イベントレポート

Intelの新CEO、2014年予定の14nm製造SoCや22nmスマホ用SoCなどを紹介

Intel CEO ブライアン・クルザニッチ氏
会期:9月10日〜12日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンフランシスコ Moscone Center

 米Intelは、9月10日〜12日(現地時間)の3日間、同社製品の開発者を対象にした技術イベント「Intel Developer Forum」(IDF)を、米国カリフォルニア州サンフランシスコ市にあるモスコーンセンターにおいて開催している。

 毎年秋に行なわれるIDFは、Intelが新しい戦略を公開する場となっているが、特に今年(2013年)は大きな意味がある。というのは、今年の5月に、CEOがポール・オッテリーニ氏からブライアン・クルザニッチ氏に交代したばかりという転換期にあり、かつ世界的にPC市場の落ち込みが叫ばれる昨今、Intelがどのような戦略を打ち出していくのかに注目が集まっているからだ。

クルザニッチIntelは、全てのセグメントに最も強力な半導体を投入していく

 IDFの基調講演にトップバッターとして登場した、Intel CEO ブライアン・クルザニッチ氏は「私にとっては初めてのIDFでの講演だが、最初にIDFとはどういう場であるのかを明確にしておきたいと思う。参加して頂いている皆さんにとってはIDFはIntelから情報を受け取る場であるとは思うが、Intelにとっては皆さんからフィードバックを受け取る場である」と、開発者に向けて語りかけることから始めた。

 また、「今業界は大きな変貌を遂げつつある。デバイスはもっとパーソナルに、そして常にネットワークに接続された状態になっている。自宅にスーパーコンピュータを持ちたいという人はいないと思うが、ネットワークに接続されたデバイスを皆さんも沢山もって歩いているだろう。こうした中、CPUベースのアーキテクチャからSoCベースのアーキテクチャへと変革が進んでいる」と、半導体業界がSoCの時代へ変化していることを指摘。

 そのSoC時代を生き抜くために「どのセグメントにも、勝てる半導体を投入することが大事だ。サーバー、PC、タブレット、スマートフォン、そうした全ての市場で強力な製品を投入していく」とした。

コンピューティング環境は、スーパーコンピューターからIOT(Internet Of Things、ネットにつながる小型デバイス)まで
CPUの時代から、SoCの時代へと変わりつつある
Intelの戦略はどのセグメントにも強力な製品を投入すること

14nmプロセスルールで製造されるBroadwellを今年末までに製造開始

 そうした基本方針を示した上で、各セグメントにおいて具体的に“強力な製品”を紹介していった。サーバー市場では、先週発表された「Atom C2000」シリーズ(開発コードネーム:Avoton/Rangeley)、そして基調講演と同じタイミングで発表された「Xeon E5-2600 v2」シリーズ(Ivy Bridge-EP)についての説明を行なった。

 次に話はPCに移り、「IntelはPCの再定義に取り組んでいる。バッテリ駆動時間、フォームファクタ、機能、の全てで、これまでのPCでは考えられなかったようなモノを実現していく」と述べ、PCをよりよくするための取り組みであるUltrabookや2 in 1などについての説明を行なった。

 その場で同氏は、HPの第4世代CoreのYプロセッサを搭載したタブレットを挙げ「これには4.5Wの消費電力しかないCoreプロセッサを採用している。それによりファンレスを実現した」と紹介した。

 また、Intelが第4世代Coreプロセッサの後継として開発している「Broadwell」(ブロードウェル)を搭載したノートPCを初めて公開し「他社に先駆けて14nmを採用することで、性能でも、消費電力でも大きな差をつけることができる。Broadwellを採用した2 in 1は、PCとしてもタブレットとしても本格的に利用できるだろう」と、消費電力が現行と比較してさらに下がるBroadwellの投入により、より薄く、よりバッテリ駆動時間が長いデバイスをOEMメーカーが製造できると説明した。

 なお、Broadwellは、今年の末までに大量生産が開始され、搭載されたシステムは2014年に入ってから出荷される予定だということだ。

データセンター向けには新しくXeon E5-2600v2やAtom C2000シリーズなどを投入して、上から下までIAがサポートされる体制を作った
PCでは引き続きフォームファクターのイノベーションを続けていく
世界初の14nmプロセスルールで製造されるSoCとなるBroadwell
Boardwellが搭載されたノートPCを公開
引き続き2 in 1のようなデバイスの普及を目指す

スマートフォン用としては初の22nmで製造されるMerrifieldをデモ

 次いでクルザニッチ氏は、9月11日(現地時間)の基調講演で詳しい説明をする予定のBay Trailについて説明した。

 Bay Trailは、現在IntelがWindowsタブレット用に販売している「Atom Z2760」(Clover Trail)および、Androidタブレット/スマートフォン用に販売している「Atom Z2500」シリーズ(Clover Trail+)の後継として投入予定のタブレット用SoCだ。Bay Trailの特徴の1つとして「Bay Trailは、Windowsだけでなく、Androidも動作する。OEMメーカーは動作するOSを選んで製造できる」ことを挙げている。

 さらに、Intelが「Merrifield」の開発コードネームで開発しているSoCを搭載したスマートフォンを公開した。現在、Intelが販売しているスマートフォン用のSoCとなるAtom Z2500シリーズは32nmで製造されており、他社の競合製品(例えばQualcommのSnapdragonシリーズや、NVIDIAのTegra 4など)も28nm(世代的には32nmと同じ)で製造されている。一方Merrifieldは、1世代微細化された22nmに基づいて製造される製品で、CPUのアーキテクチャも「Silvermont」と呼ばれるアウトオブオーダーの新アーキテクチャを採用している。

タブレット向けにはBay Trail-Tを2日目の基調講演で発表する予定。Bay Trail-TはWindowsとAndroidの両方をサポートするとアピール
6月のCOMPUTEX TAIPEIでMicrosoftが見せたLenovoの小型タブレットを公開
他社に先駆けて22nmで製造されるスマートフォン向けSoCとなるMerrifieldを搭載したスマートフォンをデモ。他社が28nmに留まる中、いち早く22nmへ移るメリットは大きい

 また、同社のスマートフォン向けソリューションの弱点と言われてきたLTEモデムに関しては、「我々はLTEモデムの改善にも力を入れて取り組んでいる。今年の末までに35〜70MbpsのLTEモデムを出荷し、2014年にはキャリア認証済みのLTE-Advancedに対応したモデムを追加する」と述べ、今年(2013年)の末までに「XMM7260」という型番がついた新世代のLTEモデムの出荷を開始することを明らかにした。

 Intelはすでに「XMM7160」というモデムを出荷しており、今回のMerrifiledのデモはそちらと組み合わせて構成されていたが、2014年には150Mbpsというさらなる高速モードに対応したXMM7260を追加することで、OEMメーカーへの売り込みを加速していく方針だ。

 なお、基調講演終了後に行なわれた質疑応答の中で、14nmプロセスルールのAtomプロセッサの出荷時期について問われ、クルザニッチ氏は「2014年の終わりまでに出荷される」と明確にした。間もなく登場する22nmのAtomから1年程度で、14nmへ移行することが明らかになった。

IntelのLTEモデムを利用して75Mbpsの転送速度を実現するデモ。LTEモデムの本格展開で、Intelは同社のスマートフォン向けのソリューションの弱点を克服へ
2014年にはLTE-Advancedに対応したモデムを展開へ

ネットにつながる超小型機器IOT製品向けに超省電力SoCとなるQuarkを投入へ

 さらに、IOTという新しい市場にIntelが注目していることに言及。IOTというのは、インターネットになんらかの形で接続することで動作する小型のデバイスという意味で、分かりやすい例で言えば、Wi-Fi機能を持つ体重計、Bluetoothでデータをクラウドにアップロードする活動量計などが該当する。

 クルザニッチ氏は「Intelもこの市場に取り組んでいきたい。そうした市場向けにQuarkと呼ばれるラインナップのSoCを投入する」と述べ、IA(いわゆるx86のこと)に対応した新しいSoCのラインナップとして「Quark X1000」と呼ばれる製品を今後投入することを明らかにした。

 この新しいSoCは100mW程度で動作し、オープンアーキテクチャになるという。「QuarkではIntelのIPだけでなく、広く顧客のIPを利用してコアを製造することにも取り組んでいきたい」とした。ただ、今回は概要の発表のみで、具体的にどのようなアーキテクチャのSoCになっているのかなどは非公開だった。

 現在、IOTの市場には、非常に注目が集まっている。Googleが昨年(2012年)発表した「Google Glass」も、先ほど紹介したデジタルヘルスケア向けの製品もIOTということになる。Intelとしてもそうした市場が無視できず、そこがスマートフォンと同じようにARMベースの製品で埋まってしまう前に手を打たなければいけない。そのためにも対応する製品があることを発表しなければならないために、Quarkの存在を明らかにしたと考えることができるだろう。

スマートウォッチやGoogle Glassなどの登場により注目を集めつつあるIOT
IOT向けのSoCとしてQuarkブランドのSoCを発表。IAベースになること以外は、現時点では明らかになっていないが、100mWを切る低消費電力で動作する。
最初の製品はQuark X1000という製品になる
このように開発向けのリファレンスキットなども提供していく
Intelが試作したIOTデバイスを紹介。あくまでIntelは半導体だけを提供するので、こうしたデバイスのビジネスに参入するわけではない

Bay Trail/Coreプロセッサ搭載タブレットや2 in 1デバイスの紹介は2日目の講演に

Intel 社長 レネイ・ジェームズ氏

 クルザニッチ氏の後に登場したのは、5月の株主総会でIntelの社長に就任したレネイ・ジェームズ氏だ。前CEOのポール・オッテリーニ氏は社長兼務で、社長職とCEO職は一体だったのだが、現在はCEO職がクルザニッチ氏、社長職がジェームズ氏と分業体制が採られている。

 ジェームズ氏は「2050年には人口の70%が大都市に住むようになる。そうなるとさまざまなな問題が発生するが、それらを解決するにはコンピュータの処理能力を利用して解決する必要がある」と述べた。すでに、アイルランドの首都であるダブリン市と協力して、渋滞のモニタリングなど、問題解決にコンピュータの処理能力を利用する取り組みを行なっているほか、オレゴン医科大学のガン研究所と共同で行なっている成果などに触れ、コンピュータの処理能力を使う取り組みを今後も拡張していくと説明した。

 なお、今回の基調講演では、新しくIntelの顔になった2人の紹介という側面が強く、製品事業部の具体的な製品の詳細は、現地時間9月11日に行なわれる予定の、IDF 2日目の基調講演で紹介される予定となっている。そこでは、第4世代CoreプロセッサやBay Trailを搭載したタブレットや2 in 1デバイスの紹介、Broadwellのさらなる詳細などが明らかになる見込みだ。

大都市の問題解決にコンピュータの処理能力をもっと活用できるとジェームズ氏
デジタルヘルスケア機器を紹介するジェームズ氏
Intelが現在開発している半導体ベースのパッチ。これを貼り付けることで、心拍数をチェックしたりなど、さまざまな活用法が考えられるという

(笠原 一輝)