ここからWebサイトへのアクセスが可能 Wikipediaにアクセスしたところ。URLを見る限り、モバイル版のWikipediaのようだ Googleにアクセスしたところ。こちらもモバイル版
PC Watchを検索してみた。3番目に表示されているが、説明文は文字化けしている アクセスしてみたが表示されなかった。Basic ModeではなくAdvanced Modeに切り替えても同じ結果 ブラウザはアクセスの「NF Browser」が搭載されている。これは設定画面で、キャッシュや履歴、Cookieの削除が行なえる

 次に「Play MP3」。本体内のmusicフォルダにあるMP3ファイルを、本体背面下部のスピーカー、もしくはイヤフォンを用いて聴けるという機能だ。もっとも曲情報などは一切表示されず、ファイルを転送した順(曲名順ではない)に淡々と再生され、最後のファイルの再生が終わると停止するという、かなり割り切った仕様だ。音量の調整は本体右側面のキーを用いる。

 最後は、合成音による発音機能「Text to Speech」だ。電子辞書などにも見られる機能だが、日本人が利用する場合は語学学習にも役立つだろう。男女の声を選択できる点や、読み上げに合わせてページをめくってくれるのも便利だ。なお、この機能に対応したコンテンツは、購入ページにおいてText-to-Speechが「Enabled」と表示されている。ざっと見た限りでは、かなりのコンテンツが対応している印象だ。


コンテンツを選択したのち、Text to Speech機能をオンにし実行している様子。最後まで読み上げると自動的に次のページに遷移していく

 なお、実験機能とは異なるが、Kindleにはスクリーンショットを撮る機能もある。本稿ではスクリーンショットはすべてデジカメで撮影しているが、実際にはALT+↑+Gキーでスクリーンショットを撮ることが可能である。形式はGIFで、Kindle内のdocumentsフォルダに保存される。

●結論:Kindleは本当に黒船だった

 3週間ほどKindleと付き合ってみたが、これはたしかに黒船に違いない、というのが筆者の感想だ。というよりも、過去にいくつかの読書端末や電子ペーパー端末を試用してきて、ようやく実用に足る製品に巡り合ったという印象だ。

 もちろん、日本語に対応していない以上、現時点で同じ土俵に立っているかというと、さすがにノーだろう。とはいえ、ハードウェアおよびコスト面での限界が見えていた他製品と異なり、十分に手が届く価格帯で、こうした製品が登場した意義は大きいと感じる。

 特に、インターフェイスのこなれ具合と、ハードウェアの安定性の高さは評価できる。日本国内初登場とはいえ、ハードウェアとしては第2世代モデルであるため、従来製品のフィードバックは反映されていて当然なのだが、登場したての製品にありがちな「間に合わせ感」がまったくないのは、使っていて心地よい。筆者は月に10〜20冊程度本を読むが、日本語コンテンツが供給されるようになれば、十分に乗り換えに値すると感じる。

 また、本稿執筆中に新幹線および飛行機に乗る機会があり、それぞれKindleを持ち込んで試用してみたのだが(もちろん飛行機内ではワイヤレスはOFFにしている)、左右に人が座っている状況下で、ボタン1つでページをめくることができるのは、ことのほかメリットとして大きいと感じた。大量のコンテンツを持ち運べることや、その薄さがクローズアップされるKindleだが、座ったまま体勢を変えずに読書が楽しめる点も見逃せない。

新幹線の車内にて。左右の席との間隔が狭い場合には、ページめくりがボタンひとつで行える電子書籍は非常に使い勝手がよい 読書の際は、カバーは裏側に折りたたんで持つことになる

 今後の日本語対応については推測の域を出ないが、本稿執筆中の11月14日にKindle Storeで(画像ベースではあるものの)日本語コンテンツの販売が開始されたように、次のステップに向けての取り組みは着々と進んでいるようである。本稿では取り上げていないが、直近ではソフトバンククリエイティブがKindle向けに英語版ハーレクインコミックスの配信を開始したといったニュースもあり、個別の出版社の動きも見逃せない。

 さらに、PC版「Kindle for PC」のベータ版も公開されるなど、電子書籍というカテゴリの中からKindle関連に絞り込んでみても、あちこちからニュースが飛び込んでくる状況にある。今後しばらくこうした動きは続くのではないだろうか。

 日本語への対応という意味では、(1)日本語の表示機能を持たせる(2)日本語のコンテンツを用意する、という2つの壁があるわけだが、文字コードの問題が解消されたうえで日本語翻訳機能が搭載されてしまったら、ひょっとすると(1)だけで十分に魅力的なのではないかと感じた。海外コンテンツを日本語に翻訳しながら読ませてくれる端末。これはこれでありな気がする。いま搭載されている英英辞典が英和辞典に置き換わるだけでも、個人的には大きな魅力を感じる。

 と、思いつきベースで書いている点についてはご容赦いただきたいが、ノートPCやPDA、電子辞書、携帯電話、ゲーム機などの既存の機器を使っている感覚とはまったく違う、想像の及びにくいデバイスだというのが率直な印象である。読書家の間では「本はやっぱり紙だろう」という声は根強いし「中身よりも本そのものの存在感こそが重要」という感覚も理解できないではないのだが、長所もあれば短所もあるのは当然のこと。機会があれば、ぜひ自分自身の眼でKindleのメリット・デメリットを確かめてみることをおすすめしたい。

(2009年 11月 20日)

[Reported by 山口 真弘]

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