フラットパネル技術展「FPD International 2010」が開催
~窓のような半透明タッチディスプレイが展示

FPD International 2010会場

期間:11月10日~12日
会場:幕張メッセ



 液晶や有機ELなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)に関する国際展示会「FPD International 2010」が、11月10日~12日の間、千葉県幕張メッセにて開かれている。主催は株式会社日経BP。入場料は当日券が2,000円だが、事前登録すると無料。

 同イベントの展示内容は、液晶や有機ELに関する製造技術や製造施設、および部品レベルのものが多く、コンシューマが実際に手に届く製品の展示は少ない。しかし、いくつかの技術は近未来を彷彿とさせるようなデモが多く、多くの来場者を惹きつけていた。

 そこでこのレポートでは、PCやITに近い技術デモなどを紹介する。

●半透明ディスプレイ

 今回の展示で多かったのは3Dディスプレイだが、革新的な技術としてもっとも目立ったのは半透明のディスプレイだ。特に韓国のLG ElectronicsとSamsungの2社のブースでは、ブースの約3分の1のスペースを使って、半透明ディスプレイを使用した技術デモを行なっていた。

SamsungのブースLGのブースLGの「Window TV」

 LGは「世界初」を謳う47型の「Window TV」をデモ。要は47型の半透明ディスプレイであるが、タッチパネルを内蔵しており、インタラクティブにユーザーの操作に応答できるようになっているのが特徴だ。

 その名の通り、窓への応用を想定しているようで、デモ機では実際に天気や地図、株式情報などを表示できるようになっている。また、透過型ディスプレイでは、黒のような濃い色がつくとその部分が透過ではなくなる。そこで、この原理を利用してブラインドを閉めると外が見えなくなるといったユニークなデモも行なっていた。

 コストを考えても製品化はまだ先のような気がするが、ディスプレイの将来が垣間見えるデモだ。動画も掲載したので、ご覧頂きたい。

【動画】LGのWindow TVを操作したところ

 Samsungは、14型の半透明ディスプレイモジュールを組み込んだノートPCを展示。色素はAMOLED(アクティブマトリクス方式有機発光ダイオード)を使用し、解像度は960×540ドット(78ppi)、表示色数が1,670万色、輝度は250cd/平方m、透過率は38%となっている。

 実物は写真を見ていただきたいが、後ろにモノが置いてある場合、透過率はそれほど高くないものの、透けて見えるようになっている。ノートPCになっていることからもわかるよう、製品としての完成度としてはかなり高い。具体的な用途などについてはこれからの展開に期待したいところだ。

半透明ディスプレイを採用したノートPC背面のものが透けてみえる

 SamsungのブースではノートPCのみならず、ショーウィンドウ用のガラスになっているディスプレイも多数展示された。こちらは実物に対して、動画で特徴や機能をオーバーレイしてアピールできるようになるなど、広告や店頭ディスプレイ用途ではかなりの期待ができそうだ。

半透明ディスプレイを利用した製品ショーウィンドウ
【動画】Samsungの半透明ディスプレイを採用したショーウィンドウ

●E Inkのカラー電子ペーパー

 会場では、電子ペーパーの展示も盛んだ。E Inkのブースでは採用端末を一斉に展示したいるほか、8日(米国時間)に発表したカラー電子ペーパー「Triton」の展示も行なった。

 Tritonの主な仕様は、サイズが9.68型、解像度が800×600ドット、表示色数が4,096色となっている。

 実際に見たところコントラストはやや低めで、液晶などと比較してややくすんだ印象だ。しかし電子ペーパーは表示の維持に電力を必要としない特徴がある。また、表示速度も従来製品と比較して20%改善されており、簡易アニメーションなら表示できそうだ。カラー電子ペーパーを採用した電子書籍端末も、Tritonの登場によって今後増えていくことだろう。

 このほか、E Inkのブースでは米国で販売されているSonyの電子書籍端末「Sony Reader」が展示されており、実際手に触れることが可能だ。日本への投入も待ち遠しい。

E Inkのカラー電子ペーパー「Triton」液晶(iPhone)との表示比較こちらはTritonを実際に利用した端末
このほかE Inkを採用した電子書籍端末SONYの「Sony Reader」

 このほか、富士通やNEC、AUOのブースでも電子ペーパーの展示をみることができる。

富士通のカラー電子ペーパーNECの電子ペーパー
NECのA3実寸表示ができる電子ペーパーAUOの電子ペーパー端末

●ソーラーパネル搭載で電力消費を抑えるノートPC
AUOのブース

 ディスプレイではないが、AUOのブースでは、世界で初めてノートPC向けに14型の「ソーラー式タッチパネル」を展示している。これは太陽光発電を行なうソーラーパネルの上に、キーボードを配した透明のタッチパネルを一体化したモジュールを嵌め込んだものだ。

 これにより、天板に嵌め込んだソーラーパネルと、キーボード面のソーラーパネルの2つを使った最大限の面積において発電が可能となり、ノートPCの消費電力を約20%低減できるという。


AUOのブースで展示された「ソーラー式タッチパネル」搭載のノートPCキーボードは透明なタッチパネルで、その下にソーラーパネルを搭載背面にもソーラーパネルを搭載
ソーラー式タッチパネル搭載ノートPCの仕組み採用されている実装方法ソーラーパネルとタッチパネルの仕様

●3Dパネルなどそのほか

 先述のように、今回最も盛り上がったのは3Dのディスプレイで、NECや、AUO、LGなど多数の大手パネルメーカーが展示を行なっていた。

NECの小型の裸眼立体視対応ディスプレイAUOの53型の立体視対応ディスプレイAUOの立体視対応液晶ディスプレイ
LGの立体視対応ディスプレイを組み込んだノートPCCHIMEI INNOLUXの3D対応液晶ディスプレイ

 また、ユニークなところとしては、Samsungが折り曲げ可能なカラーディスプレイ、NECが自由な形の枠を実現できるディスプレイなどを展示していた。

Samsungの折り曲げ可能なカラーディスプレイSamsungの約1.8mmの超薄型液晶パネル
1.8mm超薄型液晶パネルを採用したノートPCNECの自由な形が実現できるディスプレイ

(2010年 11月 11日)

[Reported by 劉 尭]