Acer、HPがClover Trail搭載タブレットを発表
IFA 2012では、多くのPCベンダーがブースを構えたり、発表会を行なってWindows 8の発表に備えた新製品を展示している。本記事ではIFA 2012初日に行なわれたAcerの記者会見で発表されたWindows 8搭載ノートPC、および初日夕方に行なわれた報道関係者向けイベント「DigitalFocus」で展示されたHPのWindows 8搭載ノートPCについてお伝えしていきたい。
AcerとHPは、いずれもIntelのSoC「Clover Trail」を搭載したセパレート型ノートPCを発表したほか、タッチに対応したクラムシェル型ノートPCをWindows 8のリリースに合わせて投入することを明らかにした。またSamsung Electronicsは、IFAの展示ブースにおいてWindowsノートPCとしては初めてWQHD液晶を搭載したノートPCを展示し、注目を集めた。
●Clover Trailを搭載した最大16時間駆動が可能なセパレート型ノートPCのIconia W510今回Acerが発表したのは、いずれも10月26日のWindows 8正式発表後に出荷される予定のWindows 8搭載PCで、具体的には以下の表の製品が発表された。
【表1】Acerが発表したWindows 8対応PCICONIA W510 | ICONIA W710 | Aspire S7 | Aspire U | |
タイプ | セパレート型(タッチ対応) | スレート型(タッチ対応) | クラムシェル(タッチ対応) | AIO(タッチ対応) |
CPU | Clover Trail | 第3世代Coreプロセッサ | 第3世代Coreプロセッサ | 第3世代Coreプロセッサ |
メモリ | 2GB(展示機) | 2GB(展示機) | 4GB | 最大8GB |
GPU | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000 | Intel HD Graphics 4000+NVIDIA GeForce GT 640M |
ストレージ | 64GB eMMC | 32/64GB SSD | 最大256GB SSD | 1TB HDD(32GB SSDキャッシュ) |
液晶サイズ | 10.1型 | 11.6型 | 13.3型/11.6型 | 27型 |
解像度 | 1,366×768ドット | 1,920×1,080ドット | 1,920×1,080ドット | 1,920×1,080ドット |
重量 | 600g(スレート部分) | 未公表 | 1.3kg | 未公表 |
OS | Windows 8 | Windows 8 | Windows 8 | Windows 8 |
今回Acerが発表したPCは、いずれもタッチに対応した製品となっており、タブレットからUltrabook、そして液晶一体型PC(AIO)がラインナップされている。
同社のタブレットPCのブランドである「Iconia」ブランド製品として発表されたのは、Iconia W510、Iconia W710の2製品。Iconia W510は、従来AMD Eシリーズ APU(開発コードネームBrazos)ベースで開発されてきたIconia W500の後継となる製品で、プロセッサはIntelのClover Trailに変更されている。
Clover Trailは、Intel Atom Zシリーズの後継製品として開発されてきたSoCで、OEMメーカー筋の情報によれば来週米国サンフランシスコで開催される予定のIDF(Intel Developer Forum)でAtom Z2750として正式に発表される予定だという。
Clover Trailは、プロセッサコアもシングルコアからデュアルコアとなり、クロック周波数が1.5GHzが1.8GHzに引き上げられたほか、GPUも強化。従来は2チップだった構成が1チップになり、消費電力が従来製品に比べて大きく下がっているのが特徴となっている。
このため、従来は1kg前後と重量があったW500に比べてW510は大幅な軽量薄型化に成功しており、10型液晶を搭載していながら重量は600g、厚さは8.8mmと、Androidタブレットなどと比べても遜色ない。もちろんOSはx86のWindows 8になっており、ARMアーキテクチャのWindows RTでは動作しない既存のWindowsアプリケーションが動作する。
また、こうした製品としては珍しくセキュリティチップのTPMを内蔵しており、TPMを利用する暗号化ソフト(BitLockerなど)やセキュリティソフトウェアを利用することができ、ビジネス用途も考えられた設計になっている。
W510のもう1つのユニークな点はキーボードドックが用意されている点は従来製品と同じなのだが、キーボードドックのヒンジ部分が295度回転することもユニーク。つまり単にキーボードドックをスタンドとして使うといった使い方もできる。
なお、キーボードドックにもバッテリが内蔵されており、本体のスレート部分だけで8時間のバッテリ駆動、キーボードドックに接続した場合には16時間のバッテリ駆動が可能になったほか、スタンバイモードでは6週間充電なしで利用できる。なお、キーボードドックを取り付けた場合の重量は未公表だったが、筆者が持った感じでは1.2~1.3kg程度だと感じた。
Iconia W710はスレート型タブレットで、11.6型(10点タッチ、1,920×1,080ドット(フルHD))液晶ディスプレイを採用している。プロセッサは第3世代Coreプロセッサで、メモリ容量は非公表ながら、実機で確認したところ2GBだった。W710の特徴は、ユニークなクレイドルが付属している点で、横にも、縦にも、そして水平まで近く傾けることも可能になっている。このため、さまざまな形で使うことが可能で、横にしたときにはキーボードを接続して普通にクラムシェルのノートPCと同じ感覚で利用したり、縦にしたときには電子書籍を読んだりといった使い方が想定される。公称のバッテリ駆動時間は8時間。
●タッチ対応クラムシェルUltrabookのAspire S7
Acerは、タッチ対応UltrabookのAspire S7、すでに発売されているAspire M、Aspire Vのタッチ対応版製品などを発表した。
Aspire S7は、タッチに対応したUltrabook。プロセッサは第3世代Coreプロセッサで、13.3型ないしは11.6型の液晶ディスプレイを搭載した2つのモデルが用意されている。解像度は最大でフルHDで、10点タッチに対応したタッチパネルとなっている。
特徴的なのは、非常に薄く見えるデザインで、エッジの部分が曲線になっているため、11.9mmというスペック上の薄さ以上に薄く見える。なお、キーボードにはLEDバックライトが用意されており、内蔵されている光センサーにより暗い場所などで点灯する仕組みになっている。なお、バッテリ駆動時間は公称値で6時間となっている。
Aspire Mは、すでに販売されているNVIDIAのGeForceシリーズを搭載したUltrabookとなるAspire Mシリーズの最新製品で、タッチ機能が追加されリフレッシュされる。プロセッサは第3世代Coreプロセッサで、15.6型ないしは14型の液晶を搭載したモデルが用意される。Aspire V5はメインストリーム向けのノートPCで、すでに14型モデルなどは日本でも販売されている。今回発表されたAspire V5はそうした既存のV5に、10点タッチのタッチ機能を追加したモデルになり、14型と15型が用意される。
Aspire V5タッチ対応モデルは、既存のAspire V5にタッチ機能を追加したクラムシェル型のノートPC | Aspire Mのタッチ対応モデル |
●64点マルチタッチの27型液晶ディスプレイを搭載したAIOのAspire Uシリーズ
液晶一体型デスクトップPC(AIO)には、Aspire Uシリーズという製品が追加された。Aspire Uの最大の特徴は、上位モデルでは64点マルチタッチという非常に多いタッチポイントに対応していることだ。一般的に、マルチタッチ液晶では、10点タッチの製品が多い。これは1人の指が10本であることから十分だと考えられているためだ。しかし、Aspire Uではそれが64点ということで、6人が全部の指で触ったとしても、すべてのポイントが認識されることになる。
液晶パネルは27型のフルHDで、チルト角度は30度~80度の間で設定することができる。下位モデルとしてLスタンドのモデルも用意されており、そちらは10点タッチだが、チルト角度を垂直にして利用することが可能になる。プロセッサは第3世代Coreプロセッサで、本体右側面にはBDドライブが用意されており、NFCにも対応し、スマートフォンとの連携も考えられている。
なお、今回IFAで発表されたこれらの製品は、基本はドイツ、ヨーロッパ向けの発表となり、日本を含むグローバルな地域での発売予定、価格などは未定とのことだった。
●HPのENVY X2はClover Trail搭載のセパレート型ノートPC
HPはセパレート型ノートPCとして、ENVY X2を8月30日に発表し、報道関係者向けのイベント「DigitalFocus」において展示を行なった。ENVY X2は、スレート型のタブレットと、キーボードドックに分離するセパレート型のノートPCで、スレート部分の重量は680g、キーボードドックを接続した状態は1.4kgとなっている。
プロセッサは、IntelのClover Trail。展示時点ではデバイスマネージャなどでプロセッサのスペックなどの確認が禁止さていたため、クロック周波数などは不明。メインメモリは2GBで、64GBのSSDを搭載するなどの基本スペックになっている。液晶ディスプレイは11.6型の1,366×768ドット対応IPSパネルを採用し、10点マルチタッチに対応。フロントとリアにカメラが用意されており、リアカメラは800万画素となっている。この他、NFCの機能が標準で搭載されており、スマートフォンなどと連携して利用することができる。
このほか、HPはすでに販売しているUltrabookのタッチ対応版を発表した。HP Spectre XT TouchSmart Ultrabookは、従来製品では13型だったが、液晶が15.6型へと強化され、プロセッサは第3世代Coreプロセッサ、厚さは17.9mm、重量は約2.16kg。HP ENVY TouchSmart Ultrabook 4は、従来ENVY Proとして販売されている14型液晶を搭載しているUltrabookのタッチ対応で、プロセッサは第3世代Coreプロセッサ、単体GPUとしてAMD Radeon HDシリーズ(ビデオメモリ2GB)を選択することもできる。
なお、いずれの製品も今回の発表は米国向けであり、米国ではクリスマス商戦までに投入される予定で、価格などは未定だという。なお、日本向けに関してはまだ未定ということで、どの製品が投入されるかは、別途日本法人より発表があるだろうということだった。
●Samsungが2,560×1,440ドット表示対応液晶を搭載したWindowsノートを公開
Samsung Electronicsは、IFAの展示会場では未発表の2,560×1,440ドット液晶を搭載したノートPC「Samsung Series 9 WQHD」を展示した。
WQHD液晶と言えば、AppleのMacBook Pro Retinaディスプレイモデルに搭載されたRetinaディスプレイ(2,880×1,800ドット)に近い解像度で、Samsung Series9 WQHDはそれに次ぐ解像度となる。最初からWindowsがプリインストールされたモデルでWQHD液晶が搭載された製品が公開されたのはこれが初となる。パネルの大きさなどは公開されていなかったが、サイズなどから推測すると14型ないしは15型だと思われる。
公開された実機では実際に解像度の設定で2,560×1,440ドット表示であることが確認でき、プロセッサはCore i7-3517U(1.9GHz)だった。GPUはCPU内蔵のIntel HD Graphics 4000を利用しており、特に単体GPUなどは搭載していなかった。高解像度ということでGPUへの負荷が気になるところだが、内蔵のパネルへの出力しているだけなら問題ないとは思うが、外付けディスプレイにも出力すると、やや厳しい可能性がある。
その他のスペックなどは確認できなかったのだが、十数mm程度の薄さを実現していることから、Ultrabookの仕様を満たしているとみられる。なお、Windowsでは、Mac OSとは異なり、スケーリング機能がなく、フォントを大きくするかどうかの選択肢しかないため、展示されていた状態でWindowsデスクトップを表示したときにはかなり文字が細かく表示され、実用にするにはシステムフォントの大きさなどを調整する必要がある。
ただし、現時点では参考展示ということで、今すぐこれが販売されるということではなさそうで、発売時期、価格などは一切未定ということだった。
(2012年 9月 3日)
[Reported by 笠原 一輝]