【IDF 2010レポート】
ダディ・パルムッター氏基調講演
~Sandy Bridgeのウェハを世界初公開


 Intelが同社のOEMメーカーや同社製品をサポートする製品を開発する開発者向けに行なっている、IDF(Intel Developer Forum)が、4月13日、14日の2日間にわたって開催されている。初日となる13日には、上級副社長兼Intelアーキテクチャ事業本部 事業部長のダディ・パルムッター氏と、副社長兼Intelソフトウェア事業本部 事業本部長のレネ・ジョーンズ氏による基調講演が行なわれた。

 パルムッター氏は「Intelアーキテクチャはデータセンターからスマートフォンにまですべてのプラットフォームで共通の基盤となる」と述べ、携帯電話からデータセンター向けの大規模なシステムまですべてをカバーできるのはIntelアーキテクチャだとアピールした。

 この中で同氏は、Intelが今年(2010年)後半にスマートフォン向けx86プロセッサとして出荷を予定しているMoorestown(ムーアズタウン、開発コードネーム)や、今年の末に出荷を計画している次世代PC用プロセッサSandy Bridge(サンディブリッジ、同)に関するデモを行なった。

●サーバーから携帯電話まですべてをカバーするIntelアーキテクチャ

 中国でのIDFというと、一昨年に上海で行なわれて以来2年ぶりとなるが、中国らしく冒頭で球を利用したショーから始まった。中国でこうしたイベントが行なわれるときには、冒頭でこうしたショーが行なわれることは非常に多く、今回もそうした例にならったのだろう。

 セレモニーの後に登場したパルムッター氏は、「インターネットは本当の意味で人々の生活を変え始めた。例えばブロードバンドが10%普及すると、それは14%の経済成長につながると言われている」と述べ、ブロードバンドの急速な普及によりライフスタイルが大きく替わり始めていることを指摘した。その上で「2015年にはインターネットに接続されデータをやりとりする機器が100億台になると想像している。さらに、次の5年間にはインターネットのトラフィックも大幅に増えて、現在の8EBから60EBへと大幅に増えていくと予想されている」とし、今後もインターネットの成長は続き、そうしたニーズに対応した機器を提供していくことが重要だと述べた。

 その上でIntelは、インターネットの新しいニーズに対応できるようなさまざまなプラットフォームに対応したプロセッサを投入していることを指摘し、「我々の仕事は、さまざまな機器で共通に利用できるアーキテクチャを作ることであり、かつそれは高性能でなければならない」と話し、Intelの戦略として単一のアーキテクチャで、下はスマートフォンから上はデータセンターまで利用できる高性能なマイクロプロセッサを提供していくと強調した。

冒頭に行なわれた伝統芸を応用したような芸、蹴鞠の球のような球を利用した芸だったIntel 上級副社長兼Intelアーキテクチャ事業本部 事業部長 ダディ・パルムッター氏2015年までには10億人が新たにインターネットを利用するようになる
2015年までにインターネットに接続して利用できる機器が100億台になると予想インターネットのトラフィックも爆発的に増加していくデータセンターからスマートフォンまでIAがカバー
サーバー、PC、組み込み向けのIAプロセッサネットブック、TV、ハンドヘルドなど向けのIAプロセッサ

●WestmereコアのXeonプロセッサの性能をアピール

 ハイエンドに位置づけられるデータセンター向けプロセッサとして、先日Intelが発表したばかりのWestmereコアのXeonプロセッサに関して説明を始めた。

 パルムッター氏は「2009年のトレンドの1つとしてクラウドコンピューティングの普及があげられると思うが、その裏ではデータセンターへの投資が現在も進行している。そして、そのデータセンターではx86が大多数になってきており、今後もそれは増していくだろう」と述べ、データセンター向けのマイクロプロセッサとして、x86がマジョリティになっていると強調。

 その上で、同社が先月にリリースした、32nmプロセスルールで製造される新しいXeonプロセッサについて説明し、「新しいXeonプロセッサは従来製品に比べて消費電力が削減されているのに、性能は向上している。製品によるが30~40%程度の電力あたりの性能が改善されている」と、新しいXeonプロセッサの性能を誇った。

データセンター向けのプロセッサアーキテクチャではx86が大きなシェアを占める従来のXeonとの比較。消費電力は下がっているのに、性能は向上しているXeon/3.33GHzとXeon 7500との性能比較。性能は実に20倍になっているという。

●今年の後半に出荷予定のSandy Bridgeのウェハを世界初公開

 さらにパルムッター氏はクライアントPCについて触れ、「2009年は非常に厳しい年で、ビジネス向けのPCはマイナス成長だったが、コンシューマ向けのPCはプラス成長だった。調査会社の予想ではこうしたトレンドは今後も続くだろうと予想されている」とし、コンシューマ向けのPCの成長は今後も続くだろうという認識を明らかにした。さらに「デスクトップPCも、ノートPCも、フォームファクターが多様化しており、そうしたトレンドに対応することが必要だ」と述べ、デスクトップならAIO(液晶一体型)、ノートPCならネットブックや薄型ノートPCなど新しいフォームファクタへ取り組んで欲しいと訴えた。

 さらに、同社が今年の後半にOEMメーカーなどへの出荷を計画している、クライアントPC向け次世代プロセッサであるSandy Bridgeを紹介し、初めてそのウェハを公開した。「Sandy Bridgeはさらなる性能向上が実現されるだけでなく、グラフィックス機能がネイティブで統合される。さらに新しいAVX命令が実装されるなどの機能の拡張もある」と機能を紹介した。さらに、AVXを利用したアプリケーションのデモを公開し、AVXに対応したアプリケーションを作成することでさらなる性能向上が実現できるとアピールした。

コンシューマ向けPCの実績と今後の予想。2009年はビジネス向けは落ち込んだのに、コンシューマ向けは成長したデスクトップPCではAIO(液晶一体型)などの新しいフォームファクターが成長するノートPCでもより小型の製品などが成長する
Sandy Bridgeでは、GPUがCPUにネイティブに統合され、新しい命令セットAVXが実装されるSandy Bridgeの強化ポイント、IPCが向上するほか、キャッシュや内部バスなどの改善により全体の性能が向上する
AVXのデモ。左側がAVXが実装されており、短時間で処理を終えたパルムッター氏が手に持つのがSandy Bridgeのウェハ

●Moorestownのアイドル時の低消費電力をアピール

 続いて、パルムッター氏は低消費電力向けのIAプロセッサに関する話題を取り上げた。Intelはネットトップ、ネットブック向けのプロセッサとして、Pine Trailの開発コードネームで知られる第2世代のAtomプロセッサをリリースしたが、「ネットブック向けのAtomプロセッサはすでに4,500万ユニットも出荷しており、Intelの歴史の中でも成功を収めた製品となった。Atomベースのネットブックは成長を続けており、今後もそれは続くだろう」とした。

 また、これまでPCが使えなかったような発展途上国の学校などへのPCのソリューションとしてIntelが提供しているClassmate PCに関して、コンバーチブルタイプが追加されたことを明らかにした。

 同氏は、Intelが今年の後半に発表を予定しているスマートフォン/MID向けの新プラットフォームとなるMoorestownについても触れ、「Moorestownではパワーゲーティングなどの省電力の機能が従来よりも大幅に拡張されている。このため、アイドル時の省電力は、従来のMenlowに比べて大幅に下がっている」と、実際にその模様をデモして、スマートフォンなどにも十分利用可能なほどに低消費電力の製品に仕上がっていることをアピールした。

 また、パルムッター氏はインターネットのインフラについて触れ「iPhoneのユーザーが増大して回線品質が問題になったように、今後データ通信のデータ量が増えていけば音声ではなくデータ通信に特化したネットワークが必要になる」とし、同社が世界中で推進しているデータ通信に特化したWiMAXのアドバンテージをアピールした。

 最後にパルムッター氏は「Intelアーキテクチャはデータセンターからスマートフォンにまですべてプラットフォームで共通の基盤となる」と繰り返し、特定のセグメントの機器だけでなく、サーバー、PC、TV、携帯電話などすべての機器で1つのアーキテクチャとして利用できるとメリットをアピールし、開発者に同社製品の採用を訴えた。

Atomベースのネットブックは依然として成長が続いているClassmate PCにコンパーチブルモデルが追加されたMoorestownのパワーゲーティングの機能、Menlowに比べてスタンバイ時に切れる部分が増えていることがわかる
消費電力の比較。上の赤い線がMenlow、下がMoorestownデモに利用されたMoorestownのシステム

(2010年 4月 14日)

[Reported by 笠原 一輝]