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果物を模したスパイ端末。スイス連邦材料試験研究所が輸入果実の品質管理用に開発

りんご型センサーの断面

 スイス連邦材料試験研究所は22日(現地時間)、輸入果実の品質管理用に用いられる果実そっくりのセンサーデバイスを開発中であることを明らかにした。このデバイスを用いることで、品質検査では箱単位で正確な内部温度が容易に取得できるほか、腐敗の原因調査が容易になるなどのメリットが考えられている。

 一般に果実の内部温度は果実が痛みと強い相関があるほか、一部の国では果実の輸送中に厳格な温度管理を要求される。要求に満たない果実は全て破棄することになるため、品質やサプライチェーン管理の観点から正確な測定法が求められていた。

 また、従来では冷蔵庫内の温度を検査したり、果実を1つ抜き取り、センサーを差し込んで内部温度を測定する破壊検査を行なっていたが、庫内の温度が必ずしも果実中心の温度を反映しないことや、機内冷蔵庫の冷却の偏りのため、誤ったデータを取得してしまう恐れなどがあった。

 そこで開発されたこのデバイスは、果実にそっくりな見た目を持ち、温度センサーを内蔵。外装が果実の中心温度を再現するため、輸出の際、一緒に箱詰めされる本物の果実の内部温度を正確に推定することを可能にするものだ。

 また、研究者は果実の中心温度の正確なシミュレーションを行なうため、果実の種類ごとに特性の異なったセンサーを試作している。これは、りんごのジョナゴールドをはじめとする果実ごとに、正確なシミュレーションを可能とするためだ。

 そのため、研究者らはそれぞれの果実についてX線撮影を行ない、3Dプリンタで出力することで表面の形状まで再現した。また、果汁の成分分析を行ない、水と炭水化物、ポリスチレンで再現した果汁を先程の外装に注入するなど、徹底して内部温度の再現に努めた。これにより、従来の庫内温度などを用いたシミュレーションよりはるかに正確に内部温度が把握可能になったとしている。

マンゴーを再現したセンサー。内部に果汁を再現された液体が注入される。

 現時点でこのデバイスはワイヤレス化されていないものの、将来的にはBluetoothによるワイヤレス接続を可能とし、コンテナ内での温度をリアルタイムの取得が考えられている。また、製品化を想定した価格は50フラン(約5,700円)で、商業界の開発パートナーを探している段階だ。