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【懐パーツ】ESSの「Solo-1」を搭載したPCIサウンドカード

ESS Solo-1搭載のサウンドカード

 今回ご紹介するパーツは、ESS製サウンドチップ「Solo-1」を搭載した、メーカー名も製品名も書かれていない--いわゆるノーブランドの類の--サウンドカードである。

 PCユーザーにとってESSは結構懐かしい響きかもしれない。ESS Technologyは1984年に設立されたオーディオ関連のLSIを製造する会社である。今はハイエンドDACをメインビジネスにしているが、1990年代にはPC事業にも参入し、いくつかのサウンドチップをリリースした。あのオンキヨーも、ESS製チップでPCIサウンドカードのデビューを果たしたものだ(本来はPhilips製チップでデビューする予定だったが発売中止となり幻に終わった)。

 本製品に搭載された「Solo-1」(型番:ES1938S)は16bitのステレオDACおよびADCを内包するため、これらの部品実装を省ける。また、デュアルゲームポートをサポートし、ハードウェアのボリュームコントロールや、外部Wavetableを接続するためのシリアルインターフェイスも搭載。ステレオ入力は3系統で、これらをミックスする機能も備えている。

 さらに、ヤマハの「OPL-3」と互換の「ESFMミュージックシンセサイザー」も内蔵しており、前回ご紹介したサウンドカード「MAGIC S21」のようにOPL-3を外付けにせずに済む。加えて、Spatializer Audio Laboratoriesが開発した3Dオーディオエフェクトに対応可能なプロセッサも内蔵している。

 シングルチップながらダイナミックレンジは80dB超を実現しており、MicrosoftのPC97/PC98に準拠する。このように、Solo-1は低価格でありながら多数の機能を備え、廉価かつ高機能なサウンドカードが製造できるようにしている。

 一方で、「DDMA」、「PC/PCI」、「TDMA」という3つの手法によりDOSゲームとの互換性を確保しているのも特徴だ。DOS/V用のDOSゲームの大半はISAバス用のSound Blasterシリーズをサポートしているのだが、Sound BlasterはDMA転送により音を鳴らしていた。一方でPCIは基本的にバスマスタリングDMA転送であるため、ISAバスのDMA転送を“エミュレーション”する必要があった。

 この解決策が上記挙げた3つ。DDMAはソフトウェアのルックアップテーブルによって、8237(DMAコントローラ)I/Oレジスタへのアクセスをリダイレクト転送させる手法。一方、PC/PCIはもともとノートPCなどのPCI接続ドッキングステーション向けのISA互換実装方法で、専用のバスを介してDMAの要求と許可を符号化してエンコード/デコードし、ISAバスのように振る舞う。

 前者はSocket 7プラットフォームのIntel 430TXチップセット、後者はSlot 1プラットフォームのIntel 440LXチップセットで実装されたが、430TXにはPC/PCIがないし、440LXにはDDMAがない。なのでSolo-1は両方をサポートする必要があり、カード上の「SB-LINK」ピンヘッダは、PC/PCIの仕組みを実現するためのものである。一方でTDMAは、サードパーティ製チップセットの上でDMA転送を実現するESS独自のエミュレーション手法であった。

 このように、Solo-1はユニークなチップだった。特に低コスト化の効果はカードの部品配置を見て取れ、基板上にはコネクタやピンヘッダを含めても76個しか部品がない。入力はマイクイン/ラインイン/CDインの3系統あるが、出力はスピーカーまたはラインアウトの1系統だけとなっている。

 スピーカーとラインアウトの切り替えはジャンパー式で、スピーカーアウト時はUNISONIC Technology(UTC)製のオーディオオペアンプ「LM386」で増幅する。LM386はお世辞にも優れた特性を持つオペアンプとは言えないが、2回路入りオペアンプを使っていない辺りちょっとしたこだわりが見られる。まあ、周辺回路がショボいので、例え別のオペアンプに載せ替えても大した音質向上は見込めなさそうだ。

部品は合計76個しかない
出力は1系統のみ。ゲーム&MIDIポートも備えている
カード表面
背面もシンプル
ESS「Solo-1」こと「ES1938S」
SB-LINKはPC/PCIの仕組みによってISAバスエミュレーションをする
UTC製オペアンプ「LM386」
出力はスピーカーアウト(LM386アンプ利用かパススルーか)
D.S(D.S 卓宣企業股有限公司)製のコンデンサを採用する
日本特殊陶業(NGK/NTK)製の14.318MHz水晶発振器