イベントレポート

CRYORIG、無線機能付きのATX電源ユニット

~時代は電源もIoT。遠隔でPC電源を確実にオン

 台湾CRYORIGは、COMPUTEX TAIPEI 2015に出展し、2015年後半より投入予定の新製品を一斉に展示した。

IoTを謳うATX電源「Pi」

 展示品の中での最大のトピックは、やはりこれまで冷却を専門としてきたCRYORIGが、新たにPC電源市場に参入すること。「Pi」と呼ばれる製品シリーズで、2016年初頭に発売予定としている。

 このPiの最大の特徴は、無線通信機能を搭載している点だ。と言っても複雑なデータ通信を行なうわけではなく、製品名の名前が「“P”ower supply+“i”nternet of things」から来ていることから分かるよう、純粋にスマートフォンなどのデバイスで本製品の電源をオン/オフするためだけに無線を実装している。

 昨今マザーボードのWake on LANの実装が当たり前となりつつある中、こうした製品をリリースしたのは「Wake on LANを利用するためには複雑な設定が必要であるため」だという。本製品の無線制御は純粋にATX電源のスイッチ動作をシミュレートするため、「(ATX対応マザーボードであれば)いかなる場合でも確実に電源をオンにできる」としている。

 製品化はもう少し先だが、今のところラインナップは600W~1,000W前後で、80PLUS GoldまたはPlatinumだけを予定しているという。

 ちなみに製品のOEM元は、高品質電源でお馴染みのSeasonicである。セールス&マーケティングを担当するSteve Shen氏は、「電源は80PLUSのランクと容量だけが差別化要素だったが、コモディティ化により他社との製品の差別化が難しくなり、メーカーも頭を抱えていた。我々のアイデアをSeasonicに持ち込んだところ、すぐに開発が決まった」という。

 なお展示された製品はハンドメイド品だが、660Wの出力を備えた80PLUS Platinum準拠タイプであった。

コストパフォーマンス重視の高性能グリス

 続いてはCPUクーラーの性能を発揮させるのには欠かせないシリコングリスである。

 「CP5」、「CP7」、「CP15」という3種類の製品が用意され、いずれも容易に開けられるパッケージを採用し、グリスを拭き取るためのアルコールパッドに加え、AMDとIntel製メインストリームCPUのヒートスプレッダの大きさに合わせて作ったという、グリスを広げるためのカードが付属する。

 最上位はCP5で、信越シリコーン(信越化学工業)の最上位グリスを採用し、オーバークロッカー御用達のGELID製高性能グリス「GC Extreme」に匹敵する性能を実現。GC Extremeの注射器タイプの内容量は3.5gだが、CP5は4gと若干多く、コストパフォーマンスに優れるという。

 余談だが、Shen氏によるとIntel純正CPUクーラーに最初から塗布されているグリスはかなりの高性能で、リファレンスクーラー全体のコストのうち“一番お金がかかっている部分ではないか”というほど、業界内では「ゴールデングリス」と呼ばれているらしい。

 CP5はそれよりさらに性能が良いのは言うまでもないが、リファレンスクーラーをそのまま使うつもりであれば、「最初から付いているグリスは信用できないから、拭き取って自分が所持している(普通の)ものを塗る」というのは、かなりもったいない行為であることは覚えておいて損はないだろう。

簡易水冷クーラーにも参入

 そしてこれまで空冷CPUクーラーを展開してきたCRYORIGだが、簡易水冷クーラーにも進出する。なお製造は簡易水冷クーラーのOEM元としてかなりの実績を積み上げてきたAsetekが担当する。

 他社との最大の違いはCPUブロックに装着できるPWM駆動の小型ファン。競合他社の場合CPUは冷えていても、VRMやビデオカードと言った周辺はエアフローがないためが冷えず、これがオーバークロック時の障害となっていたのだが、CRYORIGの製品ではそれを解決できるという。

 ラインナップは、120mm角ファンを2基装備しラジエータが1インチ厚の「A40」、同じく120mm角ファン2基でラジエータが1.5インチ厚となった「A40 Ultimate」、そして140mm角ファンを2基装備し、ラジエータが1インチ厚の「A80」の3種類となっている。

 当然、A80がもっとも高性能であるが、140mm角ファンが2基連続で装着できるケースは少ないため、A40/A40 Ultimateのような製品も用意しているとのことだった。ファンの回転数はA80が1,400rpmで、A40/A40 Ultimateは2,400rpmと、A80の方が静音性にも優れるとした。

A40
CPUブロックの上に小型のファンを装備する
小型のファンは逆にも装着できる。なお、写真奥がA40 Ultimate
A40の動態デモが行なわれていた
他社と比較して、CPU周辺部品が冷えていることが分かる
140mm角ファンを2基装備したA80

 このほか、空冷製品としてはIntel純正CPUクーラーと同じ低さに抑えた「C7」、そしてエントリー向けの「M9i」(Intel向け)/「M9a」(AMD向け)、そしてR1向けのカスタムカバー「CUSTOMOD Covers for R1」を展示した。これらの詳細については関連記事を参照されたい。

エントリー向けのM9シリーズ
ニッケルコーテイングされたヒートパイプを3本装備する
小型のC7
Intelの純正CPUクーラーとほぼ同じ大きさ
ヒートパイプは4本
ライバルはNoctuaの「NH-L9」シリーズであるが、ヒートパイプが2本多い上、放熱面積も広い(その分やや高さがある)
マザーボードに搭載したところ
CUSTOMOD Covers for R1
マザーボードの色に合わせてカスタマイズできる
発色にはかなりこだわったという

 なお今回、円形にフィンを並ばせて放射状としたハイエンドヒートシンク「Z1 Universal」については展示がなかったが、代わりに2014年のエープリルフールネタとして登場した「AF41」(読んで字のごとく)を展示した。当時はCGによる画像であったのだが、実はエンジニアがきっちり設計をしており、「いつでもサンプルが作れる状態であったので、今回作ってみた」(Shen氏)という。性能については検証していない。

 ちなみに今年(2015年)のエープリルフールネタはドローン型CPUクーラーなのだが、「こちらも設計が完了していて、作ろうと思えば作れる」という。

 おそらく世界で一番こだわりを持ってCPUクーラーを作っているCRYORIGだが、その裏にはこういう自由気ままな発想と行動力があるのであった。

AF14。ヒートシンクブロックは4つとなっている
プレゼント企画でのみ製造された金色のバージョン。さすがに純金ではないが、「本物の金でコーティングした」という

(劉 尭)