イベントレポート

Toshiba、119.99ドルのWindowsタブレットや新方式のデジタイザペン

ToshibaのEncore Mini、表も裏もシンプルなデザインで、Modern UIが動いていなければAndroidタブレットかと見まがうほど。Windowsボタンも用意されていないので、チャームを出して対応

 Toshibaは、例年IFAに出展して同社の新製品などを公開している。PCに関してもIFAで新製品を発表することが多く、昨年(2013年)のIFAでは「Encore」(アンコール、日本名「dynabook Tab」)というBay Trail搭載8型Windowsタブレットを展示して注目を集めた。

 今年(2014年)は、Encoreの後継となる「Encore2」がすでに市場に投入されているが、追加モデルとして7型の「Encore Mini」(アンコール・ミニ)がお披露目された。それに加えて、Pentium/Celeron(Bay Trail-M)を搭載した360度回転するヒンジを採用した低価格2-in-1デバイス「Satellite Radius 11」、同社の製品としては第2世代となるフルHD(1,920×1,080ドット)液晶もラインナップされた「Chromebook2」を発表した。

 また、ToshibaはWindowsタブレット向けのソリューションとして、新しい方式のデジタイザペンの技術デモを行ない注目を集めた。Toshibaによれば、従来同社がAndroidタブレット向けに採用していた方式とも、現在Windowsタブレットで一般的に使われているワコムやN-trigといったデジタイザとも違う新方式が採用されており、従来製品に比べてより優れた書き心地を実現することが可能になるという。Toshibaはこの新デジタイザを今後発表する予定のWindowsタブレットに実装し、手書きに特化したWindowsストアアプリとセットで提供する計画だ。

低価格を実現するために“割り切った設計”になっているEncore Mini

 今回Toshibaが発表したEncore Miniは、7型液晶を搭載したWindowsタブレットだ。最大の特徴は、その価格で米国での販売予定価格は119.99ドル(日本円で約13,000円)と、非常に低価格になっていることだ。これまでのWindowsタブレットと言えば、安くても299ドルが基本だったのだが、Windows 8.1 with Bingが投入されたこと、Bay Trail Entryが追加されたことなどによりシステムの価格が下落傾向にある。

 実際Bay Trail Entryを搭載している8型Encore2は米国では199ドル(日本円で約21,000円)で販売されている(日本向けのdynabook Tab S38は3万円台半ばからとやや高めだが)。しかし、それでも1万円台前半や1万円以下の製品があたり前になりつつあるAndroidタブレットに比べると、低価格帯のラインナップがなかったと言える。

 そこで今回のEncore Miniは、廉価なAndroidタレットで利用されているような低価格な部材(SoCや液晶ディスプレイ、筐体など)を利用した。SoCはBay Trail EntryとなるAtom Z3735G、1GBメモリ(DDR3L)、16GBのストレージ(eMMC)、7型のWSVGA(1,024×600ドット)というスペックは、低価格なAndroidタブレットとほぼスペックだ。サイズは119.8×199×10.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量は350gで、OSはWindows 8.1 with Bing。

 ただ、そうした低価格を実現したために、いくつかの制約もある。1つは液晶がWSVGAであるため、そのままではWindowsストアアプリが動かなくなってしまう。このため、液晶のネイティブの解像度はWSVGAなのだが、Windows上の設定解像度は1,280×768ドットとソフトウェア的にスケーリングを行なっていること。このため、小さな文字などを表示させると、やや滲んだような表示になってしまう。Modern UI上でWindowsストアアプリを利用する場合には大きめなフォントが利用されるので気にならないが、Windowsデスクトップに降りて小さなフォントで表示させるとどうしてもそれが気になってしまう。

 ただ、結局それは価格とのトレードオフだ。この製品はそうしたことは気にしないユーザーが、Androidタブレットの代わりとして購入する製品であり、そこは割り切ったということだろう(ただし、現在の製品は試作機なので出荷前までに改善される可能性もある)。もう1つの制約としては、ほかのWindowsタブレットではあるWindowsボタンはなく、Modern UIのホームに戻るためにはチャームを出す必要がある点だ。

 なお、Toshibaの関係者によれば、このEncore Miniが日本でも販売されるかはどうかは“検討中”とのことだ。前述の通りスケーリングによる表示には課題があるため、誰でも勧められるという製品ではないが、とにかく安く済ませたいというニーズはあると思うので、ぜひとも日本でも海外と同じような価格帯で販売して欲しいところだ。

オプションで用意されるカバー
カバーにつけたところ
カバーの蓋を閉めたところ、カバーはスタンドにもなるので便利だ
Windowsボタンも、ロゴシールもないので、一瞬Androidタブレットかと思うが、Windowsが動作している
ポートもシンプルでMicro USB、microSDカードすろっと、ヘッドフォンジャック
特徴的な解像度表示。解像度は1,280×768ドットに固定されており、液晶のネイティブ解像度より高解像度なので、スケーリングで対応。Modern UI化ではあまり問題ないが、Windowsデスクトップで小さなフォントで表示するとやや滲みなどが気になる
デバイスマネージャでの表示、Wi-Fi/BluetoothはRealtek製を採用
CPUはAtom Z3735G(Bay Trail Entry)を採用、OSはWindows 8.1 with Bing

Bay Trail-Mを搭載したSatellite Radius 11とSatellite CL10-B

 ToshibaがIFAで発表した「Satellite Radius 11」と「Satellite CL10-B」は、Bay Trail-MのPentium/Celeron(前者)ないしはCeleron(後者)を搭載した11.6型液晶を採用したクラムシェル型ノートPC。CL10-Bは通常のノートPCと同じヒンジを採用しているが、Radius 11はヒンジが360度回転するタイプの回転ヒンジを備えた2-in-1デバイスになっている。

 サイズは289×199×19.9mm(同)で、重量はSatellite Radius 11が1.3kg、Satellite CL10-Bが1.1kg。カラーはゴールド1色で、CPU以外のスペックは2GB(CL10-B)ないしは4GB(Radius 11)メモリ、32GBのeMMC(CL10-B)または500GBのHDD(Radius 11)というストレージとなっている。OSはいずれもWindows 8.1 with Bing。価格はRadius 11が399ユーロ、CL10-Bが349ユーロが想定されている。Toshibaの関係者によれば、この製品に関しても日本での製品投入は“検討中”ということだった。

 Toshibaは欧米市場においてChromebookの導入に熱心で、今回のIFAでも、第2世代のChromebookとなるChromebook2を発表した。プロセッサは従来と同じくCeleronだが、より薄型軽量化と上位モデルに関しては液晶はフルHD(1,920×1,080ドット)に変更されており、下位モデルのHD(1,366×768ドット)とあわせて好みに合わせて選択することができる。フルHDモデルは4GBメモリ/32GBストレージ、HDモデルは2GBメモリ/16GBストレージで、100GBのGoogle Drive利用権が付属してくる。サイズは320×214×19.3、重量は1.35kgとなる。価格は上位モデルが349ユーロ(日本円で約47,000円)、下位モデルが299ユーロ(日本円で約41,000円)となっている。

Satellite Radius 11は11.5型液晶を採用した回転ヒンジ型の2-in-1デバイス
左がSatellite CL10-B、右がSatellite Radius 11。デザインはほぼ同じだが、Satellite Radius 11は回転ヒンジを備えるのが大きな違い
右が従来のChromebook、左が新しいフルHDのChromebook2。解像度が左側の方が高解像度(アイコンが小さい)であることに注目
左が従来のChromebookで、右側が新しいChromebook2。新型が薄くなっていることが分かる

Encore2ベースの開発マシンで、新方式のデジタイザペンをデモ

 Toshibaは、参考出展の新技術として、デジタイザペンに対応したEncore2の10型と8型のWindowsタブレットを出展した。Toshibaの関係者によれば、詳細は明らかにはできないものの、ワコムやN-trigといった既存のWindowsタブレットで使われているデジタイザペンとは違う方式が採用されており、既存の製品に比べて、応答性や書き心地などが優れていると説明している。

 Toshibaのペンソリューションと言えば、同社のAndroidタブレットで訴求されていたソリューションだが、Toshibaとしては今後それをWindowsタブレットで展開していきたいという意向があり、今回のデモに繋がったようだ。Toshibaの関係者によればパーム検出機能もあり、ペンにはバッテリが入っているということで、なんらかの電波を利用した方式である可能性が高そうだ。Toshibaはこのペン技術を外部のサプライヤーと一緒に開発しているとのことだったが、サプライヤーに関しては非公表ということだった。

 デモでは、ToshibaのWindowsストアアプリとなるTruNote(現在販売されているdynabook Tabなどにも導入されている)の開発バージョンが導入されており、現行バージョンにある台形補正(撮影した紙を四角に補正すること)だけでなく、OCR機能が追加されており、スキャナがなくても紙を取り込んでデジタルデータにして管理することがより自然にできるようになっている。また、ビジネス向けPCに強いToshibaの強みを活かして、Microsoft Office向けの機能が充実しており、例えばOCRで認識した表などをExcelのデータとしてPowerPointに貼り付けたりといった機能が用意されている。そのほかにも、OneNoteユーザーのために、OneNoteへデータをエクスポートする機能なども用意されており、現在OneNoteを使いこなしているユーザーにも恩恵がありそうだ。

 さらにユニークな機能としてはWindows 8.1ではロック時にロック画面をスワイプするとカメラアプリを起動するという機能があるのだが、その発展系としてロック画面で特定の操作を行なうと、前出のTruNoteが起動すると言うことも可能になっているという。これを利用するとWindowsタブレットがパスワードロックされている状態であっても、TruNoteを起動してメモを取ったりすることができるようになる。

 実際にどのような製品に搭載されるのか(Encore2のデジタイザ版がでるのか)などは未定ながら、今後この技術を日本国内の製品に展開していきたいという意向はあるとのことだ。製品の完成度から見て、このEncore2のデジタイザ版がdynabook Tabとして日本に展開される可能性も十分に考えられるだけに、今後の動向には要注目だ。

新しいデジタイザペンのデモに使われていたEncore2の対応版。どのような方式であるかは非公表だが、ペン側にバッテリは入っているので、なんらかの電波を出す方式だとは考えられる。動いているのがTruNote
新バージョンのTruNoteでは台形補正だけでなく、OCR機能も追加される
このようにペンで書いた表や図が……
PowerPointに図や表として貼ることができる。もちろん表はExcelで編集もできる
エクスポート先はOneNote(Modern版、クラウドにアップロードもできる)、Office、PDF、テキストファイルなど
ロック画面からペンをスワイプすると。TruNoteが起動してすっとメモがとれる、これは便利だ
デモに利用されていた新型ペン。確かに文字入力はしやすく、視差も少ないように感じた。パーム検出の機能や筆圧感知なども備えているという

(笠原 一輝)