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実測1GB/sec超! M.2 PCI Express x4接続のSSD「Samsung XP941」を試す

~システム起動は要注意

 新たに登場したIntel 9シリーズチップセット搭載マザーボードの最大の特徴が、PCI Expressネイティブ接続SSDの正式サポートである。これにはOSの起動も含まれる。DOS/V POWER REPORT編集部では、SamsungのPCI Express 2.0 x4ネイティブ接続のM.2 SSD「XP941」シリーズの128GBモデル「MZHPU128HCGM」と512GBモデル「MZHPU512HCGL」を入手した。ここでは、この2製品の性能を中心にPCI Expressネイティブ接続のSSDの使い勝手をレポートする。

 なお、いずれの製品も、米Amazon.com経由で購入できるほか、「MZHPU512HCGL」に関しては、ごく少量ながら秋葉原での販売も確認されている。すでに豊富に流通しているPLDSの「Plextor M6e」はPCI Express 2.0 x2接続なので、こちらとの速度の違いにも注目が集まる。

公称最大速度1,170MB/secの超高速SSD

 Samsung XP941シリーズは、2013年7月に発表された世界初のM.2 PCI Expressネイティブ接続のSSDである。トリプルコアの自社製コントローラを搭載した製品で、128GB/256GB/512GBの3製品がラインナップされている。PCI Express 2.0 x4接続に対応し、公称最大読み出し速度は、128GBモデルが1,000MB/sec。512GBモデルが1,170MB/sec。記録速度は、128GBモデルが450MB/sec、512GBモデルが950MB/secを謳う。

Samsung XP941の512GBモデル「MZHPU512HCGL」。PCI Express 2.0 x4接続に対応したPCI Expressネイティブ接続のSSDだ。クライアント向けSSDの中では、現状の世界最高性能を誇る製品である
Samsung XP941の128GBGBモデル「MZHPU128HCGM」

 搭載するNAND型フラッシュメモリは、Toggle DDR 2.0対応の64Gbit MLCを採用。128GBモデルに搭載されたNAND型フラッシュメモリのパッケージはわずか2個で、パッケージあたり64GBの容量を持つ8積層品を採用している。また、512GBモデルは、4個のNAND型フラッシュメモリのパッケージで構成されている。512GBモデルは、パッケージあたり128GBの容量を持つ16積層品を採用する。

 NAND型フラッシュメモリの搭載パッケージ個数が少ないため、これで速度が出るのかと思う方がいるかもしれない。だが、これは問題ない。同社では、1つのパッケージで4チャネル接続を行なえるNAND型フラッシュメモリを量産中だ。このタイプのパッケージは、同社の840 EVOシリーズでも採用されている。おそらくXP941シリーズも同様で、4チャネル接続が行なえるNAND型フラッシュメモリのパッケージを採用し、内部で8チャネル接続を実現していると推測される。

 M.2接続のSSDでは、制御用のインターフェイスとして、従来型のAHCIと不揮発メモリに最適化された「NVM Express」に対応可能だが、XP941シリーズは「AHCI」のみに対応する。また、従来のSATA接続のSSDやHDD同様に起動用のOption ROM(OROM)を搭載していない。このため、OSの起動には、マザーボードレベルでの対応が必要だ。また、M.2規格では複数のスロット形状が規定されているが、XP941は「KeyM」とも呼ばれるSocket 3のシングルスロットモジュール形状を採用している。「KeyB」とも呼ばれるSocket 2のM.2スロット(Intel 8シリーズ世代マザーボードのASUSTeK MAXIMUS VI EXTREMEで採用例がある)とは切り欠きの位置などが異なり、接続できないので注意してほしい。

筆者が調べた限りでは、Intel 9シリーズチップセットを採用したマザーボードに搭載されているM.2スロットは全て「Socket 3(KeyM)」で、規格上はいずれもXP941を接続することが可能だ

検証環境について

 それではXP941シリーズの検証に移ろう。検証に利用したマザーボードは、ASRock 「Z97 Extreme6」だ。Z97 Extreme6は、Intel 9シリーズマザーボードでは標準的な実装である、チップセット側に接続されたPCI Express 2.0 x2対応のM.2スロットに加えて、CPU側に接続されたPCI Express 3.0 x4対応の「Ultra M.2」スロットを搭載している。今回は、この両方のM.2スロットで検証を行なった。

 また、OS起動確認テストのみ、GIGABYTE「GA-Z97X-Gaming 7」も加えている。また、XP941との比較用のSSDとして、PCI Express 2.0 x2接続のPLDS製SSD「Plextor M6e」とSATA接続の「Plextor M6S」の256GBモデルも用意した。詳細な検証環境は、以下のとおりだ。

【表】テスト環境 - マザーボード
メーカー型番M.2スロットの仕様
ASRockZ97 Extreme6Ultra M.2(内部PCI Express 3.0 x4)
M.2(内部PCI Express 2.0 x2)
GIGABYTEGA-Z97X-Gaming 7M.2(内部PCI Express 2.0 x2)
【表】テスト環境 - SSD
メーカー型番インターフェイス容量
Samsung ElectronicsXP941 MZHPU128HCGMM.2(内部PCI Express 2.0 x4)128GB
XP941 MZHPU512HCGLM.2(内部PCI Express 2.0 x4)512GB
Philips & Lite-On
Digital Solutions
Plextor M6e PCI Express SSD PX-AG256M6eM.2(内部PCI Express 2.0 x2)256GB
Plextor M6S SSD PX-256M6SSATA 6Gbps256GB
【表】テスト環境 - その他の環境
CPUCore i5-4460
メモリDDR3-1600 8GB×2
OSWindows 8.1 Enterprise(64bit)

Windowsを直接インストールできるマザーとできないマザーがある?

 まず、X941にOSをインストールできるのか、そこから起動が行なえるかを検証した。これに関しては、ASRock Z97 Extreme6では問題なくWindows 8.1が起動した。M.2スロットに接続されたMZHPU512HCGLがUEFIセットアップで認識され、従来のSATA接続のSSDを利用している感覚で起動ドライブとして利用できた。Windows 7においても、問題なくインストールと起動を確認できた。

 もう1枚、GIGABYTEのGA-Z97X-Gaming 7でも起動を試してみたが、こちらはUEFI設定で起動ドライブとして選択することができなかった。マニュアルにもM.2ドライブからの起動についての詳細な記述はなく、筆者がUEFI設定を変更した限りでは状況を改善することはできなかった。ただし、いくつかの情報をまとめた結果、Intel製のドライバを利用すれば起動が可能になることが分かった。この方法については、本記事の末尾にまとめておいたので参考にしてほしい。

 なお、DOS/V POWER REPORT 7月号においては、ASUSTeKやMSI製の9シリーズ世代マザーボードや8シリーズ世代マザーボードでの起動確認、M.2→PCI Expressスロット変換基板を用いての動作確認などを行なった結果を掲載している。興味のある方はご一読いただきたい。上記のIntel製ドライバ組み込みによる起動方法は該当号締め切り後に確認したものであるため、誌面上はこの方法が使える可能性があるマザーでも、起動不可と記載されている点はご了承いただきたい。

今回の検証でメイン機材として使用したASRock Z97 Extreme6。一般的なチップセット側のPCI Express 2.0 x2接続のM.2スロットに加え、CPU側のPCI Express 3.0 x4接続のUltra M.2スロットを搭載している

実測1GB/sec超を記録! x4接続の効果を確認

 今回使用したベンチマークは、最大速度が分かる「CrystalDiskMark 3.0.3b」と実使用感をチェックする「PCMark 8 Ver2.0.228」である。この2つのベンチマークに加え、Windows 8.1の起動時間もチェックしている。

 まずCrystalDiskMark 3.0.3bの結果を見ると、XP941をPCI Express 2.0 x4のUltra M.2スロットに接続した場合はさすがに速い。MZHPU128HCGMとMZHPU512HCGLともにシーケンシャルリードは1,100MB/sec前後を記録。シーケンシャルライトもMZHPU128HCGMで500MB/sec弱、MZHPU512HCGLでは、驚きの900MB/secオーバーを記録している。これは、現在最速クラスのSATA接続のSSDをRAID 0で利用したときと同レベルだ。

CrystalDiskMark 3.0.3bの結果

 興味深いのは、PCI Express 2.0 x2接続である通常のM.2スロット装着時の速度である。x4接続時と比較して速度が低下することは予想できるが、注目したいのはその値だ。MZHPU128HCGMとMZHPU512HCGLのシーケンシャルリードは、一気に750MB/sec弱まで低下し、800MB/secを超えることすらできずにいる。PCI Express 2.0 x2接続の場合、理論上は1,000MB/secの帯域があり、XP941シリーズのシーケンシャルリード性能は、ゆうに1,000MB/secを超えることがPCI Express 2.0 x4接続時の測定結果から証明済みだ。これらから推測できるのは、PCI Express 2.0 x2接続で利用する限り、800MB/sec前後で速度が頭打ちとなっていることである。だとすると、最新SSDにとっては、すでにPCI Express 2.0 x2接続でも帯域が不足していると言える。消費電力面などの制限もあろうが、パフォーマンスを重視するPCI Express SSDは、PCI Express 3.0 x2またはx4接続などの、より広帯域な製品へと移行していくことが想像できる。

実使用感は最大速度の差ほど大きくない

 一方、PCMark 8 v2.0.228とOS起動時間の結果は、CrystalDiskMarkほど差が大きくない。PCMark 8 Ver2.0.228のトータルスコアは、PCI Express x4接続時のMZHPU512HCGLがトップだが、PCI Express x2接続時などと比較してもその差は少なく、ほぼ横並びという感じだ。また、OS起動時間についても、1秒未満の差しかなく、絶対性能に劣るSATA 6Gbps接続のPlextor M6Sとの比較でも差がない。現在のSSDは十分に高速で、ビジネスアプリケーションなどの一般的な利用では、絶対性能が少々向上したぐらいでは、体感速度に直結しにくくなっているのかもしれない。

XP941シリーズを含めPCI Express SSDは、軒並み5,000前後のスコアをマークしている。SATA 6Gbps接続のPlextor M6Sよりは高いスコアだが、その差は、最大でも90弱と少ない
起動時間に関する設定を細かく詰めているわけではないので、参考程度に見てほしい。トップはMZHPU512HCGLのPCI Express x4接続時だが、全体で見ると差は1秒以内と非常に小さい。意外だったのは、絶対性能に劣るSATA 6Gbps接続のPlextor M6Sも遜色ない時間だったことだ

条件を満たせばIntel製ドライバでPCI Express SSDを利用可能。起動も可能に

 ここまでの検証は、全てOS標準のAHCIドライバで行なっているが、Intel製ドライバでPCI Express SSDを利用することもできる。そして、これを使えば、GIGABYTE GA-Z97X-Gaming 7のように、そのままではPCI Express SSDからOSを起動できないマザーボードでも起動が可能になる。ただし、その手順は複雑で、利用するための条件がある。

 まず、筆者が検証した限りIntel製ドライバを使う手法でOSの起動が行なえたのは、チップセット側のPCI Expressに接続されたM.2スロットのみであった。つまり、Ultra M.2スロットからも起動できない。また、M.2→PCI Express変換カードを使うとチップセット側とCPU側、いずれに接続されたPCI ExpressスロットからもOS起動を行なえなかった。

 また、Intel 9シリーズチップセットのPCI Express SSDサポートは、UEFIブートのみに対応しており、従来のBIOSブートには対応していない。このため、UEFIセットアップからOS起動ドライブとして選択できるようになるのはOSインストール後となる。OSをインストールしていない状態では起動ドライブとして選択できない点に注意してほしい。

 Intel製ドライバのバーションは13以降が必要だ。今回検証したマザーボードの場合、付属ディスクに含まれているほか、メーカーのドライバダウンロードページから入手することもできる。ただし、OSインストール時に利用するIntel製ドライバは、インストーラを利用しないFD用として配布されているものを使う必要がある。ASRock Z97 Extreme6の場合は、「SerialATA for Floppy Disk」フォルダ内に収められている。GIGABYTE GA-Z97-Gaming 7の場合は、「BootDrv」フォルダ内にある「iRST」フォルダ内に収められている。

 OSインストールを行なうときは、USBメモリなどへ上記フォルダ内にあるドライバをコピーしておく。ちなみに、Windows 8.1やWindows 7に標準搭載されているIntelチップセット向けのストレージドライバは、PCI Express SSDを検出できない。

Intel製ドライバを利用する場合は、OSをインストールして初めて起動ドライブの設定が行なえるようになる。ただし、表示上は「Windows Boot Manager」となる

 ここまでの手順を終えたら、UEFIの設定画面を起動し、ストレージの設定画面を開いてSATAの動作モードを「RAID」に設定する。続いて、CSM(Compatibility Software Module)の設定を「OFF」にするか、「UEFI Only」または「UEFI First」に設定する。これで準備は完了だ。

Intel製ドライバを利用するときはUEFIの設定画面にあるストレージ設定を開き、SATAの動作モードを「RAID」に設定する。画面は、ASRock Z97 Extreme6の場合
CSMの設定を無効(OFF)にするか、UEFI OnlyまたはUEFI Firstなどに設定する必要がある。画面は、ASRock Z97 Extreme6の場合
GIGABYTE GA-Z97X-Gaming 7でWindows 8をインストールする場合の設定例。Windows 8 Featuresに「Windows 8」または「Windows 8 WHQL」を選択し、CSM Supportを「Never」に設定すればよい
GIGABYTE GA-Z97X-Gaming 7でWindows 7をインストールする場合の設定例。Windows 8 Featuresに「Other OS」を選択し、そのほかの項目は「UEFI Only」などを選択しないとWindows 7のインストールが行なえなかった

 光学ドライブやUSBメモリから、OSのインストールメディアをUEFIブートで起動し、インストール手順を進めていくと、インストール先ドライブの選択画面ではPCI Express SSDが表示されないはずだ。ここで、「ドライバの読み出し」をクリックして、USBメモリなどに保存しておいたバージョン13以降のIntel製ドライバの読み出しを行なう。これでOSインストールドライブとしてPCI Express SSDが選択できるようになる。ドライブの表示はされたが、OSインストール先のドライブに選択できないという場合は、CSMの設定が間違っている。インストールを中止してUEFIの設定画面を起動し、CSMの設定を確認しよう。

Intel 9シリーズチップセットのPCI Express SSDサポートを利用する場合は、OS標準ドライバがPCI Express SSDを検出できない。ここで、「ドライバーの読み出し」をクリックし、バージョン13以降のIntel製ドライバを読み込む
インストールするドライバの選択画面。USBメモリなどを利用して、Ver13以降のIntel製ドライバを読み込むとこの画面が表示される。「次へ」をクリックするとドライバの読み出しが行なわれる

 なお、この方法はXP941シリーズだけでなく、OROMを搭載したPlextor M6eでも利用できる。Intel製ドライバを利用すると、ランダム4KBがOS標準のAHCIドライバよりも速くなる。ただし、ASRock Z97 Extreme6とGIGABYTE GA-Z97X-Gaming 7でWindows 8.1が起動できることは確認したが、本稿執筆時点でほぼ安定したWindows 7の起動を確認したのは、GIGABYTE GA-Z97X-Gaming 7のみである。ASRock Z97 Extreme6は、インストール先として選べなくなることがあるという、かなり不安定な状態だった。

Intel製ドライバは、OROMを搭載するPlextor M6eでも利用できる。画面は、PX-M6eをIntel製ドライバで利用したときのデバイスマネージャーの画面
XP941をIntel製ドライバで利用した場合のIRSTのツール画面。PCI Express SSDとして認識され、リンク速度などの情報を表示できる

SSDはさらなる飛躍の時代に突入、システムドライブとして使う際には細心の注意を

 XP941シリーズとM6eの性能を見ても分かるように、PCI Express接続となることでSSDの性能は、大きく飛躍する。ただし、PCI Express SSDのサポートは、まだ始まったばかりで発展途上という感じだ。

 特にOS起動周りはまだメーカーごとに対応が異なり、今後どのような流れが主流になるかはっきりしない。UEFIの改良などによって直接起動が可能になるのか、Intelなどのドライバを組み込むスタイルが標準的になるのか。また、パフォーマンス的に有利なCPU直結のPCI Expressインターフェイスはどのような扱いになるのか。いずれにせよ、SSDが1つの変革点に来ていることは間違いない。より使いやすい環境へと進化することを願いつつ、注目していきたい。

お知らせ

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(北川 達也)