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米軍が導入を進める“柔らかい”パワードスーツ

 「パワードスーツ」と聞くと、映画「エイリアン2」に出てきた「パワーローダー」のような(というと年齢がばれてしまうが)、金属でできた物々しい外骨格を想像するだろう。だが、現在、米国防高等研究計画局(DARPA)が導入に向け投資を行なっているのが、柔らかい素材でできたパワードスーツだ。

 米軍兵士が身につける装備の総重量は45kgにも達する。この装備を付けた状態での移動は、疲労をもたらすだけでなく、足腰の関節に負荷を与え、怪我に繋がる可能性も少なくない。

 そこでDARPAでは、「Warrior Web」というプログラムを立ち上げ、装備の重量に起因する筋骨格の怪我を防ぐための技術開発に乗り出した。その目的は、軽量で、ウェットスーツのように装着していることを意識しないで済むような、パワードスーツの開発にある。

 その取り組みの1つが、ハーバード大学ヴィース研究所が開発を行なっている、柔らかいパワードスーツだ。このスーツの骨格となる部分は、シートベルトのような薄くて柔らかいベルトで構成されており、ズボンの上に巻き付けるように装着する。ここだけを見ても、従来のパワードスーツとは一線を画しているのが分かる。メタルギアソリッドなど近未来SFに出てきそうな雰囲気もある。

 その中には、伸び縮みする柔らかいセンサーが取り付けられるとともに、足腰の運動を補助する金属製のワイヤーが腰からかかとにかけて伸びている。ヴィース研究所のチームは、このパワードスーツを開発するにあたり、人間が歩行する際の筋肉や骨の運動を細かく解析した。それに基づき、スーツ装着者の下半身の動きをセンサーで検知しながら、腰の部分に取り付けられたバッテリとモーターで、ワイヤーを制御し、重いものを持った状態での歩行を補助するという具合だ。

 このスーツは軽量であるだけでなく、薄くてシンプルな構造をしているので、服と既存の装備品の間に無理なく装着でき、また着用者の動作を妨げることがない。

 軍事用途での開発が進められているが、この技術は障がい者や高齢者、そして登山などを行なう一般の人にも容易に応用できる。

(若杉 紀彦)