イベントレポート
「Horizontal Dock」などThunderbolt関連周辺機器を紹介
2014年4月1日 12:33
開発が難航するHENGE DOCKSの「Horizontal Dock」、出荷は9月を目途に
HENGE DOCKSの「Horizontal Dock」についての第一報を紹介したのは2013年のInternational CESのレポート記事だったと記憶している。この記事では、2013年第3四半期からの出荷を目指していると紹介しているが、紆余曲折を経ていまだ出荷が始まっていない。
2014年1月のInternational CES時点では、当初計画のThunderbolt版とDisplayPort版という分け方をやめて、Horizontal Dock側の出力ポートはThunderbolt×1、Mini DisplayPort×1という1モデル設定へと見直しが行なわれた。出展者によれば、この見直しは主にコスト面に由来して、搭載するThunderboltコントローラの数を減らすことで最終製品の価格を引き下げ、かつSKUを単純化することが明らかになっていた。それでも1月時点では3月末ぐらいの出荷を見込んでいるというコメントを得られていたのだが「中国における製造上の都合」から、9月の出荷を目指すと言う。今年半ばというコメントはほかのThunderbolt関連製品を扱う企業からも聞こえてくる内容で、おおむねこの時期を目途にIntel製のコントローラが更新されるなり低価格化することを見込んでいるものと想像される。
Horizontal Dockが対応するMacBook Pro Retinaディスプレイモデルは、15インチのもの。プロセッサにIvy Bridegeを採用する2012Midと2013Early、そして現行のHaswellを搭載する2013Lateモデルが該当する。これらは、ThunderboltとThunderbolt 2といった違いはあるが、インターフェイスの配置が共通なため同じ製品で対応できることになる。13インチ向けの製品も企画されているが、まずは15型向けの出荷を目指すそうだ。
こうしたドッキングステーションには一定のニーズがある。Appleは過去のラインナップも含めてこうしたポートリプリケーターと言うべき製品をほとんど用意していないので、サードパーティが細く長く対応を続けていた。古くは「BookEndz」シリーズが定番で、最近はこのHENGE DOCKSが提供するMacBook製品を垂直に差し込むタイプが人気だ。ネックになるのはMac製品のモデルチェンジで、ポートの配置や本体サイズが変わるとサードパーティ側でも対応が必要になる。周辺機器のニーズは本体よりやや遅れてくるので、ディスコンになった製品をサポートしつつ、新製品への対応を進めるという繰り返しとなる。
読むことが難しいのは製品のライフサイクルで、例えば前述のMacBook Pro Retinaディスプレイモデルの場合は、2012年6月の発表から現行モデルまで同一サイズかつポートの配置が同じで、1つのSKUで対応ができる。ただし2014年終盤以降になると推測されるBroadwellを搭載したMacBook Pro Retinaディスプレイモデルでも、このHorizontal Dockが利用できるかどうかはMacBookが実際に出てみないと分からないのだ。そういう点でも9月出荷予定というのはそれなりのリスクと考えざるを得ない。
とは言え、筆者もこの製品に期待を寄せている1人だ。筆者はMacBook Pro Retinaディスプレイモデルを愛用しており、自宅での作業や海外でのイベント取材にも同じMacを持ち歩いている。自宅では複数の外部ディスプレイやデータの入ったストレージなどが接続されているが、取材に出るときには本体+αだけを持ち出す。
Thunderbolt対応のDockが出荷されたおかげで以前よりは本数が減ったとは言え、それでも最低4本のケーブルを抜き差しする必要がある。それがガチャンとはめ込むだけで終わるのであれば、たいそう楽になるのは間違いない。しかも、現状では外部ストレージのマウントを手動で切り離す必要があるが、Horizontal Dockの計画では物理的なボタンの押下で、あらかじめ設定したストレージのアンマウントまで自動的にやってくれるというのである。はめ込む際には、本体を設置してから右側面の電源ボタンを押す。電動で各ポートがMac側へ自動的に差し込まれる様子を見れば、ドッキングは男のロマンという言葉が相応しいだろう。
現在発表されている仕様では、Horizontal Dockに搭載されるインターフェイスは、USB 3.0×6ポート、FireWire 800、Gigabit Ethernet、SDカードスロット、音声出力、最大3つの外部ディスプレイポート(HDMI、Mini DisplayPort、Thunderbolt)を備えている。仮にThunderbolt側で対応ディスプレイをデイジーチェーンしても、内蔵GPUおよび外部GPUの制限からディスプレイ数は本体を除いて3台となり、最大4画面表示を実現する。現時点ではThunderbolt対応となっており、Thunderbolt 2を搭載する2013Lateを繋いだ際は下位互換でThunderbolt規準になる可能性があるが、こちらも最終仕様待ちとなる。
2013年のものと見比べてみると分かるが、ポートの配置も試行錯誤の末か変わっている。いかにThunderboltとはいえ、USB 3.0×6ポートを賄うには転送速度が明らかに足りないため、おそらくUSB 3.0についてはThunderbolt接続とUSB 3.0のHub機能を分散しているものと思われる。Gigabit Ethernet、FireWire 800など、Mac側にネイティブポートがないものもThunderboltあるいはUSB 3.0から変換しているはずだ。音声出力やSDカードスロットも同様にThunderboltあるいはUSB 3.0 Hubを経由することになる。この辺は、実際の製品を見てみないとどういう構成でブリッジされているかまでは、まだ判断が難しい。
いずれにせよ、今回はイベント特別価格があれば買う気満々の状態でやってきたのだが、残念ながら肩すかしとなった。一刻も早い出荷を待ちたい。
そのほか、速報でも紹介した展示ホール内でのThunderbolt関連製品をあらためて紹介しよう。
ストレージとしてはWDがMacworld | iWorldの開幕に合わせて新製品をリリースした。ポータブルRAIDの「My Passport Pro」である。2.5インチのHDDを2台内蔵しており、容量は2TB(1TB×2)と4TB(2TB×2)の2モデル。内蔵しているHDD自体の本体厚が異なることから、4TBモデルはやや分厚い。放熱も考慮して本体は金属筐体になっていて重量感もあるほか、いずれのモデルにも冷却ファンを搭載している。資料によると最大転送速度は233MB/sec。
Thunderboltケーブルは本体に直結し、本体溝に合わせて巻き取ることでケーブルマネジメントができる。WDでは通常利用におけるケーブルの耐久性に問題はないとしており、加えて万が一の断線などの際にはカスタマーサポートでの対応も行なうとのこと。価格はWDのオンラインストアで2TBモデルが299.99ドル、4TBモデルが429.99ドル。イベント特別価格として、いずれも20ドルオフでの販売が行なわれた。
アダプタは、日本国内ではフォーカルポイントが販売代理店となっているKanexが新製品を展示した。いずれもThunderbolt対応で「Thunderbolt to eSATA + USB 3.0 Adapter」と「Thunderbolt to Gigabit Ethernet + USB 3.0 Adapter」。先に掲載した記事と関連するが、本体が黒いからといって、必ずしもThunderbolt 2対応ではない。
最大転送速度を考慮すると、前者がeSATAの最大6Gbps+USB 3.0の5Gbps、後者がGigabit Ethernetの1Gbps+USB 3.0の5Gbps。Thunderboltの10Gbpsに比べると前者はややはみ出すが、実質的なパフォーマンスでは理論値には達しないものと想定される。これらにはデイジーチェーン用のポートはなく、終端に接続するアダプタとして利用することになる。
One Stop Syetemsの「The Cube」。ThunderboltをPCI Expressスロットに変換・拡張するボックスだ。おおまかに3モデルで、36Wの給電で1スロットを拡張する「The nano Cube」、84W、180W、400Wの給電で1、3、5スロットを拡張する「The μCube」、そして、180W、550W、1,100Wの給電で1、2、5、8スロットを拡張する「The Cube」がある。nano CubeはハーフハイトのPCI Expressカードに対応する。