イベントレポート

CEATEC JAPAN 2015レポート【ロボット編】

~RoBoHoNやMECCANOIDに加え、卓球やけん玉をするロボットアームも

シャープのRoBoHoN

 IT・エレクトロニクスの総合展CEATEC JAPAN 2015が、10月7日~10日の4日間、幕張メッセにて開かれている。事前登録済み・招待券利用、および10月10日のみ入場無料だが、それ以外は一般1,000円、学生500円の入場料が必要。

 CEATEC JAPANの歴史は2000年まで遡るが、元を辿れば1964年から1999年まで開かれていたエレクトロニクスショー、および1997年から1999年まで開かれたCOM JAPANを統合したイベントである。その2つの展示会も、元々はそれぞれ3つの展示会を統合したもので、最も古い「テレビラジオパーツショー」は1958年から存在している。そういう意味ではIT/エレクトロニクス業界にとって大変長い歴史を誇るイベントである。

 CEATECとしては今年(2015年)で16回目の開催となるわけだが、大手のソニーと日立が展示を取りやめていることもあり、規模としては縮小している。今年はPCに関連する展示はほぼ皆無なのだが、エンドユーザーが直接触れるであろう内容には、これから勃興が予測されるIoTやドローン、自動車の自動運転、ロボット、4K~8Kのディスプレイなどに関する展示が多数を占めた。一方で、これらを下支えする部品の展示も多数行なわれている。

 一般公開は先述の通り10月7日からだが、その前日となる6日は「メディアコンベンション」と呼ばれ、一部企業のブースが報道関係者向けに先行公開された。とは言え、メディアコンベンション対象のブースでも準備中のところが多く、展示品が未着だったり、説明員が打ち合わせをしていたりし、完全な説明を受けることはできない状態だ。

 本稿では、6日時点で公開されているロボット関連の展示を中心に、目立った展示を取り上げていこう。

シャープのRoBoHoN

RoBoHoN

 CEATEC前日に華麗なデビューを果たしたシャープの持ち運び可能なロボット型電話「RoBoHoN」は、シャープのブースに実機が展示されている。

 6日時点では実際に手に取ることができたのだが、実際に手にしたところ390gというスペック以上の重量感が得られた。携帯電話端末を内蔵しているだけでなく、サーボやプロジェクタ、カメラなどの装置が多数組み込まれているので、“ぎっしり感”はある。これが電話ですと言われると、モバイラーにはややつらい重さだ。しかしヒューマノイド型のロボットだと言われれば軽い部類に入るだろう。

 RoBoHoNの外観を見て、なおかつ動画で声を聴いて「あっ、これはデアゴスティーニのロビ?」、「パナソニックのエボルタのロボット?」などと思ったユーザーは鋭い。シャープと共同開発を行なった株式会社ロボ・ガレージ代表取締役の高橋智隆氏は、これらも手掛けているので、デザインが共通している。

 通常は座っているポーズだが、「立って」と言うと座っている状態から自立する。自立するにはまず手を後ろに当て、大きく海老反りをする。それから逆に前に1回かがむ。その後右腕を後ろに、左腕を前にして前後の重量バランスをとりながら、ゆっくり立ち上がる。たかが座っている状態から立つのに10秒近くかかるわけだが、人間と違い関節の動きが大きく制限されている上、このサイズで重量バランスをとりながら自立するというのは、ロボットにとってかなり難しい動作だ。

 「写真を撮って」と言うと、こちらを向いてカメラアプリが立ち上がる。しばらくすると「笑って」とお願いされるので、そこで笑うとシャッターが切れる仕組みだ。写真を撮った後「写真を見せて」と言うと、プロジェクタの起動準備に入り、その後前かがみになって机にプロジェクタで先ほど撮影した写真を映す。

 このプロジェクタはレーザー光源方式とされており、フォーカスフリーとなっているので、距離に合わせてピントを合わせたりする必要はない。シャープはレーザープロジェクタを製造していないので、外部の部品とみられる。

 そのほか、「踊って」、「歩いて」といった問いかけにも応えられるのだが、会場内は騒音が多いためか、音声認識されないことも多々あった。これについて説明員も「本番に弱い」と認めたが、現時点ではまだプロトタイプなので、量産に向けて周辺音低減技術などがブラッシュアップして改良されていくだろう。

本体背面にタッチ対応のディスプレイを備える
頭部にレーザープロジェクタとカメラを装備している
前にかがんでプロジェクタを机に投影する
フォーカスフリーで、距離に関わらず投影できる
座っている状態から自立するには、まず手を後ろに当て、大きく海老反りをする。それから逆に前に1回かがむ。その後右腕を後ろに、左腕を前にして前後の重量バランスをとりながら、ゆっくり立ち上がる
【動画】プロジェクタを映し出すRoBoHoN
【動画】踊るRoBoHoN

タカラトミーのMECCANOID

MECCANOID。左がG15 KS、右がG15

 Bluetooth SIGのブースでは、タカラトミーの組み立て式人型ロボット「MECCANOID(メカノイド)」の展示が行なわれている。Bluetoothのブースに展示されているのは、MECCANOIDがスマートフォンやタブレット端末との通信にBluetoothを利用しているからである。

 MECCANOIDは9月に既に発表されている組み立て式のロボットだが、発売は11月7日なので、後1カ月ほど時間がある。そういった意味では、MECCANOIDが気になっているユーザーにとって、CEATECはいち早く会える場だと言える。

 34種類の音声コマンドを認識し、約900種類の音声フレーズと動作を組み合わせて、コミカルな反応をする。そのあたりは電話機能を除いたロボットとしてRoBoHoNに似ているのだが、決定的に違う点は2つ。まずMECCANOIDはそもそもカメラを備えていないので、画像でユーザーを捉えていない。またRoBoHoNは二足歩行が可能だが、MECCANOIDは足があるように見えるが実際はローラーで動く。可動なのは上半身だけだ。

 ただし一般用途を想定したRoBoHoNとは違い、MECCANOIDは工作そのものを楽しんでもらえるよう、動きに関しては自由にプログラミング可能だ。先述のようにBluetoothでiOSやAndroidデバイスとペアリングして、専用のアプリを用いて動きをプログラミング/記録/保存できる。また、胸に備え付けのコントローラのボタンを押し、腕や頭を持って動かすと、その動きを再現する「Learned Inteligent Movement」機能も搭載している。つまりサーボからのフィードバックを受けて、同じ制御を再現する機能を備えているわけだ。

 ユニークなのは、学習中にユーザーが喋った言葉を記録し、それをMECCANOID自身の声に変換して再生する点。言ってしまえばボイスチェンジャーを実装しているわけだが、ユーザー自身が標準では搭載されていない言葉を自由に吹き込んで再生できるのは面白い。

 サイズの違いで2種類がラインナップされており、全長122cmの「G15 KS」が5万円、全長約61cmの「同G15」が3万円。 前者は片腕当たり3つのサーボ、そして頭部に2つのサーボを内蔵しているが、後者は片腕当たり2個となり、頭部は固定となる。なお、手の指は可動だがサーボ非搭載のため制御はできない。

上半身に8個のサーボを内蔵しており、頭を傾げたり、腕を自由に曲たりできる
胸のところにはコントローラを装備。スマートフォンも保持できる
指は可動だがサーボは装着されていない
G15 KSは片腕当たり3つのサーボを内蔵している
頭にも2つのサーボを内蔵する
足は二足歩行ではなくローラー式
G15 KSは充電式バッテリを内蔵。2時間の充電で概ね2~3時間動作する
G15は単2形乾電池を4本使用する
【動画】タブレットでMECCANOIDの動きを制御しているところ
【動画】Learned Inteligent Movement機能を使いMECCANOIDに動作を教えているところ

卓球をするロボットとけん玉をするロボット

 一般のエンドユーザーが直接触れられる技術ではないが、オムロンは卓球をするロボットアーム、デンソーはけん玉をするロボットアームを展示した。

オムロンの卓球をするロボットアーム
デンソーのけん玉をするロボットアーム

 オムロンの卓球ロボットは2014年に発表されたものだが、2015年モデルではソフトウェアをブラッシュアップし、ロボットアームによって打ち返したピンポン球の経路を予測してテーブル上に表示するようにした。

 当然のことながら、ロボットが卓球をやるためには、相手が打った時の球の回転や方向を瞬時に認識/予測しなければならないのだが、今年は打つ返し予測表示が加わったことで、打ち返した時の回転や方向も予測しなければならないわけで、アルゴリズムがさらに進化していることになる。

 一方デンソーのけん玉をするロボットアームは、こうした予測アルゴリズムよりも、玉をうまく受け止めるしなやかな動きや精密さが必要になるわけで、機械としての精度をアピールするデモとなっている。

【動画】卓球をするオムロンのロボットアーム
【動画】デンソーのけん玉をするロボットアーム

(劉 尭)