【COMPUTEX 2010】【ASUSTeKブース編】
Sandy Bridge向けマザーなど多数の未発表製品を展示
~Eee Pad、Eee Tabletの追加情報も

ASUSTeKブースは今回、自作パーツなどを展示するブースと、ノートPCなどのシステムを展示するブースが通路を挟んで分かれるスタイルをとった

会期:6月1日~6月5日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
   Taipei International Convention Center



●Sandy Bridge対応チップセットはIntel 6シリーズに

 Intelは2011年、Nehalemをベースとした現在のLynnfiled、Clarkdaleの後継CPUをリリースする予定になっている。このCPUは「Sandy Bridge」のコードネームで呼ばれているものだ。そしてSandy Bridgeの登場に合わせ、チップセットの側も世代することになっている。これが「Cougar Point」と呼ばれるチップである。

 Intel 5シリーズはIbexpeakのコードネームを持つPCH(Platform Controller Hub)による1チップ・チップセットであったが、このIbexpeakの後継チップがCougar Pointとなる。合わせてソケットも変更され、LGA1155になる予定だ。マザーボードの展示を行なったASUSTeKのブーススタッフも、既存環境と互換性がないことは認めており、これは確定のようである。

 ちなみに、ASUSTeKのブースで展示された製品のパネルには、チップセット名として「Intel 6シリーズ チップセット」という名称が書かれていた。このチップセットのラインナップなどについて具体的に言及はしなかったものの、「チップセットの名前はマザーボード製品名から推測してほしい」というコメントをもらえた。

 このコメントに依るとすれば、Intel P55の後継にIntel P67、Intel H57/H55後継にIntel H67、という製品が存在することになる。

 なお、今回展示されたマザーボードのソケットはLGA1156が取り付けられていた。Sandy Bridge用のソケットはLGA1155と呼ばれる1ピン少ないソケットが利用される。ASUSTeKが今回展示したマザーボードは量産品ではなく、現時点ではあくまでサンプルであることから、このような状態になっているのだという。

Sandy Bridge対応製品として登場する「P8P67D Deluxe」「P8P67D EVO」。Deluxe版に仕様は近いが、LANや追加のSATAコントローラなどが省かれている「P8P67D」。さらに機能を絞っており製品サイズも細い
「P8P67D LX」。無印版よりさらに機能が絞られており、eSATAが省かれているのが目に留まるGPU内蔵CPUに対応するディスプレイ出力機能を持つ、「P8H67D-M PRO」「P8H67D-M」。PROの廉価版にあたる機能制限モデルとなる

●R.O.G.シリーズの新製品やコンセプトモデル

 同社のゲーマー向けブランドとして自作ユーザを中心に名が知られているR.O.G.シリーズにも多数の新製品が登場する。

 AMD 890FX+SB850を搭載するCrosshair IV Extremeは、現在発売されているCrosshair IV Formulaのさらに上位のモデルとしてラインナップされる製品。PCI Express x16スロットを4スロット備えるのが特徴となるが、さらに、そのPCI Express x16を無効化する物理スイッチが用意されている。これは複数枚のビデオカードを装着してトラブルが発生した際に、ビデオカードの着脱を行なうことなくトラブルの判定を行なうために設けたものだという。気になる製品の登場時期は8月が見込まれている。

 また、R.O.G.シリーズのマザーボードとしては、「IMMENSITY」と呼ばれるコンセプトモデルも展示された。こちらはIntel X58+ICH10Rを搭載するマザーボードとなる。特徴は大きく2つあり、1つはLucid Hydraを搭載すること。Lucid HydraはMSIのBig-Bang Fuzionへの採用で知られている。AMDとNVIDIAを問わずマルチGPUを可能にするチップで、IMMENSITYも、2スロットを持つPCI Express x16に挟まれるような格好で実装されている。

 もう1つの特徴はオンボードGPUを搭載することである。展示機ではAMD製GPUが搭載されていたが、これはあくまでサンプルで、実際の製品で何が載るかは、GeForceになるかRadeonになるかも含めて未定だという。コンセプトは、オンボードGPUと連携してパフォーマンスを向上させることにある。例えばRadeonであれば、オンボードGPUと追加カードによるDual Graphicsが考えられるし、GeForceがオンボード搭載されればこのGPUをPhysX専用にする、といった活用法もある。

 この製品については年内の発売を予定している。Intel X58を搭載するコンセプトモデルであることから、Sandy Bridge登場前に発売されることが求められるだけに、年内発売予定というのは、かなり重要な意味を持つスケジュールといえるだろう。

AMD 890FX+SB850を搭載する「Crosshair IV Extreme」。8月のリリースが予定されているCore Unlockerなどのボタンの下に、四つのON/OFFスイッチがあるが、これがPCI Express x16スロットの無効化スイッチ
Intel X58を搭載するコンセプトモデル「IMMENSITY」ヒートシンクを外した状態のIMMENSITYAMD製GPUとLucid Hydraを搭載するのが特徴となる

 R.O.G.シリーズのマザーボードに関連した話題では、先週発売されたRampage III Extremeの機能紹介デモが目に留まった。Rampage III ExtremeはIntel X58を搭載するマザーボードであるが、この製品にはR.O.G. Connectと呼ばれるUSB接続したノートPCからオーバークロック設定などを行なえる機能がある。また、R.O.G. Bluetoothと呼ばれる機能では、Windows Mobileなどからオーバークロック設定を行なうといった機能がある。それらを紹介している。

 また、発売時期などは未定としているが、Rampage III Extremeにアドオンする「R.O.G. Xpander」というパーツが展示された。これは、Rampage III Extremeが持つPCI Express x16のうちの2本に載せる格好で接続することで、Quad SLIを実現可能にするパーツだ。そのために、ボード上には2個のnForce 200が実装されている。

機能紹介に使われたRampage III Extremeのデモ機USB接続されたノートPCからオーバークロック設定を行なうR.O.G. Connectのデモ
Bluetooth接続したスマートフォンからのオーバークロック設定も可能。Windows MobileとiPhoneに対応しているnForce 200を2個搭載するR.O.G. Xpander。Rampage III ExtremeのPCI Express x16スロット×2基に装着して使用する。

 3月のCeBITで展示されて話題を集めたASUSTeK製品の1つに、Radeon HD 5870を2基搭載する「ARES」がある。本製品はコアクロック850MHz、メモリクロック1,200MHz(データレート4,800MHz)というRadeon HD 5870の仕様そのままにデュアルGPU化した製品となる。

 この製品の発売がいよいよ決まったそうで、専用パッケージに入れられて、全世界で1,000台。価格は1,000ドルで発売されるという。日本への割り当て数については未定だが、「10枚程度になるかも知れない」とのコメントもあり、かなりのレア商品になるのは間違いなさそうである。

Radeon HD 5870を2基搭載する「ARES」。背後にあるアタッシュケースに入れて全世界1,000台限定で発売されるCOMPUTEX会場では、このARESを2枚用いたQuad CrossFireのデモも行なわれた電源端子は8ピン×2、6ピン×1となっている。ボード消費電力の最終スペックは750Wになったとのこと

●未発表GPU搭載製品も登場したゲーマー向けノートPC

 ノートPC製品も手広く展開しているASUSTeKだが、ゲーマー向け製品の多くはR.O.G.シリーズとしてラインナップされている。今回のCOMPUTEXでは、17.3型のG73シリーズと、15.6型のG53が新製品として展示された。また、R.O.G.シリーズではないものの、LAMBORGHINIシリーズの「VX7」もゲームユース寄りの製品だ。

 いずれもCore i7/i5対応のプラットフォームになっているが、G73JhモデルはGPUにRadeon HD 5870を搭載。このほかの製品は、「NVIDIA Enthusiast Graphics」とパネルに書かれた未発表のGPUを搭載しているという。

 この未発表GPUについては、DX11に対応しているということ以外に具体的な情報を得られなかったが、NVIDIAがCOMPUTEX会場近くに設置した同社のテント型ブースでG73JWモデルのプロパティを確認することができた。これによると「N11E-GS」となっており、CUDA Coreは192基となっているほか、GDDR5を使用していることが分かる。DirectX 11対応という情報が本当であれば、この製品はGeForce GTX 480Mの下位モデルとなることが想像されるが、詳しくは正式な発表を待ちたい。

 なお、R.O.G.シリーズにラインナップされるノートPC製品は日本でも人気があるとのことで、先述した各モデルは日本でも近日中に発表したいとしている。これらの各製品には、低音に合わせて振動する機構を備える、R.O.G.シリーズ専用のヘッドフォンが付属する予定になっている。

17.3型液晶の「G73Jh」。米軍機のF-117をモチーフにしたデザインとのこと。Radeon HD 5870を搭載する同じく17.3型液晶の「G73JW」。NVIDIAの未発表GPUを搭載。3D立体視対応液晶モデルも投入される予定G73JWには、WiFiを利用した映像のワイヤレス転送アダプタも付属するとのこと
15.3型液晶の「G53」。同じくNVIDIAの未発表GPUを搭載する15.6型液晶の「Lamborghini VX7」。やはりNVIDIAの未発表GPUを搭載するこちらはNVIDIAブースでチェックした未発表GPUとされる製品のプロパティ。CUDA Core数や各クロックなどを確認できる

●Eee Pad、Eee Tabletの話題

 COMPUTEXのASUSTeKブースにおいて、もっとも注目を集めていたのは、前日発表されたEee PadとEee Tabletである。すでに発表会レポートが掲載されているが、ブースでは、新たな情報や、発表会とは異なる情報を聞くことができたので、それらの補足情報をまとめておきたい。

 まずEee Padについてだが、10型の「EP101TC」と12型の「EP121」がリリースされることは既報のとおり。10型モデルはNVIDIAのTegra T20を用いたハードウェアで、OSはWindows Embedded Compact 7のほかに、Android版の展開も予定されているという。

 12型モデルはCULV版のCore 2 Duoが使用され、OSはWindows 7 Home Premiumとなる。こちらは無線キーボードと繋がるドックや、ノートPC風のドックと接続することができるのが特徴といえるが、これらのドックはすべてバンドルして発売される見込みだと担当者は述べている。

 重量については最終仕様が確定していないそうで、「900g未満を目指す」という段階。バッテリ駆動時間は、ディスプレイ単体利用時で3時間、ドックを接続した場合は、ドック内のバッテリも使われるので6~10時間の駆動が可能になるとのことだ。

 一方のEee Tabletは、モノクロ64階調の8型TFT液晶が用いられる。TFT液晶を採用した理由は、E-Inkに比べて反応速度が速いためだという。解像度は1,024×768ドットで、本体サイズは139×222×11mm(幅×奥行き×高さ)になる。

 バッテリはリチウムポリマーを使っており、最大駆動時間は10時間。PDFやePub、TXT、FB2の読み込みや、内蔵の200万画素カメラで撮影した画像を貼り付け可能な手書きメモ機能などが提供される。また、ボイスレコーディングも可能となっている。

12型スレート端末の「EP121」。無線キーボードを利用するドックに接続した状態同じくEP121で、こちらはノートPC風ドックに接続した状態10型スレート端末のEP101TC。将来的にはAndroid版の投入も計画されている
モノクロ液晶を採用するEee Tablet。カメラで撮影した映像に手書きメモを加えたり、音声を録音することができる。このほか複数のフォーマットのファイル表示が可能背面に200万画素のカメラを内蔵している底面部にはヘッドホン端子や録音ボタン、カメラのシャッターボタン、microUSB端子、microSDスロット、電源ボタンを備える

●自作パーツからEeePC新モデルまで、その他の新製品

 最後に、ASUSTeKブースで見つけた新製品をノンセクションで紹介しておきたい。

 4月末に発売されたAMD 880Gを用いた「M4A88T-I Deluxe」は、Phenom II X4に対応するMini-ITX製品として注目される。ホームエンターテインメントPC用をメインターゲットに据えているという。日本での発売予定もあるが、クアッドコアCPU使用時に小型ケースにいれると発熱の問題があるといい、冷却環境のソリューションも含めて提案したいとしている。

 一方、こうした発熱と無関係に動作することをアピールするのが、同社のSABERTOOTHシリーズ。軍用基準のコンデンサを採用することや、ヒートシンクの素材を見直すなどの工夫が施されたモデルである。すでにIntel P55を搭載したモデルが発売されているが、今回のCOMPUTEXではIntel X58搭載モデルの展示とデモが行なわれた。デモは密閉されたアクリルケース内を小型ファン1つのみで排気し、ケース内温度が高くなっても安定動作することをアピールするものとなっている。製品は間もなく出荷開始で、日本での発売も予定されている。

 ちなみに、ASUSTeKでは現在、USB 3.0のサポートを強化しているとのことで、先に紹介したマザーボードを含めて、すべてUSB 3.0に対応している。5インチベイに収納可能なUSB 3.0パネルの提供も検討しているという。また、同社製品にはすべてNECのUSB 3.0コントローラが採用されているが、8月以降は下位モデルを中心に他社のコントローラを採用していく方針もあるとのことだ。

AMD 880G+SB710の組み合わせも特徴的な「M4A88T-I Deluxe」。デモではPhenom II X4 905eを搭載して展示していたM4A88T-I Deluxeのリアパネル部
高信頼性を売りとする「SABERTOOTH X58」ケース内温度が約45度の密閉環境で動作し続けることを示すデモ機5インチベイに収納可能なUSB3.0のフロンパネルキットも展示

 Eee PCの新製品もいくつか展示されている。こちらの注目は1日に発表されたDDR3対応のAtomを使用したモデル。LamborghiniシリーズのEee PCは12.1型液晶を搭載し、デスクトップ向けのAtom D525を搭載する点でも注目される。

 また、小中学生を対象とした製品も展示。マイクロソフトと協力した教育支援プログラムに参画しているとのことで、ハードウェアやコンテンツの提供でASUSTeKも協力していくという。

 このほか、3Gモデムを内蔵したEee PCも多数が展示されているが、これらは日本のキャリアと協力した上で発売することも検討されている。

「Lamborghini」シリーズのEeePCは12.1型(1,366×768ドット)液晶を搭載。Atom D525を採用しており、GPUはIONを採用。メモリはDDR3×2枚の構成となっている新デザインの筐体を採用した「1018P」。Atom N455またはN475を採用。メモリはDDR3×1枚で最大2GB。USB 3.0ポートも備えているほか、Bluetooth 3.0もサポートしている小中学生の教育支援用にリリースされる「1001PQ」は、Atom N450を採用。子供に受け入れられやすいデザインが特徴という
10.1型液晶の「1015PEG」。Atom N450またはN455を搭載12.1型液晶の「1201PNG」。NVIDIAのION2をGPUに搭載。CPUはAtom N450。液晶解像度は1,366×768ドット

(2010年 6月 2日)

[Reported by 多和田 新也]