イベントレポート
【Photokina 2014】スマホ、タブレット連携のカメラ機器
~iPhone 5/5s用のカメラユニットや、OLYMPUSのレンズスタイルカメラ
(2014/9/18 12:20)
ドイツ・ケルンメッセで開催されているPhotokinaの展示ホールでは、カメラ関連機器が幅広く展示されている。本稿ではこうした展示の中から、スマートフォンやタブレットと連携可能なカメラを紹介する。
米国のスタートアップ企業、Relonchが展示しているのはiPhone 5/5s用のカメラユニット「Relonch Camera」。iPhone 5/5s用のケース状になっており、APS-Cサイズの撮像素子と、F2.0で45mm相当のレンズが搭載されているという。
使用時にはiPhone 5/5sを背面に装着。Ligntning端子で接続する。本体にはバッテリも内蔵されており、本体側のMicro USB端子から充電が可能だ。
撮影に利用するのはRelonch Camera側の撮像素子とレンズで、iPhone 5/5sはいわゆるライブビューディスプレイとストレージの役割を果たす。iOSの写真アプリに撮影画像を保存して、SNSへの共有機能にも対応する。AppStoreで専用のアプリケーションを配信して、カメラ制御に利用。AppleのMFi認証を取得した正規アクセサリとして出荷を目指す。
F2.0で45mm相当というスペックから想像できるように、ブースで行なわれているデモもポートレート撮影が中心になっている。iPhone 5/5s内蔵カメラでは実現できない高級コンパクトデジカメ級のポートレートを撮影できることをセールスポイントにしている。
ブースで稼働しているデモ機は開発途上のエンジニアリングサンプルということで、同時に展示しているデザインサンプルまではまだ隔たりがある。一方でアプリケーションの完成度は高く、セールスポイントである解像感の高い撮影能力に加えて、グレースケール化、SNSへのシェア機能などが搭載されている。
現在は499ドルで予約受け付けているが、現時点の出荷予定時期は2015年秋以降となっており、受け取りはやや先となる。iPhone 6/6 Plusの発売を間近に控える状況でのiPhone 5/5sのケーススタイルだが、逆にiPhone 6/6sへの機種変更後に旧製品を活かす手段と考えられなくもない。当初のスケジュール通りとはいかないことは想像に難くないが、次回Photokinaで訪れた時には完成品を見たいと思う。
OLYMPUSのブースでは、いわゆるレンズスタイルカメラのプロトタイプモデルが参考出展されていた。同社が2014年7月に発表したオープンプラットホーム構想の1つで、外部からもアプリケーション開発者などを募る模様。
参考出展で提案されているのは、マイクロフォーサーズの撮像素子とレンズマウントを搭載したカメラユニット。本誌でもIFAレポートで紹介した、ソニーのレンズスタイルカメラ「ILCE-QX1」とよく似たコンセプトとなっている。ILCE-QX1はソニーのEマウントを採用しているが、こちらはOLYMPUS製ということで、マイクロフォーサーズ(MFT)マウントになっている。
本体はアクリルケースの中に展示されており、傍らにiPhone 5/5sと思われるスマートフォンも並べてあるが、動作デモは行なっていない。レンズは14-42mm(28-84mm相当)の標準ズームレンズが取り付けてある。
展示のそばには同社のスタッフがほぼ常駐しており、簡単な解説とユーザーニーズのサンプリングを行なっている。用途については、説明パネルにもあるようにスマートフォンやタブレットをライブビューディスプレイ兼コントローラとして、機動性の高い撮影を意図している。筆者も取材中に雑談を交わし、個人的に利用しているソニーのレンズスタイルカメラ「DSC-QX10」の利用方法とレンズスタイルカメラに対する意識を話させてもらった。
筆者の用途や考えは比較的単純なもの。今回の取材のようにメーカー各社の製品発表会がある展示会では、各社ともスライドを使用したプレゼンテーションが多い。講演者とスライドを同一のカメラで撮ることも多いが、机があるような場合はミニ三脚にQX10を取り付けて、スライドがちょうど納まる程度にズームを固定してしまう。机に置いたスマートフォンをペアリングして、スライドの切り替わりに応じて画面をタップして撮影していく。このスタイルだとほぼ両手が空くので、PCを使ってメモを取るなり、別のカメラを使って講演者を撮るなりすることが容易だ。
もう1つ、このコンセプト展示のユニットとソニーのILCE-QX1の共通点は、手持ちのレンズ資産が使えるところだ。カメラ本体に合わせて交換レンズの数はそれなりに増えていく。複数のカメラ本体を持つ場合はあるが、一般的にはカメラ本体よりもレンズの数の方が多い。それならば、こうしたユニットをレンズのリアキャップ代わりに付けておけば、何かと応用が効きそうな予感がする。OLYMPUSは「OM-D」と同時に「レンズ付きのボディキャップ」という個性的なアクセサリを出荷した。それならば撮像素子の付いたレンズ(リア)キャップがあっても良いのではないだろうか。
先述の通り、このコンセプト展示はオープンプラットホーム構想の1つ。撮像素子や画像処理エンジン、マウントなどはメーカーが提供するが、スマートデバイス向けのAPIなどは公開されるものと想像される。将来的に製品化に至れば、サードパーティが連携アプリに参入するという可能性もある。
米POLAROIDのインスタントフィルム(いわゆるポラロイドフィルム)生産中止を受け、インスタントフィルムの継続を目指して2008年に創業された「The Impossible Project」。現在もインスタントフィルムの製造、販売を行なっている。2012年のPhotokinaでは、プロトタイプが展示されていたiPhone向けの「Impossible Instant Lab」が製品として展示されていた。
同製品はiPhoneなどで撮影した写真をインスタントフィルムに感光させる仕組み。AppStore経由で専用アプリケーションを配布する。手順としてはiPhoneあるいは第5世代iPod Touchなどで撮影を行なう。専用アプリケーションの場合はインスタントフィルムの画角で撮影したり、既存の写真を画角に合わせてトリミングする。使用するフィルムに合わせて露光時間を選び、蛇腹を伸ばした「Impossible Instant Lab」にiPhoneなどを装着。フィルムを引いて感光可能な状態にして、iPhoneなどのパネルに写真を表示して感光面に結像させる。
Instagramの大ヒットからも分かるように、インスタントフィルムにはやはり捨てられない何かがあるようだ。iPhoneで撮影した写真を印刷する場合でも、今はプリンタにWi-Fiで直接接続して写真印刷できる環境は整っている。同じ写真を元にするならば、その方が明らかに高画質、高精細な出力が得られることは間違いない。しかし敢えて不便とも言うべき手段を使って、ポラロイド然とした写真を手に入れることに価値があるという人々が決して少なくはないということである。
現在はiPhone 4/4s、5/5s、そして第5世代iPod touch用のアタッチメントが付いたImpossible Instant Labを提供。準備が整い次第、iPhone 6/6 Plus、そしてAndroidの複数デバイス向けのアタッチメントと、専用アプリケーションの提供を行なうとしている。