本稿では、CES会場でみかけた興味深い製品をまとめて紹介する。
●NECのキーボード付きAndroid端末CES開幕前夜の併設イベントであるDigital Experienceにおいて、NECが2画面液晶Androidタブレットを展示したことは既報の通り。これ以外にも同社は、International CESの会場内に設けたブースにおいて、往年の「モバイルギア」を彷彿とさせるハードウェアキーボード搭載Android端末を展示した。
プロセッサにはNVIDIAのTegra 2を、液晶ディスプレイにはタッチパネルの7型/WVGA(800×480ドット)を搭載。画面操作はタッチパネルのほかに、キーボード手前に用意されたセンサー式小型タッチパッドでも行なえる。Androidのバージョンは2.2を採用する。
ハードウェアキーボードは、7型という本体サイズを最大限に活かした格好の日本語配列となっており、ファンクションキーなども装備。ファンクションキーの脇には、Menu、Search、Home、BackといったAndroid端末機らしいキーも用意されている。また、天板部にはWebカメラも装備している。
クラムシェル型のAndroid機は、国内でも東芝のdynabook AZが発売されている。ただ、dynabook AZはGoogleが定義するCompatibility Definition Document(CDD)に準拠していないことから、Androidマーケットを利用することができなかった。
一方、NECの本端末は、「展示機は素のAndroid OSを入れただけの状態なのでマーケットを利用できないが、発売時には必要なソフトウェアを整えて互換機とすることでマーケットを利用できるようにする」とブース担当者が述べている。
バッテリ駆動時間については「丸1日使えることを想定した駆動時間を実現したいと思っており、9時間前後が1つの目処になる」としている。発売時期などは未定。
キーボードは日本語対応のQWERTYキー。手前にはタッチパネルの代わりに操作できるポインティングデバイス風のセンサーを備える | 天板は艶のあるブラック。Webカメラを備えている |
フルサイズのSDカードスロットも装備 | 展示機はシンプルなAndroid標準アプリのみが入った状態。環境を整えAndroidマーケット対応の端末として発売する予定としている |
●廉価で汎用性の高いAndroidメディアプレーヤー
台湾Dexatekのブースでは、Androidベースのネットワークメディアプレーヤーを展示。この製品は500MHz動作のARM9を用いたメディアプレーヤーで、H.264/MPEG-2 TS/DVD ISOを含む、多くのメディア形式に対応。1080pのデコードも可能とする。
UIは独自開発のもので、キーボードおよびポインティングデバイスを利用して操作。背面のUSBポートにレシーバを装着することで、ワイヤレスで入力機器を利用できるようにしている。
WebブラウズやYouTubeの視聴も可能。また、日本では関係ないもののUSB接続のDVB-Tチューナを接続すれば、本端末からTVの視聴およびHDD録画が可能という。
Androidベースということで、Webブラウザ上で日本語がそのまま表示できる点も紹介。日本における発売は未定だが、ディストリビュータがいればぜひ出荷したいとしている。量産開始は今月末を予定している。
●Rockchipは55nmのプロセッサを展示
Rockchip製プロセッサは、廉価なAndroidタブレットを中心に採用例が増えている。タブレットやスマートフォンが大きなトピックとなっているInternational CESにおいて、同社はブースを構えてプロセッサのアピールを行なった。
Rockchipが展示した、RK2918を搭載するネットワークメディアプレーヤーのサンプル機 |
現在、同社の主力となっているのは「RK28xx」シリーズのプロセッサで、タブレット製品においては、RK2808やRK2818といったプロセッサが多く採用されている。これらは65nmプロセスで製造され、ARM9をコアに、メディア処理エンジンやグラフィックプロセッサを統合したチップとなる。720pまでの動画デコードをサポートしている。
このRK28xxシリーズに続くチップとして、55nmプロセスで製造されるのが「RK29xxシリーズ」。同社ブースにおける展示の中心となった。
RK29xxシリーズはプロセスシュリンクだけでなく、CPUコアもARM9からCortex A8ベースへと変更。動作クロックは1.2GHzとなる。メディア処理エンジンは強化され、1080pまでの解像度や、VP8コーデックのデコードをサポート。GPUはOpenGL ES 2.0やOpenVGをサポートする。
チップ単価はRK28xxの倍程度になるとのこと。RK28xxシリーズもしばらくは併売するようで、同社にとっては、異なるクラスの製品へのチップ提供が可能になるという意味を持つチップといえる。
●vilivがOak Trail端末とAndroid端末を展示小型端末で定評のあるvilivは、Intel Oak Trail搭載Windowsタブレット「X70」と、同じデザインのSamsung Cortex A8搭載Androidタブレット「X7」を展示した。
X70 |
Oak Trail(コードネーム)は、Intelが2011年中に投入予定の次期Atomプロセッサで、携帯電話向けプロセッサとなるMoorestown(同)と異なり、Windowsをサポートする。X70は、Oak Trail 1.5GHz、メモリ最大2GB、SSD 32GB、1,024×600ドット表示/マルチタッチ対応7型液晶、Windows 7 Starter/Home Premiumを搭載。
インターフェイスは、IEEE 802.11b/g/n無線LAN、Bluetooth、3G/WiMAX/EVDO無線WAN、Micro USB、microSDカードスロット、GPS、300万画素カメラ(背面)、130万画素カメラ(正面)、加速度センサー、環境光センサーなどを搭載。
バッテリ容量は5,600mAhで、駆動時間は6.5時間。本体の厚さは14.3mm、重量は420g。
X7 |
X7は、PowerVR SGX540内蔵Cortex A8 1GHz、メモリ512MB、ストレージ8/16/32GB、1,024×600ドット表示/マルチタッチ対応7型液晶、Android 2.2を搭載。OSはAndroid 3.0へのアップグレードが予定されている。
インターフェイスは、IEEE 802.11b/g/n無線LAN、Bluetooth、3G/WiMAX/EVDO無線WAN、Micro USB、microSDカードスロット、HDMI出力、GPS、300万画素カメラ(背面)、130万画素カメラ(正面)、加速度センサー、環境光センサー、地磁気センサーなどを搭載。
バッテリ容量は5,600mAhで、駆動時間は9.5時間。本体の厚さは14.3mm、重量は398g。
●AcerのAMD Fusion搭載液晶着脱式PCAcerはCESにブースを構えなかったが、Microsoftブースにひっそり最新PCが1台展示されていた。
場所は関係者しか入れないミーティングルーム内であったため、担当者というものがおらず、詳しいことは不明だが、11月にニューヨークで開催されたAcerの発表会で一瞬だけ紹介された、液晶ディスプレイの着脱可能なコンバーチブルタブレットと思われる。
その際には、製品名の言及はなかったが、今回の展示機のポップには「ICONIA TABLET」という名称がつけられていた。また、プラットフォームがAMDのFusionであることも記載されていた。
主な仕様は、AMD C-50(1GHz、ビデオ機能内蔵)、メモリ2GB、SSD 32GB、10.1型液晶、Windows 7 Home Premiumを搭載。背面と正面にWebカメラ。重量はキーボードを含めたものかは不明だが約998gとなっている。
AcerのICONIA TABLET | ディスプレイは着脱式 | 横から見たところ |
キーボード。ポインティングデバイスはVAIO Pに似ている | 背面にもカメラを装備 | システムのプロパティ |
●RazerがOak Trail搭載ハンドヘルドゲーミングノートを展示
Razerはゲーミングキーボード、マウスなどで定評があるが、今回のCESではOak Trailを搭載するハンドヘルドゲーミングノート「Switchable」のコンセプトモデルを展示した。
ケース内での展示で、おそらく動作している画面は動画によるものと思われるが、Oak Trailを採用予定という本製品は、5型前後のマルチタッチ対応液晶を搭載したハンドヘルドタイプのクラムシェル型ゲーミングノート。単体GPUは搭載しない。果たして、この大きさやスペックでゲーミングPCとして成り立つのか疑問も残るが、あくまでも今回の展示はコンセプトモデル。ただし、2012年の製品化を目指しているという。
特徴的なのは、キートップが透明で、キーの下にも液晶が内蔵されている点。これにより、ゲームに応じて、キーの機能をアイコンで表示する。これを実現するには、Razerあるいはゲームメーカーが、この製品と各タイトルに合わせたプロファイルやグラフィックなどを提供する必要がある。また、アイコン表示にすると、チャットなどに支障が出るという懸念もあるが、見た目はかなり格好いいので、製品版でどのように解決するのか、見物である。
RazerのSwitchable | キーボードの下にも液晶があり、ゲームに応じて表示内容が変わる |
これはFPSでの例 | クラムシェル型で、閉じるとこのような感じ |
もう1つ参考展示されたのが、磁気センサーを使ったゲーミングモーションセンサー。PCとUSBで接続された本体台座の上には球状の磁気センサーが内蔵。電源やボタンなどの信号を送受信するため、本体と有線で結ばれているが、2つあるWiiのヌンチャクに似たコントローラは、その位置や方向を磁気で検出できるようになっている。
会場には実動機が用意されPortal 2を使ったデモも行なわれていた。キーボードとマウスに見立て、基本的に左手に持つ方がキャラクタの移動用で、右手に持つ方が視点の変更用となっている。右手のコントローラを上下左右に動かすと、それに合わせて視点が360度変化する。また、本製品は奥行きも検出可能で、コントローラを前後に動かすと、ゲーム内でつかんだオブジェクトが手前や奥側に移動していた。キャラクタの移動はコントローラ上のスティックで行なっていたが、本体を上下に素早く動かすとジャンプ動作を行なっていた。
XY軸のカーソル移動は、マウスと同じなので、どのゲームでも利用できると思うが、Z軸については、ゲーム側の対応が必要となってくる。この点についてRazerでは、Source Engine、Unreal Engine 3、Cry Engine 3といったゲームエンジンと協業を行なっているところだという。
発売時の価格は100ドル以下を目指している。
モーションセンサー式ゲーミングデバイス | コントローラ部 | 磁気センサー部。コントローラは使わない時、球体の左右に設置できる |
【動画】実際にゲームをプレイしているところ |
●PCとは関係ないけど…
このほか、PCとは関係がないが一風変わった製品を写真で紹介する。
【動画】電極が飛び出すスタンガンのデモ。発射しているのは来場者 |
【動画】こちらは希望した来場者にスタンガンの威力を試すデモ。足首に電極をつけておき、電気を流す。両脇にいるスタッフが来場者を倒しているのではなく、電気で痺れて立てなくなるのを支えている |
(2011年 1月 13日)
[Reported by 若杉 紀彦 / 多和田 新也]