イベントレポート
CEATEC JAPAN 2015レポート【3Dプリンタ/ドローン編】
~1台3役の3-in-1 3Dプリンタや気軽に使えるハンドヘルド3Dスキャナ
(2015/10/13 06:00)
10月7日~10日の4日間、幕張メッセで、IT・エレクトロニクスの総合展示会「CEATEC JAPAN 2015」が開催された。ここでは、CEATEC JAPAN 2015に出展されていたものの中から、3Dプリンタ関連とドローン関連の展示を取り上げたい。
国内未発表の製品を多数展示していたXYZプリンティングジャパン
3DプリンタメーカーであるXYZプリンティングジャパンは、まだ設立されて2年ほどしか経っていないが、2014年の国内3Dプリンタ市場(台数ベース)でシェアトップを獲得するなど、コストパフォーマンスの高さで人気である。そのXYZプリンティングジャパンは、国内未発表の3Dプリンタを4機種、ハンディー3Dスキャナ1機種、3Dペン1機種、ホビーロボット1機種を展示し、注目を集めていた。
国内未発表の3Dプリンタ「ダヴィンチ 1.0 Pro」は、現行のダヴィンチシリーズの上位となる製品であり、プリントヘッドやプラットフォームが改良され、より精度の高い出力が可能になっているほか、無線LANにも対応している。プラットフォームは、ガラス製からアルミニウム製に変更され、より強度が増している。
また、現在の「XYZware」よりも詳細な設定が可能なProシリーズ専用のソフトウェア「XYZware for PRO」を利用できることも魅力だ。ダヴィンチ 1.0 Proの日本での発売時期や価格は未定だが、来年(2016年)の早い時期になりそうだ。そして、従来のダヴィンチ 1.0Aも併売され、ダヴィンチ 1.0 Proはそれよりも多少価格が上がるとのことだ。
同じく国内未発表の3Dプリンタ「ダヴィンチ 1.0 Pro 3-in-1」は、その名の通り、3Dプリンタ、3Dスキャナ、レーザー刻印機の3つの機能を実現していることがウリだ。
XYZプリンティングでは、既に3Dプリンタと3Dスキャナを一体化した「ダヴィンチ 1.0 AiO」を発売していたが、ダヴィンチ 1.0 Pro 3-in-1はさらなる多機能化を実現したモデルだ。こちらも、ダヴィンチ 1.0 Proと同じく、プリントヘッドやプラットフォームが改良されており、専用のXYZware for PROを利用できる。
なお、レーザー刻印機能を利用するには、オプションのレーザーユニットが必要になるが、こちらのレーザーユニットは、ダヴィンチ 1.0 Proでも利用できるようだ。ダヴィンチ 1.0 3-in-1も、来年前半には発売される見通しであり、価格もダヴィンチ 1.0 AiOより少し高くなるとのことだ。
さらに、国内未発表の3Dプリンタとして「ダヴィンチ Jr. 1.0w」と「ダヴィンチ Jr. 1.0 3-in-1」も展示されていた。ダヴィンチ Jr. 1.0wは、先日発表されたダヴィンチ Jr. 1.0に無線LAN機能を追加した製品であり、PCから無線LAN経由でデータを転送できるだけでなく、iPadやAndroid搭載タブレットから、XYZギャラリーを閲覧して印刷したいデザインを選んで、印刷することも可能だ。また、自動補正機能が追加されるなどの改良も行なわれている。こちらは、価格が59,800円と発表されており、年内にも発売が開始されるようだ。
ダヴィンチ Jr. 1.0 3-in-1は、ダヴィンチ Jr. 1.0wをベースに、3Dスキャン機能とレーザー刻印機能を合体させたものであり、ダヴィンチ 1.0 Pro 3-in-1の弟分となる。こちらもレーザー刻印機能を利用するには、オプションのレーザーユニットが必要になる。ダヴィンチ 1.0 Pro 3-in-1の発売時期は来年前半を予定しているとのことだ。
また、既に発表済みの製品だが、光造形方式の3Dプリンタ「ノーベル 1.0」も展示されていた。
XYZプリンティングジャパンは、今後の製品ロードマップとして、ハンドヘルド3Dスキャナやロボットなどの新カテゴリの製品を開発することを示唆していたが、今回のCEATEC 2015 JAPANのブースでは、これらの製品が初めて国内でお披露目されていた。
まず、ハンドヘルド3Dスキャナ「XYZハンドヘルド3Dスキャナー」だが、IntelのRealSenseテクノロジを採用したものだという。本体は片手で握って使うコンパクトなもので、3Dスキャンしたい物体の周りを一周するように動かすことで、3Dスキャンを行なう。きれいに3Dスキャンできるようになるのは、多少の慣れが必要そうであったが、デモでは女性の顔を結構高い精度で3Dスキャンできていた。XYZハンドヘルド3Dスキャナーの発売時期は年内の予定で、価格は3万円前後を目指しているとのことだ。3万円でこのくらいの精度が実現できるのであれば、コストパフォーマンスは高いと言えるだろう。
3Dプリンタと3Dスキャナは出力と入力の関係にあり、親和性が高い機器だが、一見あまり関係なさそうな製品が二足歩行ホビーロボットの「XYZロボット」である。こちらも、COMPUTEX TAIPEI 2015で展示されていたものだが、国内での展示はこれが初となる。
XYZロボットの重量は2kg程度で、18自由度を持つ。サーボモーターは自社開発のシリアル対応のものだという。サーボモーターのトルクやスピードなどは公開されていないが、トルクは15~16kgf・cm程度の可能性が高い。Bluetoothに対応しており、Bluetoothコントローラが付属する。また、へその部分には赤外線を利用して前方の障害物までの距離を測るPSDセンサーが搭載されているほか、microSDカードスロットも備えており、音楽や音声などの再生も可能である。
首のヨー軸は備えていないので、首を左右に振ることはできないが、脚の付け根のヨー軸はあるため、いわゆるカトキ立ちのようなポーズが可能であり、旋回モーションも自然である。こちらは、日本での発売時期や価格などは全て未定だが、前向きに検討中とのことだ。
最後に紹介するのは、国内未発表の3Dペン「XYZ 3Dペン」だ。これは、フィラメントを熱で溶かしてヘッドから射出し、それを積み重ねて造形するもので、言わば手動3Dプリンタだ。こうした製品は他社からも発表されているが、XYZ 3Dペンは、通常の3Dプリンタ用のABSフィラメントを切ってそのまま利用できることが特徴であり、ランニングコストも安い。自由な形を作るのは慣れないと難しいが、3Dプリンタで出力したものをベースにXYZ 3Dペンでデコレーションするといった使い方も考えられる。こちらは年内の発売予定で、1万円を切る価格にしたいとのことだ。
業務用マルチコプターを多数展示していたDJI
ドローンブームの火付け役とも言えるDJIは、自社製品を多数展示していた。DJIは、4枚羽根のクアッドコプターから、6枚羽根のヘキサコプター、8枚羽根のオクトコプターまでさまざまなマルチコプターが展示されていたほか、カメラを搭載して揺れを防ぐハンドジンバルなども展示されていた。
MATRICE 100は、超音波センサーやカメラにより障害物を検知し、ぶつからないように避ける機能を備えており、自律飛行時の安全性をより高めている。DJIのマルチコプターは基本的に業務用途向けだが、その中でもエントリークラスとなる「PHANTOM 3」は、14万円程度から販売されており、個人でもなんとか手が届く範囲である。
永山のブースでは、機動性がウリのスポーツドローン「LOBIT 300GE」の展示や飛行デモが行なわれていた。LOBIT 300GEは、クアッドコプターで、最高時速110kmを誇る。
ドローンによる構造物点検システムの展示を行なっていた内閣府
内閣府 戦略的イノベーション創造プログラムのブースでは、ドローンを利用した構造物点検システムに関する展示を行なっていた。1つは打音機構を搭載したマルチコプターにより、構造物を点検するシステムであり、構造物の近くまでいって構造物を叩き、その音で構造物に異常がないか確認するものだ。
また、柔軟静電吸着装置を搭載したマルチコプターを利用して、点検箇所の壁面に吸着させ、カメラでの近接目視を行なうシステムも展示されていた。さらに、マルチコプターをサッカーボール状の球殻で覆った、受動回転球殻ヘリの展示も興味深かった。マルチコプターを受動的に回転する球殻で覆うことで、橋の床下などに接触しながら転がるように移動できるようになり、カメラでの近接目視が実現できる。
単3乾電池型スマートガジェット「Mabee」が展示していたノバルス
ノバルス株式会社のブースでは、同社が開発中の単3乾電池型スマートガジェット「Mabee」を展示していた。Mabeeは、単4乾電池を単3乾電池にするアダプタの形をしたガジェットであり、BLE(Bluetooth Low Energy)経由でiPhoneなどのスマートフォンから、電池の出力を0%~100%でコントロールできるというものだ。
Mabeeを利用することで、単3乾電池で動くオモチャなどが、BLE経由でコントロールできるガジェットに変身するのだ。モーターで動くプラレールやミニ四駆などの製品なら、スマートフォンから出力をコントロールすることで、ある程度のスピードの制御が可能になる。電源のオン/オフしかできない機器でも、機器に触れずに電源をオン/オフできるのは便利だ。スマートフォン側のアプリ次第で、加速度センサーを利用してコントロールしたり、音の大きさでコントロールすることも可能だ。乾電池をIoT化するというのは、ありそうでなかったアイデアであり、なかなかいいところに目を着けたと言える。
ユニークなガジェットやサービスが展示されていた「IoTスタートアップSHOWCASE」
IoTという言葉がブームとなっているが、今回のCEATECでは、「IoTスタートアップSHOWCASE」いうブースが設けられており、全部で21のIoT関連サービスやガジェットなどが展示されていた。ここでは、その中から特に面白いと思った展示を紹介する。
ソニー・ミュージックエンタテイメントが7月に設立したキッズ専門ブランド「KIDSTONE」の新プロジェクトとして展示されていたのが、「クラフトがっき」と「ドレミファ採集」だ。クラフトがっきは、特殊な紙に導電性ペンで絵を描き、専用デバイスを取り付けることで、音の出る楽器になるというものだ。
音色はタブレットのアプリで選択でき、最大4人までの同時セッションも可能だ。ドレミファ採集は、RF ICタグが内蔵されたオトムシを、専用虫取り網で捕まえていき、全てのオトムシを集めて、テンポよくタブレットのカゴを振ることで、曲が再生されるというものだ。例えば、ショッピングモールなどでオトムシをいろんな場所に配置すれば、スタンプラリー的に利用することができる。
Eagle Eyeは、アマチュアサッカーチーム向けトラッキングシステムであり、サッカー選手の腕に腕時計型のデバイスを装着することで、試合中の各選手のポジショニングや走行距離、スプリント回数、速度などのデータを記録できる。記録したデータはスマートフォンやタブレットで確認でき、チーム全体のパフォーマンスを定量的に可視化できるというものだ。プロのサッカーチームでは、ステレオカメラを利用したトラッキングシステムを導入しているところもあるが、そうしたシステムは1,000万円程度かかるとのことであり、Eagel Eyeならその50分の1で済むそうだ。