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4スピーカーに対応したYMF744搭載サウンドカード登場



 1年ほど前から本格的な普及が始まったPCIサウンドカード。その牽引役となったのが、サウンドチップにヤマハ YMF724を搭載したサウンドカードだった。低価格ながら再生音質の高さで現在でも人気がある。そして先週、YMF724の後継チップにあたるYMF744を搭載するサウンドカードが秋葉原に登場した。YMF724搭載カードのように、また高い人気を得られるのかどうか検証してみよう。


■4チャンネルサウンド出力に対応

ヤマハのYMF724後継チップ、YMF744。基本機能はYMF724を踏襲しているが、4チャンネル出力やデジタル入出力をサポートすることで機能向上を実現している
 YMF724は、ヤマハ初のPCI対応サウンドコントローラである。ヤマハ独自のMIDIフォーマットであるXGフォーマットに対応した64音同時発音のシンセサイザーを内蔵し、米国スタンフォード大学との共同ライセンスによる物理モデル音源「Sondius-XG」に対応することで、非常に高音質なMIDI再生が可能となっている。また、Central Research Laboratoriesの3D音像定位技術「Sensaura」による3Dポジショナルオーディオ機能が搭載されている。ただし、サウンド出力は2チャンネルのみの対応となっているため、3Dサウンドは擬似的なものとなる。

 YMF744は、このYMF724をベースに一部機能を向上させたサウンドコントローラである。Sondius-XG対応の64音同時発音シンセサイザー、Sensauraによる3Dポジショナルオーディオ機能など基本機能はそのままであるが、4チャンネルのサウンド出力、デジタル入出力などに対応することによって、より高機能になっている。

 まず、4チャンネルサウンド出力に対応することで、より本格的な3Dポジショナルオーディオ機能を利用できるようになった。従来同様、SensauraによるDirectSound 3DやA3D、EAXなどへの対応はもちろんであるが、4スピーカー出力に対応したソフトウェアDVDプレーヤーなども利用でき、より臨場感溢れるサウンドを楽しむことができる。ただし、A3DおよびEAXへの対応は従来通りソフトウェアエミュレーションによるサポートとなり、A3D 1.0およびEAX 1.0へのサポートにとどまっている。

 デジタル入出力機能は、32kHz、44.1kHz、48kHzのデジタルデータの入力、入力データのスルーおよび48kHzのデジタルデータ出力をサポートしている。YMF724でもS/PDIF出力に対応していたが、デジタル入力はサポートしていなかった。それと比較すると、大幅な機能向上といえる。

 さらに、DLS(Downloadable Sound)Level-1に対応することで、ユーザーが独自に作成したWAVEテーブルデータをダウンロードして使用できる。DLS用メモリ容量は512KB、2MB、8MBをサポートしている。


■初のYMF744搭載サウンドカード、EXPLORER YAMAHA 744

 YMF744を搭載するサウンドカードとして秋葉原に初めて登場したのが、Explorer TechnologyのYAMAHA 744である。

 このカードの特徴は、YMF744の特徴とほぼ同じと考えていいだろう。4スピーカー出力に対応し、最大64音同時発音に対応したMIDI再生機能、3Dポジショナルオーディオ機能などが用意されている。

 製品のパッケージ内容は、カードとドライバCD-ROMのみとなっており、CD-ROMドライブ用のサウンドケーブルやマニュアルは付属していない。付属のドライバCD-ROMにはこのカードの仕様書が収録されおり、カードの機能などが羅列されている。ちなみに、その仕様書には6チャンネルサウンド出力にアップグレード可能と書かれているが、カード上にはそれを実現するようなコネクタは用意されておらず、本当に6チャンネル出力にアップグレードできるかどうかは不明だ。

 カードブラケットには2系統の音声出力端子とLINE-IN、マイクの入力端子、ジョイスティックコネクタが、カード上にはCD-ROM音声入力端子(コネクタ形状は2種類)とSB LINKコネクタがそれぞれ用意されている。2系統ある音声出力端子には「SPK」と「OUT」と刻印があるが、SPKがフロント、OUTがリアの出力となっている。

 なお、デジタル入出力端子は全く用意されていない。つまり、YMF744に用意されているデジタル入出力機能は利用できないわけだ。せっかくのYMF744新機能が利用できないのは、残念なところだ。

パッケージにはカードとドライバCD-ROMのみが含まれており、マニュアルやケーブルなどは一切付属していない カード上にはYMF744と、サウンドCODECのSIGMATEL STAC 9708の2つのチップが搭載される。またカード上には1系統のCD-INコネクタ(2種類)とSB LINKコネクタが用意されている ブラケットには、2系統の音声出力(SPKがフロント、OUTがリア)と音声入力端子、マイク端子、ジョイスティック端子が用意されている


■MIDI再生品質はYMF724同様非常に高い

 実際にEXPLORER YAMAHA 744を使ってみたところ、MIDIの再生品質はYMF724搭載カード同様に非常に高かった。外部のMIDI音源モジュールを利用した場合の品質にはかなわないものの、他のサウンドカードやソフトウェアMIDIなどと比較すると、1ランク上の品質といっていいだろう。通常のWAVEなどのサウンド再生も十分高音質で問題点は感じられなかった。

 4チャンネル出力による3Dサウンド機能に関してであるが、DirectSound 3D対応のゲーム(Incoming)をプレイして確認してみたところ、4本のスピーカーから独立したサウンド再生が確認できた。また、4チャンネルサウンド出力に対応したソフトウェアDVDプレーヤーでも4チャンネルのサウンド出力が可能であった。

 4チャンネルのサウンド出力を行なう場合には、コントロールパネルに登録される「ヤマハ DS-XG設定」で、アナログ出力を「4スピーカー」モードにしておく必要がある。また、DirectSound 3Dの3Dサウンドモード設定は、使用するアプリケーション側で3Dサウンドモードを選択できる場合には「アプリケーションの設定に従う」のままでも大丈夫だったが、それ以外の場合には「4チャンネル・スピーカー」に設定しておかなければ、4チャンネルのサウンド再生ができなかったので注意が必要だ。

 ただし、A3D対応ゲームやEAX対応ゲームをプレイしてみたところ、4スピーカーによるサウンド出力は確認できなかった。この点に関しては、手持ちの対応ゲームが少なかったこともあって、これだけで結論を出すわけにはいかないが、ソフトウェアエミュレーションによる機能では十分に対応できない可能性は高い。

4チャンネル出力をおこなう場合には、「ヤマハ DS-XG設定」の「アナログ出力」設定を「4チャンネル」にしておく必要がある 使用するDirectSound 3D対応アプリケーションによっては、3Dサウンドモードの設定ができないものもあるので、そのような場合には「ヤマハ DS-XG設定」の「ダイレクトサウンド」3Dサウンドモード設定で「4チャンネル・スピーカー」を指定する

 また、DirectSound 3D時には、効果音などにかなりノイズがのってしまうという現象も確認できた。この原因がカード側にあるのかドライバ側にあるのかは不明だが、少なくとも同じソフトを手持ちの4スピーカー出力対応サウンドカード、Monster Sound MX300を使用した場合にはそのようなノイズがのるという現象は起こらないため、EXPLORER YAMAHA 744側の問題であることは間違いない。

 次に、サウンドカード使用時のCPU負荷率を測定してみた。測定には、Ziff-Davis,IncのAudio WinBench 99を利用した。Audio WinBench 99では、DirectSoundおよびDirectSound 3D使用時のCPU負荷率を測定可能で、結果はパーセントで表示される。もちろん数値が低いほどCPU負荷率が低く、優れていると言える。

【Audio WinBench 99/DirectSound CPU Util(%)】
EXPLORER YAMAHA744 (YMF744)DCS S817 (YMF724)Monster Sound MX300SoundBlaster Live!
44.1 kHz, 16bit, Streaming:Voice 323.548.934.60
44.1 kHz, 16 bit, Static:Voice 323.658.714.590
22 kHz, 8 bit, Streaming:Voice 322.194.062.90
22 kHz, 8 bit, Static:Voice 321.853.942.90

【Audio WinBench 99/DirectSound 3D CPU Util(%)】
EXPLORER YAMAHA744 (YMF744)DCS S817 (YMF724)Monster Sound MX300SoundBlaster Live!
44.1 kHz, 16 bit, Streaming:Voice 3237.544.132.41.54
44.1 kHz, 16 bit, Static:Voice 3235.842.730.31.61
22 kHz, 8 bit, Streaming:Voice 322124.920.41.56
22 kHz, 8 bit, Static:Voice 3221.32520.41.55

 結果を見ると、DirectSound時には、手持ちのYMF724搭載カードDCS S817よりも全ての項目でCPU負荷率が低くなっている。これは、純粋にYMF744の性能向上点といっていいだろう。また、MonsterSound MX300の結果よりも若干良い。SoundBlaster Live!ではCPU負荷率が0%と非常に優れているが、他のカードも10%未満となっているため、その差は小さい。

 DirectSound 3D時でも、DCS S817よりもCPU負荷率は低くなっている。しかし、SoundBlaster Live!の結果と比較するとかなり悪い。この点はYMF724でも同じであるが、この原因は、DirectSound 3Dの処理をSensauraを通してソフトウェアでおこなっているためだ。SoundBlaster Live!のように低いCPU負荷率であれば、ゲームプレイ時などに優位となるが、CPUパワーが大幅に向上している現在では、それほど大きな問題とはならないだろう。

【テスト環境】
CPU:Pentium III 500MHz
メインメモリ:PC-100対応SDRAM 128MB
マザーボード:Abit BH6


■完成度が低く、今一歩という印象が強い

 EXPLORER YAMAHA 744は、秋葉原に登場した初のYMF744搭載サウンドカードということで、注目している読者も多いことだろう。しかし、その完成度に関しては、やや期待はずれの感が否めない。

 高品質のMIDI再生機能や、YMF744でサポートされた4チャンネルサウンド出力機能に関してはほぼ期待通りのものといっていいだろう。また、4チャンネルサウンド出力と高品質なMIDI再生機能が実現されていながら 販売価格が4,000円を切っており、かなりお買い得であるという点も魅力のひとつだ。

 しかし、せっかくサポートされたデジタル入出力機能が省かれている点はかなり残念だ。ドライバではデジタル入出力に関する設定項目も用意されているが、EXPLORER YAMAHA 744に関してはその設定項目は全く意味を持っていない。

 となると、従来のYMF724搭載カードと比較して、優位点は4チャンネルサウンド出力に対応しているという点のみということになり、YMF724搭載カードからの乗り換えにおすすめできる製品とは言えない。YMF744の機能を十分に引き出しているような製品が登場するまで待つべきだ。

「ヤマハ DS-XG設定」のデジタル出力設定には、Dolby Digitalに関する設定も用意されている。Dolby Digitalデコーダを搭載する製品では設定が可能になるものと思われる
 ところで、デジタル出力の設定項目を見ると、Dolby Digitalの出力設定項目が用意されている。YMF727のようなDolby Digitalデコーダを別途搭載することで、YMF744経由でDolby Digitalデータを出力できるようになると思われる。EXPLORER YAMAHA 744ではおそらくDolby Digitalデコード機能を追加することは不可能と思われるが、今後デコーダを搭載したYMF744搭載カードの登場も十分考えられるので、PCでDVD-Videoを見たいユーザーは今後登場する製品に注目する必要があるだろう。

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【7月10日号】新サウンドチップ「YMF744」搭載カードが登場
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[Text by 平澤寿康@ユービック・コンピューティング]


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