イベントレポート

【Maker Faire Tokyo 2012】巨大人型4脚ロボットからジョーク系まで展示されたものづくりの祭典

会期:12月1日〜2日

会場:日本科学未来館

 12月1日〜2日に、お台場の日本科学未来館において、Maker Faire Tokyo 2012が開催された。アメリカのMakeという雑誌が主体となって開催をしているMaker Faierというイベントがあり、サンフランシスコ近郊とニューヨークの2カ所で開催されている。この日本版が今回のMaker Faire Tokyo 2012である。

 2011年までこのイベントは「MTM(Make Tokyo Meeting)」という名称で、MTM04〜MTM07の4回は東京工業大学の大岡山キャンパスで開催されていたが、開催方式が本国Makeとやや異なるものであった。それが今回からは本国と方式をあわせると共に、場所を日本科学未来館に移しての開催となった。

 最大の違いは有料になったこと。MTM07までは出展者/観客共に原則無料(企業などの出展者、および個人でも追加のテーブルを必要とする場合は有料)というものだったが、今回からは観客から入場料を取るようになった。もっとも本国は既に有料(2日通しのパスだと、前売りで30ドル)だし、ここまで大規模だと既に手弁当で賄うレベルではないから、この方向性そのものは筆者も賛成である。とはいえ、観客から入場料を取るのは初めてで、場所をお台場に移したこともあって、どの位の観客が来訪するのかは主催者であるオライリー・ジャパンも読みきれなかったのかもしれない。

 そんなこともあってか、11月に巨大人型4脚ロボット「KURATAS」の展示も行なうことが発表されたのは、KURATASによる動員効果への期待もあったのかもしれないが、蓋を開けてみると「満員電車並み」、「狭すぎる」との声が上がるほどで、少なくとも観客に関して言えば例年以上に入っていた感じがある。出展者の配置というか、会場の使い方には課題が残されたのは間違いないが、まずは一安心というところではないかと思う。

メインとなったのは1Fの企画展示ゾーンa/b(合計で1,512平方m)は、ご覧の状況。これは会場入り口から見た、初日の午後1時ちょっと前の状況で、この後さらに増えた
こちらは会場奥から見た、2日目の午前11時前。この後もっと増えた

KURATAS

 今回、目玉として展示されたKURATASであるが、開催前日の11月30日に製作者の1人である倉田光吾郎氏から告知があったとおり、動作デモはなく、展示のみとされたが、何度か設けられた倉田氏や吉崎氏のトークショーでは大量の人だかりができた。ちなみにKURATASの展示そのものは12月10日まで続けられ、12月8日〜9日には再び体験試乗会とトークショーが行なわれるので、今回見そこなった方はこの機会を活かして欲しい。

比較的良く見かけるのがこのアングル。とはいえ、写真で見るのと実際に見るのでは大分趣が異なる
あまり見かけない右側面。後脚のアクチュエータの位置関係が分かる
もっと見かけない後姿。腰部のジョイントがかなりごっつい。コクピット裏のCAUTIONマークがユニーク。
左側面。メンテナンスのためか、装甲が取り外されて中が見える
ちなみに氏が告知していた制御基板の損傷だが、修理ではなく作り直しが必要なので、12月8日〜9日も稼動させるのは無理だそうである。ちょっと残念
大雑把に言えば、KURATASの構造そのものを作ったのが倉田氏で、制御回路一式を作ったのがこの吉崎航氏。背後に見える「油圧」はKURATASの制御の主動力である油圧にちなんだもので、会場ではこのTシャツがまた良く売れていた
抽選で何人かはコクピットに上がる事も出来たほか、コントロール部が手前に展示されており、ここで操縦方法の説明などもあった

PC系ネタ

 以下、「強いて分類するとPC Watch的なネタ」を色々ご紹介する。

・れすぽん「CPU自作入門&基板少女
 「CPU自作入門」で紹介されたオリジナルCPUを実装したFPGAの動作デモとキットの頒布(PC01)。

O’Baka Project
 MTMではおなじみ、空中配線ArduinoやBottle Circuitを展示したO’Baka Projectは、今回は液体漬けに挑戦した。

この手の先駆者には、「CPUの創り方」があり、もっと古い話をすれば大昔に月刊RAMで連載していたΛ-1という8bit CPUのワンボードマイコンもあったりする(多分1980年頃)。メンバーのゆうり氏(だと思うのですが、違ったらごめんなさい)は「CPUの創り方」を読んで実際に作ってみたとか。「FPGAだと楽になりましたよね」などと会話を交わさせていただいた
中央のものが今回の目玉で、PURE MOLTのビンの中で4×4×4のLED空中配線を行ない、さらにそれを駆動するArduino互換ボードまで繋いだ上で、ごま油(なんでもこれが一番ウィスキーの色に近かったらしい)を封入したものだが、それよりもその両脇にあるブレッドボードがすごい。なんでも一旦ブレッドボードを真ん中で切って(大きいものは4分割したそうだ)ビンの中でもう一度接着しなおしたんだそうで
Bottle Circuitを作るために必要な専用工具。最初は外科手術用具を購入したものの、そのままでは使いにくいので自分で改造したとか

・デイリーポータルZ「デイリーポータルZの半笑い工作
 PC Watch枠なのか、INTERNET Watch枠なのかは悩んだが、新作の「アタ・マウス」があったのでこちらに。ちなみにデイリーポータルZを率いる林さんの新作は「ストリートビューのヒモ」。

前後左右はそのままアタマを動かすわけだが、クリックは「アタマの中にスイッチ入ってます。かなり勢い良くたたかないとスイッチが入らないので、これでドラッグとか至難の業です」とのこと(製作者の北村氏)。ちなみに後ろにちょっと見えている光ファイバー藁人形は、作るの面倒なので、材料だけまとめてキットにしたという
このストリートビューのヒモ、2m分を丸めると結構な大きさに。さすがに買って帰るのは邪魔だったので、再生ボタンクリアファイルだけ購入

・刺繍する犬「Geek Handstitch(基板刺繍と鉛)
 NeXT CUBE基板を借用して、その基板を刺繍で作成。他にも新MacBookや新iPodも。

「よくこの基板持ってましたね」と伺ったら「いや借りてるんです」とのこと。こうしてみると、強度とGNDライン強化の両方を狙ったレールが中央にあるのが懐かしい
製作期間1年だそうです。ちなみにスケールは200%くらい。細かくICのシルク印刷まで全部再現されている
新MacBook。金属部分は鉛で作成
キーはこの通り
iPod多数。一体どこからこの情熱が……

・プロジェクトマイアミ:チーム火の鳥「続スゴ涼:スゴ楽」
 仰向けで利用できるPC環境を自宅に構築し、「いつ寝たきりになっても大丈夫」と豪語する後藤氏に捧げたいのがこのスゴ楽。8月に大垣で開催されたMOM(Make Ogaki Meeting:MTMの親戚)で「スゴ涼」を発表したチーム火の鳥による「究極のPCエンターテイメントを創出する環境」である。

要するにリクライニングシートと巨大なアームを組み合わせ、寝転がった状態で丁度いい角度にディスプレイが来るようにしただけ。なのだが、実際に寝てみるとこれが案外快適。ちなみに口にくわえているのはドリンクのホース(笑)
ここで黒布を被せるのが非常に大きなポイント。ディスプレイ背後が見えなくなることで、恐ろしく没入感が高まる

・イタチョコシステム「イタチョコなりのエレキテル
 古くからのMacユーザーにはおなじみ、ラショウ師率いるイタチョコシステムが今回も参上。今年の新作はUSBマニ車。ありがたいお経(?)が書かれたファンが高速回転するというイタチョコクオリティは健在。ちなみに2日午後にはラショウ師による暗黒舞踏のデモもあった。

MTM07では、筆者の2つ隣のブースが予約されていながら結局登場せず、今年も来ないのかな、と思っていたらちゃんと来ていた。ちなみにラショウ師をご存知無い方は、こちらあるいはこちらを参照。ちなみに新作(?)のWindows XP用ゲームもあった
USBマニ車全景。いやイタチョコですし
ありがたいお経(?)
Wikipediaにもあるとおり、最近師はステージ活動の方も盛んで、一度見てみたいと思ったのだが、こんな形で実現するとは

・oink!「自作☆改造☆修理の館
 机上に何気なく置かれていた、昔懐かしいiMacの中身を入れ替えた「iMad」。このiMacの筐体の場合、ネジが非常に少なく、ひたすらはめ込みなのが大変だったとか。もちろん本体だけでなく、マウスも2ボタンの光学式マウス(ホイール付き)に作り変えるという念の入れよう。

・髭伯爵「『ぬいぐるみ』で作る電子回路」
 PC Watch系というか武蔵野ブレッドボーダーズ系というか。「手芸系オヤジ」を名乗る髭伯爵氏の出展は、ぬいぐるみ部品回路というか、マクロブレッドボード+マクロ部品というか。コンデンサや抵抗となるぬいぐるみ(ちゃんと容量とか抵抗値はあっている)を、そのサイズに合わせたブレッドボードに装着して回路が組めるという、何も間違っていないのだが、何かが間違っている力作(褒め言葉)。ちなみに来年は、「555とかオペアンプとかを用意したいですね。中はディスクリートで等価回路を組む」とヤル気満々であった。

良く見るとちゃんとロゴもiMadになっている。もちろんブラウン管は液晶に置き換え。マザーボードはMini-ITXだが、なぜかCPUはPentium 4だそうだ
もちろんマクロブレッドボードも手作り。出来上がりにはまだ不満が残るそうである。そもそもボードも最初はプラスチックに四角い穴を開ける予定だったのが、紆余曲折やら気絶やらあってこうなったとか

・電脳律速「はかどるん
 少しは実用的(?)なものも、ということで電脳律速さんのはかどるんは、USBキーボードとPCのUSBポートの間に挟んで、色々やってくれるもの。具体的にはキーボード万歩計(キーを何回打ったか数えてくれる)、英語/日本語配列変換(例えば日本語キーボードドライバをロードしておいて英語キーボードを繋ぐと、キートップの表記と実際に入力したキーが異なる。この際にはかどるんを挟むと、日本語キーボードと英語キーボードのコード変換をすることで、キートップの表記にあったキーが表示される)、キーマクロ(キーの入力を覚えて代行してくれる)といった機能を持つものだった。

・楢ノ木技研「オリジナル電子工作キットの展示販売
 再び非実用的というか、とんでもないものが。楢ノ木技研さんのブースは電子工作キットの展示販売といいつつ、そこで一番目立っていたのは、この超巨大水晶発信機。普通はこの水晶を小さく切り出してパッケージするものだが、今回は切り出す前の巨大結晶に直接発信回路を取り付けての展示。発信回路を動かすと14.4KHzで駆動するという、まず普段目にしないデモであった。

フリスクのケースに収まるサイズで、しかもOLEDの状態表示も出来るという、確かに便利そうなもの。全部で50枚作成し、半分は部品を実装、残りは未実装(自分で取り付ける)として頒布したところ、完売したそうである
複数キー押しには流石に未対応だそうだ
超巨大水晶発信機。ボタンを押して振動している最中に水晶に手を当てると、振動が抑えられて音が変わるという、これまた普段は絶対に体験できない貴重な機会を得られた
本当はWindows XPの画面をWirelessで飛ばして、となりのiPod touchで表示させる予定だったのが、会場の無線環境があまりに悪すぎて接続できないということでこんなことに。寸法は56×48×13.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量44g、消費電力は3Wとの事だった

・ロボット工房のらとりえ「ロボット&アクセサリー
 メインの展示は色々なロボットやアクセサリなのだが、さりげなくこんなものが。中身は800MHz駆動のVortex 86SXにメモリ512MBを搭載。ブートはmicroSDカードから。のらとりえが開発をしたということで、何気に展示がされていた。

・九州プログラミング研究会「電子工作いろいろ
 PC Watchからもやや外れる気がするが、今回一番衝撃を受けた展示だったのでご紹介。お三方が参加されたうちのJuJuさんのLED工作。

 目玉となっていたのは、8×8のフルカラーLEDアレイを自由に繋いで一体化して表示できるFLIS-MATRIXというアプリケーションだったが、それより凄まじいと思ったのはFLIS-UNO。2線式のフルカラーLEDである。

 LED工作したことがある方はお分かりだろうが、フルカラーLEDはR/G/Bの3色のLEDを同時に光らせて、その輝度に応じて色を変化させるから、普通に考えると絶対に4本(R/G/Bそれぞれの電源+共通のGND)が必要である。これは面倒なので、LEDに8bit MCUを組み合わせ、このMCUからR/G/Bそれぞれの電源をPWMで出力するようにすれば本数は若干減る。それでもMCUへの電源とGND、それにMCUへのコマンド用信号線が必要になる。そこで、電源ラインにそのままコマンドを乗せるという方法で2本まで減らすことができたという。この場合、Loが長く続くと電源が足りなくなるので、短期間であれば電源を供給できるようにコンデンサによるバックアップを持たせたのだとか。

 そして「MCUが大きいと全体に大きくなってしまって格好悪い」という信念のもと、小型化のために6ピンのATtiny10を使う事で幅をLEDと一緒まで押さえ込んだのがとFLIS-UNO/eである。ちなみにこのFLIS-UNOやFLIS-UNO/eの設計図や回路、電源ラインを使ったバス仕様であるFLIS/BUSの詳細などは全て公開されているが、そういう話が目立つろころにないのが展示として残念だった。

これだけ見てるとクリスマスツリー用の配線である。というか、値段を考えなければこれクリスマスツリーの飾りつけには最適かもしれない
ちなみにPIC系でなくAVRなのはなぜか聞いたところ、PICだと消費電力が大きく、MCU脇のコンデンサ程度ではバックアップに十分でないからとか。最近8bit MCUのマーケットはどんどん32bitのCortex-M系に置き換えが進んでいるが、「こういう用途は32bitには無理だし、ここしか8bit MCUが生き残る道はないと思うんですよね」と力説された。いや実際、これ見せられると同意せざるを得ない

ケータイWatch系ネタ

・Etsy「森翔太 [Showta Mori]
 一部のコアなファンには有名な仕込みiPhone。これは服の袖の中にiPhoneを忍ばせ、使うときはシャキッっと手のひらに飛び出させる小道具。今回はiPhone 4/4S用の仕込みiPhone 4号機を限定9個販売。あとで聞いたら見事に完売されたそうである。

なぜiPhone 4/4Sのみかというと、これ用のケースは100円ショップで売っているから(他の機種だともっと高くなる)という理由だとか。価格のほとんどはレール代で、しかも消耗品なのが悩みの種だそうで
こちらが森翔太氏。額についているのは、氏がこれまで作ってきたコンテンツを全部納めた2GBのUSBメモリ(笑)。ちなみにこのしばらく後には、手芸系のブースとコラボレーションで、「仕込みiPhone蛸」の実演が行なわれていたらしい

Car Watch系ネタ

・Suns & Moon Laboratory「ANIPOV
 自転車のスポークに取り付けることで絵を表示させるというANIPOV。確かMTM04の頃から展示していたはずなのでもう3年以上になるのだが、やっと製品化に向けて進んでおり、2枚のもので18,900円(ANIPOV 1枚だと9,800円)。

ANIPOV。フレームに取り付けた磁気マウンタによる磁場を検出することでスポークの位置を判断し、それにあわせてLEDの点滅を調節することでご覧のような絵を表示させるというもの。最小は2枚で、枚数を増やすとさらに絵の品質が上がる(この写真は3枚)
製品試作品。中にはLEDが埋め込まれた基板が収まっている。自転車で使うということで防振/防水ケースに入る形になるが、「試作品は素材の選択を間違っちゃって半透明なんですが、製品は透明素材にします」との事

・勝 純一「じぇーけーそふとのこーなー+
 磁石が付くタイプの壁ならば登攀可能なリモコンカー。正式名称は「汎用壁ロボ『うおーるぼっと』」制御にはWiiリモコンを流用という、なかなかのアイディア品。

・はらっぱ技術研究所「こどもと大人のための組立式リヤカー」
 5千円程度の材料費で製作でき、子供3人が乗っても耐え、分解も可能な組み立て式リヤカー。

じぇーけーそふとのこーなー+。底面にそれなりの強さの磁石がある。ただし、がっちり壁に張り付くと動かないので、微妙に間隔が空いている。制御にはmbedを利用。Wiiのリモコンはプロトコルを解析して使えるようにしたそうである
こどもと大人のための組立式リヤカー。周囲はベニヤ板で、強度が必要なところのみ2×4材を利用したそうである。ほとんどは普通ののこぎりでカットしたが、2×4とベニヤ板はDIYショップのカットサービスを利用したとか
この手のものだと車軸の部分が一番荷重が掛かるので、ここはがっちり2×4材で構成。荷台とは12mmφのネジでとまっているので、分解はこのネジを外すだけ
車軸に使ったのは羽子板ボルト。元々は建築用のもので、地震などの際に部材の脱落を防止するためのもので、「全国どこでも手に入るし、安い」とか
タイヤは「猫車用のタイヤがDIYショップに売っている」ので買ってきたという。だが筆者の近所のDIYショップにはそんなものはない。一体どのショップで買ったのか聞いたら、ジョイフル本田との事。さすがである

デジカメWatch系ネタ

・カメラスタビライザー研究所「カメラスタビライザーの自作
 カメラのスタビライザーは結構なお値段になるのはご存知の通りで、これを自作しようという人も多いのだが、これもその一例。

カメラスタビライザー。これはベアリングを使ったもの。周囲のパイプは水道管だそうである
このタイプのコツは、T字金具を重ねて間をネジで繋いで微調整できるようにすることだそうである
こちらはユニバーサルジョイントを使ったスタビライザー。弧状に曲がったアルミパイプは砂曲げ(中に砂をつめた状態で曲げる)でやっており、弧の両端がちょうど一直線になるように微調整するのがコツだとか。また製造ではユニバーサルジョイントの取り付け方にやはりコツがあるそうだ

・ienaga’s booth「電子工作とか3Dプリンタとか微速度撮影とか
 いえなが氏は3Dプリンタでの作例とか自作インターバルタイマなども展示されていたが、圧巻は「iDolly」。タイムラプス撮影をやる時、撮影そのものはインターバルタイマがあればいいが、同時に微妙に視点をどうずらすか、という課題を解決するのがこのアーム。材料費はレールが15,000円、そのほかが5,000円程度で、しかも釣具のバッグに収まる携行性のよさを実現できた。もちろん電源は別途必要だが、ポータブル電源を用意したら、先にカメラの電源が尽きた(笑)そうである。

iDolly。レールとその上のマウントはRSコンポーネンツから通販で購入したとの事。駆動は長ネジで、これをステッピングモーターで回転させる。長ネジそのものは結構たわむが、強度はレールで保持しているので問題ないそうである
赤いカバーの下にステッピングモーターが隠れており、これがジョイント経由で長いネジを回転させる仕組み

AV Watch系ネタ

・CharonixDW@yuna_digick「ロストテクノロジー・ニキシー管の世界
 MTMではこれも恒例となった、ニキシー管を使った工作を得意とするゆな研さん。前回は112chのニキシー管を使ったスペクトルアナライザーの表示で度肝を抜いたのだが、今回も登場していた。ちなみに今回はJAXAカウントダウンクロックのレプリカや、超巨大ニキシークロックも展示されていた。

人だかりが多すぎて、撮影しようとしても112ch分が全部収まらない
バーグラフニキシー管。掛ける電圧で表示される長さが変わることを利用して、PWM制御で電圧制御という話だが、そのPWM制御が普通のMCUとかだと間に合わないので、FPGAを使って制御しているそうだ
こちらはスペクトルアナライザーとは無関係で、ニキシー管のデモ。このCD47という大型ニキシー管は、1つだけでも手に入ったのが奇跡という

チームラボMake部
 チームラボMake部はいくつかの出展があったが、これはその1つ。おなじみルンバを分解、掃除ユニットを大胆に取っ外し、そこにビデオカメラを取り付けたのが「ローアングラー3号」。なにしろ元がルンバだから、低い位置を這いずり回る能力には定評があり、撮影映像をそのままリモートで飛ばすという、「どうしてこうなった」系作品。

筐体の上の無線ルータは、今回ライブ映像の送信のために追加したもので、本来(?)はカメラで録画するだけとか
この状態でKURATASに特攻したところ、とっつかまって水道橋重工のシールが張られた。「なぜルンバ?」と聞いたところ、駆動系が他のどんなものよりも良く考えられているとか。「余計なものが一切ついていない」ところがすばらしいとのこと
撮影結果。上下方向のアングルに限界があり、この角度だとぎりぎり盗撮にならない、らしい(微妙な気はするが)

家電Watch系ネタ

・A&N lab.(あんりある)「音声合成ICを乗せたリモコンGPS時計の可能性〜声と音楽とニキシー管をのせて〜
 今年はなぜかニキシー管が人気で、例えばこんなものが売られていたりしたのだが、MFTでもニキシー管を使った出展は結構多かった。その中で両極端に位置するものをご紹介。まずはA&N lab.さんのGPS時計。見かけはまぁ普通(?)の時計だが、時間あわせはGPSを使って正確に行なっており、駆動回路も当然フルデジタル。パッケージはこのような堅牢なケース(防水/耐衝撃)に収められるという。これで65,000円が高いか安いかは微妙だが、この展示品は既に購入予約済のものだそうだ。

全桁表示されていないように見えるのは、ニキシー管がダイナミック表示のため、シャッタースピードが速いとこのような具合になる
屋内ではGPSの受信が難しい。そこで、ACアダプタから本体を外して外に持っていって電波受信→校正を行なうのだが、この間も電源が尽きないように、GPSモジュールの横にバックアップ用の25Fのコンデンサ×2が搭載され、電源なしでもしばらくの間動作するという仕組み
ニキシーの制御はPIC24で行なっている
ここまで堅牢なのは、「もし故障した場合、このケースに収めてそのまま送り返してもらえば修理可能」だから

・EET-Lab「Nixie tube clock by relays
 同じニキシー管時計を、一切デジタル回路を使わずに作ったのがこちら。なんとリレーを300個以上搭載した代物である。ちなみに、こちらは同じくリレーを112個使ったもの。いろんな意味で力技がすばらしかった。

シュタインズ・ゲートのダイバージェンスメーター風、だそうである
こちらはさすがに1Hzの信号は外部入力。100V電源の50Hzを分周してもいいのだけど、さらにリレーの数が増えてしまうので、ということだった

・伊藤技術研究所。「プロセスの物理表現
 さらに時計つながりで伊藤技術研究所。の24時間時計のプロトタイプ。なぜか0時が真下、という独自のレイアウトもさることながら、駆動部が独特。時間の制御とLEDの駆動はArduinoで行なっているのだが、秒針の駆動がなぜかPICベースのモータドライバ。なぜPICなのかというと、5年前くらいから手元にあったかららしい。

「なぜ0時が真下なんです?」。「なんとなくこのほうがいいかな、と」
一から作るなら、Arduinoに適当なモータドライバシールドを組み合わせた方が楽に思えるが、「ありものを組み合わせる」方がMakeっぽい気もする

・道玄坂電子工作部「ミクの肩たたき他」
 肩たたき機をちょっと魔改造して、外部からの音楽ソースに合わせて振動するようにしたという展示だが、問題は「どうやって」実現したか。肩たたき機も当然内部にマイコンが入っているが、その仕様等はもちろん公開されていない。そこで、マイコンからの信号を1本1本オシロを使って確認し、モーター駆動を行なっている配線を見つけてそこに割り込んだのだとか。

・ABA「土鍋炊飯botをつくってみた」
 土鍋でおいしく御飯を炊くために、カセットコンロの火力を自動調節するというシステム。どうやって火力調節するか、というとカセットコンロのつまみをサーボモーターで駆動するという力技である。温度そのものは土鍋の蓋の穴から温度計を差し込んで測定するというもので、これにより「美味しい御飯を炊くために最適な温度プロファイル」を自動調整できるというものだった。

音楽に合わせてのパルス生成は、中央のマイコンボードが行ない、ここから伸びた線が肩たたき機内部のマイコン→モータの制御線に割り込む形の実装になっているとか。見つけるのには、ものすごく時間が掛かったらしい
ちなみにここには「美味しい御飯が炊けたときの温度変化を記録する機能(ライスログ機能)」もあり、まずはこれを使って美味しい御飯の炊き方を覚え込ます事になる。つまり、まず自分で美味しい御飯を炊かないといけない

総括

 軽くいくつか紹介させていただいたが、もちろんこれは全体の内のほんのわずかである。というより、この調子で書いているといつまでも終わらないので、このあたりで強引に切らせていただいた。こういった具合にアイディア勝負のものから完成された製品の展示まで、とにかく何でも「作ったものを紹介したい」と思えば、それで出展できるのがMTMであったが、それはMFTにも間違いなく引き継がれることになった。

 こうした展示以外にもワークショップも盛んであった。1Fではプログラミングや半田付け工作などのワークショップがトータル10カ所以上、さらに7Fの会議室を利用した編み物系の部屋では常時複数のワークショップが行なわれており、こうしたものを楽しんだ参加者もかなり多かった。

 Twitterのハッシュタグは“#mft2012”であるが、これを見ていると「次は観客ではなく出展者になりたい」という声もちょくちょく目に留まる。次のMFTは2013年の秋〜冬を予定ということで、例年のスケジュールからすると夏の終わり頃には大雑把にスケジュールが固まってくるのではないかと思う。

 課題としては、やはり会場の絶望的な狭さが挙げられるだろう。MTM07まで会場として利用していた東工大の体育館と比較するとかなり狭いのは否めず、そこに色々なものを盛り込みすぎた観がある。結果、MTM07までは屋外展示で行なわれたいくつかの出展や、テスラコイルを使っての高電圧デモなどは今回見送りになったようだ。また、日本科学未来館自体が、ここまで大量の参加者が短期間に押し寄せることを想定していなかいようで、トイレや休息場所、フードコートのキャパシティはややきつかった。

 ちなみに筆者はMTM06/07には出展をさせてもらったが、今回は用意が間に合わず(というか、アイディアが浮かばず)観客に戻らせていただいた。出展者の側に廻ると、会場を見て廻る暇が無いという基本的な問題があって、ここ2回はろくに出展物を見る暇がなかったので、今回は取材ができて満足だったのだが、取材してるとやはり出展者側に廻りたくなるのが人情というものである。ということで、来年は何かしらアイディアを考えたいと思っている。

(大原 雄介)