イベントレポート
IDF16 Shenzhen基調講演レポート
~Windows PC上で2GB/secの転送速度を実現した3D XPointの実働デモ
(2016/4/13 19:12)
Intelは、開発者向けに開催しているテクノロジイベント「Intel Developer Forum(IDF)」を、中国深セン市内のホテルで行なっている。春に行なわれるIDF Shenzhenでは、主に中国に集中しているODMメーカーなどをターゲットにしており、今年(2016年)はロボットやヘルスケアと呼ばれる新しいユーセージモデルに向けた内容が中心となった。
初日にはIntelの現地法人となるIntel Chinaの社長でIntel本社の副社長でもあるイアン・ヤン氏とIntel 上席副社長 兼 データセンター事業本部 本部長のダイアン・ブライアント氏による講演が行なわれた。この中で、ヤン氏は3D XPointをデモし、その転送速度が2GB/secを超えるとアピールした。
明日(14日)の基調講演には、先月Intelを去ったことが明らかになったカーク・スコーゲン氏の後任としてクライアントコンピューティング事業本部を率いることになったIntel 副社長 兼 クライアントコンピューティング事業本部 事業本部長のナビン・シャノイ氏が出席予定で、どのような講演を行なうのかにも注目が集まる。
CurieやRealSenseをベースにしたロボットやドローン向けの開発キットを発表
イアン・ヤン氏は、IDF 16 Shenzhenの基調講演で、デジタル化、クラウドコンピューティング、スマートでインターネットに接続された世界の拡大という3つのテーマに沿って話を進めた。
デジタル化という観点では、CurieやRealSenseについての話題を紹介した。Curieはボタン大の超小型チップで、昨年(2015年)のCESで発表された製品。具体的な開発例として、女性が付けているCurieのデバイスから、手や足の動きをデータ化してリアルタイムに表示するパターンマッチングのデモなどが行なわれた。
ヤン氏は「Curie向けに複数の開発キットやSDKなどを提供していく」と述べ、USBやBLE(Bluetooth Low Energy)を接続して開発に使えるGenuino 101ボードを含む「Curie Board Support Package(BSP)」、OEM/ODMメーカーでの開発を容易にする「Intel iQ ソフトウェアキット」、マシンラーニングやパターンマッチングなどを簡単に作れる「Intel Knowledge Builder Toolkit」などの提供を発表した。
また、Intelが推進している3Dカメラのソリューションとなる「RealSense」に関して、1月のCES基調講演でも見せたRealSenseをロボットの目として利用しているセグウェイロボットを紹介するなど、RealSenseがPC以外にも使えるとアピール。「これまでもIntel RealSense開発キットを提供してきたが、それはWindows向けとなっていた。これからはオープンAPIとして、Linux、Android、OS X、Windowsをサポートする」と述べた。
さらに、ロボット開発をRealSenseで行ないたい開発者向けに「Intel RealSense ROBOTIC Development Kit」を、ドローン開発者向けに「Intel Aero Platform for UAV」を提供。安価にロボットやドローンの開発ができるようになるとアピールした。
2つ目のテーマはクラウドコンピューティングの拡大。ヤン氏は「現在クラウドコンピューティングと言えば、スマートフォンやPCから利用するものだというイメージだと思うが、近い将来にIoTデバイスもクラウドを利用するようになり、Cloud of Thingsの時代が来るだろう」と述べ、クラウドコンピューティングとIoTを組み合わせることでより利便性が高い世界が来るとした。
その例として、NBAのバスケットボールの試合を複数のカメラで撮影しておき、視聴者が視点を自由に切り替えられるデモを披露。さらにはIntelが提供しているIoTの開発環境となるIntel IoT Platformをベースにして、中国政府や中国の病院が協力して開発した例などを紹介した。
3D XPointベースのOPTANE SSDをWindows PC上でデモ、約2GB/secという転送速度を実現
3つ目のスマートでインターネットに接続された世界の拡大というところでは、主にIntelが昨年買収を発表したFPGAのメーカーとなるAltera(アルテラ)社との協業についての説明が行なわれた。ヤン氏は、現在コンピュータ業界で大きなトピックとなっているマシーンラーニング(機械による自動学習)について触れ、そのソリューションとしてAlteraのFPGAを組み込んでアクセラレータとして利用できるとアピールした。なお、Intelは、「Arria 10 FPGA」と「Xeon E5 v4」を1パッケージにした製品を既に発表しているほか、14nmプロセスルールで製造されるStratix 10を組み込んだ製品に関しては第4四半期に出荷する。
その後、NANDフラッシュメモリについて触れ、同社は先頃同社としては初めての3D NANDフラッシュメモリで製造したエンタープライズ向けSSDを発表したばかりだが、今後現在のNANDフラッシュメモリに比べて大幅な高速化が実現される3D XPoint Technologyベースの製品の投入も計画している。Intel 上席副社長 兼 NVメモリーソリューション事業部 事業部長 ロブ・クロック氏が壇上に呼ばれ、3D XPointのメリットの説明やデモが行なわれた。
この中でクロック氏はOPTANEのブランド名で販売される予定の、3D XPointを利用したSSDのサンプルを搭載したPCを公開し、Thunderbolt 3で接続されている外付けのOPTANE SSDにデータをコピーするデモを行なった。そのコピーの速度は約2GB/sec(画面上では1.9xGB/secと表示されていた)と、従来型のNAND SSDに比べて圧倒的に高速だった。もちろんこれは初期サンプルでのデモであり、実際の製品ではもっと速いことが予想される。
加えて、ヤン氏はIntelが引き続き中国の大連に持っている工場への投資を続けていくと述べ、今後3~5年間の間に35億ドル(日本円で約3,800億円)の投資を行なっていくと中国の関係者に向けてアピールした。
Xeon E5 v4など既に発表済みのソリューションなどが紹介されたデータセンター事業
引き続き基調講演に登場したのは、Intel 上席副社長 兼 データセンター事業本部 本部長 ダイアン・ブライアント氏。同氏は、先日発表されたばかりのXeon E5 v4やビッグデータの活用などについての説明した。
この中でブライアント氏は、Huaweiがミッションクリティカル向けの大規模サーバーを開発したことや、ネットワーク機器向けサーバー技術となるNFVなどについて説明したほか、先日発表したばかりのXeon E5 v4の性能、さらにはヤン氏のパートでも紹介された、AlteraのFPGAを組み込んだXeonプロセッサなどについて紹介した。