やじうまPC Watch
【懐パーツ】AurealのVortex AU8820搭載サウンドカード「SOUND MAKER 64」
2016年11月5日 06:00
このコーナーでサウンドカードを紹介すると、「Aureal……」というつぶやきをよく見かけるのでご紹介したい。本来、Diamond Multimediaの「MonsterSound MX300」といった、SoundBlasterシリーズに対抗しうるほどのインパクトを持ったものにしたかったが、今なおリーズナブルな価格で入手しにくいのが難点である。
よって今回は比較的リーズナブルな価格で発売された、Geniusブランドの「SOUND MAKER 64」を取り上げる。Geniusブランドはマウスなどの周辺機器を手がけるメーカーだが、かつてはこのようなサウンドカードも発売した。ほぼノーブランドに近い気もするが、AKIBA PC Hotlineにまだ発売時の情報が残っているのに驚かされる。
Aureal Semiconductorは1995年11月に設立された、アメリカのPCオーディオ専門の企業である。その前身は1990年に設立されたMedia Visionとされている。Aurealが1997年に発表したのが3Dオーディオ技術「A3D」は、仮想的な3D音場を作り出す技術で、空間の容積や材質などをシミュレートすることで、画面に映っている3Dのシーンに合わせた、リアルな3D音響効果を実現できる。SOUND MAKER 64に搭載される「Vortex AU8820」は、このA3Dをハードウェアアクセラレーションできるサウンドチップだ。
当時はちょうど3dfxのVoodooシリーズや、NVIDIAのRIVA TNTの登場により、PCでの3Dゲームが台頭し始めた時期であった。3DゲームがAurealのA3Dに対応すれば、視覚的にも聴覚的にも3Dの効果が得られ、没入感が高まるということでかなり注目された。
同様の技術は、1998年になってからCreativeからもEAXとして発表され、搭載製品も発売された。特に、高い性能を誇った「Sound Blaster Live!」は、単体のサウンドカードとしては異例のヒット作となった。これを見るに見かねたAurealは、知的財産を侵害しているとしCreativeを提訴。ところが訴訟費用がかさんだ上に、この間Aurealは業績が悪化し、2000年4月5日に会社更生法をオークランド破産法廷に申請。最終的にCreativeがAurealの知的財産やトレードマークを含む、全ての資産を買収するに至り、短い生涯の幕を閉じた。
ちなみに初期のA3DやEAXの技術はソフトウェアによるエミュレーションも可能で、当時発売されたヤマハのYMF724/YMF744などのチップも、ライセンスを受けたSensauraの搭載により実現できた。当時のCPU性能の劇的な向上も、Aurealの倒産を押し早めたのかもしれない(2004年にVIAがQSound Labsとライセンス提携をし、A3DやEAX/EAX 2.0と互換性のある技術を、製品に搭載可能とした)。
さて、SOUND MAKER 64そのものだが、これまで紹介したESSの「Solo-1」搭載サウンドカードや、Avance Logicの「ALS4000」搭載サウンドカードと同様、シンプルで素っ気ない作りである。コーデックはTriTechの「28023」で、AC97準拠とされている。アンプはUNISONIC TECHNOLOGIES製の「TEA2025」、水晶発振器はNTK製の49.152MHz品である。スピーカー出力とライン出力を切り替えるジャンパや、MIDI/ゲームポートがが付いているのも、時代を物語っている。
実装からしてその音質はあまり期待できなさそうだが、ネット上での評判は予想に反して比較的良いようだ。パターンをきちんと追ってないので確証はないのだが、電源が2系統あるように見える。また、入出力部のコンデンサが若干多いのも影響しているのかもしれない。
余談だが、以前紹介したESS Solo-1搭載サウンドカードを見ると、P/N的にMPB-00009から始まっている点は共通で、Solo-1の方が1、本機は3で終わっている。おそらく同じメーカーが製造しているのだろう。